明治天皇御製
    

 
  
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1月1日 あしはらの国のさかえを祈るかな 神代ながらの年をむかへて
   口語訳:古くから「葦原の中つ国」とたたえられた、この国の永遠の栄えを神に祈ることだ。神代のまま変わることのない新年を迎えて。
1月3日 ちはやふる神のまもりによりてこそ わが葦原のくにはやすけれ
   口語訳:すばらしい神々のご加護があればこそ、わが日本の国は安泰を保っていられるのである。
1月5日 神風の伊勢の宮居のことをまづ 今年もものの始にぞきく
   口語訳:今年も正月四日の政始(まつりごとはじめ)には先ず第一に、伊勢の神宮に関する奏上を聞くのである。
1月7日 人もわれも道を守りてかはらずば この敷島の国はうごかじ
   口語訳:国民も私も日本古来の道を守って変わることがなければ、この大和の国は決してゆらぐことはなく、栄えていくことだ。
1月9日 やすからむ世をこそいのれ天つ神 くにつ社に幣をたむけて
   口語訳:平和な世の中をこそ、わが心をつくして祈ることだ。天つ神、国つ神を祀る社(やしろ)にお供え物を献げて。
1月15日 新しき年のうたげにうれしくも かはらぬ人のつどひけるかな
   口語訳:新年を祝福するこの宴に、今年もまた変わることなくにぎにぎしく人びとが集まったことは、嬉しいことだなあ。
1月21日 梓弓やしまのほかも波風の しづかなる世をわれいのるかな
   口語訳:昔から大八島といわれる日本だけではなく、他の国々までもひろく、波風が立たずしずかで平和な世であることを祈るのだ。
1月29日 国のため民のためにとおもふこと 夢のうちにもえこそ忘れね
   口語訳:国の繁栄のために、国民の幸福のためにと心をつくすわが願いは、夢の中でさえもどうしても忘れることができない。
2月1日 国民もつねにこころをあらはなむ みもすそ川の清き流に
   口語訳:国民も常に心を洗い清めてほしいのもだ。神の宮居のそばを流れる、みもすそ川(伊勢、五十鈴川の別称)の清らかな流れに身をそそいで。
2月3日 よもの海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ
   口語訳:世界中の人類はみな兄弟だと思っているこの世に、どうして、いつまでも争い波風が立ち騒ぐのであろうか。
2月13日 埋火をかきおこしつつつくづくと 世のありさまを思ふ夜はかな
   口語訳:埋み火をかきおこししてつくづくと、この世の中の事日本のことを思いわずらう夜半である。
2月17日 天地の神にぞいのる民のため 雨風ときにしたがひぬべく
   口語訳:この広い天地の神々にお祈りする。国民のために今年も季節にしたがって雨や風が順調にやって来て、五穀も豊かに稔り世の中に災禍もないようにと。
2月19日 昔よりながれたえせね五十鈴川 なほ万代もすまむとぞ思ふ
   口語訳:昔より流れの絶えることのない五十鈴川。これからのちも永久に流れつづけ澄みとおっていて欲しいと思う。
2月25日 しのびてもあるべき時にともすれば あやまつものは心なりけり
   口語訳:人の心は耐え忍んでいなければならないときに、つい辛抱しきれないで、軽はずみをして取り返しのつかない失敗をするものである。
2月27日 民のため世をやすかれと神がきに ゆふしでかけていのるなりけり
   口語訳:国民のために、世の中が平和でありますようにと、神の御垣に木綿紙垂(ゆうしで)をかけて、御神前にお祈りをするのである。
 3月1日 たらちねの親のをしへは誰もみな 世にあるかぎり忘れざらなむ
   口語訳:親が教えさとしてくれたことは、誰であろうとすべての人がこの世にあるかぎり、忘れないようにしたいものだ。
3月3日 さざれ石の巌とならむ末までも 五十鈴の川の水はにごらじ
   口語訳:国歌「君が代」の歌詞のように、さざれ石が巨大な岩石となる世の末まで、五十鈴川の水もいつまでも濁らず清らかでいて欲しい。
3月15日 へだてなくしたしむ世こそうれしけれ となりのくにもことあらずして
   口語訳:何の心のへだてもなく、親しくつきあってゆける世の中こそうれしいことだ。境を接する隣の国にも、格別の変事など起こらないで。
3月19日 世の中の事ある時にあひぬとも おのがつとめむことな忘れそ
   口語訳:世の中で何か大事が起こった時に出遭ったとしても、そういう時こそ自分が果たすべき務めを忘れないことが大切である。
3月23日 目に見えぬ神にむかひてはぢざるは 人の心のまことなりけり
   口語訳:目に見ることのできない神に向かい、少しも恥ずかしくない清らかな正しい心境というものは、誠の心で、それはわれわれにとって最も貴いものである。
3月25日 ゆるし文うくる身よりもおほしたてし 人のこころやうれしかるらむ
   口語訳:卒業証書を受ける本人はもとよりだが、それよりも本人を育て上げた人々の心はさぞかしうれしいことであろう。
4月3日 橿原のとほつみおやの宮柱 たてそめしより国はうごかず
   口語訳:橿原の遠いご祖先、すなわち神武天皇が橿原の地に皇居を造営し、初めて国の柱、国の基礎をお建てになって以来、わが国はゆるぎもしないことだ。
4月7日 たかどのの窓てふ窓をあけさせて 四方(よも)の桜のさかりをぞみる
   口語訳:高殿の窓という窓を全部あけ放たせて、四方の桜のさかりを心ゆくまで眺める、このすがすがしい楽しさよ。
4月21日 おこたらず学びおほせていにしへの 人にはぢざる人とならなむ
   口語訳:人はいつも怠けずにしっかりと学問をやり遂げて、昔の人に比べても劣らない立派な人間になりたいものである。
 5月1日 天てらす神の御光ありてこそ わが日の本はくもらざりけれ
   口語訳:天照大御神の御光があるからこそ、わが日本国の威光は決して曇ることがないのである。
5月17日 こころからそこなふことのなくもがな 親のかたみとおもふこの身を
   口語訳:心の底から、損傷することなくありたいものだと思う。親の分身としてゆずり受けたこのわが身を。
5月23日 おほぞらにそびえて見ゆるたかねにも 登ればのぼる道はありけり
   口語訳:大空に高くそびえ立っているけわしい峰々にも、意を決して登ろうとすれば、登り得る道はあるものである。
5月27日 言の葉にあまる誠はおのづから 人のおもわにあらはれにけり
   口語訳:言葉には言い尽くせない誠の心というものは、自然にその人の表情に現れるものである。
 6月3日 なつ衣かへし朝はうなゐ子も こころかろげにあそぶなりけり
   口語訳:すずしい夏の衣服に着替えた朝は、ほんの幼い子供までが、心も軽やかにのびのびとあそんでいることである。
6月5日 いかならむ事にあひてもたわまぬは わがしきしまの大和だましひ
   口語訳:どんな困難障害に際会してもひるまないのが、わが日本の国の人々が持つ大和だましいというものである。
6月9日 天地もうごかすばかり言の葉の まことの道をきはめてしがな
   口語訳:この広大な天地をも感動させるほどの、歌の言葉にこめる人の心のまことの道を、深くきわめたいものである。
6月11日 石上(いそのかみ)ふるごとぶみをひもときて 聖(ひじり)の御代のあとを見るかな
   口語訳:遠い昔に書かれた書物を深く読み込んで、聖帝の御代のご治績を偲び学ぶことは、心たのしいことである。
 6月17日 かみつ代のことをつばらにしるしたる 書をしるべに世を治めまし
   口語訳:大昔の出来事を、くわしく書き記した書物をみちしるべとして、世の中を治めてゆきたいものだと思う。
 6月21日 かりそめの言の葉草もともすれば ものの根ざしとなる世なりけり
   口語訳:ほんのちょっとした時に言うなにげない言葉も、ともすると重大なことの原因となる世の中であることだ。
 6月25日 くに民がこころごころにすすみゆく みちにはさはるものなくもがな
   口語訳:国民がそれぞれ思い思いに志して進んでゆく人生の道には、いささかの障害物もなく順調であってほしいものだ。
 7月3日 いにしへの御代の教にもとづきて ひらけゆく世にたたむとぞ思ふ
   口語訳:遠い昔の御代の聖賢の教えにもとづいて、新しく開けゆく世の生き方に対処してゆこうと思う。
 7月13日 かぎりなき世にのこさむと国のため たふれし人の名をぞとどむる
   口語訳:この世のあるかぎり後の世にまで伝えのこそうとの思いで、国のために死んでいった人々の名前を、しっかりと留め残すのである。
 8月1日 よき友にまじはりてこそおのづから 人の心もたかくなりけれ

   口語訳:よい友だちとまじわってお互いに切磋琢磨してこそ、おのずと人の心も高められるものである。
 8月3日 民のため年ある秋をいのる身は たへぬあつさもいとはざりけり

   口語訳:国民のため実りの多い秋を祈るこの身は、堪えきれないような夏の暑さも、稲の生育のためと思って少しも苦にならないことだ。
 8月9日 まなびえて道の博士となる人も 教のおやのめぐみ忘るな

   口語訳:学問の道を志し、広くその奥を極めた人も、それまでに受けた師の恩を忘れるようなことがあってはならない。
8月15日 わが国のためをつくせるひとびとの 名も武蔵野にとむる玉垣
   口語訳:新しい日本を生み出すために力を尽くし、命を終わった人びとの名を、この武蔵野にとどめ祀る、招魂社の玉垣よ。
8月21日 いつはらぬ神のこころをうつせみの 世の人みなにうつしてしがな

   口語訳:まっすぐでいつわりのない神の御心(みこころ)を、この現実の世の人すべての心にうつして、すがすがしい世にしたいものである。
8月23日 いづかたにながれゆきてもにごりなき 清水を人のこころともがな

   口語訳:どんなところに流れていっても、その環境に動かされて濁ったりすることのない、真清水のようにいつも澄んだ、人の心であってほしいものである。
8月25日 万代(よろづよ)の国のしづめと大空に あふぐは富士のたかねなりけり
   口語訳:永遠にゆらぎない国の栄えの象徴として、いつも大空にあおぐのは富士山の気高いすがたである。
 9月1日 神がきに朝まゐりしていのるかな 国と民とのやすからむ世を
   口語訳:神域に朝参拝してお祈りすることだ。日本の国が栄え、国民が安からに暮らせる世の中であるようにと。
 9月7日 はれまなき雨につけても思ふかな ことしの秋のみのりいかにと

   口語訳:晴れ間なく長雨が降りつづくにつけて、国民の生活はどうであろうかと心配することだ。今年の秋の収獲は、どうであろうか。
 9月13日 わたつみの波の千尋の底までも てりとほるらむ秋の夜の月

   口語訳:海原の波のかぎりなく深い底まで、照り通ることであろうよ。秋の今宵の、煌々と照り輝く月は。
 9月19日 ことしげきこの秋にしも千町田の みのりよろしと聞くがうれしさ

   口語訳:いろいろなことがあって忙しい今年の秋ではあるが、日本中の多くの田んぼの稔りが良いと聞くのは、なんとも嬉しいことである。
 9月27日 思ふことおほかる中にをりをりは なぐさむることもある世なりけり

   口語訳:心にかかる憂いごとがたくさんある中に、一方では心の慰めになることも時折はある、この世の中である。
10月9日 国民(くにたみ)のうへやすかれと思ふにも いのるは神のまもりなりけり
   口語訳:国民の身の上が安らかであるようにと思うにつけても、お祈りするのは、わが国の神々のご加護がありますようにということである。
10月15日 榊葉にかけし鏡をかがみにて 人もこころをみがけとぞ思ふ

   口語訳:神前の真榊の枝にかける鏡を心の鑑(かがみ)として、己が姿をうつし、人間も神にあやかって、各自の心をみがくがよい。
10月17日 すめ神にはつほささげて国民と 共に年ある秋を祝はむ

   口語訳:皇神に今年の新穀をお供えして、国民と共に五穀の稔り豊かな秋をお祝いしよう。
10月19日 九重のまがきのうちにさく菊も 風のまにまに世にかをるらむ

   口語訳:宮中の御垣内に、かぐわしく咲き競う菊も、風の吹くまにまに、さらに広く世に、良い香りを漂わせてゆくことであろう。
11月1日 わがくには神のすゑなり神まつる 昔のてぶりわするなよゆめ

   口語訳:わが国は神の後裔である。神を祭るという昔からのならわしを、決しておろそかにしてはいけない。
11月5日 もみぢ葉はまだそめやらぬたかねより しかのねおろす夜はの秋風

   口語訳:もみじの葉がまだ色づかぬ山の頂きから、鹿の鳴き声を麓の里にまで伝えてくる、夜ふけの秋風よ。
11月11日 なにごともうつればかはる世の中を おもふがままになるとおもふな

   口語訳:何事につけても、時勢が移れば自然に変わってゆくこの世の中を、己独りの思うがままになるなどと、勝手に考えてはならぬ。
11月19日 九重(ここのへ)のまがきのうちにさく菊も 風のまにまに世にかをるらむ
   口語訳:宮中の御垣内に、かぐわしく咲き競う菊も、風の吹くまにまに、さらに広く世に良い香りを漂わせてゆくことであろう。
12月7日 言葉もて教ふることはやすけれど かたきは人のおこなひにして

   口語訳:言葉をもって人に教えるのはたやすいことであるが、それを行いとして実行するのは、ほんとうに難しいことである。
12月15日 年月は射る矢のごとくすぎにけり わがおもふことはかどらぬまに

   口語訳:年月は射る矢のように速く過ぎ去ってしまったことだ。自分の計画したことが、まだ思うようにはかどらない間に。
12月19日 鬼神も哭かするものは世の中の 人のこころのまことなりけり

   口語訳:心はげしい鬼神をも、声をあげて泣かせるものは、この世の人の、深い真実をこめた誠のこころである。
12月25日 そのかみの姿のままにあらためぬ 神のやしろはたふとかりけり

   口語訳:簡素な上古の様式のままで、どんなに時代が移り変わろうともその形を守りつづける、神のお社の姿は、尊いものである。
   
12月27日 ちはやふる神のおましをはじめにて 今年の塵を払はせにけり 
   口語訳:霊威つよい神の鎮まる宮中三殿をはじめ、この国の今年一年の塵をすっかり払わせたことだ。
12月29日 まつりごといとまなきまにあらたまの 今年もくれになりにけるかな
   口語訳:国の政治を執ることに忙しく、暇もない内に今年もすっかり暮れになってしまったことだ。
12月31日 をしめども今年はくれぬあたらしき 初日のかげにいざやむかはむ
   口語訳:いくら惜しんでも今年一年は暮れてしまった。さあ新しい年の初日の光に向って新しい歩みを踏み出そう。
   
   
   
   
 



  昭憲皇太后御歌 
 1月8日 君がためまことをつくすまめびとは 神もうれしとたすけますらむ
   口語訳:天皇のために忠誠をつくす実直な人は、神も喜ばしいとお思いになって、お力を貸してくださることでしょう。
 1月12日 まさかきにかけしかがみのくもりなき 世をこそいのれ賢所に 
   口語訳:真榊(まさかき)にかけた鏡に一点の曇りもない、そのように清らかで平和な世の中を、宮中の賢所≪⇒宮中三殿の章参照≫でお祈りするのです。
 1月14日 日の本の国のはてまでつもるらむ ゆたかなる代の年のはつ雪 
   口語訳:日本の国のはてまでも、この新年の雪は積もっていることでしょう。豊かな御代を祝福する象徴のような初雪が。
 1月20日 さかえゆくいがきの松にみゆるかな みくにをまもる神のこころも 
   口語訳:みどり深く栄えゆく神苑の常磐の松の姿にまざまざと現れていることです。国を守護してくださる日本の神々の深いみ心は。
 1月24日 みがかずば玉の光はいでざらむ 人のこころもかくこそあるらし
   口語訳:宝石も磨かなければ光を放ちません。それと同様に、人の心も研鑽を積まなければ優れた徳をもつことができません。
 2月8日 さむき夜にかさねむ袖もなき人の 身をこそおもへうづみびのもと
   口語訳:寒い夜に、重ねて着る着物を持たない貧しい人々の身の境遇が、あれこれと思いやられることです。ほのかな埋み火のそばにいて。
 3月12日 おくふかき道もきはめむものごとの 本末をだにたがへざりせば
   口語訳:どんなに奥深く困難な道でも極めることができるでしょう。物事の本末順序をさえきちんとして誤らなければ。
 3月26日 ひらけゆくまなびのまどの花ざくら 世ににほふべき春をこそ待て
   口語訳:やがて学成って、学び舎をいで立ってゆく桜の花のようなおとめたちよ。広く世に匂いたつ春をこそ待っています。
 4月2日 橿原に宮居ましけむ昔より 日嗣かはらぬ国はこのくに
   口語訳:この日本の国は神武天皇が橿原の宮で即位された昔から、万世一系の天皇のみ位を継承して変わることのない国なのです。
 4月10日 人はただすなほならなむ呉竹の 世にたちこえむふしはなくとも
   口語訳:人は何よりもただ、まっすぐに素直な心で生きてゆきたいものです。たとえあの竹のように、世の困難に耐える節はなくても。
 4月12日 光をもかすみにつつむ春の夜の 月こそ人のかがみなりけれ
   口語訳:きらきらとした光をすら、やわらかく霞につつむ春の夜の月の奥ゆかしさこそ、世に生きてゆくための人が持つべき心がまえの理想の姿なのです。
 4月30日 大空もはかりしる世を浮雲の まよひがちなるわが心かな
   口語訳:大空の模様もはかり知るまで進歩したこの世に、人間としての生き方については浮雲のように迷いがちなわが心がなげかわしいことです。
5月2日 神代よりねざしかはらぬあしはらの 国の栄ぞかぎりしられぬ
   口語訳:神代以来根柢ゆるぎない日本国の繁栄はどこまでもつづいて、限りないほど盛んなものであります。
 5月8日 ふきかへす藤の若葉の朝風に かくれし花のみゆるうれしさ
   口語訳:藤の若葉をひるがえして過ぎる朝風に、葉陰の花が時おり見えるのはうれしいことです。
5月12日 人ごとのよきもあしきもこころして きけばわが身のためとこそなれ
   口語訳:人の言葉の、良いことも悪いことも、深く心を傾けてその真実を聞こうとすれば、すべてわが身のためとなります。
 6月12日 かずしれず実をむすびたる梅が枝の わかばおもげにつゆぞおきける
   口語訳:数え切れないほどの多く実をむすんでいる梅の枝の、若葉には重たげに露がおいています。
 6月14日 みづがきの松の根ざしのゆるぎなき 国のさかえを神はもるらむ
   口語訳:神殿を囲む瑞垣の内に、しっかり根ざしている松のように揺るがぬ国の栄を、神は護っていて下さることでしょう。
 6月20日 さとゐせし昔はゆめとなりぬれど おやのいさめはわすれざりけり

   口語訳:生家に居りました頃のことは、今ではもう夢のような思い出ですが、親の教訓は忘れることができません。
 7月14日 思ふ事いふこと道にあたりなば 神のこころも動かざらめや

   口語訳:思うこと、言うことが人としての道理にかなっているならば、神の御心も決して動かないはずはありません。
 7月24日 花になれ実をもむすべといつくしみ おほしたつらむやまと撫子

   口語訳:花のように美しくなりなさい、しっかりした心の実をむすびなさいと、常日ごろ慈愛ふかい教育をしてこそ、やまとなでしこと言われるすぐれた日本の女性は育てられてゆくはずです。それが教師のつとめです。
 8月4日 軒づりのしのぶにかけしすずのねも きこえてすずし夏の夕風

   口語訳:軒端にかけた「つりしのぶ」の風鈴の音もゆらぎ聞こえてきて、夏の夕風がいっそう涼しく感じられます。
 8月14日 夕立ににごるやがてもすみかへる 水のこころはすずしかりけり

   口語訳:はげしい夕立で濁った水も、まもなく元のように澄みかえります。水の本来の姿は清くすがすがしいものです。
8月18日 人知れず思ふこころのよしあしも 照し分くらむ天地のかみ

   口語訳:人知れず密かに思う心の中のことも、天地(あめつち)の神はその善悪を照らし分けて、すべてをお見通しでいらっしゃることでしょう。
8月28日 文机にむかふ心のうれしきは まことの道にあへるなりけり

   口語訳:机に向かって書物を読む時の心のうれしさは、真実の心の道理に出会うことができるからです。
9月4日 まごころをぬさと手向けて神がきに いのるは国のさかえなりけり

   口語訳:まごころを神さまに供えるご幣(へい)として、ひたすら御神前に祈ることは、国が栄えてゆくための基(もとい)であります。
9月20日 苗うゑて八束たり穂をみるまでに いたつく人を思ひこそやれ

   口語訳:田植えをしてから秋の立派な稔りを見るまでの間に、炎天の下で手入れにいそしむ農民たちの労苦が沁みじみ思いやられます。
9月29日 へだてなくいつつのくにに交るも こころのまことひとつなりけり

   口語訳:わけへだてなく、五大洲すなわち世界中の国々と交誼をむすぶにつけても、大切なのは心のまことの一筋であります。
10月10日 人ごころしづけからぬやものごとに すすみゆく世のならひなるらむ

   口語訳:この頃は人びとの心が静まらず、しっとりとした深さが感じられないようです。それも物ごとにつけて急速に変化してゆくこの世の中の、やむを得ない習いなのでしょうか。
10月30日 身にしみてうれしきものはまこともて 人のつげたることばなりけり

   口語訳:身にしみて嬉しいことは、真実の心をこめて、私のために人が告げてくれた言葉です。
11月14日 あづまぢに大宮柱たてしより ゆるがぬ御代となりにけるかな

   口語訳:この東京を都とお定めになってからは、陛下のお治めになる大御代は、いっそうゆるぎないものとなったことです。
11月26日 ふし柴のかりそめごともおもふこと なりたる日こそうれしかりけれ

   口語訳:ほんの小さなことでも、心の中で願いつづけていることが叶った日は、本当にうれしいものです。
11月30日 天つ日のてらすがごとくくまなきは すめらみ国の光なりけり

   口語訳:天の日が隈なく大地を照らすように、あまねく国中を照らすのは、御国を護る皇祖の恩恵に他なりません。
   
   
12月28日 もちひつくおときこゆなり山里も ゆたけき年のくれいはふらし 
   口語訳:もちつきの音がそこかしこより聞こえます。山里に住む人々もそれぞれに、豊かな年の暮れを祈っているのでしょう。
   
   
   
  

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