第二東京弁護士会 綱紀委員会御中

             懲戒請求者   黒   薮   哲   哉

 本書面は、懲戒事案を不必要に複雑化することなく、早期に貴委員会の審理を進めてもうらために、対象弁護士の非違行為の核心部分を簡略に説明することを目的に提出するものである。

 なお、弁明書に対する反論は、その必要性はほとんどないと考えるが、念のため準備書面(2)を別途提出するので参照されたい。



第1 本件懲戒請求に至る経過について

 本件は、読売新聞西部本社の法務室長江崎(以下「江ア」という。)を原告、対象弁護士を原告訴訟代理人、懲戒請求者を被告として、東京地方裁判所に提訴されたいわゆる著作権裁判において、

審理の途中から「催告書」の作成者が原告江崎ではなく、対象弁護士ではないかとの疑惑が浮上し、東京地裁・知財高裁の判決において、「催告者」の作成者は原告江崎ではなく、

江崎の訴訟代理人である対象弁護士若しくはその事務所関係者であるとの事実判断が示され、江崎の訴えを棄却する判決が確定したため、対象弁護士の懲戒請求を行うことにしたものである。

 懲戒請求者は、著作権裁判の提訴前に、江崎の作成名義の回答書をブログに紹介していたが、その削除を求める「催告書」が送りつけられたため、その「催告書」もブログで紹介したところ、

江アから東京地裁に「催告書」のブログからの削除を求める仮処分を申し立てられ、その後、東京地裁への本訴の提起や知財高裁への控訴、果ては最高裁への上告・上告受理申立てが行われ、これらの裁判の応訴に負われることを余儀なくされた。

 幸い、福岡県弁護士会所属の読売新聞販売店訴訟の弁護団が、懲戒請求者の訴訟代理人として、福岡から東京まで出張して裁判を担当してくれたため、応訴し続けることが可能であり、勝訴の確定判決を得ることも出来た。

 しかし、その裁判のために、懲戒請求者が被った労力的・時間的・経済的負担や、精神的苦痛は、甚大なものがある。

 そのため、懲戒請求者は、「著作権」裁判の確定判決で、「催告書」の作成者が原告江崎ではなく対象弁護士若しくはその事務所関係者であるとの事実判断が示された事に大きな衝撃を受けた。

 弁護士が、そのような裁判を起していたがことが、にわかに信じられなかったからである。

 東京地裁と知財高裁の裁判官は、江崎の訴訟代理人弁護士である対象弁護士が、自らが作成した「催告書」であるにもかかわらず、江崎が作成した文書であるとして作成者を偽り、

偽りの作成者である江崎を原告とする著作権裁判を訴訟代理人として提起し、嘘の証言と証拠を法廷に持ち出し誤れる判決に導こうとした行為を厳しく批判したのである。

 懲戒請求者は「著作権」裁判の確定判決により、裁判の相手方当事者とされたという理由からだけではなく、フリーのジャーナリストとして言論活動に携わる者として、

また1人の国民として、我が国の民主主義と司法の権威を揺るがしかねないかかる対象弁護士の非違行為を、不問に付することは許されないと考え、本件懲戒請求を申し立てたのである。



第2 対象弁護士の具体的非違行為
 「催告書」の作成者が著作権裁判の原告江崎ではなく、訴訟代理人である対象弁護士であった事実が確定判決により明らかとなったことから、対象弁護士の次のような数々の非違行為が浮かび上がってきた。


  ブログからの削除を求めた江崎作成名義の「回答書」は、法律の素人である懲戒請求者から見ても、著作権法の保護を受ける著作物には該当しないことは明らかな文書である。

 しかるに、対象弁護士は、上記回答書は著作権法上の著作物であるとの法的判断を示し、懲戒請求者のブログから回答書を削除しない場合は、懲戒請求者に対し民事・刑事上の責任を追求する旨を警告する内容の「催告書」を作成したものである。

 弁護士には、法令や事実調査の義務が求められている。
対象弁護士は「著作権」に詳しい弁護士との一般的評価を受けているとの事である。

 そのような、対象弁護士が、回答書は単なる事務文書にすぎず著作権法にいう著作物に該当しないことは充分認識出来るにもかかわらず、依頼者である読売新聞社側の意向に迎合して、「回答書」が著作物であることを前提とする「催告書」を作成し、懲戒請求者に義務なきことを強要しようと図ったものである。

 このように、対象弁護士が、法令や事実の調査義務を全く尽くさず、依頼者側の目的を達するために、法的知識を濫用・悪用して、本来、著作物性の認められない回答書を、

あたかも著作物性が認められる文書であるかのような、法的枠組みを発案し実行に移した行為は、弁護士として、とうてい許されない非違行為に該当すると言うべきである。

 ちなみに、対象弁護士は、「回答書」を著作物であると判断した理由については、弁明書でも納得のいく説明は出来ていない。


 2 対象弁護士が作成した「催告書」が著作権法に基づく著作物であるとの判断を示して、懲戒請求者に同文書のブログからの削除を求め、懲戒請求者を相手方とする仮処分や本案訴訟を提起したこと。

   「催告書」も、回答書と同様に事務文書の範疇に属し、著作権法上の著作物に該当する文書でないことは、弁護士であれば容易に法的判断が可能である。

 しかるに、対象弁護士は、懲戒請求者のブログに掲載された「催告書」を削除することを求める読売新聞社側の意向を受け、「催告書」が著作物に該当する文書でないことを認識しながら、

或いは容易に認識可能であるにもかかわらず、「催告書」が著作物であるとの法的判断を前提として、上記各訴訟行為に及んだものである。

 なお、この点について、知財高裁判決は、「催告書」作成者の問題とは別に、念のためと断った上で、「催告書」が著作物に該当しない理由についても説明を加えているほどである。

 対象弁護士は、「催告書」が著作権法上の著作物に該当しない文書であることを容易に知りながら、あえて著作物であると強弁して訴訟行為に及んでおり、かかる対象弁護士の行為が弁護士として許されない非違行為に該当することは明らかである。


  対象弁護士の非違行為の内で、最も重大な非違行為は、「催告書」を自ら作成しておりながら、読売新聞西部本社の法務室長の江崎が作成した文書であると偽り、

江崎を当事者とする著作権の仮処分裁判や本裁判を提起し、それにそう虚偽の主張と立証活動を行ったことである。

 これは、裁判所や裁判官を欺罔し、愚弄するもので、誤った裁判を導く行為であり、弁護士として絶対にやってはいけない、法治国家の根幹を揺るがしかねない重大な非違行為である。

 弁護士が訴訟代理人として偽りの原告をたてて裁判を提起し、訴訟を遂行し、その虚構の構図が判決で確定された事案は、貴弁護士会のみならず日弁連においても、おそらく始めてのケースではないかと思われる。

 対象弁護士の上記行為は、弁護士の使命・役割と職業倫理に真っ向から反する非違行為であり、厳しい処分が求められる。


 4 最後に、対象弁護士は懲戒請求者に対し著作権裁判以外にも、読売新聞社が懲戒請求者に多額の損害賠償を求める裁判の訴訟代理人も務めている。

   読売新聞社の懲戒請求者に対する多額の損害賠償請求の裁判は、懲戒請求者の言論抑圧を目的とする以外考えられない。このような言論抑圧を目的とする多額の損害賠償請求訴訟は、言論抑圧のための「ブラフ訴訟」と呼ばれている。

 かかる訴訟に、対象弁護士が訴訟代理人として積極的に関与している点も、弁護士の社会正義の実現と基本的人権の擁護の使命に反していると考える次第である。貴弁護士会の適切な対応と指導を求める。