信州ツキノワグマ通信-No.47-7/2010.3.22.-

茶臼山動物園・クマの子すくすく日記(最終回)

四方田 紀恵(長野市茶臼山動物園)

“じゃあね!”とクマたちに声をかけて、夕方仕事を終えクマ舎を去ります。これはクマたちへの“また明日ね。”という挨拶。私が動物園に勤務し始めてからほぼ日課となっているものです。しかし、それがここ数ヶ月は“元気でね。頑張れよ。”という感情で言葉を掛けるようになっています。なぜなら、2010年3月をもって私は動物園を退職することになったからです。ここ数ヶ月はクマ舎を去るのが名残惜しくさえ思っています。

思い返せば、茶臼山のツキノワグマのテツ、ミヤが動物園に来てからもうすぐ2年です。小型犬ほどの大きさで、まだ足どりもおぼつかない状態で目を丸く見開きながら私を見つめていた2頭。それが今では60kgほどに成長し、檻の天井にまで簡単に登ってしまうほどしっかりとクマの体つきになってきました。時折、檻の格子に首元をすりつけ餌をねだる仕草をみると、未だ幼さも残っているなぁと感じます。そんなテツとミヤは、梅雨の時期の湿った地面や、冬の雪の上にいると、手がふやけて青白くなったり、ヒリヒリして痛むのか肉球を地面について歩かなかったりします。なるべく屋根を広く取り、雨や雪がパドックに吹き込まないように工夫したり、水はけを良くするために砂を敷いたりと試行錯誤していますが、私たち担当者の悩みです。この頃は気温も高くなり雪が融けたので肉球も黒く硬くなり一安心ですが、また梅雨の時期がくるまでに雨対策を考えなくてはなりません。

そして、動物園の開演当時からいる27歳のミル。ここ最近食欲に波があり、便もやや血液混じりの黒いものを出したりします。丸ごとでは食べ難くなったのか、リンゴよりも小さく柔らかいミカンが最近はお好みです。しかしそれでも生きようとするミルの姿にいつも感心し、パワーをもらっています。このミルは、最近飼育担当者を悩ませる行動があります。それは、朝外に餌を置きパドックへと繋がるドアを開けると、目の前のリンゴやミカンよりも先に砂場に向かいほぼ毎日砂をかじり食べてしまうのです。この行動はどうしてなのか、整腸剤を与えても、鉄分として青菜やレーズンを与えても改善しません。担当者達は頭を抱えています。

このような3頭と、私も4月からはお客という立場から接することになります。でも、テツ・ミヤの無邪気な姿や、ミルの懸命に生きようとするパワーに元気をもらいに長野に顔を出しにきたいと私は感じています。

記事にあるように、四方田さんは今月をもって、茶臼山動物園を退職されます。これに伴い、2年間連載を続けてきた、「茶臼山動物園・クマの仔すくすく日記」は、今回をもって終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。 どんどん大人になっていくテツ・ミヤ、そして、私と同い年のミルちゃんの動向は、また掲載していきたいと考えておりますので、その折には、どうぞよろしくお願いします。(濱口)


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