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Martinレポート
甘い香りにつつまれます



1 はじめに

2002年7月の暑い金曜の夜、ネットで何気なく楽器屋さんのサイトを見ていたら、なんと、憧れのマーチンが、大台を切った値段で出ていました。
土曜日になり、はやる気持ちを抑えながら、渋谷へ向かいました。
ほぼ20年ぶりに降りた渋谷の街は、気が遠くなるほど暑く、日陰を選んで進みます。

クロサワ楽器渋谷店に着きましたが、開店の11時まで、まだ30分あります。
いよいよ、開店。1番乗りで、ウクレレ売場へ向かいます。

昨夜、目を付けていた1950年代のマーチンが壁にぶら下がっていました。
ヘッドには金に輝くMartinのロゴ。艶やかなボディ。まさにマーチンです。
早速、弾かせてもらいました。

「なんという、乾いた音なんだ!!しかも音が大きい!!」もう、感激です。
ふと、壁を見ると、マーチンによく似た、ヘッドにマークの入っていない古いノーブランドウクレレが、私を呼んでいます。

札を見ると、「Martin Style 0 '20」とあります。
今度はこちらを弾かせてもらいます。手にとった瞬間、「なんて、軽いんだ!!」
そして、チューニングをしようとペグを見ると、木の棒が突っ込んであるだけです。
これが、噂に聞いた「フリクション・ペグ」です。
弾いてみて、ビックリ。先ほどの'50年代のマーチンと比べると、遙かに乾いた大きな音です。
値段はハードケースが付きませんが、'50と同じです。

フリクションペグで大丈夫なのだろうか?
'50年代の方が、遙かに綺麗だ。
でも、'20年代の方が、より強い力で私を惹きつけています。

迷いましたが、結局、'20年代のマーチンを家へ連れて帰ることにしました。


2 歴史

さて、マーチンそのものの歴史は、書籍やマーチン専門の各サイトをご覧いただくとして、このマーチンが生まれた、1920年代とは、どんな時代だったのでしょうか?
娘の持ってる「資料カラー歴史:浜島書店」の年表をひもときます。

【日本のうごき】

  • 1920 大正9  国際連盟に加入し常任理事国となる
               第1回メーデー
  • 1921 大正10 ワシントン会議に出席 日英同盟を廃止
  • 1922 大正11 海軍軍縮条約・9カ国条約に調印
  • 1923 大正12 関東大震災
  • 1924 大正13 第2次護憲運動がおこる 加藤高明内閣成立(政党内閣)
  • 1925 大正14 治安維持法公布 普通選挙法制定
  • 1926 昭和1  昭和天皇が即位
  • 1927 昭和2  金融恐慌
  • 1928 昭和3  第1回普通選挙

【世界のうごき】

  • 1920 国際連盟成立
  • 1921 ワシントン会議
  • 1922 ソビエト社会主義共和国連邦が成立
  • 1928 パリ不戦条約
  • 1929 ニューヨークで株価大暴落 世界恐慌がおこる 

こんな激動の時代に、このマーチンは生まれて、80年後の21世紀に私のもとへやってきました。感慨もひとしおです。


3 全体

それでは、全体の姿からご覧いただきましょう。

飾りのない、シンプルなデザインですが、現在の色々なメーカーのウクレレの手本となった完成された形です。


4 ヘッド

次にヘッドをご覧ください。

表から見ると、完全にノーブランドウクレレの様です。しかし、裏面には、
C.F.MARTIN & Co の刻印がしっかりと施されています。
なお、ナットはエボニーです。

続いて、ペグをご覧ください。

なんと、木のペグです。ペグの柱は円柱ではなく、わずかに先に向けて細くなっています。ヘッドの穴も傾斜がついており、この形状がピタリと合い、ペグと穴の間に生じる摩擦力により弦の張力に対抗しています。

グローバーやゴトーの高級ペグと比較すると、なんとも頼りない感じですが、きちんとチューニングできますし、弦も全く緩みません。
考えてみれば、ヴァイオリンや三線もこのタイプのフリクション・ペグですね。
クロサワ楽器の店員さんの話では、すべるようならば、チョークを付ければ改善されるとのことでしたが、今のところ大丈夫です。

特筆すべき点は、ヘッドの軽さです。硬くて軽い木ペグの採用により、驚くほどヘッドが軽くなっています。長時間弾いているうちに、ヘッドが下がってくる心配はありません。

また、ペグの材質が「木」であるので、ヘッドとの親和性も良く、音にかなり影響を及ぼしていると想像できますが、詳しいことはわかりません。

■追記

木ペグにつきましては、こちらをご覧ください。


5 ネック

指板は、おそらくローズウッドの仲間だろうと思います。堅い木でできています。
5,7.10フレットに、遠慮がちに小さなポジションマークが入っています。
弦高は低く、非常に押さえやすくなっています。ネックの厚みも薄く、形状は半円で、左手によく馴染みます。フレット数は12で、12フレットでボディと接続しています。
ネックはマホガニーの無垢から削り出されたものです。曲がりや反りは全くありません。

右上の写真をご覧ください。
フレットワイヤーはI型になっています。今のウクレレはほとんど頭が丸くなったT型ですが、特に指が引っかかることはありません。

ピッチは非常に正確で、ローポジションでもハイポジションでも音程の狂いはほとんどありません。
1弦と4弦は12フレットでピタリと音程が合います。2弦12フレットは+5セント、3弦12フレットで+15セントの誤差がでますが、実用上は全く問題はないと思います。


6 ボディ

ボディはマホガニー単板で、表板・裏板は1ピース、側板は2ピースになっています。
木目は非常に美しく、目が詰まっています。
板の厚みは、1mm以下ですが、80年も経っているのに、ゆがみは全くありません。
通常、長く使っていると、弦にブリッジが引っ張られて、サウンドホールとブリッジの間がへこんで来ますが、このマーチンの材は、よっぽど良い物を使っているのでしょう。

塗装はおそらくラッカーだと思います。非常に薄く塗ってあるので、一度思いっきり弾いたら、すぐに爪の跡がつきました。


7 ブリッジ

ブリッジはマホガニー、サドルはエボニーです。
溝は長年使ってきたのにもかかわらず、無傷です。また、ブリッジはしっかりとボディに接着されています。


8 サウンドホール

この、マーチンの唯一のおしゃれが、サウンドホールの縁取りです。
サウンドホールの奥に、ヘッド裏と同じロゴが焼き印されています。


9 重さ

計量ばかりで測ってみました。重さは、なんと270gです。小さなリンゴほどの重さです。比較するためにFamous FU-250を測ってみましたら、330gでした。

木ペグ、材の薄さ、そして長年の乾燥により、こんなに軽くなったのだと思います。
ちなみに、キティちゃんは、リンゴ3個分の体重だそうです(笑)


10 音

さて、音ですが、第1の特徴は、「軽い」ことです。
コアのカマカを凌ぐような軽い音がでます。

そして、第2に「澄んだ音」です。クリアで透明な音がでます。
最近のマホガニーのウクレレを弾くと、透明な音の中にも、わずかばかりですが、淀んだ部分があります。しかし、このマーチンは清流の様に澄みきっています。

そして、第3に「音が大きい」ことです。
この小さなボディからは想像できないぐらいのボリュームで鳴ります。
先日、NUAの例会へ持っていきましたが、40人で合奏していても、自分のウクレレの音がくっきりと浮かび上がるように聞こえました。

そして、弦との相性ですが、マーチン弦がとてもよく似合います。
NYLGUT弦を張ってみると、歯切れがよくきらびやかな音になりました。
例えるなら、マーチン弦を張ったマーチンは「真空管アンプ」の音です。角が取れたまろやかな音です。NYLGUT弦を張ったマーチンはいわば「高音質CD」の音で緻密な音が出ます。


11 おわりに

ハードケースは付いていなかったので、クロサワ楽器さんで、プチプチシートにくるんで、ビニールの手提げ袋に入れてもらいました。

家へ帰ると、嫁さんが、
「また、ウクレレなの!!でも、今度のはケースがないのね」
そして、プチプチシートを外して、中を見せると、
「なんで、中古のバッタものを買ってくるの?糸巻きなんて、木の棒じゃない」
そして、
「掃除のじゃまだから、どっかへしまっといてね」

ハイ!当然、一番丈夫なハードケースの中にしまっています(^^)

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