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弦・今昔物語・3
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1 はじめに

いよいよ、弦・今昔物語も第3章となります。
第1章では、40年以上前のガット弦、第2章では最新のガット弦を取り上げてきましたが、この3章では、未来のガット弦を紹介いたします。

ガット弦と言えば、日本ウクレレ協会の小林正巳さんです。
どこで入手されたのかは分かりませんが、また、とんでもないプレゼントが届きました。
その名もNYLGUT弦です。果たしてどのような弦なのでしょうか。

それでは、NYLGUT弦の秘密を探ってみましょう。


2 NYLGUT弦

第2章でも紹介しました、イタリアのAquila製の弦です。
袋から出すと、弦というより、プラスチックの細い白い棒が出てきました。
手触りはザラッとした感じです。

小林正巳さんによると、NYLGUTという弦はガットと似た性質を持った「世界で初めての人造ガット」がうたい文句の弦で、音質はガットと非常に良く似ていて、しかもガットの持つ温度に対する音程変化や切れやすいという欠点を補った特許製品とのことです。

特許を取っているのであれば材質等は公表されている筈ですが、材質や製法は「一切秘密」ということです。

ただNyl-と付いているのでナイロン系統の材料と推定したのですが、代理店の話しではナイロンより密度の高い素材で (このためナイロンより細いゲージで同じ音程となる)、自動車のダッシュボードに使われている材質とのことです。

小林さんが、プラスティックの専門書を何冊か調べられた結果、この材質はどうやら「ポリアセタール」というナイロンとは全く異なるプラスチックである見込みが大きくなりました。ポリアセタールの密度は1.41でナイロンの1.14より20%強重いことと、素材色が白色であること、そして自動車の内装にも使われることなどからの推定です。

もしポリアセタールだとするとナイロンより伸びが3分の1から4分の1,吸水性もナイロンの6分の1とかなり優れた性質を持っています。

この弦は密度が高くガットとほぼ同じとのことですので、ゲージは、1弦:0.56mm、2弦:0.73mm、3弦:0.91mm、4弦:0.62mmを選んでいただきました。

それから、第2章では、Aquilaのガット弦はナイロンと密度が同じと考えて、1弦:0.64mm、2弦:0.82mm、3弦:0.91mm、4弦:0.70mmを選んで音を計測しましたが、テンションが強すぎて、切れそうになりましたので、今回、小林さんから、NYLGUT弦と同じ0.56mm、0.73mm、0.62mmを送っていただきました。これは、第2章のサバレスのウクレレ・セットのガット弦とほぼ同じ組み合わせになります。

まとめますと、

区分 1弦 2弦 3弦 4弦

備考

NYLGUT弦 0.56mm 0.73mm 0.91mm 0.62mm  
Aquila弦-1 0.56mm 0.73mm 0.91mm 0.62mm 3弦は編み込み弦
Aquila弦-2 0.64mm 0.82mm 0.91mm 0.70mm 3弦は編み込み弦
Saverez弦 0.58mm 0.74mm 1.10mm 0.63mm 3弦は銅線の巻弦
ghs弦(参考) 0.63mm 0.81mm 0.91mm 0.71mm ナイロン弦

Aquila-1はNYLGUT弦と同じゲージのセット、Aquila-2はghs弦とほぼ同じゲージのセット

それでは、まず音をお聴きください。

NYLGUT弦はなこさん(39KB)   Aquila-1弦はなこさん(46KB)

いかがでしょうか。ほとんど区別がつきませんね。
それでは、詳しく調べて行きましょう。


3 分析

(1)波形分析

「はなこさん」のデータをもとに、各弦の波形を調べてみました。

  1. NYLGUT弦
  2. Aquila-1弦(NYLGUTと同じゲージ 標準的なテンション)
  3. Aquila-2弦(ghsとほぼ同じゲージ ハイテンション)
  4. ghs(ナイロン弦)

それでは、4弦からご覧ください。

4弦 G

波 形

発音時間

Aquila
NYLGUT

  551ミリ秒

Aquila-1

  589ミリ秒

Aquila-2

  438ミリ秒

ghs

  870ミリ秒

上の3つは、音の立ち上がりの後にいったん音が小さくなっています。
Aquila-1とAquila-2は同じガットでテンションだけ違いますので、波形がほぼ同じですが、テンションの低い-1の方が音の伸びが良くなっています。

続いて3弦です。

3弦 C 波 形 発音時間

Aquila
NYLGUT

 955ミリ秒

Aquila-1

 534ミリ秒

Aquila-2

 534ミリ秒

ghs

 870ミリ秒

中2つは同じ弦です。細いガットの編み込み弦なので、音の立ち上がりが遅くなっています。
NYLGUT弦はghs弦より若干立ち上がりが遅くなっており、ガット弦に近いことが分かります。

次に2弦です。

2弦 E

波 形

発音時間

Aquila
NYLGUT

 1547ミリ秒

Aquila-1

 1451ミリ秒

Aquila-2

 1042ミリ秒

ghs

 1227ミリ秒

上の3つは非常によく似ています。発音直後にすぐに減衰して、途中に一回膨らんでから減衰していきます。それに対し、ナイロンのghs弦は素直に減衰しています。

最後に1弦です。

1弦 A

波 形

発音時間

Aquila
NYLGUT

 1117ミリ秒

Aquila-1

  998ミリ秒

Aquila-2

  484ミリ秒

ghs

 1044ミリ秒

NYLGUT弦とAquila-2弦が非常によく似た波形をえがいていますが、NYLGUT弦の方がテンションが弱いため、伸びが良くなっています。

(2)周波数分析

続いて、各弦の周波数分析を行ってみました。

  4弦 G 3弦 C 2弦 E 1弦 A
Aquila
NYLGUT
Aquila-1
Aquila-2
ghs

驚きました。NYLGUT弦とAquila-1、-2弦は、ほぼ同じ周波数特性を示しています。
  • 4弦
    NYLGUTとAquila-1、-2は2倍音は目立たないが、3倍音が強く出ていて、4倍音以降がだんだん低くくなっている
  • 3弦
    ghs弦の2倍音が基音と同じ程度出ているのに対し、NYLGUT弦とAquila-1、-2弦の2倍音は低い
  • 2弦
    NYLGUTとAquila-1、-2は4倍音が低く、5倍音にピークがある
  • 1弦
    NYLGUTとAquila-1、-2は5倍音にピークがあるが、ghs弦は4倍音にピークがある

以上のことをまとめますと、

  1. NYLGUT弦の波形はガット弦と相似しているが、音はガット弦より伸びる
  2. NYLGUT弦の周波数特性はガット弦とほぼ同じである

よって、NYLGUT弦はガットと似た性質を持った「世界で初めての人造ガット」のうたい文句は正しいことが証明されました。


4 まとめ

今回の実験を通じて、NYLGUT弦の特性が確認できました。
ガット弦の優れた音の特徴を完全に継承した未来の弦です。

なお、NYLGUT弦の価格はガット弦の約半分とのことです。お得ですね。

さて、ガット弦はどこで手にはいるのでしょうか?
これは、コバさんのCOBA STUDIO「ガット弦、ナイルガット弦。換える? / 買える!で詳しく紹介されています。
是非、ご覧ください。

最後に、弦・今昔物語全体を通じまして、ウクレレ弦の過去・現在・未来を体験することができました。小林正巳さんに、心から感謝申し上げます。

■追記

上でご紹介しましたコバさんが、NYLGUT弦の個人輸入の方法を詳しくレポートされました。
HANAKOSAN(第5章第11話)弦を買う 海外送金(^_^;)をご覧ください。

■追記2

日本でもNYLGUTが手にはいるようになりました!!
小林さんが2002年1月3日にアキオ楽器さんへ初詣をされたときに、NYLGUTを発見されました。
スタンダード用1セット2,200円です。しかし、弦長が120cmですので2本分とれます。

■追記3

現在、アキオ楽器さんでは、スタンダード/コンサート用として、弦長65cmのNYLGUTのセット弦を1,300円で販売しています。


5 おまけ

お時間がございましたら、NYLGUT弦による演奏をお聴きください。

クレイジーG(252KB)

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