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マーメイド・レポート
世界にひとつだけのウクレレ


1 はじめに

ウクレレの本をながめていると、著名なウクレレ・ビルダーの方のオーダーメイド・ウクレレが数多く紹介されています。
個性あふれる素敵なウクレレたち。まあ、自分にはほど遠い世界だと思っておりました。
ビルダーの方と知り合う機会もないし、それ以前に資金がどれぐらい必要なのかも分かりません。

そんな折り、地元の公民館でウクレレ・サークルができたことを新聞の折り込み広告で知り、出かけたところ、運命的な出会いが待っていました。
ウクレレ・サークルの先生が、なんとウクレレ・ビルダーの方でした。
工房名はM 's CRAFT、うちから歩いて5分の所でウクレレを造っていらっしゃいました。
ビルダーの方は森 孝之さんです。ハワイでウクレレ造りを学ばれました。

森さんの造ったウクレレを見ているうちに、どうしても、森さんに自分だけのウクレレを造ってもらいたい気持ちが強くなり、嫁さんにナイショでオーダーしてしまいました(^^;
それでは、2004年10月末に完成しました、世界でひとつだけのウクレレをレポートいたします。


2 オーダーにあたって

私は、ウクレレをはじめて現在まで6年が経過しました。短いウクレレ歴ですが、今までウクレレを弾いてきて、「もし、こうだったら弾きやすいのにな。こんなウクレレがあったらいいのにな。」と思ったことを森さんへ伝えました。

ボディ
  • 大きさはコンサート。スタンダードだと大きな音量が得られないし、テナーは大きすぎて立って弾くことが困難。
  • 形はカッタウェイ。理由は、コンサートサイズのカッタウェイはほとんど見かけないし、何よりもカッコイイ。
  • 材質はコア。何といってもコアです。できれば、カーリーの美しいもの。
  • バインディングはメイプル。VGのコンサートにも使われていますが、コアとのコンビネーションが大変美しい。
  • サウンドホール周りはシェルで輝くように。
ネック
  • 材質はマホガニー。これは、最近のKoALOHAがコアのボディにマホガニーのネックを付けて、さらに音が良くなったと聞いたから。
  • 長さは、コンサートとテナーの間。指が太いのでフレット間隔がある方が弾きやすい反面、指が短いのでテナースケールだと届かないから。
  • 断面はマーチンのように。手が小さいので、薄めに。
指板
  • 真っ黒なエボニー(いわゆるマグロ)。長年使ってもへこまないように堅い木で。
  • ジョイントは14フレット。いわゆるロングネック。
  • 総フレット数も14フレット。ボディ部の指板にフレットがあると、ストロークの時に爪がフレットに当たって痛いから。それに、15フレット以上は弾かないので(^^;
  • インレイは人魚。大人のウクレレなので、バストは髪で隠さないように。また、この人魚が海の中を自由に泳ぎ回っているイメージを出したいので、ポジションマークはなし
    ただし、サイドには大きな白いポジションマークを。
ヘッド
  • オータJr.さんのようなワンサイドキータイプ。ペグはギア式のゴールド。
  • M 's CRAFTのトレードマーク(ゲッコー=やもり)をシェルで。ゲッコーはハワイでは幸せを呼ぶ生き物と言われています。
ピックガード
  • 表板が爪で傷つかないように。色は透明で目立たないように。
ピックアップ
  • ピエゾで表板の裏側に貼り付けるタイプ。箱鳴りを拾いエアー感を得られるように。
  • Worth Stringsのクリア・エクストラ(CE)フロロカーボン弦。力強い中にもメローな響きが欲しい。スタンダード・チューニングで。
ブリッジ
  • 材質はエボニー
  • 形式はピンで止めるタイプ。ブリッジ周りの掃除をしやすいように。
塗装
  • 材の色を活かすようにクリアで。
その他
  • その他はすべておまかせ。森さんの技術と感性を信頼します。

 

以上の注文で製作に取り掛かっていただきました。さて、どのようなウクレレが出来上がったのでしょうか。それは、想像を遙かに超えた素晴らしい作品でした。

3 全体

それでは、最初に正面と裏面の姿をご覧ください。

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まず、感動したのが全体のバランスの美しさです。ボディ、ネック、ヘッドの大きさの比率が非常に美しい関係にあります。
次に、色のコントラストの見事さです。淡い色のボディとヘッドにはさまれた真っ黒な指板。そして、全体の中央部には光り輝くシェルの人魚。視線がこの人魚に吸い寄せられます。

続いて、側面をご覧ください。

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メイプルのバインディングがサイドをキリリと引き締めています。また、側板の色の濃淡が面白い景色を形成しています。

大きさは、コンサートとテナーの中間の大きさです。手持ちのウクレレたちと大きさを比較してみました。

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左から:Kamaka STD、KoALOHA STD ロングネック、VG コンサート、Mermaid、Pupukea テナー

それでは、細かい部分をご覧ください。


4 ボディ

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カーリー(虎目)がくっきりと細かく出た見事なコアです。コアはそのカーリーの出具合により、A、AA、AAAとランク分けされています。Aの数が多くなればなるほど貴重なコアとなります。このウクレレのグレードは何でしょうか?正解はAAAA、最高級のマスタ−グレ−ドです。

裏板の中央部には、フレイム・メイプルのラインが入っています。メイプルのカーリーもコアに負けないほど見事に入っています。また、私の名前をメキシコ・グリーン貝で入れてもらいました。このメキシコ・グリーン貝は見る角度で色がどんどん変化します。

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サイドには、フレイム・メイプルのバインディングが施されています。トップ側は、メイプルの内側に白と黒のセルのバインディングが入っています。このコンビネーションが表情をさらに引き締めています。裏板側はメイプルのみです。

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サウンドホール周りの象嵌も非常に凝った物を施していただきました。

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内側から、コア、メキシコ・グリーン貝、黒セル、白セル、コアと5重の輪が入っています。
サウンドホールの中をもう少しのぞいてみましょう。

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森さんの直筆のサインと製造番号、製造年月日が入っています。
さらに、奥の方を見ます。

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目につかない部分も大変丁寧に造られています。当然ながら、接着剤のはみ出しなんてありません。

また、お気付きにはならなかったと思いますが、表板にはピックガードを貼ってあります。透明なので分かりづらいですが、光の角度で確認することができます。

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表板の鳴りを妨げないように、必要最低限の大きさにしてもらいました。


5 ネック&指板

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ネックは、丈夫なホンジェラス・マホガニーで造られています。
フレット数は14で、14フレットでボディとジョイントしたロングネック仕様です。
指板は混ざり物の全くない真っ黒なエボニーです。このエボニーの海を自由に泳ぎ回っているのが、Mermaid(人魚)です。このMermaidに視線を集中させることと、海の広がり感を出すために、指板上には敢えてポジションマークを入れませんでした。

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髪の毛と尾がアバロン貝、海草と下半身がメキシコ・グリーン貝、顔と上半身が白蝶貝と3種類の貝が贅沢に使われています。
森さんのウクレレの特徴のひとつがこの美しい貝細工です。通常のウクレレにはコンマ数ミリのごく薄い貝が使われることが多いですが、森さんのはなんと1.5mm厚の貝が使われています。ですから、色の深みと輝きが全く違います。

続いて、ネック部分を横から見てみます。

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ネックの厚みと形状は、マーチンを参考に造ってもらいました。薄くて手のカーブに沿った握り具合は長時間の演奏でも疲れが溜まりません。
また、10フレットまで薄く造ってありますので、ハイポジションでのプレイが非常に楽になります。
ヒール部分は強力なテンションに耐えられるように幅広になっていて、かかとの先端にはエボニーを入れてもらいました。

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サイドのポジションマークは大きめの白いプラスティックのドットを入れてもらいました。貝を入れる選択もありましたが、光の加減により見えにくい場合もあるので、プラスティックを選んでもらいました。

また、写真では分かりにくいですが、弦高はビビる寸前まで下げてあります。ですから、1フレットでも軽く指を置くだけでセーハができます。
フレットは非常に正確に打ってあり、各弦とも12フレットにおける実音とハーモニクスのピッチがほぼ一致します(±数セント)。

写真では同じ色なのでよく分かりませんが、ナットはエボニーです。牛骨でもナットを造っていただいたのですが、音を比べてみてビックリです。牛骨だと深みのあるサスティーンの効いたギターのような音になりました。それに対しエボニーは音の輪郭のはっきりした鋭い立ち上がりの音が出ます。この辺は個人の好みの差が大きいですが、私はエボニーの方を選択しました。


6 ヘッド&ペグ

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このウクレレのもうひとつの特徴が、ヘッドの形状です。オータJr.さんのウクレレを見たときから、このエレキギタータイプのヘッドに憧れていました。
材質はネックと同じホンジェラス・マホガニーで表側にはフレイム・コアが貼ってあり、さらに、M 's CRAFTのブランドマークのゲッコー(やもり)の貝細工が入っています。この貝は、ニュージーランド・グリーン貝です。ゲッコーはハワイでは幸運を呼ぶ生き物とされているそうです。

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ヘッド部分も大変丁寧に造られていて、ネック部分との境目にある段差に沿って手を添えれば、自然とウクレレポジションへと導かれます。

ペグはグローバー製のギア式です。直差しのフリクションペグとは比較にならないほどスムーズなチューニングができます。また、ロッキング機能付きですので、穴に弦を通して巻き上げると、穴の部分で弦が自動的にロックされ、穴からの抜け落ちを防止します。

拡大写真

色はゴールドで、フレイム・コアとの色合いが素晴らしいです。


7 ブリッジ

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ブリッジはエボニーです。鏡面状に磨かれていて、ピアノのような光沢を放っています。
サドルは牛骨です。ストレートタイプでセットバックはありませんが、3弦のピッチも正確です。
弦長が長いという面もありますが、フレットが正確に打ち込まれていることが重要です。

弦の留め方は、ピン式を採用しました。このタイプは弦の端が表に出ないのでデザイン的にもすっきりしますし、なによりも掃除がしやすいことが最大の長所です。
ピンの材質にもこだわってみました。プラスティックではなくエボニーです。ピンの頭には白蝶貝が入っています。

拡大写真


8 ピックアップ


真ん中のコイン状のマイクを表板裏に貼り付けます

ピエゾ・ピックアップにはサドルの下に細い帯状のピックアップを入れるタイプもありますが、今回はボディの鳴り、エアー感を得られる表板裏に貼り付けるタイプを選びました。
Shadow SH2500 Eは、エレアコ・ギターで定評のあるピックアップで、プリアンプなしで直接アンプにつないでも、十分な信号を送ってくれます。
音質は生音に近くナチュラルな感じです。

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ジャックの部分はボディとは色違いのコアを入れてもらいました。白黒のセルもあり、おしゃれな仕上げです。


9 弦

森さんはghsやHiloの黒弦を付けられることが多いのですが、今回はWorthStringsのフロロカーボン弦を張ってもらいました。
当初はCM(クリア・ミディアム)でしたが、よりパワフル感が欲しかったのでCE(クリア・エクストラ)に変更しました。
ブリッジの溝はもちろんのこと、サドルの溝はこのをWorthStrings弦のゲージに合わせてピッタリに造ってもらっていますので、他の弦を張るときは溝を削り直さなくてはいけません(WorthStrings弦は通常のナイロン弦より細いです)。
幸いなことに、マーメイドとCEの相性は抜群でした。音は良く鳴りますし、ゲージが小さいのでピッチが正確になりました。


10 塗装

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森さんのウクレレの特徴のひとつに、この丁寧な塗装があげられます。クリア・ラッカーを何回も薄く塗ってはサンディングを繰り返すという、気の遠くなる作業が最後に待っています。
このマーメイドは13回も塗装をかけてもらいました。

一見、何も塗っていないのかなと思える極薄の塗装は、高級感があふれ、木目の美しさを最大限に引き出してくれます。無塗装のときには気が付かなかったですが、カーリーの立体感が浮き上がってきています。


塗装前

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塗装後

また、手触りはまるで高級シルクのような、サラリとしたツルツル感です。ピカピカですが、決してテカテカではありません。
このツルツル感を維持したいので、シリコンクロスは厳禁です。100%オーガニック・コットンの布で拭くのが一番安心です。

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12 音

さて肝心の音ですが、ハワイアン・テイストあふれる乾いた明るい音です。コンサートボディであるにもかかわらず、テナー並の大音量がサウンドホールから響いてきます。
森さんも「ここまで鳴るとは思わなかった」とのことで、改めてAAAAコア材の実力を再認識しました。

良く鳴るウクレレを造ることは簡単だそうです。板を薄くすれば誰が造ってもイヤでも鳴ります。しかし、耐久性はありません。
それに対し、森さんのウクレレは、長く使ってもらえることを考慮して、板は厚めにして強度を持たせています。
ですから、弾き込んでいくうちに徐々に鳴ってくるそうです。
今後、このマーメイドがどんな音に成長していくのか、とても楽しみです。


13 ケース

さて、マーメイドはコンサートとテナーの間に位置するため、コンサートのケースには入りません。森さんには、テナーのセミハードケースを付けてもらいましたが、いまひとつしっくりと行きません。
(既存のケースに合わないというのは、ある意味うれしいことです)
それに、駅までは自転車なので、セミハードケースだと前カゴに入れると大変不安定になります。どこへも持っていけなくなってしまいます。

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テナー用だと周りに隙間が多くカタカタする

そこで、いろいろな大きさのウクレレを扱っていらっしゃるキワヤさんならば、ひょっとして置いてあるのではないかと思い、浅草へ行って来ました。

「コンサートとテナーの間の大きさのケースをください」と言ったところ、原社長(たぶん。美人の方でした)に「実物を持ってきてもらわないと難しいですね」言われました。
「新聞紙にでも大きさを写して持ってきてもらうといいのだけれど」(今度からそうします)
一応、上の写真と同じような画像を携帯へ入れていったので、原さんに見てもらい、棚から「非売品」という札の付いたケースを出してきてもらいました。

フェイマスのFC-8(コンサート・ロングネック、8弦)専用のケースだと思われます。
家に帰って、マーメイドを入れたところ、あつらえたようにピッタリでした。

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緩衝材が発砲スチロールでできていて、軽くて丈夫なケースです。また、背負いバンドも付いていてリュックの様に背負うことができます。これで、自転車に乗れます。


14 おわりに

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このクマのぬいぐるみは、森さんの奥様の手作りです。

オーダーウクレレというのは、自分とは全く関係のない遠い世界のものだと思っておりましたが、森さんとの出会いで、ついに手にすることができました。
はっきり言って大変高価なウクレレです。しかし、普通の勤め人が1年間コツコツ貯めれば手に届く額です。そして、その金額以上の満足感を得られます。
しかも、森さんの手が動く限り、永久保証付きです。

世界でひとつだけのOnly One ウクレレ。そして自分にとってのBest One ウクレレ。それが、オーダーウクレレです。
今回のマーメイド・ウクレレの製作において、ビルダーの森 孝之さんには、私のわがままをいっぱい聞いていただきまして、本当にありがとうございました。
一生を共にするウクレレとして大事に弾いてまいります。

【参考HP】

M's CRAFT Kai Ukulele 

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