信州ツキノワグマ通信-No.47-4/2010.3.22.-

●参加報告●シンポジウム
四国のツキノワグマ
〜絶滅のおそれのある地域個体群の回復とその未来〜

濱口あかり(信州クマ研)

2010年1月24日に、高知で日本クマネットワーク(以下、JBN)主催の、四国のツキノワグマのシンポジウムが開催されました。先の金澤さんの紹介にもありましたとおり、四国のツキノワグマ個体群は推定個体数が十数頭〜数十頭と言われており、絶滅が危ぶまれています。シンポジウムでは、地域的絶滅が懸念されている地域でのクマの調査・保全を行う方々(四国、紀伊半島、兵庫、九州 等)から、現在の状況、事例紹介がありましたので、報告します。

最初の講演では、森林総研の大井さんより、ツキノワグマの基本的な生態について紹介がありました。次に、今回の本題でもある、四国のツキノワグマについて、金澤さんより紹介がありました。以前はクマ剥ぎが多かったこと、それにより、駆除が行われてきたこと、そして現在の状況、個体数をいかに維持するかの葛藤などが語られました。数を増やすために捕獲して飼育する、遺伝的に近い個体群からの導入等も考えられたようですが、現段階では、鳥獣の生息地保全を行いながら、自然環境下で様子を見るという方向性のようです。

お昼の時間を利用して、クマ・トランクキット活用教育プログラムの実演が行われました。北海道チームおよび、関東チーム(私も参加しました)で、互いの活動の様子を見るのは初めてでした。北海道チームからは、クイズを交えてクマの生態等を紹介。次に関東チームより、クマに出会った時の対処方法などを行いました。いつもとは違う、「大きいお友達」にスタッフそれぞれが少々緊張しながらも、楽しくプログラムが展開されました。

午後最初は兵庫県の横山さんより、東中国・北近畿でのツキノワグマの保護管理の実践と課題について報告がありました。学習放獣の効果等についても言及されていました。

次に、紀伊半島のツキノワグマの現状と課題について、野生動物保護管理事務所(WMO)の片山さんより紹介がありました。遺伝的に、四国のツキノワグマと近いのが、この紀伊半島のツキノワグマだそうです。互いに楽観視できない状況にあり、今後様々な保全活動が行われることが期待されていました。

最後に、九州地方のクマについて、写真家の栗原さんより紹介がありました。栗原さんは、九州にはまだツキノワグマが生息しているのではないか?という期待をもって、カメラトラップや痕跡調査により、調査をされているそうです。現段階では撮影には至っていらっしゃらないようでしたが、望みをもってこれからも活動を続けられるようです。

今回のシンポジウムは、頭数がとても少なく、人との軋轢もほとんどない地域での取り組みに関しての話だったので、いかに守るか、いかに頭数を維持する(ないしは増やす)か、という所に焦点が当てられていて、改めて、長野との違いを感じました。地道な活動であればあるほど、なかなか外部の人間が知りえないことも多く、とても興味深い話しがたくさん聞けてよかったです。一般の方も数多く参加され、講演を熱心にきいていらっしゃいました。特に印象的だったのは、現在残っている四国のクマの生息地がとても狭いことでした。行きの飛行機から見ていても感じていたことなのですが、山はたくさんあるのに、そこに植わっている木は、みんな針葉樹。どこに棲んでいるんだろう?と、心配になるぐらいの範囲に針葉樹がはえていました。案の定、限られた範囲で、尾根上に少しのこった広葉樹を利用しているという話でした。頭骨の大きさを比較しても、四国のクマの頭骨は“ずんぐりむっくり”な感じで、少し小さいというか、短かったです。調査をされている方が、「頭骨、比較してみたかったんだよ。やっぱりこっちのは小さいんだね」とおっしゃっていました。小さい島になるほど、個体の大きさも小さくなるというのは、生物学でよくいわれることですが、そうやってでも必死で生きているのかなぁ。と思うと、なんだか、いじらしいというか、なんというか。もっと広い地域でのびのび暮らさせてあげたい。という金澤さんたちの気持ちもひしひし伝わる、シンポジウムでした。今後頭数がさらに少なくなれば、遺伝的に血が濃くなってボトルネックになってくるかもしれません。「今」、何をするか。何ができるか。あなたは、どう考えますか?

←<クマの頭骨>左:北海道のヒグマ、中央:長野のツキノワグマ、右:四国のツキノワグマ

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