信州ツキノワグマ通信[号外]

●検証●
乗鞍畳平駐車場の人身事故発生現場を検証しました(1)

林 秀剛(信州クマ研)

昨年9月19日、シルバーウイークの連休の最中、手軽に3000m近い高山帯にまで上がれる乗鞍岳の畳平駐車場で、ツキノワグマによる重大な人身事故が発生しました。多数の負傷者がでるという不幸な出来事は、クマにかかわる活動をしている私たちにとって、非常にショックでした。

第一報を耳にしたとき、第一に考えたのは、多数の観光客で賑わう有名な観光地であることから、生ゴミなどに餌付けされた個体の可能性を考えました。北アルプスの高山帯のクマについては、信州クマ研の活動のきっかけともなった上高地のタロウ・ジロウ(1995年捕獲・追跡)の例もあるように、山小屋等の残飯などに餌付いてしまったクマを想定しました。近年では、山小屋などでのクマ対策は徹底しており、ほぼトラブルはなくなったと聞いており、事実関係を解明しなくてはならないと感じました。

10月1日、信州クマ研のメンバーと、信州大学や岐阜大の関係者が、事故の現場を検証しました。

施設のゴミの状況や廃水などをざっと見たところでは、あまり、餌付け状態ではない印象を受けました。それに対し、周辺には、一面のハイマツの群落が広がり、その周辺にはコケモモなどの漿果がたくさん実っており、自然の餌の豊富さが印象的でした。

←“登山道の下に現れたクマが人を襲った”と報道された現場の駐車場。手前の作業小屋に飛び込み、その後、正面のバスターミナル内に逃げ込み、射殺された。
←一面にハイマツの群落が広がっている。 松ボックリは、大事なクマの食べ物。
←ハイマツ群落の周辺部にはコケモモの群落。 赤い実がたくさん実っている。

バスターミナルの売店職員横山淳一さんから状況の説明を聞くことができました。クマがバスターミナルに飛び込んだとき、観光客の誘導、クマの隔離などに、適切かつ勇敢に行動されたことがわかりました。従業員数名が負傷してしまいましたが、観光客の負傷者は1人のみとのこと。クマについての知識をお持ちだと察せられます。


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