ねこうどん

拙者の名前は「しまさこにゃん」、戦国時代「鬼の左近」と怖れられた近江の戦国武将「島左近」が猫に転生した成れの果てでごじゃる・・・。関ヶ原の戦の時、主君の石田三成公と共に東軍に破れ、討ち死にしたでごじゃるが、拙者は大和の柳生の生まれゆえ、先祖代々妖術の心得があったので、とっさに、近くに居たシマ猫に憑依したのでごじゃる。主君の三成公も一緒に白猫に憑依させたのでごじゃるが、どさくさで、離れ離れになってしまい、400年後にようやく彦根の佐和山城の山頂で再会したでごじゃる・・・・。

再会後は、しばらくみつにゃん公と彦根で一緒に暮らしておったのじゃが、思わぬきっかけで、油小路しゅ〜る之助社中の方々と出会い、しばらく京の都を見物するつもりで、上洛したのでごじゃるが、社中の方々との日々が事の他楽しゅ〜ごじゃっての〜・・・。そのまま、盟友のひこにゃん共々ず〜っと社中でお世話になっておるでごじゃる。

時々、彦根の「みつにゃん公」の事が心配になるでごじゃるが、なんとゆ〜ても、こちらの暮らしが楽しくて、なかなか帰る気になれんのでごじゃるよ!全く困ったもんじゃわい、う〜はっはっは!

拙者の好物は、何はともあれ「酒」でごじゃるからの〜、おだんごなどの甘いもの好きのひこにゃん殿とは全く好みが違うのでごじゃるが、この社中の亭主であらせられるこ〜じ殿も大の酒好きでごじゃっての〜、奥方のみゆき殿ともども、毎晩晩酌をされるのでごじゃるが、そのお相伴に預るのが何よりの楽しみでごじゃるよ!う〜はっはっは!

このように申し分ない楽しい毎日なのでごじゃるが、ひとつだけ困った事が起こったのでごじゃる。先だって、こ〜じ殿とみゆき殿が連れ立って、京都の西にある愛宕山の麓の「清滝」という集落に出かけられた時に、古い茶店の壁に「ねこうどんできます」と書かれたおったのじゃそうな・・・・。お〜〜〜思い出すだけでも恐ろしゅ〜ごじゃる。ブルブルブル。

さらに、その品書きのそばに「肉球あります」と、書かれていたとの事で、それを聞いた時には、ひこにゃん共々、その恐ろしさに、しばらく震えが止まらなかったでごじゃる。みゆき殿は、証拠品として写し絵を持ち帰ってきたでごじゃるがの〜・・・お〜〜!確かに、「ねこうどんできます」と書かれておったのでごじゃる。あ〜〜恐ろしや、恐ろしや!その隣に書かれておった「肉球あります」の品書きには「肉球」と「あります」の間に肉球の手形まで捺されておったのでごじゃる!

こ〜じ殿がおっしゃるには「ねこうどんは大体推測が付くんやけど、肉球が全くわからへん・・・・。やはり本物の猫の肉球を煮込んだり焼いたりしたもんかな〜?」と拙者の方をちら見しながらゆ〜のでごじゃる・・・・にゃ〜〜〜ご!

ねこうどん21

d181cc79.jpgそれ以来、何か事あるたびに、こ〜じ殿は「しまさこ〜!ねこうどんって〜やつを一度食ってみて〜な〜」とか言うし、拙者が酒をねだると、「しまさこ〜!そんなぜ〜たくを言うと、ねこうどん食わすぞ!」と、脅したりしたのでごじゃる。その度に拙者は恐怖心でぶるぶる震えたのでごじゃる・・・。

事情はひこにゃんも同じでごじゃるぞ!ひこにゃんが「こ〜おじしゃん!僕は最近お団子を食べてないにゃん!」と、団子をねだると「ふふふ、お団子よりも、肉球の方がうめ〜かもしれね〜ぞ!」と、脅されて、ぶるぶる震えて「いやだにゃん!怖いにゃん!」と泣き叫んだのでごじゃる・・・。

さすがにみゆき殿がこ〜おじ殿を諌めてくれたおかげで、こ〜おじ殿も、そのような悪ふざけはしなくなったでごじゃるがの〜・・・・しかし、その為に、拙者とひこにゃんの心の中に「虎と馬」が住むようになったのでごじゃるよ・・・・。

うどんが大好物のカモカモ殿が「今日も京都駅のホームでうどんを15杯食べてきただカモカモ」とか、言うたびに、拙者とひこにゃんは「ねこうどん」を思い出し、恐怖心でぶるぶる震えが出るようになったでごじゃる・・・・。これを「しんけいしょう」とゆ〜のだそ〜でごじゃるの〜・・・・。

そんなある日、拙者とひこにゃんは相談したのでごじゃる。「そろそろ彦根に戻った方がよいのではないか」、との〜。しかし、二人とも「彦根に帰っても、彦根にもうどんはあるでごじゃるからの〜・・・・。それに、社中での暮らしも捨て難し・・・。それで、二人で相談して、思い切って「ねこうどん」と「肉球」の正体を突き詰めてみてはど〜であろ〜、との結論に達したのでごじゃる・・・・。

「怖いものは正体が分からぬ故、なお怖い!」、と、昔から言われておるでごじゃるでの・・・。正体が分からぬ故に、心の中の「虎と馬」が騒ぐのでごじゃろ〜「がお〜〜!ひひひ〜〜ん!」との〜・・・・。

それで、拙者とひこにゃんはついに決心したのでごじゃる。我ら二匹で、その「ねこうどんと肉球」とやらの正体を突き詰める旅に出んことを・・・・。こ〜おじ殿の話では、その茶店は愛宕山の麓の清滝という集落にあったそ〜でごじゃるからの〜。我ら猫の足で、どれぐらいの時間がかかるか、分からんでごじゃるが、途中、飯屋のゴミ箱を漁り、桂川で魚を採り、野良猫のよ〜になりきって、旅を続ける覚悟をしたのでごじゃる。

心の中の「虎と馬」を退治するためにの〜・・・・。拙者どもは気高き武士でごじゃるが、猫一族の大敵「ねこうどんと肉球」を退治するまでは、「決して帰る家なし!」という気構えで、旅に出ることにしたのでごじゃる。

いよいよ、そのにっくきねこうどん退治に出立する日が来たので、拙者どもは、社中の方たちが眠っている間に、そ〜っと薄暗い街に出たのでごじゃる・・・。「天よ、われらに鰹節と白さかなを与えたまえ!」と、明けやらぬ天に向かって叫んだのでごじゃるよ・・・・う、う、う。

それを聞いたひこにゃんが「しましゃこ〜、それって、天よ我らに艱難辛苦を与えたまえ〜!って、いうのだにゃん」と、余計な事を言ってくれたのでごじゃるがの〜・・・・。

ねこうどん31

拙者とひこにゃんは、暗い五条通を西に進んだでごじゃる・・・・。まっすぐ行けば桂川という都の西を流れる大川に出られると、途中ブチの野良猫殿に教えてもらったのでごじゃる。拙者は試しに野良猫殿に「ねこうどん」の話をしてみたでごじゃる。するとその野良猫殿は「にゃ〜〜〜ご!そんな怖いものを捜しにいくやなんて、あんたらは、ほんに勇気のあるお猫はんやな〜・・・うちら、とてもやないけど、そんなもん、みと〜もないわ!」と、尻尾を下げて、あたふたと立ち去ったでごじゃる。

途中途中で何度も野良猫殿や、犬殿に道を尋ねながら、どんどん街道を西に進んだでごじゃる。みな一様に「あんたらは、勇気のあるお猫はんや。気張っておくれやす!」と激励をいただき、中には握り飯や魚の骨を餞別代わりにくれた猫殿もいたでごじゃるよ・・・・。「渡る世間は良い猫ばかり」でごじゃったの〜・・・。

夜が明けて、昼前には大きな橋に出たでごじゃるから、今度は川沿いの道を上流に向かって、歩いたでごじゃる・・・。途中、松尾大社という大きな神社がごじゃったでの〜、「武運長久」を祈願しに立ち寄ったら、境内になんと酒樽が山のように積まれていたでごじゃる。聞くところによると、この松尾の神様は酒造の神様とかで、大酒飲みの拙者にとっては、「神様のような神様」でごじゃったわい!わっはっはっは!

もし、こ〜おじ殿の社中を追い出された暁には、この松尾大社の用心棒猫でもしようかと思ったでごじゃる。何しろ、拙者は武士猫でごじゃるからの〜。腕には少々自信が有り申すでな・・・して、毎日好きな酒をたらふく飲んで・・・ふふふふ、考えただけでも喉がなるでごじゃるの〜く、く、く〜。

松尾の神様に少し酒をご馳走になって、ほろ酔いで、さらに川岸を歩いたでごじゃる。すると、大勢の物見遊山の者共が橋を渡っておっての〜。何やら「渡月橋」と橋の欄干に書かれておったでごじゃる。これが噂に聞く嵐山の「渡月橋」かと思い、拙者とひこにゃんは彦根を出て、この京の都に来て以来、あまり物見遊山をしてないことに気づいたでごじゃる。もし、社中に無事戻れたあかつきには、こ〜おじ殿とみゆき殿にお願いして、いろいろ名所旧跡を訪ねてみたいものよの〜とひこにゃんと話し合ったでごじゃる・・・・。

夕刻に渡月橋を渡り終えた途端に、ひこにゃんが、土産物屋の軒先からぴたりと動かなくなったでごじゃる。その店先では一人のおなごが「生八橋の試食はいかがかえ〜」と、通りすがりの客に声をかけていたのでごじゃる。

ひこにゃんは、そのおなごの足元にたたずみ、おなごを見上げながら「僕にも、それをくれだにゃん!」と話かけたのでごじゃる・・・・・。

おなごは最初びっくりしておったが、あんまりひこにゃんがじ〜っと動かないもので、ついに根負けして「そ〜かい、そんなにこれが欲しいのかい。それじゃ特別にひとつあげよ〜ね〜。可愛い〜白猫はん」と、生八橋の切れ端をひこにゃんにくれたのでごじゃる・・・・。

「にゃごもぐ、にゃごもぐ・・・」と吠えながら、ひこにゃんがそれを食べ終えると、またおなごを見上げて「もひとつおくれだにゃん!」と、言うもんで、おなごは又生八橋を一切れくれたのでごじゃる。

しかし、何度も何度もひこにゃんが「もひとつおくれだにゃん」と繰り返すもので、とうとう、そのおなごが怒ってしまい。「も〜え〜かげんにしよし!」とひこにゃんを叱ったのでごじゃる。しかし、甘いもののことになると、性格が豹変するひこにゃんは、「ふが〜!」と叫びながら、そのおなごの顔に飛びかかったのでごじゃるよ!

すわイチ大事!とばかり、拙者は、ひこにゃんをそのおなごの顔から引き剥がし、その場をさっさと立ち去ったのでごじゃるが・・・・。暗い道を歩きながら、つらつら考えるに、どこかで見たおなごである事に気づいたのでごじゃる・・・・。そして、そのおなごはとび助殿の女友達の「夕子」殿であったことを思いだしたのでごじゃる。

そ〜言えば、以前とび助殿が「嵐山には、おたべと夕子って〜、おいらの女友達が二人もいるんで〜!二人ともべっぴんだが、おいらに惚れているのは間違いね〜!」と、ニタニタ似顔絵を見せながら、自慢していたのを思い出したのでごじゃる。

引き返して事情を話し「一夜の宿を請う」ことも考えたのじゃが、右も左もわからぬ暗い道を歩いていた故、引き返すことも適わず、先を急いだのでごじゃる・・・・。

ねこうどん41

拙者とひこにゃんはその夜、嵯峨野の愛宕(おたぎ)念仏寺というところに一晩お世話になったでごじゃる。清滝の里への道筋を訪ねようと思うて、お寺の人に尋ねたら、「こんな夜に清滝の隧道を通ったら、隧道の幽霊に取り殺されてしまうで」と言われたでごじゃる。拙者は武士でごじゃるが、モノノケや妖怪は大嫌いでごじゃるでの〜・・・・。ひこにゃんが「怖いだにゃん!僕は幽霊が嫌いだにゃん」と、ぶるぶる震えておったら、お寺の住職殿出てこられて、「ほなら、そこのお猫はんたち、今晩はこのお寺に泊まりなはれ」と言ってくれたのでごじゃる。

「お〜、かたじけないでごじゃる」と二匹で住職殿にお辞儀をして、ご親切に甘えることにしたでごじゃる。住職殿は大変親切なお方での〜、元々は仏師であられたお方で、仏像の彫刻をしながら、そのお寺の住職も兼務されておるとのことであった。確かお名前は「こうちょう」とか申しておったの〜・・・・。ひこにゃんが「それなら、僕が勉強した学校の先生と同じ名前だにゃん!先生の事をみんなこうちょう先生と呼んでいただにゃん!」と言うたら、住職は「ほ、ほ、ほ、それは奇遇じゃの〜」と、可笑しそうに笑っておられたでごじゃる・・・・。(筆者註:有名な仏師で、愛宕念仏寺の住職であられた西村公朝元住職の事)

その晩は、拙者は酒を、そしてひこにゃんはアンパンをご馳走になったでごじゃる・・・・。

翌朝、住職殿に、二匹で丁寧にお礼を申し上げ、お寺を辞したのでごじゃる。お寺から出て少し歩いて行くと、昨夜聞いた「清滝の隧道」が、拙者とひこにゃんを飲み込もうとするかのように薄暗い口を開いて待っていたでごじゃる・・・。山越えをすれば、この隧道を通らずとも清滝の里に行けると聞いていたでごじゃるが、いくら幽霊が嫌いとはいえ、逃げて遠回りしては、武士の誇りが保てぬでごじゃるでの〜、嫌がるひこにゃんの首根っこを掴んで、勇猛果敢に隧道に向かったでごじゃる。

噂通り、隧道の中はひんやりとして、薄気味悪い気配が漂っていたでごじゃる。時折、天井から水滴が落ちてきて、首筋に落ちると、飛び上がるほどびっくりするのでごじゃるが、その恐怖心を我慢しながら、一歩一歩中に進んでいったでごじゃる・・・。ひこにゃんは拙者に首根っこをつかまれたまま、固く目を閉じていたでごじゃるが、隧道の半分ほど進んだところで、いきなり「ご〜〜〜!」という大きな音が、後ろからしたごじゃる!

拙者とひこにゃんは「ふぎゃ〜〜〜!」と叫びながら、一目散に出口の方に向かって走り出したでごじゃる。途中、少しだけ振り返って後ろをみたら、大きな影がこちらに向かって「ご〜〜〜!」と迫って来ていたでごじゃる!「ご〜〜〜!」という大音響と共に「こら〜〜〜!野良猫ども〜〜!とり殺してくれるわ〜〜〜!」と、モノノケの声が聞こえたような気がして、生きたここちがしなかったでごじゃるよ〜〜〜。

やっと、なんとかモノノケに追いつかれずに明るい出口に出た時、拙者とひこにゃんのそばを、「京都バス」と胴体に書かれた「乗り合い籠」が「ご〜〜〜!」という音を立てて通り過ぎて行ったのでごじゃるよ・・・・ふ〜〜〜。

ねこうどん51

拙者とひこにゃんは、清滝の里の乗り合い大型籠停留所広場から、坂道を下り、清滝川の橋を渡ったでごじゃる。そこにあった民家の庭先に繋がれた白い飼い犬殿に「ねこうどんとやらがこの里にあると聞いたが、ご存知ごじゃらんか?」と声を掛けたのでごじゃる。白犬殿は大きなあくびをしたアト「それなら、この先の古い食堂にあったちゅ〜話しを聞いたことがあるで〜」と教えてくれたのでごじゃる。

ついでに「貴公は、その〜、ねこうどんとやらを観たことがごじゃらんか?」と訪ねたでごじゃる。「昔、そんなもんがあったっちゅ〜話だけで、観たことはないな〜・・・・」「そ〜でごじゃるか、かたじけないでごじゃる」と、二匹でペコリと頭を下げて、その古い飯屋とやらに向かって急いだでごじゃる。

清滝の里は静かな里でごじゃっての〜、昼前なのに、通りには人っ子一人いなかったのでごじゃる。とことこ歩いて行ると、ひこにゃんが突然大きな声で「しましゃこ〜!僕、今気づいたんだけどにゃ〜、この村には人間もいないけど、猫もいないだにゃん!」と、叫んだでごじゃる。「う〜〜ん、確かに飼い猫も野良猫もいないでごじゃるの〜・・・」「ふぎゃ〜〜!きっとみ〜んな、ねこうどんの中に入れられて食べられたんだにゃん!ぶるぶる」と震えだしたのでごじゃる。

拙者もその鍋の中の様子を想像したら、さすがに恐怖で震えがきたのでごじゃる。またまた虎と鹿が暴れだしたのごじゃる・・・・。「僕はも〜ねこうどんを捜すのを諦めるだにゃん。想像通りだったら、あまりに怖いだにゃん。しくしく」と、とうとう泣き出したのでごじゃる。

「なんと言うことを・・・・。拙者も怖いでごじゃるが、このまま一生ねこうどんの幻に怯えながら生きるのもいやでごじゃる。このままでは、怖さがますます増すばかりでごじゃる!」「しくしく、でもこわいだにゃん・・・・」「か〜〜つ!ねことはいえ、貴公もかってはイイの殿様に仕えた武士猫でごじゃろう!恥ずかしいとは思わんのか!ここは踏ん張って、拙者についてまいれ!」と、盟友のひこにゃんを叱ったでごじゃるよ・・・。

「しくしく、ひっく・・・・わかっただにゃん。も〜わがままは言わないだにゃん。腹を決めて、しましゃこに付いていくだにゃん・・・」「お〜〜〜!それでこそ武士!よく決意したでごじゃるの〜・・・では、その飯屋に行くでごじゃるぞ!」

拙者とひこにゃんは、白犬殿に教えられた道順を辿って、とうとうその飯屋の前に到着したでごじゃる。飯屋の壁にはこ〜じ殿とみゆき殿が言われたとおりの「品書き」が書かれていたでごじゃる。「ねこうどんできます」「肉球あります」確かにそ〜書かれていたでごじゃる。

拙者とひこにゃんは、様子をさぐる為に、まず裏口に回ったでごじゃる。随分古い家屋で壁にはところどころ穴があいていたでごじゃる。それに、人の気配がまったくなく、まるで朽ち果てる寸前のような感じでごじゃった・・・。

われら二匹が裏口に回った時、ごみ籠とおぼしき朽ちかけた大きな汚れた籠があったでごじゃる。拙者たちは、しのび足でその籠に近付いたでごじゃる。心臓が張り裂けそうなぐらいドキドキと鳴り出したでごじゃる・・・。ひょっとして、そのバケツの中には、たくさんの猫の死体が・・・と思いながら、中を覗いたでごじゃる・・・・。

「ぎゃ〜〜〜!」ひこにゃんと拙者は同時に飛び上がって叫んだでごじゃる!なんと、そのバケツの中には、案の定、猫の死体が・・・・一匹!

と、思ったら、その猫の死体も拙者らの叫びに驚いたのか、「ぎゃ〜〜!」と叫びながらバケツから飛び出したでごじゃる。「ふぎゃ〜〜〜!死んだ猫が生き返っただにゃん!」「ひこにゃん!うろたえるでないぞ!こやつは生きた猫でごじゃる!」と、ひこにゃんを戒めたのでごじゃる。

「な、な、なんや、あんたら・・・一体どこの猫や・・・この辺りではみかけん猫やな〜・・・ほんまびっくりしたわ、人がせっかくバケツの中で居眠りしとったら、いきなり叫びだしたりして・・・」
「失礼つかまつったでごじゃる。我々は、京の都から参った旅の猫でごじゃる。元々は彦根の出でごじゃるがの〜・・・ひこにゃんは元イイ家の武士猫で、拙者は・・・」
「そんなことはど〜でもえ〜ねん!なんで、いきなり叫んだんや、ちゅ〜てき〜てんねん」
「お〜そ〜でごじゃったの〜。実は我らは、ある筋からこちらにねこうどんという名のうどんがあると聞いての〜・・・そのねこうどんとやらを見てみようと、旅をしてまいったのでごじゃる。して、この飯屋の壁に《ねこうどんあります》、と書かれておったのでの〜。どこから中に入ろうかと入り口を捜しておったのでごじゃるよ〜驚かして、ごめんでごじゃる。ぺこり」
「な〜んや、そ〜やったんかいな・・・。確かに、わしら猫にとっては怖い名前のうどんやけど、この飯屋は随分前につぶれたらしゅ〜ての〜、わしがこの里に住み着いた時には、も〜飯屋はやってなかった。里の長老に聞いても、誰も見たことがない、っちゅ〜ことやった。ただな・・・」

「ただ?」
「うん、長老の話では、ここの飯屋をやっとったんは、落合の里に住んでた双子のお婆さんやった、ちゅ〜のんは、聞いたことがあるんやけど・・・・」
「ほ〜落合の里というのは、ここからどれくらいのところにあるでごじゃるかの〜」
「清滝の川をず〜っと下ったところにある里やねん。川沿いにいけば、今日中には着けるんとちゃうかな〜・・・」
「そ〜でごじゃるか、かたじけないでごじゃる。して、そのお婆さんの名前は聞いたことがごじゃらんかの〜・・・」
「う〜〜ん、聞いたことがあるんやが、確か、動物の名前だったような・・・ツル、カメ、タツ・・・ちゃうな〜・・・そ〜一人は確かわしらの親戚のような奴やったにゃ〜・・」
「まさかとは思うが、トラでごじゃるかの〜」

「お〜〜そ〜、トラやったわ!あんた賢いにゃ〜!さすがおサムライはんや!も〜一人はウシ・・・ちゅうな〜・・・・え〜っと・・ウシに似たやつで、も〜少〜〜し首がなご〜て・・・」
「ひ、ひょっとして、まさかとは思うが・・・・ウマではごじゃらんかの〜」と拙者が言うと、そのノラ猫殿は「お〜〜〜〜!」と叫んだでごじゃる!

「ふぎゃ〜〜〜!ここにも虎と馬でいただにゃん!」
とひこにゃんが泣きそうになったところで、そのノラ殿は
「いや、ちゃうがな!そんなアホな!トラとウマやなんて、いくら小説でもそれはでき過ぎやで・・・思い出した、確かキリンや!」
「ガク!・・・その名前の方ががよっぽど出来すぎじゃとと思うでごじゃるが・・・ま〜、名前まで教えていただき、かたじけないでごじゃる。それでは、先を急ぐゆえ、これで失礼つかまるでごじゃる。ぺこり」

我らは、元来た道を引き返し、橋を渡って、川沿いの道に入り、トラ婆さんとキリン婆さんの住む落合の里に向かったのでごじゃる・・・。

ねこうどん6

落合の里への道は、少し進むと河原を歩くような道となったでごじゃる・・・・。河原にはごろごとを大きな石が転がっており、我らは、大石の間をすり抜けたり、石を上り超えて進まねばならなかったでごじゃる。これは小さな猫である我らには事の他、身に応えたでごじゃった。道をふさぐ石を避けるために、時には川の浅瀬にじゃぶじゃぶ入って、進まねばならなかったでごじゃる。そのせいで、体は濡れ、山の秋の風が身に染みて、ぶるぶる震えるほど寒かったでごじゃる。

しばらく河原の道を歩いているうちに、はだしの我らの足は、とがった石で切れた傷口から血が流れだし、白猫のひこにゃんの足は赤い血で染まってしまったでごじゃるよ。なんと痛々しい姿で、まるで赤い長靴を履いた白猫のようでごじゃったの〜・・・う、う、う。

それに、問題はも〜ひとつごじゃった。朝出かけに愛宕念仏寺の「こうちょう住職殿」が持たせて下さったアンパンを、風呂敷に包んで背負って歩いていたでごじゃるが、そのアンパンが水に濡れ、麩のようになって中の餡子も流れてしまったでごじゃる。よって、食べるものもなく、腹が減って、歩く体力がなくなりそうでごじゃった。

拙者は、若い時から鍛えておったでごじゃるから、まだ体力には自信があったでごじゃるが、彦根のお城暮らしが長かったひこにゃんは、事の他体力を消耗したようでごじゃった。見る見る歩く速さが遅くなっていくひこにゃんを見かねて、拙者は得意の「尻尾振り漁法」で魚を採ることを思いついたでごじゃる。拙者の尻尾はこれでなかなかキュートな尻尾でごじゃるからの、その尻尾の先を水に入れて、ふりふりしておると、魚が「???」と寄ってくるのでごじゃる。拙者はシマ猫でごじゃるでの、多分ミミズと間違えるのでごじゃろう。それで、寄ってきたサカナをさっと手で掴むのでごじゃる。

このワザでたちまち一尾のサカナを採った拙者は、「ひこにゃん!腹が減ったでごじゃろう。これを食べるがよいぞ」とひこにゃんにサカナを一尾差し出したでごじゃる。するとひこにゃんは「僕は生ザカナは嫌いだにゃん!」と驚く事をほざいたでごじゃる!。「な、なんと勿体無いことを、貴公は猫ではごじゃらんか!その猫が生ザカナが嫌いとは、はたまた面妖なことを!」「僕は、エビフライは大好きだけど、生ザカナは食べないにゃん!」と、申すのでごじゃった・・・・。この時ばかりは、盟友のひこにゃんとはいえ、さすがに腹がたったでごじゃる。

「そんな我がままを言うのなら、喰わんでもよいわ。しかしの〜、ひこにゃんが食べぬのに、自分だけ食べては、拙者も武士の端くれ、拙者も我慢するでごじゃる」「う、う、うえ〜〜〜ん!そんなこと言わずに、しましゃこは遠慮なく食べてくれだにゃん!僕は好き嫌いが激しいから食べられないだにゃん!僕のために我慢することないだにゃん!」とひこにゃんは泣き出したのでごじゃる。

「いや!そ〜ゆ〜わけにはいかんでごじゃる!拙者も我慢するでごじゃる!ささ、こんなところで言い争いをしておっては、日没までに落合の里に着けんでごじゃる。先を急ごうでごじゃる!」と、二人で又歩き出したでごじゃる・・・。

「ひこにゃん、ちょっとしょんべんがしたくなったゆえ、先に行っておいてくれでごじゃる」とひこにゃんを先に歩かせ、拙者は石の影に隠れて、先ほどの生ザカナをさっさと食べたでごじゃるよ、うふふふふ。あの魚はなかなか美味(うも)〜ごじゃったの〜。何しろ、二人とも共倒れでは、元も子もないでの〜。その上、ひこにゃんには恩を売っておく、策略家として名を馳せた拙者の面目躍如でごじゃる!

半日ほど歩いた時点で、とうとう疲労と空腹と足の痛みで動けなくなったひこにゃんを背負って、拙者は河原の道を黙々と歩いたでごじゃる。もし、サカナを食べてなかったら、我らは共倒れになっておったでごじゃる・・・・。

日がとっぷり暮れかかった頃、ようやく人家がまばらに見える里らしきところにたどり着いたでごじゃる。河原の道が普通の道に変わったところに「落合」という看板が見えた時は、拙者もさすがにほっとして、力が抜けそうになったでごじゃるよ・・・。

ねこうどん71

暗い里の夜道をひこにゃんを背負って、とぼとぼ人家に向かって歩いていくと、いきなり、山側のガケからか猛烈なスピードで飛び出してきたものでいたでごじゃった。こちらが避ける間もなく、ガシーンとぶつかって、拙者は目から火の玉が30個ほども飛び出したでごじゃるよ・・・。

ひこにゃんは拙者の背中から投げ出されて、道の上をころころころがっていったでごじゃる。目から出た火の玉の一瞬の明かりで、その飛び出してきたものの正体を拙者は見逃さなかったでごじゃる。このあたりが戦で培った動態視力の凄さでごじゃるかの〜・・・ふふふ。

そやつは、少し小ぶりでごじゃったが、確かに「イノシシ」殿でごじゃった!そのイノシシ殿は振り向きざまに、もう一度こちらに向かって突進してきたでごじゃる。拙者は、思わず、背中を丸めて、尻尾を立て「ふにゃ〜〜ご〜〜!」と大音声で叫んだでごじゃる。これが我ら猫族の戦闘体制でごじゃるからの〜。しかし、反撃体制もそこまで、何せ疲労と空腹で、イノシシ殿と闘う体力も気力も失っていたでごじゃる。

拙者は、ものの見事にイノシシ殿の突進をガツーンと受けて、ひゅ〜〜っと、再び遠くに跳ね飛ばされたでごじゃる。飛ばされながら、拙者は観念したでごじゃる・・・。体力もつき、疲労困憊の極みで、他の生き物に憑依もできず、社中の仲間やこ〜じ殿みゆき殿、それに彦根におられる「いしだみつにゃん公」に「さらばでごじゃる!。拙者しまさこにゃんの命も、もはやこれまででごじゃる〜〜!」と、心の中でお別れをしたのでごじゃる・・・。

数間飛ばされて、地面に落ちた時、拙者は気を失い、そのまま猫の命を閉じ・・・。

る、はずでごじゃったが、拙者は明るい部屋のようなところで目を覚ましたのでごじゃる。目の前には大きなひこにゃんの顔がにこにこしながら拙者を見つめていたでごじゃる。「お〜〜!ひこにゃんも拙者と一緒に極楽に来ていたのでごじゃるか!」と拙者は叫んだのでごじゃる。「違うだにゃん!ここは極楽じゃないにゃん!ここはまだ落合の里の中だにゃん!」と、思わぬことを言うのでごじゃった・・・。

「むむむ、なんと、確か、暗闇でイノシシ殿の突進を食らって、数間跳ね飛ばされたでごじゃるが、まだ生きておるとな・・・」と、拙者が訝っておると、「お〜〜、シマ猫はんもやっと目が覚めたよ〜やな〜・・・よかったの〜」とお婆さんの声が後ろから聞こえたのでごじゃる。拙者が振り返ると、そこには同じ顔をした腰の曲がったお婆さんが二人、にこにこしながら拙者を見つめていたのでごじゃる・・・・。

拙者は、目をパチパチしながら、しばらくふたりのお婆さんの顔を交互に見たでごじゃる。「うほほほ、何をそんなに驚いておるんや・・・このババたちがそんなに珍しいのかいな・・・。なかなか勇猛なツラ構えをしとるが、愛嬌もあるがな〜」と、おばあさんは一緒に同じ事を言ったでごじゃる。

ひこにゃんの話によると、その二人のお婆さんが、夜道に倒れていた拙者とひこにゃんを連れて、この家に連れてきたのだそうでごじゃった。お婆さんたちは、われらを拾ってくれた上に、キズの手当てをしてくれたのだそうでごじゃる。ひこにゃんの足には白いホータイ、拙者の顔にも白いホータイが巻かれていたのでごじゃった。一晩眠って、ひこにゃんが先に目を覚まし、拙者がそのアトに目を覚ましたのだそうでごじゃった。

「真にかたじけない。お二人は命の恩人でごじゃる。このご恩一生忘れないでごじゃる」とひこにゃんと二匹で正座して、頭を下げたでごじゃる。「お〜〜!なかなか礼儀正しいねこちゃんやな〜・・・・」と誉めてくれたでごじゃる・・・。「して、大恩人のお名前をお聞かせ願いたいでごじゃる・・・」と、われらはも一度こうべを垂れたでごじゃる。すると一方のおばあさんが「ははは、そ〜かいな、うちの名はトラ」「うちはキリや」と応えたのでごじゃる!

一瞬、拙者とひこにゃんは絶句したのでごじゃるが、かろうじて拙者が「ひ、ひょっとして、清滝で飯屋を営んでいた方々ではごじゃらんかの〜・・・しかし、清滝の里ではトラ殿とキリン殿と聞いたでごじゃるが・・・」と質問したのでごじゃる。「おやおや、よ〜ご存知で・・・。でも、キリンっちゅ〜のは聞き間違えやな〜、そんな名前の人はい〜ひんやろ。うほほほ」「うちらは、親から愛宕参りのお人たちの為の、お山の麓の茶店を引き継いで、10年ほど前まで二人で切り盛りしてたことがあるねん」と交互に応えてくれたのでごじゃる。

それを聞きながら、そばにいたひこにゃんがにわかに緊張するのを感じながら、拙者は思い切って「ねこうどん」のことを聞いてみたでごじゃる。すると、「お〜懐かしいの〜!ねこうどんかいな・・・あれはよ〜売れたな〜」「そやそや、今日はえ〜お猫はんが二匹も来てくれたさかい、久々にねこうどんでも作ってみようやないか、の〜トラね〜さん」「お〜、それはえ〜事を思いついたの〜キリちゃん。そ〜じゃ、こんなイキのえ〜猫さんが二匹もいるんやさかい、久々にねこうどんを作ってみようか・・・うっはっはっは!」

その二人の言葉にわれらの心の中の「虎と馬」が「がお〜!ひひひ〜ん!」と大暴れに暴れ出したのごじゃる!ひこにゃんはぶるぶる音をたてて震えるし、拙者も歯がカタカタなるほど恐しくなってきたのでごじゃる・・・・。

ねこうどん81

「ところであんたら腹へったやろ?うちらは、ねこうどん作る準備するさかいに、それまでの《ムシやしない》しときや。白猫ちゃんの好物はなんや?」とトラ婆さんがひこにゃんに向かって聞くと、ひこにゃんは無邪気に「僕は串だんごが大好きだにゃん!」と応えたのでごじゃる・・・。「お〜そ〜か、串だんごが好きなんか。でも生憎、串だんごはないさかいに、草餅でもえ〜か?」「草餅も大好きだにゃん!」

「ほな、そちらのシマ猫はんの好物はなんや?」「・・・・むむむむ、拙者は、やっぱり酒でごじゃるかの〜」と、拙者も正直に応えたでごじゃる。「ほ〜〜!なかなか豪快な猫ちゃんやな〜。朝から酒かいな!おほほほ」と、キリ婆さんがにこやかに笑ったのでごじゃる。

お婆さんたちが、ひこにゃんの前に草餅を、拙者の前に湯飲み茶碗の酒とオニギリを置いて台所に立ち去ったアト、拙者はひこにゃんに忠告したのでごじゃる。「ひこにゃん、その草餅を食べてはいかんでごじゃる!これはきっと、我らを少しでも太らせておこうという、婆さんらの計略でごじゃるじょ!きっと眠り薬でも入っておるに違いないでごじゃる・・・。」

「それに婆さんたちが言ってた、《ムシヤシナイ》とは、一体なんの事でごじゃるかの〜・・・・。」と、拙者が腕を組んで考えていた隙に、「ゴク!お腹がすいて、倒れそうだにゃん!僕は食べるだにゃん!これで殺されても構わないだにゃん!」と、拙者の制止を振り切って、ひこにゃんは草餅をもぐもぐ食べてしまったのでごじゃる・・・・。

あっという間に、三つあった草餅を全部平らげたひこにゃんを、拙者はじっとみつめて観察したでごじゃるが、ひこにゃんは「おいしかったにゃん!もっと食べたいだにゃん!」と平気な顔をして、自分の口の周りをぺろぺろ舐めるばかりでごじゃった・・・。

すると今度は「ぐ〜〜〜!」と、拙者の腹の虫が大きな声で鳴いたのでごじゃる。「お〜〜!そうでごじゃったか、拙者の腹の虫が鳴いたのでわかったでごじゃる。《ムシヤシナイ》とは《虫を養う》つまり、腹の虫を静かにさせる、という意味でごじゃったのか・・・・。ならば、拙者も、思い切って虫養いするでごじゅるじょ!ぱくぱく、ぐびぐび」と、握り飯と酒を交互に喰らったのでごじゃる。「いざとなったら、この背中の刀で婆さんらを成敗してくれるわい!」と、腹が据わったのでごじゃる。(作者注:現在でも京都弁で「虫養い」という言葉は使われていますd(^o^)b)

朝酒を一気に飲んだので、たちまち拙者は酔いがまわったのでごじゃるが、握り飯を食べたおかげで、元気がもりもり戻ってきたのでごじゃる。「ひこにゃん、心配するでないぞ!婆さんらがもし我らを襲ってきたら、その時は、命にかけても、ひこにゃんを守ってやるでごじゃるよ。大船に乗ったつもりでおるがよいじょ!うっはっはっは!」と、酒の酔いもあって、段々拙者の腹は据わってきたのでごじゃる。

しばらくすると「しましゃこ〜!な〜んか、いい匂いがしてきただにゃん!くんくん!とってもいい匂いだにゃん!」と言いながら、ひこにゃんが、ふらふらと台所の方に歩き出したのでごじゃる。「お〜〜!そ〜言われれば、確かに!しかし、なんとも甘美な匂いでごじゃるの〜・・・」と、拙者もひこにゃんのアトを追ったのでごじゃる。台所に近付くと、その方向から、「ペタペタ、トントン」という音が聞こえてきたのでごじゃる。

畳の上を歩きながら、ひこにゃんは段々夢遊病者のような足取りに、なっていったのでごじゃる。その時、拙者はその匂いの正体がわかったのでごじゃる。とろり〜んとした目のひこにゃんに思わず「ひこにゃん!この匂いは!」と言葉をかけた瞬間、ひこにゃんがガラリと台所へ続く障子を開けたのでごじゃった・・・・。

そこには、かまどの上で、ぐつぐつ煮えたぎる湯釜の前に立った、カネ柄杓を持ったトラ婆さんと、大きな包丁を持ったキリ婆さんが、ニタニタ笑いながらこちら振り返って我らを見つめていたのでごじゃる・・・。

ねこうどん9

その光景を見た拙者とひこにゃんは、しばらくそのまま固まってしまったでごじゃる!しかし、すぐに我に返った拙者は、「ひこにゃん!いじゃとなったら、ひこにゃんはキリ婆さんの顔に飛びかかり、得意のかきむしりで婆さんを懲らしめるでごじゃる!拙者は、トラ婆さんに飛び掛り、この背中の刀で成敗してくれるでごじゃる」と、ひこにゃんの耳元で囁いたのでごじゃる。

「ムシ養いは済んだのかえ?ほいじゃ〜、いよいよ、あんたらにもねこうどんを手伝って貰おうかね。さ〜こっちへおいで!」と両方のお婆さんが我らに近付いてきたのでごじゃる・・・。

「ひえ〜〜!」我らは同時に叫び、そして「ひこにゃん!今じゃ!飛び掛れ〜〜!ふにゃ〜〜〜お!」と、ひこにゃんに声をかけつつ、拙者はトラ婆さんに向こうて跳躍し、背中の刀に手をかけたのでごじゃる!

ところが・・・。相手の方が一枚も二枚の上テでごじゃった・・・。さすが、厳しい山中で暮してきたおなご、婆さんとは故、身のこなしがことの他早く、手に持ったカナ柄杓で「ポコン!」と頭を殴られたのでごじゃる・・・。

空中で、「ポコン!」とカネ柄杓で頭を叩かれた拙者は、そのまま土間の地面に落ちてしまったのでごじゃる。そして、「あんたは性悪なカオをしてなはるが、根も性悪な猫かいな!」とトラ婆さんに叱られながら、柱に紐でくくりつけられたのでごじゃった。

ひこにゃんは怯えて、最初からず〜っと固まったままのようでごじゃったが・・・。


一生の不覚で、拙者は囚われの身となったのでごじゃった・・・・。「この白猫ちゃんは、おとなしいよい子やけど、あんたはなんで、うちに飛びかかろうとしたんや?」と、ひこにゃんを指で指しながら、拙者に詰め寄ったのでごじゃる。そばでひこにゃんは恐怖のあまり、ぶるぶる震えていたのでごじゃるが・・・。

「ふん!婆さんらは、拙者とひこにゃんをその大釜に入れて、猫の出汁をとるつもりでごじゃろう!我らはねこうどんとはどういうものか調べにきたのでごじゃるが、多分、猫を熱湯に入れて出汁をとったうどんのことであろう、と思おておる。あまりのおぞましさに、心の中に虎と馬が住み着くようになり、それを払拭する為に、ねこうどんの正体を暴く旅にでたのでごじゃるよ!こ〜なったら、拙者も武士の端くれ、ひこにゃんともども、うどんの出汁でもなんでも好きにするがよかろう!」

と二人のお婆さんを交互に睨みつけながら、ここまでの経緯を説明したのでごじゃる・・・。いつものようにそれを聞いたひこにゃんが「うわ〜〜〜ん!だにゃん!」と、泣き出したのは言わずもがなでごじゃるがの〜・・・。

お婆さんたちは、口をぽか〜んと開けたまましばらく拙者の話を聞いておったが、やがて二人とも大きな口をあけて「わっはっはっはっは!」と笑い出したのでごじゃる。「ね、ねこでうどんの出汁を・・・・あ〜〜〜はははは、も〜腹が痛くてたまらんわ!」とトラ婆さんは笑い転げながら涙を流し、同じくキリ婆さんも「そ、そ、そんなうどんがあったら、うちも食べて・・はははは・・・食べてみたい!」と土間を転がりながら笑い続けるのでごじゃった・・・。

「????」この二人のお婆さんたちが、何故このように笑い転げるのか、さっぱりわからず、拙者とひこにゃんはしばらく、二人の様子を見つめていたのでごじゃる。

やがて、ようやく笑いが納まったのか、トラ婆さんはまだ涙を流しながら、拙者を柱にくくりつけている紐を解いてくれたのでごじゃった。

「あ〜、おかしい猫ちゃんたちやね〜、ほんまに!」とトラ婆さんは拙者の頭をなでてくれたのでごじゃるが、内心拙者は少しビクビクしたのでごじゃった。何故なら、拙者の後ろ頭は普段はカブトに隠れておるが、カブトを脱ぐと、実は後頭部は刈り上げになっておっての〜・・・・。みゆき殿によると「あら?しまさこの後頭部は随分かわゆいんだね〜」と、言われておるのでごじゃる。みゆき殿は褒めてくださるのじゃが、拙者は大変恥ずかしいのでごじゃる・・・。

「ねこうどんちゅ〜のんはな〜・・・。ネコの頭や体で出汁をとったうどんやの〜て、うどんの粉にほんの少しだけ「マタタビ」の実を粉にしたもんを混ぜた麺やねん。茶店をやっとった頃、「新しい里の名物」にしようと、死んだおと〜はんが考えはったんや。ある晩、麺打ちをしたマタタビ麺を袋に詰めて土間に置いておいたら、うちで飼ってた猫のタマが、マタタビの匂いに寄せ付けられはって、一晩中、麺袋の上でウロウロしとったらしいわ。翌朝、それに気づいたおと〜はんが、麺を取り出してみると、なんと微妙な弾力のある麺に仕上がっておったんそ〜や・・・。」とトラ婆さんがねこうどんについて語り始めたのでごじゃる・・・・。

今度はキリ婆さんが話しのアトを継いで、「コシがあって、尚且つ弾力もあってな〜・・・。おと〜はんは、これは猫の足の肉球で一晩中踏まれたせいで麺が変化したんやと思うて、何回もタマに踏ませた麺を作ってみたんやそ〜な。それがねこうどんの始まりや・・・。その茶店の新メニューにして出したら、たちまち大評判になってな〜、その頃は茶店も大繁盛で・・・。うちらをキョーダイまで行かせられたんは、あのねこうどんのおかげや、て、よ〜、おと〜はんがゆ〜たはったわ・・・・」

「・・・キョ、キョーダイとは、あの都にある京都帝国大学のことでごじゃるかの?」「うんにゃ、京都大工専門学校のことや。うちらはそこの女性卒業生の1号と2号なんやで・・・」

「ガクッ!だにゃん!」「ガクッ!でごじゃる!」

「うちらの友達に焼き芋屋の子が一人おってな、その子は焼き芋のおかげで、京都女子大を卒業できたんや。ほいで、その子が卒業して売り出したんが「大学芋」や!」

「今度は、マユに唾をつけるだにゃん!」「真に、しゃれのきついオババ殿でごじゃるの〜・・・」

ねこうどん101

「うちの茶店で、ねこうどんを売り出した時には、「マタタビ」の匂いに引き寄せらた清滝中の猫が店のまわりに寄ってきてな〜、そりゃも〜にゃ〜にゃ〜煩かったもんや・・・。マタタビの混ざった麺をさらに、タマの肉球で一晩踏ませて仕上げた麺と、鰹節で摂った出汁で、まさに猫の好きなうどんでな。猫に係わりが深かったさかいねこうどんじゃ・・・決して猫をぐつぐつ煮て作ったようなうどんではないぞ、正反対に猫の大好きなうどんや!うっほっほっほ」

お婆さんたちは、そう言うと、また笑いが込み上げてきたのか、再び二人で大笑いを始めたのでごじゃる。拙者とひこにゃんは、ちょっと恥ずかしくなってきたのでごじゃるが、心の中の虎と馬の姿が段々薄くなっていったのでごじゃる。やがて、「がお〜、ひひ〜ん」の泣き声もぱたりと聞こえなくなり、心の中からすっかり姿を消してしまったのでごじゃる。

ひこにゃんの顔を見ると、ひこにゃんはニコニコ顔で「ははは!だにゃん!」と笑っているし、拙者も腹の底から笑いがこみあげてきて、お婆さんたちと一緒になって「わっはっはっは!」と大笑いしたのでごじゃる。

みんなで、ひとしきり笑ったアト、ひこにゃんが「ねこうどんのことはわかったにゃん!僕はも〜ねこうどんが怖くないにゃん!でも、まだ肉球のことが残っているにゃん!肉球って〜一体なんだにゃん?」とお婆さん達に質問したのでごじゃる。

「あ〜、それはゆりねのことじゃ。この近辺の里には昔からゆりねがたくさん採れてな〜。いろんな料理に使える貴重な野菜なんや。形が猫の肉球に似ているさかい、この近所では「肉球」と呼ぶ人もおってな〜。ねこうどんが好評やったさかい、ゆりねの事をおと〜はんが、猫つながりで「肉球もあります」としゃれて、看板に書いたんや。

うちらは潰して、よく三食団子にして食べたもんや・・・。」と、お婆さんが質問に応えたので、ひこにゃんはすかさず「僕も三食団子が食べたいだにゃん!」反応したのでごじゃる。

「そ〜かい、白猫ちゃんは団子がよっぽど好きなんやな〜。ほなねこうどんと一緒に作ってあげるさかい、うどん作るのを手伝ってや」とトラ婆さんに言われて「はい!だにゃん!」と元気よく応えたのでごじゃった。

お婆さんたちが、白い粉を練って、ひと塊にしたものに手ぬぐいを載せて、拙者とひこにゃんは、その上で二匹で意気揚々と行進したのでごじゃる。心の中の虎と馬の姿は消えうせたのでごじゃるが、我らにとって、このねこうどんの正体であるマタタビ麺の上を歩いた時こそ、正にねこうどんの戦いに勝利した瞬間のような気がしたのでごじゃる。

よって、拙者とひこにゃんは、まるで凱旋する武者のように、足を高くあげて、何度も何度もねこうどんの麺を踏みしめたのでごじゃる。ねこうどん退治を思いつき、長い長い旅を経て、苦しい思いもし、ここに至ったこと思えば、自然と拙者の目から涙が零れ落ちたのでごじゃった・・・。しかし、拙者は武士故、ひこにゃんには決して涙をみせないようにしたのじゃがな・・・・(出来ればインディージョーンズの主題曲を頭の中で思い出しながら、この時の二匹の姿をイメージしていただければ幸いです。筆者)

その間にお婆さんたちはうどんの出汁とゆりねの三色団子を作ってくれたのでごじゃる。小一時間ほど経った頃、「ま〜今回は一晩っちゅ〜わけにもいかんさかい、も〜そのあたりでえ〜やろ」と、やっとお婆さんたちの許可が降りのでごじゃる。そしてキリ婆さんがまな板の上で、塊をトントンと細い麺の形に切ったのでごじゃる。

お婆さんたちの作ってくれた、ねこうどんはそれはそれは美味でごじゃった。ほのかに麺から漂うマタタビの芳香としこしこした弾力、たっぷり鰹からとった出汁。拙者が今まで食べたどのうどんよりもおいしゅうごじゃった・・・。ひこにゃんと拙者が「ふ〜ふ〜」しながら一心不乱に麺をすすっている時でごじゃった・・・・。

いきなり外から「ばたばたばた!」という羽音と「カモカモカモ〜〜!」というカモカモ殿の鳴き声が聞こえてきたのでごじゃった!一体、社中のカモカモ殿がど〜してこのような山深い里にいきなり現れたのか・・・拙者とひこにゃんは、箸を止めて、お互いの顔を見つめあったのでごじゃった。

ねこうどん111

ひこにゃんと拙者はすすりかけて、ぶらぶらしていたうどんを「ちゅる!」と吸い込むと同時に、「かもかも殿〜〜!」と叫びながら、戸口に向かったでごじゃる。引き戸を開けると、そこには確かに社中の仲間の「かもかも殿」が地面の上で仰向けになって、ばたばたしていたのでごじゃる・・・・。

「かもかも殿、どうされたでごじゃるか?こんな山里に突然現れて!」と言いながら抱き起こすと、かもかも殿は、大きく息を

吸い込んで、弱弱しく話しだしのでごじゃる。
「うどんのえ〜匂いがしたんで、釣られてついつい、ここまで来てしまっただカモカモ・・・。おいらはJRのマスコットキャラだから、JRの架線から発する電磁波をエネルギー源にしているだカモカモ・・・。だからJRの線路から100メートル以上離れて5分以上過ぎると、段々エネルギーが消耗して、動けなるだカモカモ・・・」

「それは、よ〜知っておるでごじゃるじょ。かもかも殿が社中で暮していけるのも、嵯峨野線の丹波駅の近くに社中のマンションがあるからじゃと、いつもこ〜おじ殿から聞かされているでごじゃる。それが何ゆえにこのようなところまで?」
「実は、嵯峨野線沿いに、ひこにゃんとしましゃこにゃんを捜していたのだカモカモ・・・。線路沿いに飛んでて、保津峡駅の近くまで来た時、えらくうまそ〜なうどんの匂いがしてきたのだカモカモ。おいらは、うどんが大好物だから、ついついそのうどんの匂いに釣られて、ふらふらここまで飛んできたのだカモカモ・・・・。で、架線から離れたものだから、エネルギーが消耗して、動けなくなったがカモカモ・・・」

「それは、大変だにゃん!あと何分くらい持つだにゃん?」
「せいぜい頑張っても、アト1時間もすれば、命が危ないだカモカモ・・・・ふ〜」
「それは一大事でごじゃる!では、早速、国鉄の線路のそばまでかもかも殿を連れていかねばならないでごじゃる!お婆さん!ここから一番近い国鉄の線路はどこでごじゃるか?」

「やっぱり、嵯峨野線やろな〜・・・でも、ここから行くと、途中に保津川があるさかい・・・そこをど〜やって渡るか・・・トロッコ保津峡駅にかかる橋までちょっと距離があるさかい、随分遠回りになわなな〜」
「あい、わかったでごじゃる!それでは早速われらは、保津川に向かうでごじゃる!お婆さん方、此度は大変お世話になったでごじゃる。おかげで我らの虎と馬は見事に成敗できたでごじゃる。このご恩は一生わすれないでごじゃる。又、機会があれば、ねこうどんを食べにきたいと思うので、その時はよろしくでごじゃる。では、ごめん!」「ごめん、だにゃん!」

「あ〜そんな丁寧な挨拶はよいから、その友達のカモノハシを早く連れてっておやり。あんたら、きっと又おいでや!待ってるさかいな〜」と二人のお婆さんはわれらを快く送り出してくれたのでごじゃる・・・。

「かもかも殿、大丈夫でごじゃるか!気をしっかり持たれよ!きっと拙者とひこにゃんでかもかも殿を国鉄の線路まで連れてってやるでごじゃるからの〜!」
「かもかも〜頑張れ〜、だにゃん!」と、拙者とひこにゃんは、かもかも殿を励ましながら、めったに人も車も通らぬ道路から離れて、川に降りる急斜面の崖を駆け降りたのでごじゃる。

崖には、うっそうと木が生えており、かもかも殿を肩に乗せた拙者とひこにゃんは、たびたび崖を転げそうになったのでごじゃる・・・・。

やっとこさ、川べりまで転げるように降り立ったのでごじゃるが、かもかも殿はも〜すでに青息と息の状態で、今にも気を失いそうなまで衰弱していたのでごじゃる。それに、目の前の保津川は川幅が五町(約500メートル)以上もありそうな急流の川でごじゃっての〜・・・。有名な川下りの船が人気なほどの急流でごじゃる。泳いで渡るわけにもいかず、さりとて、お婆さんが言われたように、トロッコ保津峡駅にかかる橋までは上流に一里(約4キロ)ほど・・・、とてもわれらの足では間にあわないし、はてどうしたものか・・川を目の前にほとほと思案に暮れたのでごじゃる。

川の向こう岸の崖の上に観光トロッコ列車の架線が見えるだけに、拙者は「ギリギリ」と血の滲むほど歯軋りしたのでごじゃる・・・・。

しかし、そのまま思案していても、無駄に時間がたつばかりでごじゃる。ここはイチかバチか、川に飛び込んで、川を泳ぎ、なるべく向こう岸に近付くしか方法がないのでごじゃた。その時、崖の上から先ほどお別れをしたトラ婆さんとキリ婆さんの声がしたのでごじゃる!

「あんたら〜!アトで気づいたんやけど、この桶に乗って下流まで下ればハヨ着けるで〜!ここから投げるさかい、この桶に乗って急流下りをしなはれや〜!木の棒も持ってきたさかいな〜これを櫂にして、なるべく向こう岸に寄って下れば、そのカモさんも元気になるんちゃうかいな〜!」と大きな声で、われらに言ってくれたのでごじゃる!

「かたじけない!お婆さん方、この借りはきっと返すでごじゃ・・・」と、言う間にわれらの前に、寿司桶と棒が落ちてきたのでごじゃる。「さ〜、ひこにゃん!かもかも殿を桶の中に乗せるでごじゃる。一刻も猶予はならんじょ!」
「どぶ〜〜ん!」とかもかも殿とひこにゃんを乗せた寿司桶を水に入れ、櫂の棒を持った拙者は、岸からひらりと桶に飛び乗ったのでごじゃる。

われらの乗った寿司桶に向かって、崖の中腹に立った二人のお婆さんは手を振りながら「達者でな〜〜!気ぃつけてな〜!」と励ましてくれたのでごじゃる!

「お婆さ〜ん!返す返すもかたじけないでごじゃ〜〜る!さらばでごじゃ〜〜る!」と、櫂をあやつりながら、拙者も手を振ったのでごじゃった・・・。

ねこうどん121

お婆さんに、それ以上言う間もなく、いきなり寿司桶のタライ船は、くるくるくるっと回りながら流れに押し流されて、ぐんぐん速くなって行ったでごじゃる・・・。

拙者は必死に竿を流れの中に差し入れ、何とか船の安定を保とうとしたでごじゃるが、何せ天下に聞こえた保津川の急流でごじゃるからの〜、くるくる高速で回転しながら、岩にごんごんとぶつなかりながらも、どんどん下流へ、と押し流されていったのでごじゃった・・・。拙者もひこにゃんも目が渦巻き型になったようでごじゃった。何とか力を振り絞って、船を右岸に少しでも近づけようと頑張ってのでごじゃるがの〜〜〜・・・・。

それでも、時折流れが緩くなる「とろ場」に差し掛かると、何とか思うように船を右岸に近づけることができたのでごじゃる。そんな時は国鉄の架線から発する電磁波がなんとかカモカモ殿に届いたらしく、「ぴきぴき」っと体を痙攣させて、「かもかもかも!」と、目を開けて、わめくのでごじゃった。

しかし、また急流にさしかかって、川の中ほどに押し流されると、電磁波がとどかぬらしく「ぷしゅ〜〜!」という音を立ながら、まるで電気の切れたカラクリ人形のように、気を失ってぐったりいたすのでごじゃった・・・・。

ひこにゃんは川の様子を注意深く見張りながら「しましゃこ〜!僕がいつもお団子を持つお手ての方に、大きな岩があるにゃん!」と教えてくれたり、飛翔して寿司桶に入ってくる水を、手で掻き出したりしてくれて、かなり助かったのでごじゃるが、船はなかなか思うように進まず、カモカモ殿はますます息遣いが小さくなっていくわで、拙者、あの時ほど焦ったことはなかったでごじゃる!

そんな事を5〜6たびも繰り返した時、保津川のトロッコ列車が線路の上をガタゴトと、音をたてながら上流に向かって通り過ぎたのでごじゃる。電車が通過すると、電磁波が多く発っせられるようで、カモカモ殿も「カモカモカモ〜〜!」と叫ぶほど回復するのでごじゃった。その時、トロッコ列車の車窓から、川を見ていた物見遊山の客たちが、全員、寿司桶のタライ船に乗った我らをみつけたようでごじゃっての〜、「わ〜!猫がタライで急流下りしてる〜〜〜!」と騒ぎだしたのでごじゃる・・・・。

列車の窓に驚いた幾百の物見遊山の客の顔が並び、目をこすったり、「ぽか〜ん」と、まるで不思議なものを見るように我らを見つめている間に、トロッコ列車はガタゴトと過ぎ去ったのでごじゃった。

又、今度は上流から大きな本物の急流下りの船が我らのタライ船を追い越して行った時も、船の乗客が全員「わ〜〜〜!ね、ね、ねこが急流下りしてまっせ!」と大騒ぎになったのでごじゃるが、結局その船も、乗客のびっくり顔を乗せて、瞬く間に下流へと流されていったのごじゃった・・・・。

そうこうするうちに、とうとう船は大きな岩に激突して、寿司桶のタガがかなり緩んだのがわかったのでごじゃる。このままでは、タライ船はばらばらになるのは必定!ひこにゃんが必死に水を掻き出してくれたのでごじゃるが、も〜浸水してくる水の量の方が多くなってきたのでごじゃった・・・。

ひこにゃんも必死で頑張ってくれたのでごじゃるが、も〜水の勢いはひこにゃんの力をはるかにしのぎ、とうとうひこにゃんもぐったりと頭を垂れたのでごじゃる。ねこうどんの秘密を探るために、二匹でここまで頑張り、やっとねこうどんの秘密も解明され、さて、これから又、晴れやかな暮らしが戻るのかと思ってたのでごじゃるが、人生とは、小説のようになかなかうまくいかないにゃ〜、と思ったのでごじゃる。

だんだんタライ船の中が水に浸かり、半分まで水カサが来た時、船はゆっくり大きく旋回し、やっと流れが緩やかになったのでごじゃる。しかし、も〜岸に着くまでに、船は持ちそうもなく、拙者はひこにゃんとカモカモ殿と一緒にあの世とやらに行く運命を覚悟したのでごじゃった・・・・。

お互いに相談して、この旅に出立したのでごじゃったが、彦根におれば、人気者として、大勢の人々に可愛がられたであろうひこにゃんを、道連れにするのだけが、なんとも忍びなく、拙者の大きな黄色の目から大きな涙がこぼれたのでごじゃった・・・。

諦めて目を瞑った時、いきなり下流の方から大勢の人の「わ〜〜〜!」という声が聞こえたのでごじゃったが、も〜拙者も寿司桶の端に乗って、辛うじて二匹を掴んでいる状態でごじゃっての〜・・・。それに、も〜目もあけられぬほど疲労困憊していたのでごじゃった・・・・。

ねこうどん131

「わ〜わ〜!」という大勢の人間たちの歓声の中に、「しまさこ〜!ひこにゃ〜〜ん!」という聞きなれたおなごの声を拙者は聞き逃さなかったのでごじゃる。それは紛れもなく、社中の「みゆき」殿の声でごじゃった。そこで、拙者は何とか瞑っていた目を開け、歓声のする方向を見たのでごじゃる。下流の川岸には大勢の人間たちがこちらに向かって手を振ったり、何か大きな声でこちらに叫んでいたのでごじゃる。

よく耳を澄ませると、みゆき殿の声以外にも、こ〜おじ殿やとび助殿うめ吉殿の声も確かに聞こえるのでごじゃった。そして、さらに下流には、我らが旅の途中で渡った、渡月橋が見え、その橋の上にも大勢の物見遊山の客がこちらに向かって、何か叫んでおるのでごじゃった・・・・。

「ひこにゃん!目をさますでごじゃるじょ!我らはどうやら無事、渡月橋までたどり着いたようでごじゃるじょ!」と、ひこにゃんに声をかけると「う〜〜〜ん・・・・」と呻いたアト、丸い目をパチ!とあけて「本当か?しましゃこにゃん!」と飛び起きたのでごじゃる。「本当でごじゃるじょ!ほれ、あのように大勢の人が我らを見て、何か叫んでいるでごじゃる。そしてその人波の中に、こ〜おじ殿やみゆき殿もいらっしゃるようでごじゃる!」

「やった〜〜!!だにゃん!」「しかし、喜んでばかりもいられないでごじゃる!カモカモ殿はも〜息をしていないでごじゃる・・・・。果たして手遅れであったのか・・・」と、拙者たちが話をしているうちに、手漕ぎの小船が、水に半分以上浸かった我らの寿司桶船に近付いてきたのでごじゃった。

「あんたら、よ〜がんばらはったな〜・・・。さ、こっちへ移りなはれ。先ほど着いた川下り船の船頭や客たちが、急流下りの途中、猫が二匹とカモが一羽、小さなタライ船に乗って保津川下りをしておったと、報告しはってな〜。その情報がたちまち、渡月橋近辺に広まって、観光客も含めて、猫の保津川下りを一目見ようと、大騒ぎになったんや!」

と、救助の人から説明を受け、大勢の人たちが我らを見ようと集まった人である事を初めて知ったのでごじゃった。我らの乗った小船が岸に着くと、たちまち、わ〜〜!と大変な人垣が出来たのでごじゃった。「すごい猫たちやな〜!でもシマ猫の方は人相悪いけど、白猫はかわいな〜!」「ほんまに猫とカモだけで、保津川下って来たんかいな?」と、大騒ぎになったのでごじゃったが、その人垣を掻き分けるように、こ〜おじ殿とみゆき殿が現れたのでごじゃった!

「てめ〜ら、ったく!心配かけやがって!」と、こ〜おじ殿はいきなり怒鳴りだしたのでごじゃったが、拙者は「お怒りはごもっともでごじゃるが、こ〜おじ殿、まずはこのカモカモ殿を何とかしてやらねばならないでごじゃる!すでに、JRの架線から離れて一時間以上は過ぎてるでごじゃる故、手遅れかもしれぬが、何とか近くの架線の下に連れていかねばならないでごじゃる!」

「なに〜〜〜!!!!そりゃイチ大事じゃね〜か!一時間以上だと!よし!みゆき〜〜!カモカモ連れてひとっ走り、JR嵯峨嵐山駅までカモカモを運んでくれ!走りにかけちゃ、わしより、おめ〜の方がよっぽどはえ〜からな〜!」「あいよ!」

こ〜おじ殿が、ぽ〜んとみゆき殿に向かって放り投げたカモカモ殿を、群集の外側で掴むやいなや、みゆき殿は、脱兎の如く走り出しのでごじゃった・・・。「おい!とび!てめ〜もみゆきと一緒についていけ、なんかあったら、てめ〜がカモカモを運ぶんだぜ!」「へい!合点でぇい!」と、とび助殿もみゆき殿のアトを追って走り出したのでごじゃった・・・。

「さ、さ、わしらもみゆきととび助を追いかけようぜ!」と、こ〜じ殿は、拙者とひこにゃんを脇に抱え、「はい、ごめんよ!ごめんよ!」と叫びながら、走り出したのでごじゃる・・・。「きゃ〜猫ちゃ〜ん!サイン頂戴〜〜い!」「ね〜ちょっと!その猫さん達と記念撮影させて〜な!」「そ〜や!せっかく、保津川下りをした英雄猫ちゃんを見れらたのに〜!」「あの〜きょ〜と新聞ですが!ちょっとお話しをお聞かせ下さい〜〜〜!」「犬HKですが・・・!」という、大勢の声を無視して、こ〜おじ殿はわれらを連れて、走り出したのでごじゃる。

そのアトをうめ吉殿が「わんわんわん!」と、周囲の人に吠えて、威嚇しながら付いてきたのでごじゃるが・・・・なにせ子犬でごじゃるからの〜、大勢の人からは全く無視されていたように見えたのでごじゃるがの・・・ふふふ。

ねこうどん141

観光客でごった返す、嵐山界隈は中々思うように先に進めず、こ〜おじ殿は拙者とひこにゃんを小脇に抱えたまま、何故嵐山まで我らを捜しに来たかについて語ってくれたでごじゃる。

「てめ〜らが、先日嵐山に来た時、夕子って〜女の子が店先で、生八橋の試食品を配っていたそうじゃね〜か。ほいで、白い猫が何回も試食品をねだって、断るといきなり顔に飛びつかれたらしいな〜・・・・。てめ〜らがそこから去ったアト、夕子はひょっとしてボーイフレンドのとび助から以前聞いたことのある仲間じゃね〜のか、と気づいたらしい・・・。で、携帯でとび助に連絡したわけだ。それでてめ〜らが嵐山界隈にいることが分かって、社中みんなでここまで捜しにきた、って〜わけだ」

「そ〜でごじゃったか・・・それはかたじけないでごじゃる・・・・」
「で、わしらは嵐山界隈を昨日、今日と探し回っていたのさ。カモカモは空を飛べるので、嵯峨野線沿いに保津川を遡って、てめ〜らを捜していたんだ」
「それで、ついついねこうどんの匂いに釣られて、ふらふら落合の里に紛れ込んだ、というわけでごじゃるの」
「ど〜もそ〜らしい・・・あ、みゆきととびが、観光客に阻まれて、先に進めなくなってやがるな〜」
「そうだにゃん!」
「あ!とび助が観光客の頭の上を、飛び石伝いみて〜に、ぴょんぴょん飛び跳ねてるぜ!」
「そ〜でごじゃるの〜・・・。とび助殿は身が軽い上に、足が速いでごじゃるから、観光客も、何が頭に上に乗ったかわからないようでごじゃる!」
「さすが、とび助しゃんだにゃん!」

「あ、人ごみが途切れた場所に着地したとび助に向かって、みゆきがカモカモを投げたぞ!まるで、アメフトのパスのようだ!」

「よし!ナイスキャッチだ!とび助!しかし、みゆきも絶妙のキラーパスだったな〜・・・」
「お!とび助殿が、カモカモ殿を小脇に抱えて、すごい速さで駅の方に駆けってごじゃるの〜!」
「よし!嵯峨嵐山駅前にタッチダウンしそうだ!わしらも急ごう!」
「そ〜でごじゃるの!」「そ〜だにゃん!」「わんわんわんわん!」

我らは、ようやくJR嵯峨嵐山駅の駅前広場に着いたのでごじゃる。しかし、我らが到着しても、カモカモ殿はまだ目を瞑ったままでごじゃった・・・・。社中のみんなが、輪になって見守っている真ん中にいるカモカモ殿は、じっとしてピクリとも動かないのでごじゃった。

「やっぱり、ダメですかね〜・・・・みゆきさん!」
と、とび助殿が心配そうにつぶやくと同時にみんなは、一斉にしゃべり出したのごじゃった。
「カモカモ〜〜!しっかりするだにゃん!」
「カモカモ〜〜!頑張って目を開けておくれよ!わんわん!」
「カモカモ殿!拙者達を捜しに来てくれて、そのまま死んでしまっては困るでごじゃるじょ!」
「カモカモ!大丈夫かい!あたしの声が聞こえたら、返事をしておくれよ・・・うなずくだけでもいいからさ〜!」
「カモカモさん!生き返ってくれたら、あたしの携帯をあ〜たにあげますよ!」
と、最後にとび助が叫ぶように言うと、みんなの目が一斉にとび助殿に向いたのでごじゃった・・・。

「そ〜言えば、とび助・・・。てめ〜ガールフレンドからの連絡を自分の携帯で受けた、って言ってたけど、てめ〜そんなもの持ってるのかい?」
「あ、はい、その〜・・・・近頃の若者なら携帯ぐらい・・・」
「そ〜だ、僕はとび助の携帯なんか見たことないじょ!わんわんわん!」
「そ〜だにゃん!僕も見たことないだにゃん!」

「こ〜おじ殿、けーたいとはいかなるものでごじゃるかの〜・・拙者、けーたいというものを知らないでごじゃるが・・・」
「説明してたら、長くなるから、また今度説明してやるからな・・・・。とび助!てめ〜いって〜携帯をどこに隠し持ってんだ!」
「あ、はい、あの〜その〜・・・・ふんどしの中に!」

「ひえ〜!きったね〜な〜!」
「うえ〜〜!とび助は、一年に一度しかふんどしを洗わないくしぇに・・・わんわんわん」
「そ〜だにゃん!汚い携帯だにゃん!」

「な、なんと失礼な!あたしは、毎晩みなさんが寝静まったアト、一人、風呂場でふんどしを洗っていますよ!ふん!」

「うっそ〜〜〜!ぜって〜そんなことないね!あたしは、そんなことありえないと思うね!」
「そんな汚い携帯あげたら、カモカモは今度はその匂いで本当に死んでしまうだにゃん!」
「そうだ!そうだ!」

と、瀕死のカモカモ殿を放っておいて、しばらくは社中のみんなで、わいわい騒いでいたのでごじゃる・・・・。

ねこうどん151

その時、駅のホームに上下の線路から、列車が入ってきたのでごじゃる。駅のホームに沿って、上下の列車が停止したのを見て、いきなりこ〜おじ殿が叫んだのでごじゃった・・・。

「そ〜や!電車が停止している時には、架線から強力な電磁波が出るんや!今停まっている電車が出発してしまったら、又電磁波が弱まってしまう!よし、しまさことひこにゃん!てめ〜らは亀岡方面行きの電車を停めてこい!とびとうめ吉は京都方面行きの電車や!」

「わかったでごじゃる!」「わかっただにゃん!」「へい!合点だ!」「わんわんわん!」

われらは、こ〜おじ殿の指示に従って、一斉に電車が停まっているホームに向かったのでごじゃる!なんとかカモカモ殿を助けたい一心でごじゃたので、躊躇するヒマはなかったのでごじゃる・・。

拙者とひこにゃんは、亀岡方面行きの電車に飛び乗ると、脱兎のごとく先頭の運転席に向かったのでごじゃった。隙間を見つけて、運転室に入り込み、拙者は背中の刀を抜いて、運転台に飛び乗り、運転手を睨みつけたのでごじゃった!今まさに発車しようと、スタートレバーに手をかけた運転手は、びっくりして、拙者をぽか〜んと見つめたままでごじゃった。

刀を運転手の鼻先に突きつけて「拙者はしまさこにゃんと申す!国鉄殿に怨みはごじゃらんが、ここはひとつ、社中の仲間のカモカモ殿の命がかかっておるのでごじゃる!しばらく出発を待って欲しいでごじゃる」と、眼光するどく言い放ったのでごじゃる。

「そうだにゃん!僕を怒らせると、怖いだにゃん!その鼻に噛み付いてやるだにゃん!」と、すごんだのでごじゃった・・・・。

一方、アトで聞いた話しでごじゃるが、京都方面行きの電車に向かったとび助殿とうめ吉殿は、先頭車両の前の線路の上で、歌と舞で、電車の出発を停めていたそうでごじゃる。とび助殿が「雪やこんこ」を歌い、その歌に合わせて、うめ吉殿が舞を舞って、電車の出発を妨害したのだそうでごじゃった・・・・。

定刻の時間を過ぎても上下ともに電車は駅から出発できず、乗客も駅員も何が起こったのかさっぱり分からず、しばらく静まりかえっておったのでごじゃる。しかし、すぐに定刻を過ぎても、電車がなかなか出発しないことを不審に思いだした乗客が、騒ぎ出したのでごじゃった!「お〜〜い!どないしたんや!出発時間過ぎてるで〜〜!」「事故でもあったんかいな!」と乗客の怒声が飛び交い始めたのでごじゃった。

その間も運転室では、緊迫した時間が流れていたのでごじゃった・・・。ゴクンと運転手が喉を鳴らし、ようやく「あの〜そろそろ出発せ〜へんと・・・ダイヤが大幅に乱れるんやが・・・そこ退いてくれへんかな〜」と、言うので「ふふふふ、嵯峨野線の時刻が乱れるのはいつもの事!たかだかも〜数分のことでごじゃる!も〜しばらく待っていただくでごじゃる!」「ふ〜〜〜!そうだにゃん!今度おわびに串団子を分けてあげるだにゃん!だからも〜少し待って欲しいだにゃん!」と、脅し続けたのでごじゃった・・・・。

一方、京都方面行きの運転手から、線路上で踊っていたとび助殿とうめ吉殿の報告を受けた駅員が、ホームを走ってきて、網を手に線路に飛び降り、二人に向かって行ったそうでごじゃった。

しかし、しばらく電車が停車し続けたおかげで、かなり周囲に電磁波が放出されたようで、ようやくカモカモ殿は「カモカモカモ・・・」と息を吹き返したのだそうでごじゃる。その時、こ〜おじ殿に指示されたみゆき殿が、ホームに走りこんできて「も〜い〜よ!しまさこ!ひこにゃん!とび助!うめ吉〜ぃ!」と叫ぶ声が聞こえたので、拙者は「運転手殿!ご迷惑をおかけしたでごじゃる!ありがとうでごじゃった!」と礼を言うと、ひこにゃんともども電車から外に出たのでごじゃる。

駅員の網を何度もひょいにょいと避けたうめ吉殿ととび助殿もアトから我らに追いつき、みゆき殿を先頭に、カモカモ殿のところに戻ると、カモカモ殿はしっかり目を開けて、立ち上がっていたのでごじゃった!「カモカモ!カモカモ!みんなのおかげで元気になっただカモカモ!ぺこり!」と、われらに頭を下げたのでごじゃった!

「カモカモよかったな〜!」
「わ〜い!カモカモが生き返った!わんわんわん!」
「よかっただにゃん!」
「よくぞご無事で!そんな水臭いことを・・・カモカモ殿!」
「カモカモ〜〜!よかったね〜。みゆきさんとっても心配したんだよ。おかえり〜〜!カモカモ、って〜感じだね〜!」

「カモカモカモ・・・。でも、かなり、苦しかっただカモカモ・・・・。」とカモカモ殿が言っている時、大勢の駅員たちが、われらに向かって走って迫ってくるのが見えたのでごじゃった!

「さ〜〜!これからが大変だ!みんなずらかるぞ!それ〜〜〜い!!」という、こ〜おじ殿の合図を機に、我らは一斉に駅前の広場から逃げ出したのでごじゃった・・・・。

(ねこうどん次回はいよいよ最終回でごじゃる!)

ねこうどん最終回1

嵐山界隈が観光客でごった返しているのをよい事に、われらは、瞬く間に大勢の観光客に紛れて込んで、まんまとJR職員たちの追跡を振り切ったのでごじゃる・・・。

「も〜大丈夫だろ・・・ど〜やらJRの職員も諦めたみて〜だし・・・。ところで、カモカモの命を救うためとはいえ、JRのダイヤを乱したのは、違法行為だったぜ!ひょっとして、全員逮捕された上に、多額の賠償金を請求されるかもしれね〜な〜、みゆき・・・」
「そ〜だね〜、でもそん時はそん時さ〜ね!」
「大丈夫だカモカモ!おいらは職場の上司の銀カモさん(スマートイカコのキャラクター)の弱みを握っているだカモカモ!銀カモさんは、下請け業者からたくさん賄賂を貰っているだカモカモ!今回の件をもみ消してくれたら、その事は黙っていてやるだカモカモ!嵯峨野線はいつもダイヤが乱れてるから、これくらいなんでもないだカモカモ!」
「へ〜銀カモさんって〜そんなに社内で権力を持ってるのかい?」
「ふふふ、銀カモさんは、その上司の弱みを握っているだカモカモ・・・。結局みんな弱みを持っているから、おいらには逆らえないだカモカモ・・・」
「ふ〜ん、全くよ〜わからん会社やな〜・・・」
という、こ〜おじ殿らの会話を、拙者は全く意味がわからず聞いていたのでごじゃった・・・・。

そのアトは、嵯峨野線の高架下をゆっくり歩いて社中に向かったのでごじゃる・・・。

道々拙者とひこにゃんは、今回の旅の話を皆さんに聞かせたのでごじゃった・・・。
「な〜るほどな〜・・・しかし、何といっても今回は誰にも相談せずに、黙って社中を抜け出して、わしらに心配かけたのはまずかったんじゃね〜か?」
「はい、それはそのと〜りでごじゃる。まことに面目ないしだいでごじゃるゆえ、この通り謝るでごじゃる・・・ぺこり」
「僕も謝るだにゃん!ぺこり」

「しかし、ま〜最後はカモカモが危機一髪って〜事もあったが、てめ〜らの心の中のトラと馬もなんとか治まったようだし、ねこうどんも食べられてよかったじゃね〜か」
「も〜勝手な真似は厳禁ですよ!あ〜たたち、おサムライだからといって無茶な事されたら、あたしたちが迷惑するんですからね!ふん!」
と、とび助殿が怒ったように言うと、みゆき殿がすかさず
「とび助!あんただって、以前社中を黙って抜け出して彦根に行く途中、琵琶湖で溺れそうになって、あの時も大変だったじゃないか!(「琵琶湖を疾走する忍者その3(忍者飛助シリーズ第3弾)「ひこにゃん救出大作戦」参照」と、助け舟を出してくれたのでごじゃる。
「ふん!あの時は、あたしはきちんと置手紙を置いて社中を出ましたからね!この猫たちとは随分違うと思いますよ!」と口答えをしたのでごじゃった。

「とび助!あん時は、僕も随分迷惑をしたんだじょ!わんわん」
「それに、あんた、あん時は置手紙と引き換えに、社中からタクワンをとおにぎり盗んでったわね〜うふふふ」
「・・・・はい、ま〜確かに・・・」


「いえ、とび助殿のゆ〜とおり確かに、皆さんに心配をおかけしたのは事実ですからの〜、以後は気をつけるでごじゃる」
「そ〜だにゃん!それに、お婆さんたちは、またおいでって言ってくれたにゃん!今度行く時は、みんなにきちんと言ってからいくにゃん!僕は、またあのねこうどんが食べたいだにゃん!」
「お〜そ〜でごじゃったの〜。お婆さんたちは我らに大層優しく親切にしてくれたでごじゃる。お礼も兼ねて、また近々行くでごじゃる」

拙者とひこにゃんは、また近い将来、あのお婆さんたちとの再会に思いを馳せて、二匹で顔を見合わせて、微笑みあったのでごじゃった・・・・。

その頃・・・山奥のトラ婆さんたちの家では・・・・。

「トラ姉さん、しかし、あんな嘘をよ〜思いつかはりましたな〜・・・」
「ふふふ、キリちゃん、あんたかてうちの嘘に乗って、うまいこと演技しはったな〜。しかし、うちらは、長いことたくさんのネコを殺して、商売してたんやから、せめてもの罪滅ぼしや、おも〜てな〜・・・。」
「うちは、あの夜道でネコを拾うた時は、次の日に久々にねこうどんにして食べよ〜思〜てたんやが、いきなりあのシマ猫がねこうどんの事を言い出すさかい、びっくりしたがな」

「そ〜や、うちらがねこうどんを、本当に猫の出汁で作ってることが村の衆に知れるまで、村の衆に説明していたねこうどんの嘘の作り方を、とっさに思い出したんや。ねこうどんの秘密が村人にばれて、村八分となったうちらが、この異界に住むようになり、異界に紛れ込んできた二匹のネコを憐れに思うて、それまで殺したネコへのせめても供養と、仏心を湧き起こしたのは、あのネコらにとって幸運なことやったな〜」

「あのけったいなカモノハシの体から発する電磁波で、この異界の結界が破られたおかげで、あの猫らも無事、元の世界に戻ることができたんやな〜。ま〜そのせいで、あのカモノハシも体から電磁波を発散し過ぎて、最後はぼろぼろやったがな〜ふふふ。そ〜じゃ、あのネコとカモノハシたちは無事、戻れたんかいな〜・・・」

「しかし、トラ姉さん、うちはもしあの猫たちがも〜一度この異界に紛れこんできたら、その時は、我慢できそ〜にないで〜・・・ふふふ」
「あ〜キリちゃん、うちもさすがに二度は仏心も湧かんと思うわ・・・ふふふふ。それにしても、考えるだけで、よだれが出そや・・・ふふふ」
「うちもや、トラ姉さん・・・ふふふふ」

と、二人の妖怪婆さんが話し合っていたことなぞ、誰も知らないのであった・・・。       おわり