ホームukuleleな研究>釣り糸弦レポート


ukuleleな研究
ukuleleに関する様々な研究レポート



釣り糸弦レポート


1 はじめに

ウクレレを弾いている人達の間では、安くて音の悪い弦を張っていると、
「釣り糸みたいな弦だな!!」といわれます。
しかし、本当にそうなのでしょうか?

2000年8月にMATTさんから、ウクレレに張る釣り糸の選び方を教えていただきました。要約しますと次のとおりです。

  • オオタサンは弦のタッチをどの弦でも同じにするために、1〜3弦に同じ太さの弦を張っている(4弦はLow-G弦)
  • それは0.028インチ(0.71ミリ)のK社の特注品(ghsの4弦と同じ太さです)
  • 釣り糸にはフロロカーボン製の糸があり、その密度はナイロンの56%増しなので、オオタサンの0.71mmのナイロン弦と同じテンションを得るには10号(0.52mm)の釣り糸が適している
    (テンションは弦の単位当たり重量=密度=径の2乗に比例する)

その後MATTさんからゲストブックへ次のようなコメントをいただきました。

早速カマカのスタンダードに張り、もう1台のカマカと比較してみたところ、当然弦によるテンションの違いは有るのですが、予想していた「頼りない音」は出ず、結構鳴ってくれました。
それだけでなく、今まで3弦の音程が気になっていたのが、ぴたっと安定したのです。

1弦と4弦のテンションが強い(といってもテナーのC6チューニングほど強くはありません)のがこころよい感じです。
そして、いままで太い3弦の音に慣れていたので新3弦の音は新鮮なオドロキです。(善し悪しではなく「違っている」感じで、物足らない方も居ると思います)

そして後日、MATTさんにお会いしたときに釣り糸を分けていただきました。
それでは、あっと驚く、釣り糸の不思議な世界をお楽しみください!!

2 実験方法

Famous FU-250にマーチン弦と釣り糸を張り、オクターブ=12フレットのピッチをチューナーで計測し、音程の正確さを調べた。
また、ピックアップマイクで各弦の音をパソコンのハードディスクへ録音。波形とスペクトルを解析することにより、特徴を調べた。

比較対照にマーチン弦を選んだ理由は、今まで試した弦の中で、マーチン弦がマホガニーのFamous FU-250に一番似合うからです(私個人の見解ですが)。
また、両者とも色は透明であり、釣り糸の径がマーチン弦の1弦とほぼ同じなので、共通する部分があることも、選定理由となりました。

ここで、マーチン弦と釣り糸の仕様を示します。

仕 様

区分

マーチン弦 釣り糸 (10号)
1弦 0.021in (0.53mm) 0.020in (0.52mm)
2弦 0.032in (0.81mm) 0.020in (0.52mm)
3弦 0.036in (0.91mm) 0.020in (0.52mm)
4弦 0.025in (0.64mm) 0.020in (0.52mm)
材質 ナイロン フロロカーボン
価格 600円〜800円/1セット 5,000円/50 m

釣り糸は1巻き50mの値段が約5000円と高価です。しかし、1本1mに切り分けると、1セット当たり400円となるので、共同購入すれば安くなります。
前述しましたように、釣り糸の径はマーチン弦の1弦とほぼ同じで非常に細いです。
ウクレレに付けると遠目だと見えません。

また、フロロカーボンの屈折率は水と同じなので、水中では、魚から全く見えなくなります。
ですから、海の中でサメに弦を引きちぎられる危険は回避できます。

写真はLow-G仕様にしておりますので、4弦は見えています。

アップにすると、ようやく見えてきます。
1〜3弦が同じ太さなので、太い3弦を見慣れている方には奇異に感じますね。

釣り糸は細いうえに表面がツルツルしていますので、糸巻きの穴には2回とおし、穴から抜けないようにしてください。

また、使い古しの釣り糸は、魚のにおいがして、ネコに襲われる危険があります。ご注意を!!


3 実験結果

1 ピッチ(音程)の正確さ

開放状態でチューニングした後、1オクターブ上(12フレット)のピッチを計測した結果は次のとおりです。

12フレットにおけるピッチの差異

区分

1弦 2弦 3弦 Low-G弦
マーチン弦 +25セント +25セント +20セント ±0セント
釣り糸 +10セント +5セント +5セント ±0セント
15セント 20セント 20セント 0セント

注:4弦はLOW-G弦 上はFamous製、下はD'Addario製

マーチン弦は全ての弦でオクターブ・チューニングが若干ずれています。
それに対し、釣り糸は満足できる結果でした。
注:マーチン弦が劣っているという訳ではなく、釣り糸が驚異的に正確ということです。

弦はサドルとナットと接する箇所を「節」として振動し、半分の長さの位置(12フレット)で1オクターブ上の音が出ます。

理論的には1弦から4弦まですべて12フレットで1オクターブ上の音が出る訳ですが、実際の弦には太さがあります。

太い弦は曲がりにくいのでサドルとナットに接した箇所から少し離れたところに振動の「節」ができます。このため、太い弦は12フレットの音程がずれてきます。

釣り糸は細く、しかも径が同じなので、すべての弦でオクターブピッチが正確になります。

2 波形について

マーチン弦と釣り糸の各弦の波形を次に示します。
縦軸は音の大きさ、横軸は時間を表しています。

 

 

 

2弦の音の伸びが釣り糸の方が長くなっていますが、マーチン弦と釣り糸はほぼ同じ波形です。
このことは、音が発音してから消えるまでのパターン、すなわち、音の鳴り方がほぼ同じであることが分かります。
参考で計測した4弦のLow-G弦はFamousとD'Addarioで明らかな違いがあります。

3 スペクトル(周波数成分)について

音程はひとつの周波数で表現されますが、実際の音は基本となる周波数に倍音が重なり表情を付けています。

すなわち、同じ音程で鳴っていても、ピアノとウクレレが区別できるのは、この倍音の違いによります。

そこで、マーチン弦と釣り糸の音質の違いを測るため、スペクトル分析を行いました。
スペクトル分析とは光をプリズムにとおし虹をつくる現象と同じです。

 

区分

マーチン弦 釣り糸
1弦
2弦
3弦
4弦*
参考

 

驚いたことに、マーチン弦と釣り糸はほぼ同じスペクトルを示しました。
3弦が若干違いますが、これはテンションがあまりにも違うためだと考えられます。しかし、基本的な特徴は同じです。

全体的に見て、釣り糸の方が高い周波数成分が多くなっており、この分だけ、きらびやかな音だといえるでしょう。

参考のLow-G弦どうしの違いは、マーチン弦と釣り糸の違いより、大きくなっています。


4 まとめ

釣り糸は粗末な弦の代名詞ではないことが判明しました。性能はマーチン弦とほぼ同じです。
ここに、釣り糸のメリット、デメリットをまとめます。

メリット

  • 4弦とも同じ径の釣り糸を張ると、音程が安定する。特に高音部の音程が改善される

  • 3弦のテンションが下がるため、弦を押さえるのが楽になる(弦に指を置く感じ)

  • 1弦のテンションが上がるため、ソロ弾きのとき、1弦にメロディーを割り振れば、メロディが引き立つようになる

  • 近くに楽器屋がなくても、釣り道具店(上州屋など)で購入可能

デメリット

  • 3弦は真っ直ぐ上から押さえないと、チョーキングしてしまう

  • ジャカジャカ系には向かない(3弦が柔らかいので指にからみつく)

  • ひとりで買う場合、高くつく(でも一生使う量が確保できます)

  • ウクレレによっては3弦がビビる可能性がある


■釣り糸弦レポートその2
上の文字をクリックしてください

「ukuleleな研究」目次へ戻る


ホーム/うちのukuleleたち/ukuleleの小物たち/ukuleleな研究
/ukulele伝説/ukuleleなゲストブック/ukuleleなリンク