知っておきたい書道用語[6]

すいてき[水滴] 硯に水を注ぐ容器。水孔(注ぎ口)が二つ(水を入れる口と出す口)あり、入れる口を指でふさぐと水が出ないので指で適当に調節して水を注ぐ。古い物は骨董品として珍重される逸品も多い。

すきうつし[透写] 模写の技法で、敷写(しきうつし)ともいう。原本の上に紙を置き、下の字形を透かして写すこと。

すきぞめ[漉染] 染め紙を作るための技法。二とおりあり、漉槽の中に染液を入れて染まったものを漉くのと、紙の繊維を染めたものを白紙の上に流して漉くのとがある。「関戸本古今集切」の緑の部分などは後者の方法である。

すなご[砂子] 料紙の装飾に用いる一つの技法。竹筒の一端に目の細かい網をはり、その中に金箔又は銀箔(もみ箔)を入れ、礬水(どうさ)をひいた料紙の上に振りかける。不整形の細かな形になり、あたかも砂をまいたように見えるところから砂子という。

すみつぎ[墨継ぎ] 書くにつれ墨量が少なくなり、だんだんとかすれてくる。そのとき、さらに墨を筆に含ませて書くこと。墨量、濃淡とともに墨継ぎの位置は、紙面に明暗、強弱、立体感などの変化を表現する手法である。

すみながし[墨流し] 紙の装飾技法の一つで、墨流し染めともいい、水面に流した墨の描く模様を紙に写し取る方法。「西本願寺本三十六人家集」などにみられる。

せいしょ[清書] 草稿などを、新たに丁寧に書き直すこと。また、そのもの。浄書(じょうしょ)に同じ。

せきとく[尺牘とく] 手紙のこと。尺は一尺、牘は文字を書いた木や竹の札のことで、中国の漢代に一尺ほどの木の札に手紙を書いたことによる。日本では、主として漢文を用いた中国式のものをいう。

ぜんえいしょ[前衛書]第二次世界大戦後、旧来の書法や造形にとらわれず、創造性を強く押し出す芸術運動がおこった。西洋の芸術論も踏まえ、文字の概念を超えたこの運動は、海外にも積極的に活動の場を求めた。墨象という言い方も、しばしばされる。
ぜんし[全紙] 画仙紙一枚全判の大きさをいう。半折(はんせつ)、聯落(れんおち)、聯(れん)などの寸法の標準になっている。右図参照

せんじぼん[千字本]「天地玄黄」にはじまり「焉哉乎也」で終わる4言250句 千字の異なる文字で成る。梁の武帝は王子たちに書を学ばせるため、殷鉄石(いんてつせき)に命じて王羲之(おうぎし)の筆跡の中から重複しない文字1000字を模写させ、さらに周興嗣(しゅうこうじ)にその1000字を順序立てて韻文(いんぶん)にするように命じたところ、周は一夜にしてこれを完成した、という。

せんそう[線装] 冊子本の装幀様式の中、糸で綴じる方法。5枚ぐらいずつ重ねた紙を2つ折りにし、その幾束かを重ねて糸でかがる大和綴(やまととじ)は、鎌倉時代以降、それまでの粘葉装(でっちょうそう)にかわって広く用いられた。室町時代を過ぎると、袋綴じがあらわれる。これは、紙を1枚づつ半分に折って重ね、折り目でない側を糸で綴じる方法である。その後、一般的な冊子は大半が袋綴じになった。

そうがな[草がな] かな文字は学問的に、真がな、草がな、平がな、片かなに分類される。草がなは草のかな、草の手、草といい、平安初期から漢字の草書を用いてかなを表記した。楷書の真がなと違い、造形も豊かで早く書けるため、かなの簡略化は一層進んだ。これがさらに単純化されたのが女手(平がな)である。

そうこうてんぼく[双鉤填墨] 複製品を作る技術の一種。真跡の上に薄い紙を置き、文字の輪郭を写しとり(籠字)、その中に裏から墨を塗り真跡と見まごうばかりに作る技術。御物の「喪乱帖(そうらんじょう)」は代表作である。

そうし[冊子、策子、草子、双紙、草紙] 書物、本その物を指すが、一説に冊子(さっし)の音便とするように、巻子本でない本の装幀をいう。

そうしょ[草書] 漢字の書体の一つ。漢の初め頃に生まれた書体で隷書の点画を省き、波勢を消滅し、簡略化し、さらに速書したもの。王羲之(おうぎし)らに至り頂点に達した。この書体は、わが国のかなの書体にも用いられ、草のかなとして一世を風靡した。「秋萩帖」はその代表作である。

ぞうしょいん[蔵書印]書籍や文書などに、その所蔵者が自己の所有であることを明確にするために押す印。社寺や個人の名を記したもの、堂号、詩句など種々の印が用いられる。

ぞうぞうき[造象記] 造象の由来を記した金石文。北魏の龍門造象記は石に刻してある。金銅仏の金文とともに当時の所有知る貴重な遺品である。右図は 龍門四品と称し最佳と言われている。

そうひつ[送筆] 紙面に筆を下ろし、筆を起こしてから線が始まる。この時から収筆に至るまでの筆の送り方、すなわち運筆法を言う。送筆の遅速、緩急、抑揚、強弱などの変化が書の線の生命である。

ぞうほ[蔵鋒] 用筆法の一種で、鋒とは筆の穂先を意味し、露鋒に対する語。起筆の時、筆の穂先を包みかくす筆使いを言う。すなわちその用筆法は逆入して穂先を包み込むようにして起筆し、筆を真直ぐに立てて送筆する(隷書の書き方)。

そくひつ[側筆]用筆法の一つで、筆を傾けて書くこと。この方法は書線の一辺だけに穂先が通るため、別の一辺は穂の腹がこすってささくれる。点画を角ばらせて鋭さを出しやすいが、扁平な線になる。一般的にはこの用筆法は死鋒と言われ好まれない。

そし[素紙] 漉き上げたままの紙で、何の加工もしていない紙。

そつい[率意] なにも意図しないで何気なく書かれたものを率意の書と言う。芸術作品は意図をもって制作するが、書道史上の名品は必ずしもあらかじめ用意して揮毫したものより、作品に傑作が多い。「蘭亭序」などはその例であり、真の実力が発揮されている。