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本書は昭和6年に刊行された『文検漢文科合格の秘訣』(笠松彬雄
著)を興味半分に抜粋したものである。文検とは、旧教員採用検定で、現代には全く不要のものである。しかし、本書の中で、著者が熱く合格に向けて叱咤激励している様は非常に興味深い。明治・大正を過ぎ、やや漢文の必要性が薄くなりかけている時代(現代からみれば全くそんなことはないのだが)に、教員資格取得のためとはいえ、まさしく人生を賭して漢文の勉強に向かう姿は凄い。当時の様子も伺われるし、何より当時では著者が本書の中で真面目に語ったであろう言葉のひとつひとつも、平成の現代に生きる我々には冗談としか思えないような記述もある。受験参考書と啓蒙書を兼ねたような本である。現代でも大学受験などの参考書としてこういった「頑張れば必ず合格(うか)る」といったようなモノは出回っている。何十年経ってもこういう本はあるのだなぁと、そういった目で見ても面白いのかもしれない。 偶然ある古書店にて300円で手にした本書であり、また「実用性」といった面からすれば全く皆無な本書をあえて皆さんの目に触れるような形にしたのは、現代忘れ去られている、いや、忌み嫌われている「努力」だとか「根性」というものを多少しなりとも呼び起こしてくれそうな気配があったからである。そもそも現代では国語教育の一環としておまけのような形で存在している漢文、返り点すら知らない若者が多いのではないだろうか。身も蓋もないことを言ってしまえば、漢文は「無駄なもの」であり、面白くもなんともないものであろう。しかし、そんな無駄なものも、戦前では実に重要な科目だったのだ。現在の英語や数学のように…。まもなく「遺物」となるであろう漢文の歴史を見る上でも価値はある…と思う…。 また、今回web上に公開するに当たって、万が一著作権などの法に触れてしまう場合がある場合は恐れ入りますがお知らせください。早急に削除します。そして本書は戦前に書かれたもので、その文体や旧字などが現代の我々には馴染みが薄いものと判断し、これを現代語風に置き換えた。 今後不定期ながらも少しずつ更新されていくので、楽しみ(ですか?)にしていてくださいm(__)m。 |

巻首に
受験にいそしんで居られる諸君に何時か呼びかけて親しく語りたいと思いつつも、今まで其の機会が無かった。二三の註釈本で片言隻句を以て語ったことがあったが、思いのままに私の抱懐する考を述べる時が無かった。
今回計らずもその機会が与えられることになった。と言うのは大同館主阪本氏の慫慂によって本書をものすることになったからである。漢文受験の指導書は私の様な未熟者が出さなくとも既に二三種それぞれに特徴を持った立派なものが出来て居るのであるが、私の屋下屋を架するの愚を敢えてするのは、漢文科受験を中心として衷心から諸君と語り合いたい念願の為に外ならぬのである。
為せば為し得る有為の資を抱きながら、未だ覚醒せずに惰眠を貪って居る人々に、「暁は来たぞ!!」と警鐘を打ち鳴らして、共々に手を取って進みたいのである。道草を喰っている人々にも「さあ油断なしに進もう」と背後から押して見たい。
「自分はつまらぬ人間だ!!」と自分で愛想をつかしてかかる位冒涜なことは無いだろう。有為の資を抱きながら小成に安んじて安閑として一生を過して終う位惜しいことは無い。「文検なんて、及びもつかぬ、俺の頭などでは何年かかっても駄目だ」などと始めから諦めて終う人々の多いのは一体何故であろうか。
私は言う。「文検に合格する位は平凡な頭の持主で大丈夫だ」と普通の頭でありさえすれば沢山だ。天才でなくとも秀才でなくとも平々凡々の人間で沢山だ。只やろう!!と言う確乎たる決心さえ出来た人なら二三年で何学科によらずきっと合格する。万が一若し合格しなとしたら、それは要領が悪いのだ。無駄な勉強に没頭して居るのだ。そんなことして居ては何年経っても合格は出来ない。要領よく短時間で合格するにはそれ相当の方法がある筈だ。
その要領を指導する書としては余りに本書は貧弱であるかも知れぬが、これを十分信じてこの方法に従ってやって呉れさえすれば一ヵ年後はきっと漢文科合格の栄冠は勝ち得られると信ずる。迷わずに一つ実行されたい。
現今の人々に欠乏して居る物は熱である。精神一到何事か成らざらんやとか吾も人なり彼も人なりとかの意気に奮い起つ者の少ないことは慨しいことだ。大いにやろうじゃないか。我々の前には高等教員試験の峻坂が待って居る。これ位の小さい坂道に辟易してはならない。文検位は楽々と一挙に屠って終おうでは無いか。
諸君の勉学される机辺に、この小著が訪れて少しでも緊張味を齎したら私の望に叶ったのである。読書に倦いた時、もう断念しようと思った時、世の中が厭になった時、この小著によって奮起して欲しい。どの頁をめくられても諸君を思って筆を運んだ熱意だけは受け取って呉れようから……。
昭和六年秋 東近江にて
著者識
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文検漢文科合格秘訣 目次 序 [五]研究法(※(2)の「解釈の研究法」は、主に漢文の訓読法と解釈の仕方を述べたものであり、当然訓点が振ってあるが、web公開の便宜上、それらを忠実に載せることはできなかった。よって掲載を諦めた。 附録 [一]文検検定に関する諸規則 [二]最近文検問題集 |