身近な植物の唄


菫 すみれ
スミレ科スミレ属
スミレ


「ツボスミレ」

3月23日
スミレ

菫ほど 小さき人に 生まれたし   夏目漱石(1916年没)

11月13日
スミレ
スミレは秋にも開花する


春の野に すみれ採みに来しわれそ 野をなつかしみ 一夜寝にける
山部赤人(生没年不詳)
(万葉集)
春の野にすみれを摘もうとやってきた私は
野原にいつまでもいたいと思い、一夜を明かした
(なつかしむ=親しみを感じ、近くに居たいと思う)


10月31日
スミレの果実

山路来て 何やらゆかし 菫草   松尾芭蕉(1694年没)






あと絶えて 浅茅茂れる庭の面に たれわけ入り てすみれ摘みてん
西行(1190年没) 山家集



近けれど 菫摘む野や とまりがけ   荒木田守武もりたけ(1549年没)



当帰たうきより あはれは塚の 菫草   松尾芭蕉(1694年没)



広き野の こはくもなしや 菫草   越人えつじん(1716年頃没)



ねぶたしと 馬には乗らぬ 菫草   山本荷兮かけい(1716年没)



傾城の 畠みたがる すみれかな   岩田凉菟りょうと(1717年没)
傾城(けいせい)=@絶世の美女 A遊女



京過ぎて 伏見に近し 菫草   尚白しょうはく(1722年没)



染たらで 山迄染る 菫哉   斯波園女そのめ(1726年没)



鼻紙の 間にしほるゝ すみれかな   斯波園女そのめ(1726年没)



春雨や されども笠に 花すみれ   斯波園女そのめ(1726年没)



馬の頬 押のけつむや 菫草   杉山杉風さんぷう(1732年没)



昼ばかり 日のさす洞の 菫哉   永田舟泉しゅうせん(1737年没)



一鍬や 折敷にのせし すみれ草   上島鬼貫おにづら(1738年没)
折敷=おしき。「へぎ」を折り曲げて縁とした角盆、または隅切り盆。



法度場の 垣より内は すみれ哉   志太野坡やば(1740年没)



むらさきの ゆかり勿論 すみれ草    沢露川ろせん(1743年没)



念仏を 夢に見て咲く 菫かな    沢露川ろせん(1743年没)



ほうろくの 土とる跡は 菫かな   岡田野水やすい(1743年没)



故郷の 野べ見にくればむかしわが 妹とすみれの 花咲にけり
賀茂真淵(1769年没)



地も雲に 染らぬはなき すみれ哉   加賀千代女ちよじょ(1775年没)



こつ拾ふ 人にしたしき 菫かな    与謝蕪村(1784年没)



すわりたる 舟をあがれば すみれ哉   与謝蕪村(1784年没)



春の水 すみれつばなを ぬらし行く   与謝蕪村(1784年没)



人ふまぬ 都わづかに 菫かな   大島蓼太りようた(1787年没)



なつかしや 焼野のすみれ 活かへる   加藤暁台ぎょうたい(1792年没)



菫つめば ちひさき春の こころかな   加藤暁台(1792年没)



打ちらす 酒千変す はなすみれ   加藤暁台ぎょうたい(1792年没)



青草に すみれの花をわきてつむ 何をゆかりの色に やあるらん
上田秋成(1809年没)



くれるまで 我もすみれの 上にゐて   夏目成美せいび(1816年没)



狼に 夜はふまれて はなすみれ   夏目成美せいび(1816年没)



今少し たしなくもがな 菫草   小林一茶(1828年没)
(たしなく=乏しく。少なく。)




菫咲 川をとび越す 美人哉   小林一茶(1828年没)



壁土に 丸め込まるゝ 菫哉   小林一茶(1828年没)



地車に おつぴしがれし 菫哉   小林一茶(1828年没)



飯乞ふと わが来しかども春の野に 菫摘みつつ 時を経にけり
大愚良寛(1831年没)



鍬の刃に 菫をのせて 子を連れて   桜井梅室ばいしつ(1852年没)



まどろめば 野をちかづけてまくらべに あるこゝちする すみれさわらび
大隈言道(1868年没)



鷹すゑて うづらなく野にきてみれば 菫つみたる ところなりけり
樋口一葉(1896年没)



金州城外所見                                
もののふの 屍かばね をさむる人もなし 菫花さく 春の山陰
正岡子規(1902年没)



君が手に つみし菫の百菫 花紫の 一たばねはや
正岡子規(1902年没)



玉づさの 君の使は紫の 菫の花を 持ちて来しかも
正岡子規(1902年没)



下草に 菫咲くなり 小松原   正岡子規(1902年没)



摘み残す 薺は花に あらはれる   正岡子規(1902年没)



庭の面をゆきかふ鶏のしだり尾に ふれてはうごく花すみれかな
落合直文(1903年没)



道のべに 色よくさけるすみれ草 明日は誰が子の 手にか触るらむ
落合直文(1903年没)



春の霞に誘はれて
おぼつかなくも咲きいでし
菫の花よ心あらば
ただよそながら告げよかし
汝れがやさしき色めでて
摘みてかざして帰りにし
少女や今日も来たりなば
「君をば恋ふる人あり」と


国木田独歩(1908年没)



みてづから ひと葉つみませこのすみれ 君おもひでの なさけこもれり
山川登美子(1909年没)



花さかば ふたりかざしにさして見む このすみれぐさ 色はうつらじ
山川登美子(1909年没)



去年の春 蝶を埋つづめし桃の根に 菫もえいでて花咲きにけり
山川登美子(1909年没)



書の中に はさみし菫にほひ失せぬ なさけかれにし こひ人に似て
大塚楠緒子くすおこ(1910年没)



桜ばな さきみちしより木のもとの すみれは人に ふまれつゝのみ
大塚楠緒子くすおこ(1910年没)



大和路や 紀の路へつヾく 菫草   夏目漱石(1916年没)



みささぎの 坪のうちなる石だたみ 石のすきまに 菫花さく
みささぎ=天皇または三后の墓。御陵                 
森鴎外(1922年没)



誰にやる ものとはなしに摘みためて 花束結ひぬ 菫蒲公英
服部躬治(1925年没)


菫越して 小さき風や 渡りけり
篠原温亭(1926年没)



星かげに すみれの露よ百合の香よ わがあけぼのの 道うつくしき
与謝野鉄幹(1935年没)



おくつきに ふさはむ色のましろきに さけよと思ふ 花すみれ草
与謝野鉄幹(1935年没)



わが歌は 芙蓉のしろき梅の清き 恋はすみれの 紫をこそ

与謝野鉄幹(1935年没)



燕燕 恋慕の人の投げたりし 菫の束を つと避けて飛ぶ
与謝野鉄幹(1935年没)



母にそひて はじめて菫わが摘みし 築地ついぢふりたり 岡崎の里
築地=板を芯にして、両側を土で塗り固めた塀
与謝野鉄幹(1935年没)



暖かき 日影をとめて来りつる 枯生のもとに 菫咲くはや
土田耕平(1940年没)



春さらば 菫を摘みておくらむと 思ひしものを 人はむなしき
土田耕平(1940年没)



菫咲く 春は夢殿日おもてを 石段いしきだの目に 乾く埴土はにつち
北原白秋(1942年没)



飛ぶが如きゆき過ぎし騎者見おくりて
おのゝきやめぬ野の菫かな

石槫千亦(1942年没)



むつれつつ 菫のいひぬ蝶のいひぬ 風はねがはじ 雨に幸さちあらむ
増田まさ子 (1946年没)



かたまって 薄き光の 菫かな   渡辺水巴(1946年没)



垣の根の 菫摘む子を いましめぬ   杉田久女(1946年没)



ふるさとの 野に遊ぶ娘や すみれ草   杉田久女(1946年没)



ふるさとの 野べの菫よ 一つ一つ ほゝゑみそめて 君を待つらむ
金子薫園(1951年没)



菫咲く み寺の庭の芝原に 春の夕日の かげ遠退きぬ
岡麓 (1951年没)



妹の はかにやさしき一本の すみれの花よ つまでやみにき
太田水穂(1955年没)


かたはらの すみれをほりて植えてやり まだあたらしき 妹のはか
太田水穂(1955年没)



国ごえの 春の山路に咲きまけて にほひし花の すみれも来たり
太田水穂(1955年没)



手にありし 菫の花の いつかなし
   松本たかし(1956年没)







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