博物館雑感
■インターネットと博物館
インターネットの急速な普及に博物館側が追い付いていない。ホームページを持っていない博物館がほとんどである。ホームページをもつ博物館でも内容は展示の紹介程度、概略の説明しかない。
本来ならば、概略的に見た展示の詳細の説明が家で見られたら良いと思う。概略はもちろん必要であるが、詳細の説明も必要である。
毎日展示品を目にしている学芸員の方にはわからないだろうが、博物館に行く前は概念的に展示物をつかむことが必要であり、一度博物館を訪問し モノの概念を掴んだ後には詳細の情報が必要である。実物を見前に詳細の説明があっても身にならないが、実物を見た後に概論では物足りなくなってしまう。
本格的に調べたいと思うならば図書館などで調べられるとはいうものの、そのような情報にたどり着くまでずいぶん時間と幸運が必要とされる。
博物館同士で連絡を取り合い、類似の展示品の検索ができたら更に面白いと思う。
そのように詳細に調べてみると、もう1回行って更に見てみようという気持ちになるのだと思う。
現在のインターネットの情報では、実際に行った後では見る気がしないものばかりである。
博物館の図書コーナーも概してテーマが絞られているので利用しやすいのだが、本が検索できるHPは少ない。
■詳細のパンフレットの魅力
紙一枚に主要なテーマを記述し、もって帰ってもらうシステムが気に入っている。「解説シート」と呼ばれるようだ。どこが始めたのかは知らないが、大規模にやっているのは佐倉の国立民族歴史博物館である。
まだ置いてある博物館は少ないが、意外と小さな博物館に置いてあることもあり、学芸員の気概を感じさせる。
展示品を見て感動し、博物館を出た途端に忘れてしまうのではないかという恐怖感や、なにか知識だけでなく形のあるお土産を家にもって帰りたいという気持ちを利用しているのだろうが、家で再び見てみると詳細な内容に満足することが多い。主題が絞られているため一級の資料である。
宝探しのように、その解説シートを全て集めようと館内をうろうろしたりするのも趣味性が高まる。
館内で読まれることは少ないし、家に持って帰っても読まれないことも多いと思うのだが、それでいいのだと思う。
■展示のテーマが広すぎる
すばらしい博物館もたくさんあるが、まだまだ焦点を絞りきれていない博物館が概して多い。これだけ多くの博物館があるのだから、小さな博物館じゃ一般的な広範囲の展示をしていたのでは大きな博物館と同じ土俵で戦うこととなり、勝ち目はない。
見るほうでも縄文の矢じりを見ても「またか」という気持ちしか起きない。どこでも見られる展示では新しい発見は生まれない。その地域の特色がある展示に焦点を絞ればそれは面白い展示となると思う。
特定のテーマであればその分野では日本一の博物館になれる。日本一ということは世界一の博物館になれる分野もたくさんあると思う。もっともっと焦点を絞って深い展示を行なってほしい。この分野の展示ではあの博物館に行けという情報はすぐに広まると思う。
■食品関係の企業博物館
食品関係の企業博物館はたくさんあるが、このような博物館へ行くと、その来訪者の多さにびっくりする。観光バスで大量に押しかけて見学をして、試食をして、販売所で買い物をして津波の様に去ってゆく。マナーも悪く、質問も少なく、必ずしも知的な印象は無い。でも、おばちゃん連中のレジャーの一つと笑ってはいけない。
もちろん企業側の旅行会社への売り込み、豊富な資金力、テーマが身近であること という要素もある。
しかし、何よりもテーマが絞られていて分かりやすく、深く、決して事前の期待を裏切らない。展示のテンポも良い。公的な博物館施設でも多いに参考にしてもらいたい。
■管理室から出てきてほしい
質問をすると、ある程度こちらも興味を持って、基礎知識を持っているとわかると本当に喜んで質問に答えてもらえる。こちらの知りたい好奇心と、一人でも多くの人に教えたいプロ意識との間の真剣勝負というと大げさだが、それほどの迫力を感じるときが多く、楽しい。
でも、中には質問にもほとんど答えられず、明らかにパートのおばさんが店番しているだけという所も多い。失望する。
学芸員の人はもっと積極的に展示場に立ったらどうだろうか。事務所に引きこもっている人がほとんどである。企業のショールームでは考えられない行動である。熱心に見ている人には話し掛けたら良いと思う・・・。
あまり話し掛けてもらいたくない人、じっくり見たい人も多いが、その人たちを見分けることはそれほど難しくはないと思う。
■電力館の扱いの不思議
各地方自治体の公式ホームページ、また観光マップにも電力館は載っていない。一般の企業博物館は載っているのになぜか電力館だけは無視されている。原子力発電所ならわからなくもないが、一般の電力館でも記述されている例は少ない。展示に対する熱心さは公立の博物館以上であることは異論がないだろう。なにか政治的な意識があるのだろうか?どなたか、わけを知っていれば教えて下さい。
■行動パターン
私の場合はこのような訪問をしている。
土曜日と日曜日が行動の主体。
事前に各地方自治体のホームページで博物館を探す。全てリストアップ。全ての博物館が載っているわけではないので、本などの他の情報源からも普段からリストアップしておく。また博物館はすぐ近くに隣り合っていても、市町村が異なると載っていないので再度行程を組み直す。
多くの場合、住所は載っているが、地図は載っていない。住所だけの記述は遠方から訪れる者には意味が少ない。インターネットの地図サービス(例えばMAPFUN)も参考になる。
正確な場所が良くわからなくてもとにかく行ってみる。だいたいの狙い目は役場や図書館がある中心部を狙う。地元で聞くと多くの場合はわかる。ガソリンスタンドも狙い目。役場や警察署は土日閉まっているので役に立たない。市民ホールや図書館など公的な場所が見つかるとそこで観光地図をもらう。たいていの市町村には独自のものがある。その地図さえあればあとは簡単。
私の交通機関はバイク。行ったり来たりして博物館を探し廻るのには最適である。
■休日休館、予約必要の不思議
私のような遠方から迷いながら博物館に到達する訪問者には予約はとても怖くてできない。休日以外の訪問も実質不可能。展示をすることを目的としていながら休日が休館とか、予約が必要という博物館もあるが、そんな考え方自体が、理解できない。
■学芸員室の功罪
先日 東海銀行の貨幣博物館を訪れてびっくりした。学芸員室あるいは管理室という概念がなく、館長さんや学芸員が展示フロアーと同じレベルで執務をされていた。意図してそうしているのかどうかはわからないが、そのような構成の博物館は今まで見たことがなかった。ほとんどの博物館は専用の部屋があり、ひどいところは「関係者以外立入禁止」なんて書いてある。
同一の部屋にいることで展示をする側と見る側の間になんの垣根も無くて、ちょっとした疑問も質問しやすい。もちろん質問に答えることばかりが学芸員の仕事ではないとは思うが、全体の姿勢にも影響を与えているのだと思う。
見学者としては疑問には思ってもほとんどのものは、小さな疑問で、それがわからなくったって生活の上ではほとんど影響が出ないたぐいのものである。でもそんな疑問が明快な回答によって一瞬にして解けると感動をすることが多い。窓口越しではなかなか質問をする勇気が出ない。大阪の「近つ飛鳥博物館」でもわざわざ相談カウンターを置いて、日頃質問が多い項目に対する回答の為だろうか、いくつかの資料や模型を上に並べて、いかにも何でも聞いてくれ!と主張していた。このようなタイプの博物館は本当に好感が持てる。
■展示の解説文を全てHPに載せてほしい
展示の一部を解説と共にHPに記載しているところは多いが、展示の全て、あるいはそれ以上の解説をHPで記載している博物館を見たことがない。博物館に行ってもどのような展示があったかは覚えていても、内容までは覚えていない。時間が経ってしまえばどんどん忘れる。また、最初は解説をしっかり読んでも、後半は疲れてしまって読めないことが多い。概念を実際のモノを見てつかんだうえで、自宅でじっくり内容が読めたら最高だと思うのだが・・・