NO NUKES ONE LOVE

 

激しく揺れ動く大地、荒ぶる海、襲い来る大津波……

住みなれた街が、人が、波に呑み込まれ、波にさらわれてゆく……



M9の地震と津波に襲われた福島第一原発

臨界を止める制御棒はかろうじて挿入されたものの

外部電源も非常電源も断たれ

六基ある原発は制御不能に陥り

冷却機能を失った炉心で

メルトダウンが起こりはじめる

圧力容器からは水素が漏れ出し

放射能を閉じ込める建物を次々吹き飛ばす

海水を注入するも(その故に)炉内の圧力は上昇しつづけ

圧力を下げるために放射能を含む気体を大気中に放出

そして四つある燃料プールも冷却機能を失い

放射能が大気中に吹き上げつづけ

未だ予断を許さない事態がつづいている……



安全神話はもろくも崩れ

起こってはならないことが

起こるべくして起こってしまった

原発から20k圏内の住民に避難指示

30k圏内の住民に屋内退避指示

続々と避難する人々……

不安と恐怖と混乱がつづいている




原発事故緊急対策マニュアル

遂にこの本を

開かなければならない時が来てしまった



これらの事態に

為すすべもなく戦慄したまま身をこごめる

人の前に繰り広げられたこの天の災い

この原発災害 



それらを前にして

残されたわたしたちに

残されたものは

危機を己のものとして受け入れ

己に問い直し

これを

大いなる機会と

大いなる転回点として

生きてゆく他はあるまい 



学ぶべきことがあり

敬虔となるべきことがあり

祈りがあり

いのちの声があり

深い深いところで

魂の声があり

スピリットの声がある

計画停電の闇の中で

これを書いている

闇が語るものがあり

月明かりが語るものがある

わたしたちが歩むべき道がある

 

大地に心を開いて

大いなる海に心を開いて

額ずき

ひれ伏して

祈る

 

われらの友の、

妻の、娘の、夫の、父の、母のいのちを

奪い去っていった

その怒れる力

 

呆失と絶叫と悲嘆と……

(住みなれた街は失われ

死者・行方不明者は3万人を超えそうだという)

 

ローソクを灯して

祈る時間が

与えられ

コンピューターも奪われて

電車も

電話も奪われ……

 

それでもなお

大地があり

大いなる海がある

奇跡のいのちの星がある

月があり

太陽がある

 

内省の時があり

瞑目の時がある

 

ヒロシマの後に

チェルノブイリの後に

人は、いかに

目覚めたろうか

 

その後に

目覚めがなければ

わたしたちに

何が残ったと

いうのだろうか

 

何も――と

それは言うのだろうか

 

そんなことが

あろうはずはない

 

闇を手に入れ

絶望を手に入れ

そして

それこそ ほんものの

スピリットを

裸の

救われて在る

わたしを

見たはずだ

 

ローソクさえ眩しすぎる

闇の中で

十三夜の月が

語っている

月の眺めの

ものがたりを

 

星々に語らせる

ものがたりがあり

闇が語る

ものがたりがある

 

そして人も

ものがたり

歌いさえする

 

梅の香があり

ダンコウバイの香がある

与えられた時がある

 

荒ぶるお前は

何を語り

いかなる知恵を

授けてくれるのか

 

偉大なるお前の前に

祈る他ない

わたしがここにいる

 

TVが点り

被災地の情報を

伝えている

福島第一原発の

映像が流れる

ウランの怒りを鎮める

放水は未だ始まらず

原発労働者の許容被ばく量を2.5倍に上げると

TVは伝えている

 

メルトダウン回避への

努力がつづいている

 

(19日、原発100`圏内の牛乳やホウレンソウや水道水から

ヨウ素131、セシウム137が食品の暫定規制値の

3倍から160倍検出――出荷制限、摂取制限令が出される

23日、広がり、いや増してゆく大気汚染、土壌汚染、海洋汚染が

報道されつづけている。土壌に通常の1600倍のセシウム137

東京都などの水道水に乳幼児の摂取基準を超えるヨウ素131

そして海洋に通常の1000倍を超えるヨウ素131

27日、炉心からは通常の冷却水の十万倍

1000ミリシーベルト/時の放射能を含んだ水が

タービン建屋のみならず屋外にも漏れ出していると……

炉心に水を注入すれば高濃度の放射能を含んだ水が漏れ出る

注入しなければ炉心の温度が上がってメルトダウンする……

シジフォスの神話的作業がつづいている)

 

(これが人類の未来図というのだろうか

文明の享受のためには甘受すべき危険なのだろうか

チェルノブイリ原発事故(1986年)後書かれ

脱原発の大きなうねりを産み出した『まだ間に合うのなら

1988年、忌野清志郎は核などいらねえ

放射能はいらねえ 牛乳を飲みてえと歌ったものだ

だが間に合わなかった

牛乳も飲めなくなってしまった)

 

再びいのちは蘇るのか

未だ眠らざるチェルノブイリの石棺

あの原発事故から25

原発廃炉への長い道のりがある

 

このいのちの危機において

人とは何かが問われている

わたしたちの文明が問われている

 

(だが人はそれをいのちの危機と感じる感性を

未だ持ち合わせているのだろうか)

 

核(核兵器や原発)との共存はありえるのかと問う

いのちは、生命の歴史は

それらの放射性物質を地中深く閉じ込めてこそ

生の花を咲かせることができてきたものなのだ

 

核を廃棄して、脱原発へと

自然のお前と共に

生きてゆく道が問われている

それこそいのちの叡智というもの

わたしたちは世界に対して

新しいモデルを提示できなくてはならない

 

(だがそれも失われたか)

 

いのちの声の聞こえ

魂の声の聞こえ

お前の声の聞こえる

 

いのちの輝き

スピリットに満ち満ちたお前がそこに

ここにいる

 

お前と共に生きてゆく道が

ここにある

 

いのちの豊かさの道

緑のシナリオ

魂の歓喜する物語

 

お前こそは

カミなのだ

お前をカミとして

わたしはここに在る

お前は

わたしの魂のふるさとなのだ

 

(そのふるさとももうないというのか)

 

お前の前に

額ずき

祈り

歌う

ニライカナイ(大いなる自然そのもののカミ)への賛歌を!

 

魂のふるさとであるニライカナイの在ってこそのわたしである

ニライカナイを殺し去ってはわたしたちは存続しようがない)

 

世界に魂を吹き込み

再びわたしたちの物語を取り戻す

 

NO NUKES ONE LOVE!

NO NUKES ONE LOVE!

 

(生き方において答えてゆくことが求められている

――再生の、新しい想像力にもとづく物語


昆虫が青虫から蛹となって羽化する

その蛹の中で

青虫は自分をとろとろに融かし去って

そこから、あの美しい羽根をもった蝶へと

変容を遂げてゆく

 

蛹から蝶へと

己を融かし去って変容してゆく

その変容を突き付けられている

 

大いなるいのちのつながりの中で

つながり合った大いなるいのちを生きる

 

今わたしたちは新しい物語を必要としている

その大いなるいのちの物語をこそ語り出そう

 

                      2011-3-17

                               おおえまさのり


                      



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