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テナー弦考察


1 はじめに

ウクレレは大きさによって、小さい方から、スタンダード、コンサート、テナー、バリトンの4つのタイプがあります。
そして、そのチューニングはスタンダード、コンサートはGCEA、バリトンはギターの1〜4弦と同じDGBEとなっています。
それでは、テナーはどうかといいますと、スタンダードと同じGCEA、ギターの1〜4弦と同じDGBE(ただし、4弦Dは1オクターブ上)の2種類のチューニングがあります。
テナーを愛用している代表的なプレイヤーのジェイク・シマブクロさんはGCEA、ライル・リッツさんはDGBEチューニングにしています。

テナーをはじめて手にしたときに、マーティンのテナー弦も同時に購入しましたが、パッケージにはDGBEと書いてありました。楽器店でたずねると、
「みんなこの弦をテナーにGCEAで張っているよ」
と言われたので、GCEAで張ったところ、歯切れのよい金属的な音は出るものの、テンションが強すぎて、セーハが上手くできません。
また、楽器にも負担が大きいので、すぐにDGBEにしました。DGBEの方がサスティーンの効いた甘い音が出ます。

ハイポジションを多用する曲を弾くとき、スタンダードだと10フレットより上ではセーハができません(指が太すぎるのが原因ですが・・・)。そこで、フレット間隔の広いテナーで無理なくGCEAチューニングにできないものかと悩んでおりました。
そんな折り、NUA(日本ウクレレ協会)の小林正巳さんからクリスマス・プレゼントが届きました。
それは、テナー用のNYLGUT弦でした。中を開けてビックリしました。なんと、そーめんより細い弦が入っていました!


2 テナー弦の太さ

最初に一般的な弦について、紹介いたします。
最も手に入れやすい弦として、マーティン弦のスタンダード用とテナー用の弦を比較してみます。

弦の直径の比較

区分

品番

1弦

2弦

3弦

4弦

指定チューニング
スタンダード弦 M600 0.53mm 0.81mm 0.91mm 0.64mm

ADF#B

テナー弦 M620 0.69mm 0.97mm 0.97mm* 0.81mm

DGBE

注:テナー用3弦はアルミの巻弦

スタンダードはアメリカンチューニングであるADF#Bと指定がありますが、GCEAチューニングでもきちんと鳴ります。
テナー弦はDGBEと指定されていますが、ナイロン弦はよく伸びるのでGCEAで張っても切れません。

ここで、両者を比較してみましょう。テナー弦の方が太くなっています。
弦楽器の場合、楽器が大きくなると、弦が太くなるのは常識ですね。

でも、何か変です。たいていの弦楽器は大きくなるほど、チューニングが低くなりますが、ここでは、テナーをスタンダードと同じチューニングにしようとしています。
はたして、これで良いのでしょうか?

音程を一定とした場合、

T=KL2D2 T:テンション K:定数項 L:弦長 D:弦の径

という関係が成り立ちます。すなわち、弦長の2乗とテンションは正比例し、弦の径の2乗とテンションは正比例します。
テナーはスタンダードより弦長が長いため、もともとテンションが高く、弦が太くなると、さらにテンションが上がります。
私の所有するテナーの弦長は430mm、スタンダードは346mmですので、スタンダードのテンションを1.00とした場合のテナーのテンションを計算すると下表のようになります。

テンションの比較

区分

1弦

2弦

3弦

4弦

スタンダード 1.000 1.000 1.000 1.000
テナー 2.618 2.215

-

2.474

注:テナー3弦は巻弦のため比較できません

なんと、太いテナー用弦をGCEAで張ると、テンションはスタンダードの2.5倍になってしまいます。

そこで、テンションを下げて弾きやすくするためには、弦を細くすれば良いことに気が付きます。
ghsのスタンダード弦は長いので、テナーに張ってみました。
すると、テンションが下がり非常に弾きやすくなりました。
しかし、ボヨ〜ンとした音はキレが悪く、低いフレットでは弦がびびるようになりました。
世の中、そんなに上手くいきませんね。


3 NYLGUT弦


左から、スタンダード、コンサート、テナー

前置きが長くなりました。
今回、小林正巳さんから送っていただいたテナー弦は、世界初の人造ガット弦である、Aquila社のNYLGUT弦です。
でも、Aquila社では、「テナー用」のセットは作っていません。それどころか、普通の「ウクレレ用」のセット弦すらありません。
しかし、弦のラインナップが豊富なので、その中から、小林さんに、スタンダード用、コンサート用、テナー用を選んでいただきました。

区分

1弦

2弦

3弦

4弦

スタンダード用 0.56mm 0.73mm 0.91mm 0.62mm
コンサート用 0.48mm 0.64mm 0.79mm 0.54mm
テナー用 0.44mm 0.58mm 0.73mm 0.50mm

※このレポートを作成した当時は、まだ日本ではNYLGUT弦は販売されていませんでした。現在販売されているNYLGUT弦は、スタンダード<コンサート<テナーとゲージが太くなっています。(2005.2.13追記)

スタンダード、コンサート、テナーの順に弦の径が細くなっています。
テナー用の1弦にいたっては、まさにそーめんです(笑)。


スタンダード用のNYLGUT弦はマーティン弦とほぼ同じ径


コンサート用のNYLGUT弦はやや細目


テナー用のNYLGUT弦はまるで「そーめん」

さて、ここで、各々のウクレレの弦長を測ってみます。

区分

弦長

備 考

スタンダード 346mm Nakanishi No80 マホガニー単板
コンサート 382mm VG U05 コア単板
テナー 430mm Pupukea UF-T60 マホガニー単板

そこで、上に示した式 T=KL2D2 を用い、スタンダードのテンションを1.00とした場合の各ウクレレのテンションを計算すると下表のようになります。
テンションの比較

区分

1弦 2弦 3弦 4弦
スタンダード 1.000 1.000 1.000 1.000
コンサート 0.895 0.937 0.919 0.925
テナー 0.953 0.975 0.994 1.004

NYLGUT弦の材質は「ポリアセタール」と想像していますが、この材料はナイロンと比較して、伸びが3分の1から4分の1しかありません。
ですから、伸びに余裕がないため強く張ると切れてしまう恐れがあります。
そこで、今回、小林さんはスタンダードのテンションの±10%に収まるように、これらの弦をセレクトしていただきました。

テンションはスタンダードとはほぼ同じですが、弦長が伸びるため、弾いた感じは、まるでエレキギターの弦のようにソフトなタッチで、セーハが非常に楽になりました。
一般的にテンションが下がるとボヨ〜ンとぼやけた音になりますが、NYLGUT弦はコンサートもテナーも輪郭のはっきりしたきらびやかな音が出ます。ナイロン弦を高テンションに張ったときと同じ様な金属的な響きがあります。
びびりが心配されましたが、弦が細くて堅いので、強く弾いてもびびりは発生しません。


4 音の分析

最初に各ウクレレの3弦C音をお聴きください。

 (1)波形分析

各ウクレレの3弦Cの波形を計測してみました。

波  形

発音時間

1880ms

4597ms

5607ms


スタンダードが発音後急カーブで音が小さくなるのに対し、コンサートは音の減衰が直線的で、しかも、サスティーンが2.4倍の長さになっています。
(音が小さくなってもずっと発音が続いています)

テナーはさらに減衰がゆっくりになりますが、弦長が長いため、音に揺らぎが見られます。また、サスティーンは3.0倍の長さになっています。

このことから、テンションが同じ場合、弦長が長くなるとサスティーンが長くなることが分かります。

 (2)周波数分析

続いて、各ウクレレ3弦Cの周波数分析を行ってみました。


違いは一目瞭然です。

NYLGUT弦はもともと倍音を多く含んだゴージャスな音が特徴ですが、コンサート、テナーでは、さらに倍音が多く出ています。

コンサートにいたっては、基音より2次音、8次音、9次音が高くなっています。
これは、コア単板のVG自体がデフォルトの弦でもきらびやかな音が出ていたので、ウクレレ自体の特性かもしれません。

テナーとスタンダードは同じマホガニー単板なので、そんなに差はないと思いますが、それでも、2次音が基音とほぼ同じレベルで出ています。

このことから、テンションは同じでも、弦長が長くなると、「倍音が強調される」=「金属的なきらびやかな音になる」ということが分かりました。


5 まとめ

今回の研究を通じて、NYLGUT弦の威力を再確認することができました。
弦長の長いテナーにナイロン弦よりテンションを落として張っても、豪華な音質が得られ、また、ロングサスティーンが得られました。
そして、この素晴らしい音とともに、抜群の弾き易さを生み出しています。

しかし、NYLGUT弦が万能というわけではありません。
太いナイロン弦でテナーをガンガン攻める弾き方も魅力的です。

さて、現在(2002年1月)のところ、日本ではNYLGUT弦は残念ながら手に入りません。
個人輸入をされる方はコバさんのCOBA STUDIOHANAKOSAN(第5章第11話)弦を買う 海外送金(^_^;)で詳しく紹介されています。是非、ご覧ください。
また、Aquila社のホームページAquila USAも参考にしてください(ただし、英語)。

最後になりましたが、いつも素晴らしい弦を提供してくださる、小林正巳さんに感謝申し上げます。

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