言霊

〜言葉に宿る神秘なる力〜

 

言霊とは言葉に宿る神秘的な力として、言葉が持つ力、そしてその動きと流れを指します。

古来からわが国では「言=事」と考えられ「良き言の葉は良きものを招き、悪き言の葉は災いを招く」といった観念がありました。

もし私たちが言葉の霊的な部分、内に潜む神秘的な言葉の動きを理解できて、目的の言葉を発するだけでその言葉のまま実現できるとしたら、どうでしょう・・・。

かくしてこの「言霊の呪力」に心を奪われ、言霊の力を自在に使うべく、たくさんの神道家や霊術者が言霊の力の研究に没頭しました。

〜「言霊の幸(さき)わう国・言霊の扶(たす)くる国」(万葉集)〜

神国日本といわれたわが国を指し示して、「言霊の国」と形容するこの言葉は、現代においては完全にその形が消えうせてしまいましたが、本来言霊が持つ神秘な力は、古事記で伝えられる「国生みの神話」でも示しています。

「天地(あめつち)初めてひらけしとき、高天原に成れる神の名は・・・」

 この世がまだ混沌とした宇宙においてわずかにその姿を現したとき、光とともに大いなる意思が動きました。我々人の祖神が生まれ出でるまでの大いなるものの意思が宇宙の、すべての源でありました。

大いなる宇宙の神は、伊邪那岐命(イザナギノミコト)、伊邪那美命(イザナミノミコト)の二柱の神に対し、「このただよへる国を修理り固め成せ」とおおせられました。

かくして両神は、宇宙神の言葉に従い、言葉に潜む力(言葉の本質とその力)である「言霊」をうけて、この国を作り成すのです。

このとき宇宙神から二柱の神に向って発せられた言葉が、この世で初めての「言霊」となります。

宇宙神の言葉は「このただよへる国を修理り固め成せ」でした。そしてその言葉を成就するための手段(方法)が「天の沼矛(あまのぬぼこ)」という事になります。言葉の本質、言葉に潜む力を理解できたからこそ、「天の沼矛」を手にして「国生みの事」を成就することが出来たのです。

〜ご参考〜「国生みの神話」古事記

太古、わが国ははまだ十分に成りととのわず、水に浮かんだ油のようでその様子はまるで海の中のクラゲのようにただよっていました。宇宙神は、伊邪那岐命(イザナギノミコト)、伊邪那美命(イザナミノミコト)の二柱の神に命じ、「このただよへる国を修理り固め成せ」とおおせられ、天の沼矛(あめのぬぼこ)という「ほこ」を授けられました。二柱の神は、天の浮橋にお立ちになり、この沼矛をさしおろして、海の水をコヲロコヲロと音をたててかきまわし矛を引き上げると矛の先からしたたりおちた塩水が固まって、「オノゴロ島」となりました。二柱の神はこの島に降られてちぎりを結ばれ、日本の国土をはじめ多くの神々をお生みになったのです。
 

 =「言霊と祝詞」=

言霊の効果とは実際どのようなものなのでしょうか。「言霊の効果」を考えるにあたっては、「祝詞」を通らずには語れません。

言霊はなにも日本独自のものではありません。東洋西洋ともに言葉には精霊が宿りその精霊が振るう不思議な力が人々を幸にも不幸にも招くものと考えられていました。言語には超越した力が宿り、その力を神霊や精霊の力になぞらえ畏れ敬いう気持ちが「言霊」というものに通じたと考えます。

そういった言霊の観念は日本においては「祝詞」にこめられ、東洋においては「経文」にこめられ、西洋においては「聖書」にこめられ、後世に伝えられました。

祝詞の語源は「祝詞とは宣説言(のりときごと)の略で、神に申し上げる言葉」とするものや「神を招き奉る場合、一定の宣る場所を必要とすることで、その宣ることに必要な言葉が“のりとごと”と言い、祝詞の語源である」という説もあります。

最終はそういった言霊を口で発することによって、超越した神霊のエネルギーと相通じることを目的としました。

現在は神社が行うまつりや祈願の内容によって幾種類もの祝詞が奏上されますが、今のような言葉使いや奏上のリズムの基礎となったのは平安時代が起源の「延喜式祝詞」があげられます。大和言葉でできています。そして、言霊の髄が集約されたとする「大祓詞」は現代に伝わる祝詞の中で一番に注目されるもの、とされます。

大祓詞は年2回、6月30日と12月31日に国中の罪穢れを祓うべく毎年行われた朝廷の行事にさいし唱えられました。そして今でも様々な神事の前に唱えられる最も重要な祝詞として位置付けられ、人々がおかした罪穢れを祓い、天災や疾病を祓い、個人の心身や社会全体を浄化して弥栄(いやさか)をもたらす祝詞とされます。

祝詞に含まれる言霊の効力はおろか、祝詞を奏上する際に波が引き押し寄せかえすような響きを自然のうちに奏でられるこの祝詞は、躍動する言霊の力を肌で感じることが出来ます。

大祓詞に限らず、様々な祝詞を唱える際は、正しい言葉と正しい姿勢(心)で唱えることが大切なことです。何事にも目的をもつことは大切なことですが、祝詞を奏上する際も同じ事が言えます。

単なる言葉から、その言葉に超越した力をみなぎらせ神秘な力を宿し目的を成就するためには、「正しい心」がともないませんと、ただの言葉遊びに終始してしまいます。

また、「目的の言霊を繰り返し唱えることが言霊の効果を高めることになる」などと、ご指導される方も多く見受けますが、安に、一気に言葉の繰り返しを数千回数万回行おうとも、目的の祈願を成就できるなど、まったくそのような保証はありません。

「必死で唱えたのに何の効果もない」、と苦情を申し上げても、「それは祝詞の唱える回数がまだ足りないんだ」と、言われるのが関の山です。そのような事はぜひお止めください。何の意味もありません。

言霊一字一字に秘めた力、またいくつかの言霊が重なって現れる力、奏上をするときの空気と音階、これらが神妙に重なりあったとき、霊力と神力が渦を巻いて私たちの前に現われるのです。

私は、祝詞やお経などは、一度に短時間で回数を競って読みあげるものではないと考えます。一言一句を的確に大切にすること、己の声を己の耳でしっかりと聞きながら、時の変化も敏感に感じつつゆっくりと奏上します。そうすることで前出のそれとは比較にならないほどの鍛錬ができるのです。

ようは、時間を競うのではなく、長い期間をどれだけ続けられるかが最大の課題なのです。神様ごとは神様をお奉りする上で、すべてこの事が基本となります。

言霊を大切にして、意味あるものと理解して発する言葉は、日常の生活の中に上手く生きてきます。日常の生活に生かせる鍛錬を正しい気持ちと正しい環境で行うことが究極の目的であって、非常に大切なことなのです。

 

=霊学秘法=

かつて言霊を研究する人は「言霊学」として、古文書や古い文献などから、真の言霊の知識を得ようと努力しました。参考書によりますと、言霊学は江戸中期から盛んになり、近代においては「出口王仁三郎」の手によって広く世間に知られることとなったようです。

究極のところは、言葉が秘める神秘性を追求するにとどまらず、言霊の呪術の面にも大きく注目されることとなりました。言霊の呪力を習得できれば、人の悩みや病気の改善、そして神霊さえも意のままに操ることを目的とした呪術に思いを馳せたのでした。

 

下記はそういった「言霊学」によって編み出された霊学秘法です。

 

「神祗伯家秘伝 古神咒」

ト ホ カ ミ エ ミ タ メ

 この八言は「五元の神」を拝し “ト”は水、“ホ”は火、“カミ”は木、“エミ”は金、“タメ”を土として、それぞれの働きを称えたものです。また、神道の最大関心事である「罪穢れを祓い清めたてまつる」ことへの秘法として伯家(はっけ)に秘伝として伝えられていました。ト・ホ・カ・ミ・エ・ミ・タ・メ で八音ですが、ト・ホ・カミ・エミ・タメ については五音となりうることが「大祓詞」の「天津祝詞の太祝詞事」に通じ、大祓詞の長い祝詞の秘詞に匹敵するものとされました。

「友清歓真 十事神咒奉唱」

ア マ テ ラ ス オ ホ ミ カ ミ

この神咒は十事あって、言うまでもなく「天照大神」の神名そのものです。この十事は奇しなるもので、何百回も何千回も奉唱すれば神徳を授かるとされます。ご神名そのものが言霊の天地の結晶を帯びたもので素直に清明の心で唱えると無量の福徳を授かるとされます。

「ヒフミの神歌」

ひふみよ いむなや こともちろらね しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか うおゑにさりへて のます あせえほれけ

この神歌は天照大神が天の岩戸に隠れましたとき「天鈿女命」が岩戸の前で楽しげに神舞を舞うときに謡われた歌です。清音で謡われるように構成されており、「神霊を慰め万の災いをして幸いに返さずということなし」といわれるもので、宇宙創造の原理を要約したものとの説もあるようです。この神歌は47の音で構成されますが私たちが使用する言葉の基礎たるもので、清音47柱の神が宿る「言霊宇宙」を形成するものとされます。また「ヒフミ神歌」は鎮魂帰神法に使われたり、言霊の訓練にも使われました。

 

「布瑠の言」

ひふみよいむなやここのたり ふるべ ゆらゆらとふるべ

物部氏の祖神「ニギハヤヒノミコト」が降臨する際に「タカミムスビノミコト」に授けたというのが「布瑠の言」です。この言霊には「十種神宝(とくさのかんたから)」を意味するものが含まれ、言霊の中で神宝を使うことで霊的な秘技を確立します。「旧事本紀」では「死者がよみがえる」とも記されています。

 

 

言霊はこういった秘技のほかに、「占い」にも使用されました。

神憑りに陥り、己の口から言霊を発し、物事の吉兆を予言するもの。また人との対面で、相手が発する言霊の霊的部分を察知し物事の吉凶を占い助言するもの。また占いに必要な言霊が記された道具を使って占うものなど、古来から様々な分野で言霊に秘める神秘な力を使用していました。

次のページにある「言霊五十音一覧表」はそういった物事の吉凶を占うに必要な答えをえるためのものです。