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釣り糸弦レポート2


1 さらなる分析

釣り糸弦のレポートを発表してから、MATTさんから次のようなメールをいただきました。

周波数分析のデータからなんとかハーモニックスの次数を読み取ろうと考えて、周波数軸だけ6倍に延ばして一枚のシートに貼り付けてみました
  1. まず1弦ですが、マーチンが11次、13次程度で終わるのに対して釣り糸は17次まではっきりでていますね!
  2. 2弦は両方ともオカシイですね。まずマーチンは1次の山が割れていますし、釣り糸は2次がほとんど見えません。4本の弦のスペクトラムから想像すると、1弦のA音付近に大きなフォルマントがあるようですね。このフォルマントの周波数と弦の振動が干渉したために山が割れたり2次が見えない(おそらくピックアップを取り付けた位置では反共振だったのかも)ことになったのでしょうか。
  3. 3弦はフォルマントの影響から2次の方が高くなっています。釣り糸だけでなく、太いウクレレ弦も同じ傾向であるのが面白いですね!
  4. 4弦のローGではっきりわかることは、このサイズのボディーにローGを張っても鳴ってくれないということでしょうか両弦とも3次のレベルが高いので、やはりこのあたりにフォルマントが存在するようですね!
そこで、スペクトルのグラフの横軸を6倍に拡大してみました。すべて横軸(周波数)の位置がそろうように調整してあります。
グラフの見方は、1弦の場合1Aとは基本となる1倍音のAを示し、2A2倍音のA3E3倍音のE・・・を示します。また(11)11倍音を示しますが、対応する音名がない場合は( )で示します。
なお、横軸は対数ですので、高い周波数ほど間隔が狭くなっています。ですから、4弦1次の音は他より低い音ですので、面積が極端に広くなっています。比較するときは山の高さのみに注目してください。

 

さらにMATTさんとのメールのやりとりが続きます。shinfujiMATTさんです。
Q1:1弦ですが、マーチンが11次、13次程度で終わるのに対して釣り糸は17次まではっきりでているのは、釣り糸の方がテンションが高いために、高い成分まででるのでしょうか?

A1:それもありますね。それ以外に「弦自体の材質の剛性/材質の内部損失」
・・・これが共振もしくは振動の尖鋭度を示し「Q」で表します・・・
が高い、すなわち釣り糸のほうがスチール弦に近い(といっても距離はありますが)鳴り方です。(ナイロンは「ゴム紐」に近い、といったら言い過ぎでしょうけど・・)
錆びたスチール弦を張り替えたとき、大変明るい音がするのは錆が損失を増加させていたのでしょう。

もう一つは、サンプリングした位置(発音後の時間で)が異なった場合、高調波成分が異なります。一般に高次調波ほど早く減衰しますので、もしかすると釣り糸は発音直後で・・・という可能性もあります。
(注:どちらとも発音直後でサンプリングしています)


Q2:2弦の反共振とは?

A2:ボディーにピックアップを取り付ける際の留意点としては、取り付けたことでボディーの共鳴モードを変えないようにすることでしょう。
ピックアップの出力をアンプに入れて演奏するだけでしたら気に入った場所に取り付けて構わないでしょうが、今回の様に「分析」が前提の場合でしたら、広帯域のコンデンサーマイクを使って非接触で拾ったほうがより正確になったかも知れません。
一般にマイクでもピックアップでもそれ自体の振動部と固定部の変位なり、速度なり、加速度なりの差分で電気信号を発生しますので振動部と固定部が同位相で動いてしまうと、実際には振動していても電気出力がゼロになる場合すらあります。
なお、反共振というのはたまたまその位置で共振がちょうど打ち消し合って全く振動しない状態を指します。
(注:ダイナミックマイクで録りました。しかも両面テープでボディに貼り付けて!)


Q3:「フォルマント」とは?

A3:パラメトリック・イコライザーをご存じでしょうか?あれは使用者がいくつかの共振回路の中心周波数、感度そしてQ(尖鋭度)を設定して音色を変化させる装置ですが、これは実際の楽器や人の声をシミュレートさせようとしたものなのです。
「楽音」はご承知のようにたとえ同じ音程の音でも「音色」が異なり、どの楽器か判別できます。その判別に寄与する要素としてはアタック、サステイン、ディケイ等のエンベロープ(振幅の時間変化)の違い、発音中のビブラート等の音程の揺らぎ、ノイズ成分の付加等々たくさんありますが、フォルマントもこの中で重要な地位を占めております。
簡単に言いますと「いろいろな音をだしても変化しない高調波成分分布の山の部分(複数)」(簡単じゃない!)でして、それぞれの楽器の発音源による「音」をこの固有の山(フォルマント)に加えることで、その楽器特有の音色が得られます。

たとえばフルートはほとんど気柱の共鳴による発音のため、基本周波数しかきこえず、サインウェーブに近い音になります。
これに対しクラリネットはリードで発音するため、それ自体広範囲の高調波をもっています。そして一端がオープンの共鳴管を有するため、それによってできるフォルマントと、「開管」独特の共鳴モードにより奇数次高調波しかあらわれないため、「ポエー」という独特の音色を持ちます。

人間の声などはもっと複雑で、口腔内の共鳴によるフォルマントだけでなく、体形により異なる各種フォルマントも存在しますので、声を聞けば誰だかわかりますし、物まねの芸人さんは「仕草」までまねることで、その人物のフォルマントに似せるようです。


Q4:3弦は太さがあんなにも違うのに、大変似た傾向が伺われます。

A4:これにプラスして一般の太い弦のもつ「弾いたときの音程の揺らぎ」がないことから「釣り糸」の効果は絶大ですね!


Q5:4弦のLow-G弦は1次のGの伸びがありません。これは大きな発見です。スタンダード型ウクレレにはLow-Gは無理があるのですね?

A5:オオタサンも電気の力を借りてLow-Gを弾いています。

さらに、MATTさんからゲストブックの方にこのような書き込みをいただきました。
カヴィカ氏のサイト
http://www.ukuleles.com/Technology/sounds.html
によると、スタンダード(ソプラノ)ウクレレのボディーの共鳴周波数は3弦のC音にほぼ一致するとありましたので、ローGの弦を張るのは無理があるんだなと理解しておりました。
ところがshinfujiさんの研究によると、どうやらそれよりも遥かに高い周波数で共振しているような傾向に読み取られます。
具体的には3弦C音(261Hz)の2倍と4弦G音(196Hz)の3倍の付近、すなわち500Hzよりすこし上のあたりにフォルマント(固有の山)がありそうです
これは何を意味するのでしょうか。カヴィカ氏が計算によって求めた理論値が実際と合っていないのでしょうか。わからなくなりました。

 

謎はどんどん深くなりました。
3弦C音(261Hz)の2倍とは1弦の3フレット、4弦G音(196Hz)の3倍とは1弦5フレットです。
すなわち、スタンダードウクレレでは1弦でメロディを弾くことが理にかなっていると思います
釣り糸弦に限らず、一般的に1弦はテンションが一番強くなっています。これは、1弦でメロディを弾くことを想定しているのかも知れません。

2 まとめ
今回の釣り糸弦レポートは、私の拙いレポートからMATTさんがウクレレの本質に迫る分析をしていただきました。ありがとうございました。

ウクレレという小さな楽器には、まだまだ知られざる謎が隠されています。
これからも、そんな謎=魅力を探求していきたいと思います。
でも、ウクレレの腕を磨くことも忘れないようにします!!

3 おまけ
ウクレレの各弦の倍音を参考までに示します。
各弦に対応する音名(ただし大きくずれている場合はカッコで)、そして十二平均律とのズレを表します。
(これも、MATTさんに教わりました)

 

次数 4弦 3弦 2弦 1弦 ズレ(セント)
1,2,4,8,16,32 0.000
3,6,12,24 + 1.955
5,10,20 G# C# −13.686
7,14,28 (F) (A#) (D) (G) −31.174
9,18 F# + 3.910
11,22 (C#) (F#) (A#) (D#) −48.682
13,26 (D#) (G#) (C) (F) +40.528
15,30 F# D# G# −11.731
17 G# C# A# + 4.955
19 A# D# − 2.487
21 (C) (F) (A) (D) −29.219
23 (C#) (F#) (A#) (D#) +28.274
25 (D#) (G#)

(C)

(F) −27.373
27 C# F# + 5.865
29 (F) (A#) (D) (G) +29.577
31 (F#) (B) (D#) (G#) +45.036


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