真村裁判高裁判決



平成19年6月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成18年(ネ)第868号 地位確認等請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所久留米支部平成14年(ワ)第276号)

口頭弁論終結日 平成19年4月27日

 

判       決

 

福岡県筑後市大字上北島987−6

控訴人兼被控訴人(以下「一審原告真村」という。)

真 村   久 三

 

同県久留米市宮ノ陣4丁目14−10

控訴人(以下「一身原告松岡」という。)

松 岡     進

 

 

上記両名訴訟代理人弁護士  江 上   武 幸

同            馬 奈 木 昭 雄

同            紫 籐   拓 也

同            高 峰     真

同            椛 島     隆

松岡進訴訟代理人兼江上武幸訴訟復代理人弁護士

             迫 田 登 紀 子

 

 

 

福岡市中央区赤坂1丁目16番5号

被控訴人兼控訴人(以下「一審被告」という。)

株式会社読売新聞西部本社

上記代表者代表取締役 小 島     敦

 

上記訴訟代理人弁護士 辻     正 喜

同          川 副   正 敏

同          福 地   正 明

同          喜 田 村 洋 一

主       文

 

1 一審原告らの控訴に基づき、原判決第2項を次のとおり変更する。

1) 一審被告は、一審原告真村に対し、220万円及びこれに対する平成14年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2) 一審被告は、一審原告松岡に対し、110万円及びこれに対する平成14年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3) 一審原告真村のその余の金員請求及び一審原告松岡のその余の請求をいずれも棄却する。

 

2 一審被告の控訴を棄却する。

 

3 訴訟費用は、第1,2審を通じて、

1) 一審原告真村と一審被告との間に生じた費用は、これを4分し、その1を同一審原告の負担とし、その余を一審被告の負担とする。

2) 一審原告松岡と一審被告との間に生じた費用は、これを5分し、その2を一審被告の負担とし、その余を同一審原告の負担とする。

 

4 この判決は、主文1項(1)、(2)に限り、仮に執行することができる。

 

 

事 実 及 び 理 由

 

1 控訴の趣旨

1 一審原告ら

1) 原判決中、一審原告ら敗訴部分を取り消す。

2) 一審被告は、一審原告真村に対し、800万円及びこれに対する平成14年10月13日から支払済みまで年5分割合による金員を支払え。

3) 一審被告は、一審原告松岡に対し、400万円及びこれに対する平成14年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 

2 一審被告

1) 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

2) 一審原告真村の請求を棄却する。

 

第2 事案の概要

本件は、一審被告の発行する「読売新聞」の新聞販売店を経営する一審原告真村が、一審被告がした新聞販売店契約の更新拒絶には正当な理由がないと主張して、一審被告に対し。新聞販売店契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、一審被告が継続的取引関係における供給者側の優越的地位を濫用し、同一審原告の営業権を違法に侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償請求をし、同じく新聞販売店を経営する一審原告松岡が、一審被告に対し、一審被告が新聞販売店契約を不当に解除しようとしたことによって精神的苦痛をうけたなどとして不法行為に基づく損害賠償請求をしている事案である。なお、一審原告松岡においても、一審原告真村と同様に、地位確認の訴えも提起していたが、一審被告は、その確認の利益を争った末、平成17年12月9日に、上記地位確認請求を認諾した。

原審は、一審原告真村の地位確認請求を認容したが、一審原告らの損害賠償請求をいずれも棄却した。これに対し、一審被告及び一審原告らがともに控訴した。

 

1 前提事実

1) 当事者等

以下の諸点を加えるほかは、原判決2頁24行目から311行目のとおりである。

ア 原判決35行目の末尾に続けて、「読売新聞はわが国有数の発行部数を誇る新聞である。」を加える。

イ 同頁7行目の「第2部」の次に「(北九州市と筑豊区以外の福岡県、佐賀県、長崎県を管轄している。)」を加える。

ウ 同頁11行目の次に、改行して

「ウ SSは、読売新聞販売店で構成する読売会の中で、読売西部七日会副会長、販売第2部連合読売会の会長、筑後読売会(販売第2部管内の筑後地区の販売店主全員で構成)の常勤顧問であって、筑後地区に新聞販売店6店(城島、大川東、大川、柳川、合川南、久留米櫛原)を経営し、それらと後記の2店を管理下におく有限会社エルアールシースギヤマ、新聞の折込広告事業をする株式会社読売筑後マーケティングセンター、新聞販売店に労働者派遣をする有限会社読売ヒューマンコーポレーションの代表者をしている。

STは、SSの弟であり、新聞販売店2店(羽犬塚、筑後西)を経営し、上記3社の取締役のほか、筑後読売会の会長をしている。

NG(以下「NG」という。)は、もとSTの従業員であったが、その後独立して、YC上津店(以下「上津店」という。)、同黒木店を経営している。」

を加える。

 

2) 新聞販売店契約の締結等

原判決323行目の次に改行して、

「ウ 上記新聞販売店契約を締結したことにより、一審原告らは、一審被告から新聞を購入し、それを購読者に販売して得る購読料と、新聞紙に折り込む折込広告料(これは一審被告に直接利益をもたらさない。)を得ることになる。これに対し、一審被告は、販売店に販売する新聞代金と新聞に掲載する広告料を主な収入としている。」

を加え、同24行目冒頭の「ウ」を「エ」と改めるほかは、同頁12行目から56行目までのとおりであるから、これを引用する。

 

3) 新聞販売店の業務態勢等

原判決204行目から2117行目までのとおりであるから、これを引用する(ただし、同2013行目の「毎日」の次に「1回ないし」を加え、同2112行目の「報告するよう求めている。」を「店舗に常備し、一審被告が閲覧を求めたときに速やかに提示するよう求めている。」と改める。)。

 

4) 一審被告と一審原告真村との間の紛争の発生とその後の経緯(概要)

ア 一審被告(担当者IM)は、平成13年春ころ(ただし、一審原告真村は、同年517日と主張するのに対し、一審被告は、同年4月末から5月中旬ころと主張している。)、一審原告真村に対し、同一審原告の販売区域である広川地区世帯数5100世帯の内、約1500世帯に相当する区域を同一審原告の新聞販売店から切り離して一審被告に返還し、同区域内の購読者名簿及び配達順路表を引き渡すように申し入れた。

イ 一審原告真村は、一旦はこれを同意したが、同月29日に、一審被告(販売局長)に対し、上記申し入れを拒否する旨回答した。

ウ 一審被告は、同年628日、代理人弁護士・森竹彦名をもって、一審原告真村に対して、広川地区の世帯増に対する消化率が低く、努力不足が認められること、部数実態報告に虚偽があることなどを理由に、広川店の担当区域から、広川町大字藤田、一条、広川、太田の4区域を返還し、これら地域の読者台帳を同月末日までに引き渡すべきことを申し入れるとともに、同一審原告がこれに応じない場合には、新聞販売店契約は同年7月末日をもって期間満了とし、更新しない旨を通知した(甲12)。

エ 一審原告真村は、一審被告を債務者として、同年625日、福岡地方裁判所小倉支部に対し、新聞販売店の地位を仮に定めることを求める地位保全仮処分の申し立てをし(同庁平成13年(ョ)第182号事件)、同裁判所は、同年1029日、一審原告真村が一審被告に対し、同年81日から本案の第1審判決言渡しの日までの間、広川地区において、本件新聞販売店契約上の地位にあることを仮に定める旨の決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした(甲4)。

 

5) 一審被告と一審原告松岡及び荒木との間の紛争の発生とその後の経緯

原判決523行目から63行目までを引用するほか、これに続けて

「ウ 一審被告(YM部長)は、同年41日に、江上武幸代理人に、一審原告松岡らの変心が理解できないとしながらも、一審原告松岡らが誠実に販売業務に取り込み、営業努力をすれば、販売店として共存共栄を図ることもあると返信した(甲6)。

一審被告は、同年92日の夕刊から、荒木に対する読売新聞の供給を停止した(甲36、乙84)。」

を加える。

 

2 争点

1) 争点及びこれを巡る原審での当事者の主張は、原判決第23項(同68行目から1924行目まで)のとおりである(ただし、同720行目の「6月」の次に「時点の広川店」を、同915行目末尾の次に「さらに、平成132月の時点では、同地区の世帯数は5100まで増加したのに定数は1618と伸び悩み、普及率は31.7パーセントまで下落した。」を、それぞれ加える。)から、これを引用する。

 

2) 当審での一審被告の主張

ア 一審原告真村の虚偽報告について

一審原告真村の総収入から雑収入と折込広告料を控除した残額を、購入する新聞の原価で除して販売部数を逆算する(その計算方法が正しいことは同一審原告も自認している。)と、その実配数は、平成10年ころから一審被告に報告している実配数を約300部も下回ることになり、同一審原告は、上記の架空読者数どころではない、極めて悪質な虚偽報告をしていたことになる。同一審原告の実配数は平成136月から急落しているところ、そのような急落は、上記実態を是正しておこうとしたとしか考えられないものであり、そのことからも上記虚偽報告の実態が裏付けられる。

イ 一審原告真村に対する販売区域分割の申し入れについて

(ァ)一審原告真村の経営する広川店では業績不振が認められたこと、す

なわち、同店の販売区域では世帯数が増加しているにもかかわらず、

それに見合う増紙がなく、普及率が次第に下落していったことは、原

判決第23頁の(1)(一審被告の主張)イのとおりである。

(ィ)ところで、このように広川店の区域内における世帯数の増加は、主

として広川店から離れた、国道3号線以西の久留米市や筑後市と隣接

する地域で宅地開発が進んだことが原因と考えられ、同店の普及率は

特にその地域で低かった。

そこで、一審被告(YM部長、IM)は、このまま上記地域を一審

原告真村に委せるより、広川店からみて周縁地区にある部分を他の営業力のある販売店に引き継がせ、一審原告真村には、広川店周辺の地域で営業活動に専念させる方がよいと判断し、平成134月末から同年5月中旬ころにかけて、一審原告真村に対して、@ 同一審原告の長男を福岡の販売店で研修させることと、A 区域の一部分割を申し入れた。

なお、@は、従来、一審原告真村が長男を従業員として雇用していたところ、将来、同人が独立して新聞販売店を開業したいと申し出た場合に備えて、きちんとした販売店で適正な業務運営を学ぶことが必要不可欠であると考えたからであり、かつ、そのようにして同人が外部に研修に出ることにより、その分の人件費が削減できるため、広川店の区域が一部分割されても同店の経営が成り立つものと考えたからである。また、Aについては、IMが分割を受ける目安としていたのは1500世帯であり、部数にすれば375部ないし多くみてもせいぜい480部程度であるから、なお1000部以上の部数が広川店に残ることになるので、その後も十分に経営が成り立つものと判断したものである。

(ゥ)以上のとおり、一審被告の上記申入れは、広川店の経営の実情に即

した合理的なものであって、一審原告真村に対して不可能を強いるようなものではなかった。

なお、上記分割にかかる区域を譲り受ける者としては、NGが予定されていたが、これは同人の上津店での営業手腕を評価したからであって、一審原告真村がいうようなSSらの便宜を図ったものではない。

 

3) 当審での一審原告松岡の主張

一審原告松岡が、筑後読売会から除名等の違法行為を受けたことについては、一審被告にも責任がある。すなわち、筑後読売会の運営については、一審被告が深く関わっており、新会則上も「読売本社」との協議(会長の選任や会員の除名)や協同(会務の運営)が定められているし、その除名の規則を設けるに際には、IMが相談を受け、一審原告松岡の除名決議にも立ち会って、異議を述べていないのである。

 

第3 当裁判所の判断

1 争点判断の基礎となるべき事実

1) 一審原告真村が広川店の経営を引き継いだ経緯

原判決21頁19行目から22頁13行までを引用する(ただし、21頁24行目の冒頭に「イ」を加える。)。

 

2) 広川店の営業の推移

原判決29頁5行目から30頁7行目まで(アないしエ)を引用するほか、それに続けて

「オ 広川店の平成10年から平成13年までの折込広告料収入は、いずれも年間2100万円を超えている。」

を加える。

 

3) 一審原告真村が一審被告に虚偽報告をするに至る経緯及びその実態

ア 上記(2)のとおり、広川店の営業成績は、前任者の田中から引継を受けた後数年間は悪化の一途を辿り、実配数の減少傾向が止まらず、その結果、実配数が定数を相当下回る状況が続いたため、平成5年10月にはついに定数を従来の1500部から1320部に切り下げるまでになったが、その後増勢に転じ、平成8年1月には定数も元の1500部を回復したばかりか、徐々に増加し、平成10年1月には1625部まで達した。また、実配数も同年1月には約1600部にのぼるなど、定数との差も少なくなっていった。

イ しかし、遅くとも平成11年半ばころからは実配数の伸びが止まり、平成12年5月からは1600部を割り込むようになったが、一審原告真村はこれを一審被告に対する業務報告書には反映させず、同報告書の定数及び実配数を減らさなかったため、実態と報告が乖離するようになった。そして、平成11年5月ころからは、広川地区の28区域のうち26区を架空読者を計上するために利用し始めた。(甲131、原審での一審原告真村本人)

ウ 平成12年5月18日、一審原告真村は、一審被告販売局長に宛てて、予備紙の部数を虚偽報告していた(7部と報告していたが、実際には約40部であった。)ことを認めて反省するなどとする内容の誓約書(甲38)を提出した。

エ 一審原告真村は、平成13年6月当時、一審被告に対しては、定数1660部、実配数1651部と報告していたが、実際には26区に132世帯の架空読者を計上していたので、実際の配達部数は1519部を超えないことになる。

なお、一審被告は、一審原告真村の平成10年から平成12年度の確定申告における売上額等に基づいて、広川店には、常時200ないし300部の架空読者があった旨主張し、さらに当審においても上記第2の2(2)アのとおり主張する。しかしながら、そもそも上記のような計算から割り出される数字がどこまで実態を反映しているかは多分に疑問としなければならない。例えば、一審被告の上記主張は、全ての新聞購読者が代金を支払うことが前提とされているところ、これを支払わない者や、当初から無償で提供されている者も少なからず存在するであろうことは十分考えられるのであって、そのようなところからしても、同主張を直ちに採用することはできない。

オ IMは、平成13年6月25日、一審原告から帳簿類(手板、読者台帳、発証集計表等)の呈示を受けて調査した結果、26区に架空読者が集められているのではないかと疑ったが、これを突き止めるまでは至らなかった(乙66、原審での証人IM、YM満)。なお、一審原告真村は、この時点で上記26区の架空計上の事実をIMに告げた旨供述するが、到底信用することができない。

 

4) 一審被告の一審原告真村に対する経営指導(区域分割の提案を含む。)とこれに対する同一審原告の対応

ア YM部長は、平成12年6月に販売局第2部長に就任したが、上記(2)ウ及びエの事情を踏まえて、同月16日に広川店を訪店し、直近4か月の平均止押数が平均6.5部であって、約1600部という部数と比較して非常に低く、新規購読契約及び購読継続契約(止押)数が悪い、所長自身の努力不足であり、その他の従業員の営業成績も悪いなどと指摘して、同一審原告の努力を促した(甲87、原審での証人YM。)

イ 一審原告真村は、同年8月8日、期間を同年9月1から10年間として店舗用の建物を新たに賃借した上、500万円ほどかけて同建物を増改築するなどした(甲18、一審原告真村本人)。

ウ 同年12月16日、筑後地区増紙対策会議が開催された。一審原告真村も同会議に出席し、増紙目標を提出した。これに対し、YM部長は、目標値が低すぎるとして、同一審原告に上方修正するように求めた。同一審原告はこれを拒否したが、他方で、平成13年3月、それまでの定数1625部を1645部とし、さらに同年4月には1660部とした。(甲87、130、131、原審での証人YM、一審原告真村本人)

エ YM部長或いはIMは、平成13年4月末ごろから同年5月中旬ころまで、数回、広川店を訪店し、業務報告書について区域別定数実態表(毎月の区域別の実配数、入り、止め等を記載するもの)を記載することなどの改善を求めるとともに、一審原告真村の長男について、将来、一審被告の新聞販売店として独立するために、他店で研修をする事を提案し、また、広川地区において世帯増に対して部数が伸びていないことなどを指摘して、区域分割を申し入れた。

なお、一審被告(IM)は、一審原告真村に対して返還を求めた一部区域を同区域と販売区域が隣接する上津店を経営していたNGに引き継がせた上、同人から黒木店の返還を受ける予定であった。(甲99、乙86の1、原審での証人IM、同YM、一審原告真村本人)

オ 一審原告真村は、IMに対し、同年5月17日、一旦は上記区域分割の申し入れを了承し、IMはYM部長に、YM部長は一審被告販売局長IA(以下「IA販売局長」という。)に、その旨を報告した。

ところが、一審原告真村は、同月29日、一審被告本社を訪ね、IA販売局長に対し、区域分割には応じられない旨伝えた。IA販売局長は、その場では態度を保留したが、その後、YM部長に対しては、既に社で決まったことで再考の余地はない、一審被告は分割することで準備を進めているとして方針どおり話を進めるように指示した。IMは、一審原告真村に対し、その旨を伝えた。

(甲10、123、乙66、原審での証人IM、同YM、一審原告真村本人)

カ YM部長とIMは、同年6月12日、広川店を訪問し、通常業務の後、一審原告真村の増紙計画が進んでいないこと、熱心な取り組みがないことを指摘し、業務報告書について以前の指導後も区域毎の明細がないので、次回から配達区ごとの入り、止めを記入し、手板と照合すること等を求めた。その上で、YM部長は、一審原告真村に対し、同一審原告の現在の努力状況では、現担当地域を前提にしては増紙は期待できない、長男の別地域での所長独立を援助するので、一部区域返還のことはもう一度考え直すように、どうしても返還に応じないならば、販売契約更新もできなくなるが、それは一審被告も望まない。などと述べて再考を促した。(甲10、乙66、原審での証人IM、同YM、一審原告真村本人)

キ IMは、同月19日、広川店を訪問し、一審原告真村に対し、帳票類の提示を求めたが、同一審原告はこれを拒否した。そこで、同月22日、一審原告ら代理人江上弁護士事務所で、同弁護士及び一審原告真村夫妻とIMとの話し合いがもたれた結果、通常業務範囲内での帳票類提示に応じることが確認され、上記(3)オのIMの調査がなされた。(乙66、原審での証人IM、同YM、一審原告真村本人)

 

5) 一審被告の一審原告真村に対する新聞販売店契約の更新拒絶(前提事実(4)ウ)と同一審原告の仮処分申立て(同エ)

 

6) その後の経過

ア 一審原告真村は、平成13年7月から10月にかけて、毎月マイナス2桁の入り止め差が生じ、4か月で合計85部の実配数が減少した旨の業務報告書を提出した。また、同年10月には、定数を1660部とし、実配数については記載していないが、前月の実配数及び当月の入り止め差から実配数1566部と算出できる業務報告書を提出していたところ、本件仮処分決定後の同年11月には、定数を1450部、実配数を1428部とする業務報告書を提出した。同一審原告としては、この際に実配数につき26区の架空読者分ほか134部を削減し、定数もこれに合わせたものである。(乙116、の1ないし6、117、原審での一審原告真村本人)

イ IMは、同年12月7日、広川店を訪問し、一審被告販売局宛の第1期増紙計画表(甲125)及び一審被告宛の誓約書(甲126)を持参して、一審原告真村に対し、これらへの署名を求めた。第1期増紙計画表は、同年12月から平成14年7月まで8か月間で合計110部(月平均約14部)の増紙を目標とする増紙計画を記載したものである。

また、誓約書の内容は、@ 業務報告書の記載事項の明記、帳票類の完備・提示等、販売部数の透明性を厳守すること、A 上記第1期増紙計画表のとおり8か月計画を達成し、回収率目標150%以上を継続的に達成することなどを通して減紙を早期に復元・挽回すること、B その他現在の読者へのサービス等の業務を履行すること、C 今後、虚偽の報告及びセールスの目的外使用(食い止め作業等)を一切しないことを誓約し、これらにつき不履行があった場合、取引を中止されても異議を申し立てないというものである。

一審原告真村は、これらに対する署名を拒否した。これを受けて、IMは、同一審原告に対し、今後、新聞供給は継続すること、注文部数その他につき自由に増減できること、増紙業務は依頼しないこと、読売会活動には不参画とすること、業務報告は不要であるし、IMら担当員も訪店を遠慮すること、平成14年1月からは増紙支援をしないこと、所長年金積立は中止し、従業員退職金の補助等をしないこと、セールス団関係は、一審原告真村が直接処理すべきこと、特別景品は可能な限り辞退されたいこと、などを申し渡した。

(甲127、原審での証人IM)

 

7) 一審原告松岡及び荒木の筑後読売会からの排除

原判決35頁17行目から36頁10行目までのとおりであるから、これを引用する。

 

2 争点(1)について

1)上記1の(1)ないし(6)の事実のほか、本争点の判断に関係する事情として以下の事実が認められる。

ア 広川店の業績の推移について

(ァ)一審原告真村が田中から広川店を引き継いでから当分の間は、広

川店は、実配数の減少に歯止めがかからないなど業績が悪化したが、

その後、次第に回復していったことは上記1(2)及び(3)アの

とおりである。このような業績の改善(販売拡大)には、筑後地区

の他の販売店の協力があったものである。その結果、一審原告真村

は、一審被告から、平成8年度、平成9年度に年間目標達成賞など

の表彰を受けた。

(甲15の1ないし3、甲22の1、甲131、原審での一審原告真村本人、証人S)

(ィ)ところが、一審原告真村は、平成8年ころ、一審被告の当時の担

当である佐藤から、SSが計画していたのとは別の新しいセー

ルス団を立ち上げることについて協力を求められることになった。

このことを知ったSSが、同年5月14日に、ST、NGらを連れて広川店に押し掛け、一審原告真村の頭部を殴打するとい

う事件が発生し、同一審原告は、その後平成11年ころまで、セー

ルス団の派遣を受けられなくなった。競業する各新聞の販売拡大競

争は熾烈であるため、自店の営業活動だけでは限界があり、したが

って、専門のセールス団の派遣を受けられないことは営業上相当の

悪影響をもたらすものというべく、これが広川店の業績を低迷させ

る一因をなしているものと見られる。

(甲22の1、原審での一審原告真村本人)

イ 新聞業界を巡る情勢

(ァ)テレビ、ラジオはもとより、パソコンや携帯電話等のニュースメディアの普及、若者の活字離れ、不景気などを原因として、新聞の読者離れが進んでいる。このため、筑後地区でも、読売新聞の48店舗の平均普及率は平成2年11月に31.1パーセントであったものが、平成12年、13年の各6月には30.2パーセントに、平成14年6月に30.0パーセント、平成15年6月に29.5パーセントと漸減傾向にある。(乙66、原審証人IM)

(ィ)一般に、新聞社は、新聞販売店に販売する新聞代金と新聞に掲載する広告料を主な収入としているため、その販売部数が収入の増減に直結することから、販売部数にこだわらざるを得ない。そのようなところから、拡販競争の異常さが取り沙汰され、読者の有無とは無関係に新聞販売店に押し付けられる「押し紙」なるものの存在が公然と取り上げられる有り様である(甲85、152、158、164)。

販売部数にこだわるのは一審被告も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために、新聞販売店に対して、増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、「目標達成は全YCの責務である。」「増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である、増紙こそ正義である。」などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて、増紙のための努力を求めている。

YM部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、「読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。」とも述べている。

(甲110、原審証人YM)

(ゥ)これに対して、新聞販売店も、一審被告から新聞を購入することで代金の支払が発生するので、予備紙を購入することは当然負担にはなるが、その新聞に折り込む広告料が別途収入となり、それは定数を基準に計算されるので、予備紙が全て販売店の負担となるわけではない。ただ、その差は新聞販売店側に不利な計算となる。

なお、この点について、一審被告は、1部当たりの折込広告料収入と新聞紙の仕入れ価格を比較すると、平成10年から平成12年までの3年間で、いずれもわずかに折込広告料が上回る(乙93、原審証人YM)というが、注文部数に応じて付加される読売会費、店主厚生会費、休刊チラシ代金などの諸経費を加えると大幅な赤字になる(甲82の1ないし3)というのが実態であるものというべく、これは、予備紙を持つことを嫌う新聞販売店が多いという一般的指摘(甲85、152、158、164)とも合致することからして、一審被告の上記主張は採用できない。

ウ SS、ST及びNGと一審被告及び一審原告らとの関係

(ァ)SSは、昭和48年YC大川店の経営にかかわって以来、その事業を拡大し、現在前提事実(1)ウのとおりの役職にある、筑後読売会の実力者である。STはその弟で、NGはSTの元従業員であって、S兄弟と密接な協力関係にある。

(ィ)SSは、自分らが中心となってセールス団体読売二十日会(これが後日有限会社読売ヒューマンコーポレーションになる。)を設立しようとしている最中に、文化センター前店所長の平山春雄(以下「平山」という。)らが別のセールス団体を立ち上げようとしていることなどを聞きつけ、上記ア(ィ)のとおり、一審原告真村に暴力を振るったほか、当時の一審被告の担当社員であった佐藤が平山らの背後にいると考え、その場に佐藤を呼びつけ、自分がやめるか佐藤がやめるかどちらかだ、などと強く迫った。

その後、一審被告の当時の安原販売局長は、この事件についてSSを叱責しただけで、佐藤は、同年7月に、他に移動した。

(甲148、乙124、原審証人S、一審原告真村本人)

(ウ)また、SSが経営する株式会社読売筑後マーケティングセンターは、広川店を含む八女郡を対象として折込広告事業等を行う折込センターであるが、筑後地区では一審被告の関連会社以外で折込センターをしているのは同センターだけである。同センターは、広告主に対して、各販売店の部数について、社団法人エービーシー協会(以下「ABC協会」という。)の公表部数(これは、実配数ではなく、定数の合計である。)に10パーセント程度上乗せした数値を公表していたが(なお、これは各地区で、各新聞の折込センターが集まって、協議して決めている。)、そのことを一審被告は知っていた。

(エ)SSは、昭和54年、IMが筑後地区の担当として着任した際に同人と知り合い、その後他の地区にいたIMに金を貸したりもし、IMが筑後地区の担当になるように、当時の一審被告の販売局長に働きかけた。IMは、平成13年1月から、筑後地区の担当となり通常なら2、3年で転勤するのに、その後も同地区を担当している。(乙111、原審での証人IM、同YM、同S)

(オ)SSは、平成7年に久留米市長門石の長門石店を、平成12年12月に同市合川の合川南店を譲り受けたが、IMが担当となった平成13年1月以降、IMから打診されて、同年10月に、久留米北店の古賀秀樹(以下「古賀」という。)所長と同店の販売区域の一部(小森野町、櫛原町地区)と長門石地区とを相互に所定の代償金を支払って交換した。同年11月には、同じく、荒木の経営する久留米中央店の北側の通町地区の譲渡を打診された。また、SSは、平成14年1月には、久留米市の文化センター前店の販売区域内の東櫛原町に販売店を置くことにし、そのころ、一審被告を通じて、店舗所在地を含む一部の地域(通町、櫛原町地区に隣接する地域)を文化センター前店の平山所長から譲り受けた。

IMは、これらについて、古賀や平山に、本社の販売計画として区域調整をすると説明し、平山には、久留米中央店の販売区域である諏訪野町地区あるいはその周辺店の一部を引き継げるようにするなどと述べて、同人らの了解を得た。

さらに、IMは、平成13年10月から12月ころ、SSに、一審原告松岡が引退・廃業するので、宮の陣を譲り受けないかと打診したが、一審原告松岡が引退しないことにしたので、その話は立ち消えとなった。なお、その際、IMは、一審原告松岡又はその妻をSSの折込センターで雇用することを持ちかけ、了承を受けていた。

(乙57の6ないし8、124、126、原審における証人IM、同S、一審原告松岡本人)

 

2) 前提事実及び上記1及び2(1)の認定事実をもとに判断する。

ア 新聞販売店契約は、新聞の宅配という重要な役割を特定の個人に独占的に委託することから、一審被告でもそれなりに信頼できる者を人選して締結しているはずである。そして、一審原告真村は、平成2年11月に、約1200万円の代償金を支払って、一審被告と新聞販売店契約を締結し、その後更新を続けて、平成8年8月1日には、本件新聞販売店契約を締結したことから、一審被告は、同一審原告を新聞販売店を経営する者として適任であるものと判断していたといってよい。

他方、一審原告真村としても、その後も店舗確保のために新たに建物賃貸借契約を締結し、当該建物の増改築に資金を投下したりしていること(上記1(4)イ)、また、広川店の経営のために従業員を雇用し、セールス業者に報酬を支払い、販売拡大のために景品等提供するなど、相当多額の投資をしてきたことが認められ(甲17、原審での一審原告真村本人)、もとより広川店での営業を生活の基盤としていることは明らかである。そうであれば、一審被告が継続的契約である一審原告真村との本件新聞販売店契約の更新をしないというためには、正当な事由、すなわち、一審原告真村が本件新聞販売店契約を締結した趣旨に著しく反し、信頼関係を破壊したことにより、同契約を継続していくことが困難と認められるような事情が存在することが必要であるものというべきである。

そこで、以下、このような観点から一審被告の主張を順次検討する。

イ 業績不振、営業努力不足について

一審原告真村は、上記(1)アのとおり、当初の不振を他の新聞販売店の協力も得ながら挽回し、一旦減少した定数も平成8年ころには回復し、実配数もほぼ定数に近づけるなど、その営業努力はむしろ高く評価されるのであり、それだからこそ平成8年、9年と連続して表彰されてもいるものと見ることができる。

その後は、平成11年ころから、実配数と定数とに乖離が見られるようになったが、その一因にはSSがセールス団を回さないようにしたことの影響があるところ、そのような仕打ちを受けた原因は、SSが主導するセールス団とは別のセールス団の立ち上げについて一審被告の担当者(佐藤)からの働きかけを受けたことにあること、しかも、一審被告が、一審原告に暴行まで働いた杉SSを叱責したのみで、上記のような仕打ちを放任したことを併せ考えると、直ちに一審原告真村の努力不足と評するのは相当ではない。

また、その後の広川店の業績は、後記ウのような架空読者の計上を割り引いて評価しなければならないということはあるにしても、筑後地区の他の販売店と比較しても著しく劣るとはいえないし、上記(1)イ(ァ)のように読者の新聞離れの傾向も考慮すれば、単に一審原告真村の業績不振、営業努力不足の一語で片付けてしまうことはできないというべきである。

なお、更新拒絶後の業績の悪化は、一審被告が、新聞紙を供給する以外の役務の提供をしないということによるものであるから(原審での一審原告真村本人、なお、一審被告は、広川店について「よみうり赤ちゃん新聞」への読者の赤ちゃんの掲載すら拒んでいる(甲77の1、2、甲157の1、2)。)、このことをもって営業不振などといって責めることはできない。

ウ 虚偽報告について

(ァ)一審原告真村が一審被告に虚偽報告をしていたことは明白である。このような虚偽報告は、一審被告にとって到底軽視することので

きないものである。そのような現象が蔓延するときは、正確な現状

認識に基づく経営戦略が立てられなくなり、また、収入の相当部分

を占める掲載広告の広告主の信頼を損ねるという重大な事態を引き

起こしかねないからである。それ故、本件新聞販売店契約において

も、これを契約解除事由として定めているところである。

そして、134部の架空読者の存在は、広川店の定数が1625ないし1660部であるところからしても、相当の数及び割合であるといわなければならない。一審原告真村としては、一層の販売拡大努力をすべきであったことは当然であるし、それができないのであれば、一刻も早く架空読者の計上という不正常な事態を解消した上で、その事実をありのままに一審被告に報告すべきである。

これに反し、長期間にわたってこれを維持したことは強く非難されて然るべきであって、同一審原告の責任は決して軽くないものといわざるを得ない。

(ィ)しかしながら、新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

一審原告真村が、予備紙の部数を偽っていたとして誓約書を提出した際に提出した平成12年10月目標増紙計画表では、定数年間目標を1665部、実配年間目標を1659部とし、同年5月時点での定数を1625部、実配数を1586部、予備紙を39部と、同年10月時点での実配数を1586部、予備紙を39部として上記定数を維持した記載をしているところ、一審被告は、このような報告を受けても、それに合うように定数を減らさせることをせず、上記計画表記載のとおりの同一審原告らの注文を受けていたものであり、同様に、予備紙の虚偽報告が発覚した久留米中央店の荒木に対しても、ほぼ同様の対応に終始しているのである(甲131、乙81、104、原審証人YM)。

このように、一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。

(ゥ)以上のとおり、一審原告真村の虚偽報告の程度は決して軽視することのできないものであり、その責任は軽くはない。まして、同一審原告が上記(ィ)のような誓約書を提出したこともあることを考えれば、なおさらである。しかしながら、上記(ィ)のような一審被告の新聞販売店に対する態度などに照らせば、一審被告が、一審原告真村の虚偽報告をもって本件新聞販売店契約の更新拒絶の理由とすることを容認することはできない。

むしろ、上記1(4)ないし(6)及び2(1)ウの諸事実に照らせば、一審被告の本件新聞販売店契約の更新拒絶は、ある意味では一審原告真村が、広川店の区域分割の申し入れを断ったことに対する意趣返しの面があり(同一審原告が分割に応じていれば、契約更新をしていたと思われる。)、また、同分割申入れの背景にSSらとIMとが意志を通じた策動の如きものが窺われることを考慮すると、一審被告の更新拒絶に正当な事由があるとはいい難い。

エ 帳票類提示拒否について

一審原告真村が、平成13年6月25日に、IMから関係帳簿閲覧提示を求められたにもかかわらず、架空読者の計上を発見されないよう、この要求を拒んだことが認められる。この点も、本件新聞販売店契約に定める契約解除事由に該当する。

しかしながら、同一審原告の拒否の動機が虚偽報告の発覚をおそれたことにあるとすれば、虚偽報告に至る背景やそれについての一審被告の姿勢等も合わせて考慮すべきであり、その虚偽報告には酌量すべき諸事情があること、本件の場合、帳票類の提示拒否によって一審被告が受ける不利益は虚偽報告を発見できなかった点にあるところ、虚偽報告自体が更新拒絶の理由とはなり得ない以上、帳票類の提示拒否だけを取り出して、更新拒絶の正当事由とすることはできない道理である。

オ 一審原告真村の分割案拒否その他について

(ァ)同原告が一旦承諾した分割提案を拒否したことはそのとおりである。

しかしながら、一審被告の分割案がその主張のような検討の結果であれば、その関係資料の提出があるはずなのに、本件訴訟では、広川店の各字毎の読者数の資料(乙88)は提出されたものの、分割される地区と残る地区の地理的、人文的特色や読者数等についての資料の提出はない(一審被告は、広川店の販売区域のうち、国道3号線以西の久留米市や筑後市と隣接する地区で人口が増加する割には普及率が低いというが、訴訟でそれを裏付ける資料の提出はない。)し、むしろ、分割を予定した地域の人口とそれ以外の地域の人口の伸びは変わらず、分割を予定した地域は約2500人と広川店の区域の約半分になるというのであり(乙113)、一審被告の一審原告真村に対する説明とも大幅に齟齬する結果となっているのである。

また、一審原告真村にすれば、上記提案は広川店の在り方に関わる重大問題であるから、一旦は一審被告の意向に押されて不本意ながら承諾したものの、熟慮した結果、承諾できない旨態度を変更したことを責めるのは酷であるし、その時点では、一審被告はそれを前提とした新たな権利関係の設定等もしていたわけではないのであるから、それを理由に本件新聞販売店契約の更新を拒絶するというようなことはできないというべきである。

(ィ)一審被告の主張する従業員の登録拒否、協調性の欠如等については、これを裏付ける的確な証拠はない。

 

3) 以上のとおりであって、一審被告の主張は理由がない。

 

3 争点(2)について

上記のとおり、一審被告の本件新聞販売店契約の更新拒絶には正当事由がないのであるから、この更新拒絶は認められない。したがって、あくまで更新拒絶が有効であるとして一審原告真村にそれを押し付け、新聞紙の供給以外の役務を提供しないという一審被告の対応は違法であり、一審被告はそれについて少なくとも過失があるといわざるを得ない。

また、第2の1の前提事実及び上記1及び2(1)の各認定事実によれば、一審被告の上記更新拒絶の背景には、筑後読売会に強い影響力を有するSSの意向が窺われるが、その点を度外視しても、一審被告は、本件新聞販売店契約で広川地区に専売権を持つ一審原告真村に区域の分割を求め、一旦承諾した同一審原告がそれを拒否するや、業績不審、虚偽報告などを理由に、本件新聞販売店契約の更新を拒絶したもので、その態度は、多数の販売店を擁しわが国有数の規模を持つ一審被告が、1販売店を経営するに過ぎない一審原告真村に対して文字どおり自らの供給者としての優越的地位に基づいて、自社の意向を押し通そうとしたものであり、その地位を濫用したと評されても仕方がないというべきである。ただ、一審原告真村も、その行った虚偽報告や帳票類の提示拒否は、本来ならば同契約の解除事由にもなりかねないものであり、反省すべき点は少なくない。

そうすると、上記一審被告の行為により営業被害を受けた一審原告真村に対する賠償としては、200万円の限度でこれを認めるのが相当であり、その損害と因果関係がある弁護士費用は20万円とするのが相当である。

 

4 争点(3)について

1) 証拠による認定できる事実

原判決41頁10行目に「前記第1、1の各事実、上記1認定の各事実」とあるのを「上記第2の1の前提事実」と改め、同11行目の「155、」の次に「157、」を加えるほか、原判決第3の3(41頁10行目から43頁12行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

 

2) 上記各事実によれば、結果的に、一審原告松岡は拒否通知を出したことで、一審被告から廃業及び区域返還すなわち本件新聞販売店契約の解除の意思表示又は中途解約の申入れは受けなかったものの、同一審原告において、本件新聞販売店契約が打ち切られるのではないかとのおそれを抱かざるを得ない状況に置かれたことは明らかである。しかも、その際に一審被告が問題にしたのは業績不振である。

それと同じ理由で、一審原告真村や荒木は現に本件新聞販売店契約の更新拒絶又は解除をされ、荒木は、その後仮処分でその地位が仮に定められたのに、一審被告は新聞紙の供給を停止しているのであるから、同じような理由を告げられて廃業勧告を受けた一審原告松岡が、宮の陣店の将来に対する不安を覚えたのは当然である。

   一審被告の一審原告らや荒木に対する一連の態度は、継続的な新聞販売店契約による地位があるのに、一審原告真村については少なくとも過失に基づいて違法に、荒木については、仮処分で仮にその地位が定められたのに故意にそれに違反して、それぞれ不利益を与えたのであって、一審原告真村や荒木と同一歩調をとっていた一審原告松岡がそれらの一審被告の行動を見て現実的な不安を感じることは当然認識できたのに、それを解消するどころか現実の危険を感じさせたのであるから、一審被告は一審原告松岡に対しても不法行為責任があり、同一審原告に対してその精神的苦痛を慰謝する必要があるというべきである。

また、上記(1)で引用した原判決第3の3(1)ケ、コの事実によれば、一審原告松岡が、筑後読売会及び統一精算会を自己の意思で退会したものとは認められないが、さればといって、本件全証拠によっても、除名されたのか否かは判然としない。しかしながら、元来、筑後読売会は、読売新聞専売所長の強制加入団体であり、単なる親睦会ではなく、一審被告からのセールス等補助の窓口となるなどして加入店の営業活動を補助する立場にある会であって、一審原告松岡につき、除名を正当化するだけの事情が存在することは容易に考え難いところである。

そうすると、一審原告松岡が筑後読売会内のブロック会に参加できないとされていることは新聞販売店としての地位を不当に侵害されているものである。一審被告は、一審原告松岡と本件新聞販売店契約を締結している以上、他の新聞販売店と同じように宮の陣店を差別せずに取り扱う義務があり、会則上も協同して会務の運営を図る立場にあるのであるから、筑後読売会に対して、その関係の正常化を働きかけるべきである。IMが上記ケ、コの決議に関与しながら、これに全く反対していないこと、一審被告のセールス等補助が読売会及び統一精算会を通して行われており、一審原告松岡がこれら補助を受けられないでいることを放置する結果になっていることは問題である。これについて、一審被告には、別個の不法行為責任もあるというべきである。

上記一審被告の行為により精神的損害を受けた一審原告松岡に対する慰謝料としては100万円が相当であり、その損害と因果関係がある弁護士費用としては、10万円が相当である。

 

第4 結論

以上の次第であって、一審原告らの控訴に基づき原判決を主文のとおり変更し、一審被告の控訴は理由がないから棄却することとする。

 

福岡高等裁判所第3民事部

 

裁判長裁判官  西    理

 

   裁判官  有吉  一郎

 

   裁判官  堂薗 幹一郎