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ちょっと太めに魅せられて
スタンダード用のプレミアム弦


1 はじめに

WorthStringsのフロロカーボン弦は、その響きの豊かさ、音量の豊富さ、音程の正確さ、温度や湿度に対する安定性によって、多くのウクレレファンの皆様に愛用されてきています。
しかし、フロロカーボン弦は、派手な音色が特徴ですので、ナイロン弦の持つふくよかさを愛される方には敬遠されてきたことも事実です。

そんなおり、神戸のWorth Creationの高橋さんから、封筒が届きました。
「もっとふくよかで柔らかい音をとの思いから新しいゲージを発売することにいたしました。WorthStringsでは最も太いゲージになりますが、是非ソプラノウクレレで使っていただきたいと思っています。甘くスイートなサウンドがします。」

中からは、2種類の弦、BFとCFが出てきました。
はたして、どのように変わったのでしょうか。甘くスイートなサウンドとは。


2 BFとCF

型番はBFとCF、名称はブラウン・ファットとクリア・ファットです。ブラウンは茶色ですが、見た目はほとんど黒です。クリアは文字どおり透明な弦です。ファットは、おそらくfat、「太っちょ」という意味でしょう。
弦長は63インチで、2台分が余裕で取れます。
価格は、1,470円(消費税含む)ですから、今までのフロロカーボン弦の63インチのものと変わりません。

BF(ブラウン・ファット)

CF(クリア・ファット)


3 CFをウクレレへ張りました

今回は、クリア弦のCFを試してみました。
張るウクレレは、スタンダードサイズのNakanishi No.80を選びました。
袋から取り出したCF弦は、見るからに太いです。テナー用のフロロカーボン弦より太いので、可憐で繊細なNakanishiが耐えられるのかちょっと心配です。

それまでNakanishiに張ってあったBM(ブラウン・ミディアム:フロロカーボン弦の標準弦)を外し、ペグのネジを念のために少し締めてから張っていきました。
ペグを回すにつれ、強力なテンションがかかって来ます。だいたい音程が合ったところで、チューナーを使いGCEAに合わせます。

左手で押弦すると、コンサートとテナーの間ぐらいのテンションです。しかし、ゲージが太いのでセーハはBMより押さえやすく感じます。
1発Gを弾くと、右手の人差し指に少し抵抗がかかりますが、思いっきり振り抜きますと、スタンダードとは思えないほどの大音量が出てきました。

その日は、弦が落ち着かないので、弾いてはチューニングを繰り返し、半音高い音程に合わせてから、ケースに入れて次の日を待ちました。
新しい弦はカレーといっしょで、1日置くとだいたい落ち着いてきます。

適当なコードを押さえながら、ポロポロ弾いていると、文字どおり甘くてスイートな香りに包まれます。通常、テンションが上がると、キンキンとした金属的な音になるのですが、不思議なことに、このCFはふくよかな音色がでます。
それでは、どのような音なのか、今までのフロロカーボン弦と比較しながら考察していきます。


4 CE(クリア・エクストラ)とCF(クリア・ファット)の比較

(1)ゲージの大きさ

今回、比較に用いるのは、CE(クリア・エクストラ)です。これは、フロロカーボン弦の標準ゲージであるCM(クリア・ミディアム)の4弦のみを少し太いゲージにしたセットで、強いストロークと伸びのあるメロディーラインを奏でるのに適した弦です。ちょうどKAMAKAのスタンダードに張ってあるので、CFのNakanishiと比較していきます。
KAMAKAはコア、Nakanishiはマホガニーですので、完全に同一条件での比較ではありませんが、音色の傾向は分ると思います。

区分

CE(クリア・エクストラ)

CF(クリア・ファット)

マーチン(M600)

1弦

0.52mm

0.62mm

0.53mm

2弦

0.66mm

0.74mm

0.81mm

3弦

0.74mm

0.81mm

0.91mm

4弦

0.62mm

0.66mm

0.64mm

※1インチ=25.399mmで変換

比較のために、クリア弦の代表であるマーチンのM600を参考に載せました。CEはマーチンよりゲージが小さいですが、CFは1弦と4弦がマーチンよりゲージが大きくなっています。
CFはCEより1割方ゲージが大きくなっています。

各々の弦を張った状態です。

ちょっと分りにくいので、ブリッジのあたりをアップで撮ってみました。

CE(クリアエクストラ):標準的なフロロカーボン弦の太さです。

CF(クリア・ファット):上のCEよりかなり太いことが分ります。見た目はマーチン弦に近いです。


(2)音

それでは、音をお聞きください。下のリンクをクリックすると音が再生されます。

いかがでしょうか。どちらも、きらびやかな音ですが、CFの方が深みのある音であることがお分かりいただけたと思います。CFの方は、リバーブか何かエフェクターがかかった様に聴こえますが、どちらも、ウクレレの表板に貼り付けるタイプのピックアップ(TOKYO SOUNDO EDM-2)からパソコンのサウンドボード(ONKYO SE-200PCI)へ直接入力し、WAVで録音したものをMP3へエンコードしています。

それでは、これらの音を解析してみましょう。


(3)周波数分析

各弦ごとの周波数分析をご覧ください。まずは、4弦から。


どちらも、フロロカーボン弦の特徴である、高次の倍音が豊かに出ています。しかしながら、CEは倍音のレベルが高いのに対し、CFは基音が倍音より高いレベルで出ています。

続いて3弦です。


CEの倍音が基音と同レベル出ているのに対し、CFは基音がしっかりと出ています。

続いて、2弦です。


3弦と同じ傾向が窺えます。

最後に1弦です。


1弦も他の弦と全く同じ傾向が窺えます。

以上のことから、CEなどの今までのフロロカーボン弦は、倍音は豊かであるが、基音を超えるほど出る場合もあり、きらびやかではありますが、ともすれば金属的な音になる傾向があるのに対し、新しいCFは、まず、基音がしっかりと出ているため、ふくよかな音が得られると同時に、煌めくような倍音もしっかりと付いてきています。


5 まとめ

今までのフロロカーボン弦は、煌びやかな音色が魅力でしたが、CFは甘くスイートな芳醇(ほうじゅん)な音色が魅力です。
CFは、これからのスタンダード(ソプラノ)ウクレレの標準となりうるプレミアムな弦です。

しかしながら、ヤワなウクレレだと張ることができません。しっかりとした造りと優秀なペグでないと、このテンションを受け止めることが厳しいと思います。
また、このテンションを押さえつけるだけの技術がないとコードが押さえられず、手首を回転させる正しいストラムでないと指が弾き飛ばされてしまいます。

と、大げさに言ってしまいましたが、きちんとしたウクレレをお持ちで、クレイジーGが弾けるレベルでしたら全く問題はありません。

Worth Creationの高橋さんのフロロカーボン弦にかける情熱には、いつも頭がさがります。これからも、良い弦を私たちに供給してくださるようお願いいたします。

Worth Strings

 

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