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紫の弦 t2
t2=ターミネーター2?


1 はじめに

猛暑の続く2010年9月上旬、ハワイへ移住されたMATTさんから1通のエアメールが届きました。
「日本にも入っているのですが、チタンコートしたクラッシック弦を送ります。」という手紙と共に、9本の弦が入っていました。

D'Addarioのクラッシックギター用の弦です。早速、1つのパッケージを開けてみました。

中からは、淡い紫色の透明な弦が出てきました。
パッケージには「T2 Titanium Treble」と表記がされていますが、チタニウムをコーティングした高音用の弦のようです。
Titanium TrebleとTが二つあるので、「t2」という名前になったのだと思います。

クラシックギターの弦は6本ありますが、高音の1〜3弦はプレーンのナイロン弦が使われ、低音の4〜6弦は巻弦が使われています。
クラッシックギター用の弦もウクレレの弦のように通常はすべての弦をセットにして販売されていますが、この弦はバラ売り用の弦です。

MATTさんからお送りいただいたのは、ノーマル、ハード、エキストラハードの3種類の1,2,3弦用の弦です。まとめると下表のとおりです。

区分

1弦

2弦

3弦

ノーマル T4501
0.028" 0.71mm
T4502
0.032" 0.81mm
T4503
0.040" 1.02mm
ハード T4601
0.028" 0.71mm
T4602
0.032" 0.81mm
T4603
0.041" 1.04mm
エキストラハード T4401
0.029" 0.74mm
T4402
0.033" 0.84mm
T4403
0.042" 1.06mm

ちなみにD'Addarioのウクレレ弦(J65・Clear Nylon)は、1弦0.024"、2弦0.032"、3弦0.034"、4弦0.028"です。
t2弦は、1、2弦はウクレレ弦とほぼ同じですが、3弦がちょっと太くなっています。

エキストラハードをKAMAKAのスタンダードに張ろうとしましたが、太すぎてブリッジの溝に入りませんでした。
クラッシックギターと同じように弦を留めるタイプのブリッジなら問題ありませんが、溝タイプのブリッジの場合注意が必要です。

t2について、ネットで検索したところ、材質はナイロンでなく、「従来のナイロンよりも密度の高いモノフィラメント」とありました。(モノフィラメントとは撚り線ではない1本の繊維でできた線のことです)
ウクレレに張ってみた感じでは、どんどん伸びるフロロカーボンやNYLGUTとは違い、ナイロン弦に近い伸び方です。しかし、ナイロン弦より硬く、玉を作るのに力が要ります。

その後しばらく経ってから、MATTさんから再びエアメールが届きました。

MATTさんお手製のパッケージが入っていました。
High-G用セットで、
1st A:T4601 0.028"(ハード)
2nd E:T4602 0.032"(ハード)
3rd C:T4603 0.041"(ハード)
4th G:T4401 0.029"(エキストラハード)
という組み合わせです。

MATTさんによると、ハードを選んだのはハワイの若者たちがテンションの高い弦を好むのと、1弦、4弦ですこしでもゲージの差をつけたいところから決められたそうです。

さて、それではt2をウクレレに張ってみましょう。


2 レイラニの場合

ちょうどレイラニ(コンサートサイズ)にはD'Addarioのナイロン弦J65が張ってありました。

この弦は、枯れた音色がレイラニに似合うので、割と気に入っており、私の所有するウクレレの中で唯一のナイロン弦です(他はWorth弦とNYLGUT弦です)。

音を計測するために、ピックアップマイクをブリッジの横へ取り付け、プリアンプ経由でパソコンのオーディオボードへつなぎます。


ピックアップマイクはEDM製です。J65の表面はざらついていて半透明です。

ナイロン弦の計測が終わった後、MATTさんセレクトの弦セットを張り、音程が落ち着くまで2日置きました。
ペグで巻き取る感覚はナイロン弦と同じですが、テンションはかなり高いです。

淡い紫が高級感を醸し出しています。

それでは、音をお聴きください。

いかがでしょうか。ナイロン弦の方は枯れたハスキ−な音です。t2弦はクリアでまろやかで芯のある音です。
テンションの高いt2弦は、もっとヤンチャな音が出るのかと思いましたが、意外とおとなしかったです。
でも、音の大きさが全然違います。録音した音では音量をあわせていますが、生音はt2弦の方が断然パワーがあります。

それでは、両者の周波数特性をご覧ください。

区分

ナイロン弦

t2弦

4弦

3弦

2弦

1弦


ナイロン弦の方が倍音が多く、かつ、そのレベルも高いことがわかります。このため、枯れたハスキーな音になることが目でも確かめられました。

ところで、このナイロン弦の音は、どこかで聴いた弦の音に似ています。
そこで、WorthStringsのIWAO弦を張った、VGコンサートの音を録音してみました。


左:レイラニ、右:VG どちらもコンサート、コア単板

区分

ナイロン弦

Worth弦

3弦

2弦

1弦

※VGの4弦はLow-Gのため、比較していません。

この2者の波形は、どこかでデータを間違えたのでは、と再確認をしたほど良く似ています。
しかし、Worth弦の方がテンションが高いため、音量も大きく、「枯れた」というより「華やかな」音に聴こえます。


3 マーメイドの場合

さて、ウクレレをもう少し大きくしてみます。
M's CRAFT製のフルカスタムのマーメイドは、コンサートとテナーの中間の大きさで作ってもらっています。
当然ながら弦長が長くなるため、コンサートのレイラニよりテンションが上がってきますので、t2のノーマルを中心に張ってみました。

1st A:T4501 0.028"(ノーマル)
2nd E:T4502 0.032"(ノーマル)
3rd C:T4503 0.040"(ノーマル)
4th G:T4601 0.028"(ハード)

また、マーメイドはピックアップを内蔵していますので、このマイクから録音しました。

それでは、音をお聴きください。

いかがでしょうか。レイラニに張ったときと全く表情の違う音になりました。
華やかでにぎやかな音です。音量はさらにアップしています。
続いて、周波数特性をご覧ください。

区分

t2弦(マーメイド)

t2弦(レイラニ)

4弦

3弦

2弦

1弦


もう、笑ってしまうほど、明確な差が出ました。
マーメイドの方が、高次倍音が勢い良く出ています。

この陽気な音と音量なら、歌の伴奏時にウクレレの存在感がはっきりします。
また、1音1音の粒立ちが良いので、ソロの演奏にも威力を発揮すると思います。

ちょっとの弦長の差で、少しのテンションの違いで、t2弦は形を変えました。
t2の意味は、ひょっとして「T2 ターミネーター2」なのでしょうか。


4 まとめ

このt2弦は、テンションが高いので強度が十分なウクレレでないと、張ってはいけません。
また、弦高を低く調整していないと、非力な指では押さえられません。
さらに、右手は力強く振り抜かないと、弦に弾き飛ばされてしまいます。

初心者の方は手を出さない方が無難です。
中級以上の方で、きちんとした堅牢なウクレレをお持ちの方は、是非、挑戦してみてください。
今までとは次元の違う音が、いつものウクレレから出てきます。

最後に、いつもハワイの最新の情報をお教えていただいておりますMATTさんに感謝申し上げます。

■追記(2010/09/20)
MATTさんのブログにt2弦の記事がアップされました。是非、ご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/goomatt/e/a6682c1ee2ea995eb9d38040cc98ab3c

 

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