クリプトスポリジウム対策

はじめに

 クリプトスポリジウム及びそれに関連すると思われる出題は以下の通りです。H8年6月に埼玉県越生町で、我国初めての水道水中のクリプトスポリジウムによる感染症が発生し、同年10月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」が策定されたのですが、以後クリプトスポリジウム対策に関連する出題は概ね毎年と言っても良いほど出題されています。「水道界の大問題であり、技術士としては当然知っておくべきテーマなんだ」ということの証明でもあるのでしょうネ。厚生労働省の立入検査でも水道事業体の対策の不徹底ぶりが毎年取り上げられています。

 クリプトスポリジウム暫定対策指針は、H10年、H13年と改訂を重ね、また、平成12年に制定した「水道施設の技術的基準を定める省令」においても、原水に耐塩素性病原生物が混入する恐れのあるときはろ過等の設備を設置すべきことを規定し、対策の推進が図られました。しかしながら、各水道施設の対策の進捗状況は十分とは言えない状況であることから、H18年に「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針(案)」がとりまとめられ、H19年4月1日からクリプトスポリジウム等耐塩素性病原生物対策として紫外線処理を新たに位置づける「水道施設の技術的基準を定める省令」の一部改正を行い、暫定対策指針に代わる「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」を適応するよう各都道府県に通達しました。以下その内容について説明いたします。

<今までのクリプトスポリジウム対策に関する出題実績>

H22年 クリプトスポリジウム等の予防対策の1つである紫外線処理の運転管理方法について述べ、また、その留意事項について3つ述べよ。
H21年 
クリプトスポリジウムが検出される河川表流水を水源とする急速ろ過方式の浄水場の水質管理において、危害原因事象、管理点を整理し、策定される水安全計画の要点を述べよ。
H19年 
紫外線処理の導入に際しての留意事項について述べよ。
H18年
 水道原水中のクリプトスポリジウム等の原虫類に対して、水道水の汚染を防ぐ対策について述べよ。
H16年
 クリプトスポリジウム対策として、汚染の恐れの判断方法、予防的措置及び原水で汚染が発見された場合の対応を述べよ。
H15年
 河川流域において、上流に下水処理場の放流口、下流に浄水場の取水口が存在する場合、飲料水の安全性に関するリスクを挙げ、上水道及び下水道でとるべき技術的対応について述べよ。
H14年
 急速ろ過方式の浄水場において、処理水濁度0.1度以下に管理していくにはどのような点に注意して運転管理すべきか述べよ。
H13年
 塩素処理に耐性を有する原虫による汚染の特徴とその対策について述べよ。
H10年
 水道におけるクリプトスポリジウム対策について述べよ。

1.クリプトスポリジウムとジアルジアの概要

 塩素処理に耐性を有する原虫としてクリプトスポリジウムとジアルジアが挙げられます。いずれも人間及び哺乳動物の腸で増殖し、水系感染症を起こす原虫で、飲食物から感染します。感染すると腹痛を伴う水様性下痢が3日〜1週間程度持続します。
 原虫の大きさに違いがあり、クリプトスポリジウムが5μm前後に対してジアルジアは10μm前後の大きさです。また、クリプトスポリジウムは治療薬がなく、免疫機構による自然治癒を待たなければなりませんが、ジアルジアには治療薬があるそうです。
 塩素消毒に対する抵抗性は、90%の不活性化に必要なCT値(消毒剤濃度×接触時間)がクリプトスポリジウムでは7,000前後なのに対してジアルジアは200前後であり、クリプトスポリジウムが通常の塩素処理ではほとんど不活性化せず水道による被害が問題になっているのに対して、ジアルジアは水道からの感染事例はありません。

1)クリプトスポリジウム

@ クリプトスポリジウムの特徴

人間及び哺乳動物の消化器官内(牛、豚、犬、猫等)で増殖し、水系感染症を起こす5μm前後の原虫です。これら感染した動物の糞便に混じってクリプトスポリジウムのオーシストが環境中に排出され、オーシストのついた飲食物を経口摂取することにより感染します。感染者からは1日10億個のオーシストが排泄され、2次感染が拡大します。
 感染すると腹痛を伴う水様性下痢が3日〜1週間程度持続し、免疫機構の正常な人は血清抗体により自然治癒します。治療薬はなく自然治癒を待つことになります。
60℃以上の加熱か−20℃以下での冷凍で30分で死滅、沸騰水では1分以上で死滅、乾燥にも弱く常温で1〜4日間の乾燥で感染力を失います。遊離塩素による99%の不活性化CT値=7200で、塩素では死滅させることが困難ですし、家庭用の冷蔵庫ではなかなか死滅しません。水中では凶器間生存します。河川水中で90%の不活性化に要する期間は水温15℃で40〜160日との報告があります。

A クリプトスポリジウムの問題点

a この原虫は通常の塩素消毒では死ない。
b 水道水が原因になると広範に感染する恐れがあります。その場合水道水に対する信頼性が失墜し、回復に多大な時間と労力を要すことになります。
c 原虫の試験法が難しく、充分なデータがないため、許容量と健康リスクが解明されていません。
d 国際化の進展に伴い(海外旅行者、輸入食品等の増加)輸入感染症として持ち込む可能性が高くなっています。

B クリプトスポリジウムの感染症事故

 水道水中のクリプトスポリジウムによる感染症については、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー市での40万人以上の感染事例が有名ですが、その他にも海外でいくつかの事例が報告されています。平成8年6月には埼玉県越生町で発症し住民14,000人のうち8,800人が感染するという大問題となりました。以後、数例の検出報告があります。H18.5.12大阪府能勢町でもクリプトスポリジウムが検出されました。幸い感染症患者等の被害発生はありませんでしたが、29時間の緊急給水停止をされています。
 感染のリスクは、摂取するオーシスト数により決まってくると考えられます。水を介した感染の場合、水中のオーシスト濃度、摂取の水量、水との接触頻度が感染リスクに影響を与える因子となります。

2)ジアルジア

 10μm前後とクリプトスポリジウムに比較すればやや大きい原生動物(原虫)で、遊離塩素による2log不活性化CT値(99.9%不活性)=150〜300です。
症状は腹痛、下痢(治療薬有り)です。熱帯・亜熱帯を中心に広く世界中に分布し、アジア、アフリカ、南米を中心に約2億人がジアルジア症に罹っています。水系感染ですが、CT値があまり大きくないため、塩素消毒の効いた水道水にある程度以上滞留させれば死滅できることから、水道水からの感染事例はありません。

2.「水道施設の技術的水準を定める省令」の一部改正

 厚生労働省はクリプトスポリジウム等耐塩素性病原生物対策として、紫外線処理を新たに位置づける「水道施設の技術的水準を定める省令」の一部改正を行い、07年4月1日から施行すると共に、暫定対策指針に代わる「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」を同日から適用するよう各都道府県に通達しました。

 06年3月末現在で、暫定対策指針によるクリプトスポリジウム対策の実施状況は、水道原水のクリプトスポリジウムによる汚染のおそれのある施設(予防対策が必要な施設)は6045施設ですが、このうち、濾過施設設置等の予防対策を既に実施しているのは3368施設(56%)で、残る2677施設が予防対策を検討中です。今回省令で新たに位置づけられた紫外線処理は、ろ過と比べ簡便な手法といえます。

 また、施工規則の一部改正は、ろ過施設設置等に伴う費用や事業変更認可手続きが負担となり、対策に実施に踏み切れない事業体も多いと見られることから、既存の給水区域の拡張または給水人口あるいは給水量の増加を伴わない浄水方法の変更で、知見・実績の蓄積があり、事業認可の審査を要しないと考えられる急速ろ過や膜ろ過等特定の浄水方法への変更を届け出のみで済む「軽微な変更」と位置づけるようになりました。

3.クリプトスポリジウムによる汚染の恐れの判断

 水道原水に係るクリプトスポリジウム等による汚染程度をレベル1〜4に分類し、それぞれの対応措置に従い対策を取ります。

1)レベル4(クリプトスポリジウム等による汚染の恐れが高い)

 地表水を水道の原水としており、原水から指標菌が検出されたことがある施設
 クリプトスポリジウム等の汚染源は、屎尿、下水、家畜の糞尿等を処理する施設の排出水や野生動物の糞便が考えられ、指標菌が検出された場合は、「汚染の恐れが高い」と判断します。

 指標菌とは、大腸菌(E.coli)及び嫌気性芽胞菌をいい、いずれかの菌が検出されたことのある施設は、クリプトスポリジウム等による汚染の恐れがあることに該当します。

2)レベル3(クリプトスポリジウム等による汚染の恐れがある)

 地表水以外の水を水道の原水としており、原水から指標菌が検出されたことがある施設
 伏流水・浅井戸を水源とする場合でも、指標菌が検出されるということは「汚染の恐れがある」と判断します。

3)レベル2(当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)

 地表水等が混入していない被圧地下水以外の水を水源としており、原水から指標菌が検出されたことがない施設
 指標菌が検出されたことがないことは糞便により汚染されていないと考えられ、「当面、汚染の可能性は低い」と判断します。

4)レベル1(クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)

 地表水等が混入していない被圧地下水のみを原水としており、原水から指標菌が検出されたことがない施設
 井戸のケーシングが破損していないこと、ストレーナが被圧地下水のみを取水する位置にあることが確認され、かつ、原水の水質試験結果から地表水が混入していないことが確認できる被圧地下水を原水とし、指標菌が検出されたことがない場合は、「汚染の可能性は低い」と判断します。

4.予防対策

1) 施設整備

@ レベル4
 ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過法、緩速ろ過法、膜ろ過法等)を整備すること。

A レベル3
 以下のいずれかの施設を整備すること。
a ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過法、緩速ろ過法、膜ろ過法等)

b クリプトスポリジウム等を不活性化することができる紫外線処理設備

 具体的には以下の要件を満たすもの。
1.紫外線照射槽を通過する水量の95%以上に対して、紫外線(253.7nm付近)の照射量を常時10mJ/cm2以上確保できること。
・紫外線照射量低下を避けるためには、処理対象水の鉄が0.1mg/l以下、硬度が140mg/l以下、マンガンが0.05mg/l以下であることが望ましい。
・適正なランプ照射強度を持つ紫外線ランプを選定すること。
・地震時の揺れ対策やランプ本体や保護管の破損防止対策を取ること。
・停電時対策として、非常用電源設備を設けることが望ましい。
・紫外線照射槽は水流の偏りのない、所定の滞留時間が得られる構造であること。また、紫外線照射槽は2つ以上の複数基に分けて設置し、1つの設備が故障しても最低限の処理水量が得られることが望ましい。

2.処理対象とする水が以下の水質を満たすものであること。
濁度2度以下であること
色度5度以下であること
紫外線(253.7nm付近)の透過率が75%を超えること(紫外線吸光度が0.125abs./10mm未満であること)

3.十分に紫外線が照射されていることを常時確認可能な紫外線強度計を備えていること

4.原水の濁度の常時監視が可能な濁度計を備えていること。(過去の水質検査結果等から水道原水の濁度が2度に達しないことが明らかな場合はしなくても良い)
・水質・水量の計測設備を設置し、効率的な運転、信頼性の向上を図ること。
・浄水処理の安全性を一層高めるため、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備と紫外線照射設備を併用しても良い。

 クリプトスポリジウム対策として施設整備中の浄水場では、原水濁度を常時監視し、河川工事等原因がクリプトスポリジウム汚染に関係ないものを除き、原水濁度が通常より高くなった期間中は、原則として取水を停止します。

2) 原水等の検査

@ レベル4及びレベル3
 水質検査計画に基づき、適切な頻度で原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査を実施します。
 浄水を毎日1回20リットル採水し、14日間保存することが望ましい。

 クリプトスポリジウム等の除去または不活性化のために必要な施設を整備中の期間は、原水のクリプトスポリジウム等を3ヶ月に1回以上、指標菌を突きに回以上検査します。

A レベル2
 3ヶ月に1回以上、原水の指標菌の検査を実施します。

B レベル1
 年に1回、原水の水質検査を行い、大腸菌、トリクロロエチレン等の地表からの汚染の可能性を示す項目の検査結果から、被圧地下水以外の水の混入の有無を確認します。
 3年に1回、井戸内部の撮影等により、ケーシング及びストレーナーの状況、堆積物の状況等の点検を行います。

<クリプトスポリジウムの検査方法に関する最近の話題>

1.嫌気性芽胞菌の検査ができなくなる?(2011.1.13日本水道新聞)
 平成19年に厚生労働省が通知した「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」では、糞便汚染の指標菌として大腸菌と嫌気性芽胞菌を位置づけ、いずれかが検出された場合は、原水に耐塩素性病原生物が混入する恐れがあるとしています。
 このうち、嫌気性芽胞菌の検出方法は3手法が示されています。しかし、「ハンドフォード改良寒天培養法」以外は、非常に手間がかかることから、水道事業体自らが水質検査を実施している事業体のほとんどは、ハンドフォード法を採用しています。ところが、この方法の培地に必要な抗生物質の製造は数年前に終了していて、国内で唯一倍地を製造・販売していました企業も抗生物質の在庫が尽きたため、このほど倍地の製造を中止しました。
 嫌気性芽胞菌の検査ができなくなることから、厚生労働省は暫定的な対応指針として、大腸菌の検査頻度を上げることを推奨していましたが、機材費や人件費が増加し、検査コストの上昇につながりますので、水道事業体では従来法の継続を求める声が上がっていました。
 ハンドフォード改良培地と同種のハンドフォード寒天培地(OSPD培地)を製造している関東化学は、英国のMAST社にハンドフォード寒天培地の原料の製造を依頼したことで、従来品と全く同組成の培地を製造することが可能となりました。価格も従来品と同額の300g当たり1万円です。
 この結果、手間とコストが係る大腸菌試験の頻度を増やさずに、嫌気性芽胞菌の検査が継続できる体制が整いそうです。

2.「遺伝子検出法」の導入の検討(2010.3.29水道産業新聞)
 厚生労働省はクリプトスポリジウムの検出方法に「遺伝子検出法」を導入できないか検討しています。医療・食品・環境の分野で既に実用化されている方法を水道にも適用しようとするものです。実用化されれば、技術に熟練を要する顕微鏡観察による方法に加えて、検出方法の選択肢が増えることになります。

 もう一つ、クリプト検査法に関して、上水濃縮資料保存法として「紛体ろ過濃縮法」の妥当性も検証されます。この方法が採用されれば、酸溶解性の紛体(ハイドロキシアパタイト)を用いたケーキろ過により、濃縮時間が短縮されます。

3) 運転管理

(1) ろ過

1. ろ過池出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持すること。
2. ろ過方式ごとに適切に浄水管理を行う必要があるが、特に急速ろ過法を用いる場合は、原水が低濁度であっても必ず凝集剤を用いて処理を行うこと。
3. 凝集剤の注入量、ろ過池出口濁度等、浄水施設の運転管理に関する記録を残すこと。

@ 共通の留意事項

a ろ過池出口の水の濁度を常に0.1度以下に維持します。このため、十分調整された濁度計を用いて浄水処理効果を監視し、原水水質の変化を浄水処理操作に即座に反映できるよう施設整備する必要があります。
b ろ過池出口の水の濁度は各池ごとに測定し、記録を残します。不可能な場合は、各処理系ごとに測定します。

A 急速ろ過法の留意事項

a 凝集剤の注入
ア.原水はいかに低濁度であっても、必ず凝集処理を行うこと。
イ.原水濁度、pH、水温、アルカリ度等の検査結果に対応して凝集剤の適正注入ができるよう施設整備と維持管理を行う。
ウ.凝集剤の注入率は定期的なジャーテストにより決定する。注入率やpHの適正を確認するため、原水・凝集処理水・ろ過水各濁度の相関関係を把握し、注入率やpH調整にフィードバックさせる。
エ.原水濁度の急変に対処するため、予め高濁度原水に対する適正注入率を把握しておく。
オ.水源に汚染源が新たに立地した場合は必ず注入率を見直す。
カ.凝集剤・アルカリ剤等の浄水用薬品は使用期限を遵守し、注入量等の記録を残すこと。

b 凝集操作
ア.凝集剤を注入した直後に撹拌し、原水全体に一様に凝集剤を拡散させる。
イ.薬品の注入率を変えたときは、必ず、フロック形成池や沈殿池での処理結果を確認する。

c 沈殿操作
ア.沈殿池の滞留時間、池内流速に留意し、十分な沈殿処理を行う。
イ.沈殿効果を高める必要があれば傾斜板等を設置する。

d 急速ろ過操作
凝集沈殿・砂ろ過によるクリプトスポリジウムの捕捉メカニズム
 急速ろ過池の砂粒径は500μm程度のですので、5μmのクリプトスポリジウムのオーシストを1円玉とすると、砂粒は直径2mの岩に相当する大きさなのです。このため、ろ過機能としては、ストレーニング効果ではなく、砂粒子に汚濁物を付着させて除去する効果に期待することになります。
 原水に凝集剤を入れて、クリプトスポリジウムのオーシストをプラスかゼロに帯電させ、砂のマイナスと引き合う状況にします。しかも、糊のような水酸化物で包んで砂にくっつけます。どんどんくっつくと(ある時間が経つと)やがてはがれて下の方へ崩壊し、ブレークスルーするようになります。オーシストは微細な濁質分より流出してくるのは遅いので、ろ過水の濁りを常時監視しておき、濁りが出てきたならば、直ぐろ過を止めて砂を洗浄すればよいのです。
 ろ過池出口の濁度を0.1度以下に保つよう暫定対策指針では指導しています。この値は、従来の2度を大幅に見直すもので、高感度濁度計の設置が不可欠です。

 ろ過操作における注意事項は以下の通りです。
ア.ろ過速度は急変させないこと。
イ.ろ過池は目詰まりの発生が少ない場合であっても、適切な間隔で洗浄を行う。
ウ.ろ過池の洗浄は適正な逆流洗浄速度で行うこと。洗浄排水の最終濁度は2度以下を厳守し、できれば1度以下を目指す。
エ.洗浄後ろ過池出口の濁度が0.1度以下になるまで捨て水を行い、ろ過池出口濁度を常に0.1度以下に維持すること。

e ろ過池洗浄排水等の原水への返送管理
ア.水道原水水質に急激な変化を与えないよう返送水の運転・管理に留意する。

B 緩速ろ過法の留意事項

ア.生物ろ過膜の損傷を防ぐため、ろ過速度は5m/日を超えないようにし、ろ過速度を急激に変化させないよう注意する。
イ.掻き取ったろ過砂を再利用する場合は、洗浄水の濁度が2度以下になるまで洗浄する。洗浄水は水道原水として利用しない。
ウ.掻き取り後、ろ過水を排水しながら、生物膜が再び形成され浄水の濁度が0.1度以下になるまで、ゆっくりしたろ過速度から徐々に速度を上げるようにする。

C 膜ろ過法の留意事項

 膜の破断による事故を防ぐため、異常の有無を適切に検知すると共に、異常が発見された場合、直ちに該当するろ過膜設備の運転を停止する。

(2) 紫外線処理

1. 紫外線強度計により常時紫外線強度を監視し、水量の95%以上に対して紫外線(253.7nm付近)の照射量が常に10mJ/cm2以上得られていることを確認すること。
2. 原水濁度が2度を超えたら取水を停止すること。
 2度を超えると不活性化に必要な紫外線照射量が得られない恐れがある。
 常時監視が可能な濁度計による濁度変動の監視を行う必要がある。
 紫外線処理の前にろ過設備を設けている場合はこの限りではない。
3.常に設計性能が得られるように、維持管理(運転状態の点検、保守部品の交換、センサー類の校正)を適当な頻度と方法で実施すること。
 紫外線照射槽内の流量については設計通りの設定流量からの乖離がないか確認する。
 紫外線照射槽内の流量、水温を定期的に監視し、異常が発生した場合は直ちに停止する。
 ランプスリーブを定期的に洗浄すること。
 紫外線ランプの点灯状況、運転時間、出力を把握しておく。初期出力の70%以下に低下した場合は交換する。
 維持管理時には紫外線が人体に直接照射されないよう保護具等を着用する。
 必要な予備品は確保しておく。 

 紫外線処理設備は、ろ過と比べ簡便な手法であり、導入コストもろ過設備の概ね1/10程度といわれています。H17年3月末現在では、対策が必要な浄水施設5480施設のうち、2404施設(うち簡易水道1700施設)がろ過設備を検討中であり、新対策指針によりクリプトスポリジウム対策の推進が加速されそうです。

<参考> 紫外線による消毒作用とは?

 紫外線とは、電磁波の一種でエックス線(X線)と可視光線との間1〜400nmの波長域全体を表したものです。

 紫外線は日焼けを起こす光線として有名ですが、実際には、日焼けの程度や生物に与える影響は各波長によって異なります。日焼けを起こす紫外線はUV−A(315〜400nm)、UV−B(280〜315nm)です。

 UV−Aは紫外線の中で最も波長が長く、人の皮膚を褐色に日焼けさせる(メラミン色素が増大して黒くなる)程度です。

 UV−Bはその影響がもっと深刻で、人の皮膚に対しては、紅斑を形成(血管が拡張し赤くなる)させ、さらに水ぶくれを起こして皮がむけるほどのひどい日焼け症状(日光による火傷)を引き起こします。

 他に、消毒作用がある紫外線としてUV−C(100〜280nm)があります。UV−Bと比べるとほんの僅かな量でマウスの皮膚に高い発癌性を示し、微生物に対しては、突然変異や致死に至る甚大な傷害・悪影響を及ぼす力を持っています。これは細胞内のDNAがUV−Cの中でも260nm付近に高い吸収スペクトルを有していることに起因するのだそうです。DNAは生命の本質ともいえる重要な物質ですから、DNAへの損傷は致命的となり、これが消毒作用といわれるゆえんです。
 幸いなことに、太陽光に含まれるUV−Cは上空のオゾン層により吸収され、地表には届いていません。言い換えれば、現在の生物はUV−Cに対して無防備に近く、人口光源である紫外線ランプによって多量のUV−Cに曝されると不活性化(死滅)されてしまうのです。

(3) 施設整備中の管理

 原水の水質監視を徹底し、クリプトスポリジウム等が混入する可能性が高まったと判断されるときは、取水を停止する等の対策を取るのが原則である。

@ レベル4
 原水の濁度を常時計測し、把握しておくこと。
 渇水等により原水の濁度レベルが通常より高くなった場合には、原水の濁度が通常のレベルまで低下するまでの間、取水停止を行う。ただし、原水濁度の上昇原因がクリプトスポリジウム等の汚染に関係ないケースの場合はこの限りでない。

A レベル3
 過去の水質検査結果等から、渇水等により原水の濁度レベルが高くなることが明らかである場合には、原水濁度を常時計測し、その結果を遅滞なく把握して、原水の濁度レベルが通常より高くなった場合には、原則として、原水の濁度レベルが通常のレベルに低下するまでの間、取水停止を行う。
 その他の場合には、原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査の結果、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれが高くなったと判断される場合、取水停止等の対策を講じる。

4) 水源対策

 地表水・伏流水の取水施設の近傍上流域、または浅井戸の周辺にクリプトスポリジウムを排出する可能性のある汚水処理施設の排水口がある場合、排水口を取水口等より下流に移設するか、排水口より上流へ取水口等を移設することが重要である。関係機関と協議の上その実施を図る。
 また、レベル3またはレベル4の施設においてクリプトスポリジウム対策に必要な施設を整備することが困難な場合には、クリプトスポリジウム等によって汚染される可能性の低い原水を取水できる水源に変更する必要がある。

5.クリプトスポリジウム症あるいはクリプトスポリジウムの検出が発生した場合の応急対策

1)応急対応の実施

 感染症の発生あるいは検出情報を入手した場合、状況の迅速な把握や応急対策の遅滞なき実施のために、都道府県・水道事業者間の連絡マニュアル・連絡網を策定しておく。
 感染症の発生もしくは検出情報を入手したしたら、マニュアルに基づき水道事業者は都道府県へ、都道府県は国に報告し、連絡を密にする。

2)水道事業者における応急対応

@水道利用者への広報や飲用指導

 クリプトスポリジウム感染症の発生状況から見て、水道が感染源であるおそれが否定できないと判断される場合は、水道事業者は都道府県と協力して直ちに、水道利用者への広報・飲用指導を行う必要がある。
 水道原水が汚染される恐れがあると判断される浄水場で、浄水処理の異常によりろ過池出口の水の濁度が0.1度を超過した場合も、必要に応じた広報を行う。

 広報は、感染症の拡大を防止するため、また利用者の混乱を招かないよう、広報車・ビラ・新聞・テレビ等を活用して迅速・確実に広報を行うこと。
 内容は、飲用時の注意事項(煮沸後の飲用)や、2次感染の予防方法(手洗いの励行)について周知すると共に、クリプトスポリジウム症の症状や感染予防策、水道事業者の対応等について、解りやすく詳細に伝えること。

A 水道施設における応急対策

a 給水停止の実施
 水道がクリプトスポリジウムの感染源であるおそれが否定できないと判断される場合は、水道水の給水停止を迅速確実に行う。通常より必要なバルブの作動状態を確認しておく。

b 浄水処理の強化
 浄水用薬品の注入率、ろ過速度等の調整を行い、浄水処理条件を適正にして、浄水の濁度を0.1度以下に維持する。

c 取水停止、水源の変更
 浄水処理が適切に実施できない場合は、原水の取水を停止し、汚染のない他の水源がある場合は切り替える。

d 汚染された施設の洗浄
 汚染された配水系統内の水道水の排水を行い、汚染されていない水道水で配水管や配水池の洗浄をする。配水管からの排水が速やかに実施できるよう、ドレーンの適切な配置、排水管網の点検を行う。

e 水質検査の実施
 給水栓水、配水池水、浄水池水の水質検査を行い、検水20Lでクリプトスポリジウムが検出されないことを確認すること。
 水源を切り替えて給水を再開する場合は、新規の水道原水についても水質検査を行う。

f 給水の確保
 あらかじめ、緊急時に、汚染されていない水源の活用や水道用水供給事業による応援が得られるよう施設の整備をしておく。

3)都道府県の対応

@ 水道利用者への広報・指示

 水道事業者と連携し、保健所等を通じて、病院・老人保健施設・社会福祉施設・学校等の利用者に広報・指示を行うと共に、患者等の問い合わせに適切に対応する。

A 受水槽の管理

 受水槽設置者に対し、給水の停止、水槽内の清掃を指導する。給水の再開は汚染されていない水に入れ替えた後に行うよう指導する。

B 近傍の水道事業者への連絡

 近傍の表流水や地下水を水源とする水道事業者に対し、クリプトスポリジウム症の発生について速やかに情報提供を行い、浄水処理の徹底を指導する。

水道におけるクリプトスポリジウム等検出状況と対応の事例(平成18年12月末現在)

年度 場所 水道施設 浄水処理 長期的対応 備考
H8年度 埼玉県越生町 上水道 急速ろ過処理 膜ろ過施設設置 浄水からクリプト検出
住民14000人の内8800人感染
H9年度 鳥取県鳥取市 簡易水道 塩素処理のみ 上水道事業に統合 原水からクリプト検出
感染症患者なし
H9年度 兵庫県山崎町 簡易水道 塩素処理のみ 膜ろ過施設設置 原水からクリプト検出
感染症患者なし
H10年度 福井県永平寺町 簡易水道 急速ろ過処理 浄水処理管理強化 原水・浄水からクリプト検出
感染症患者なし
H10年度 兵庫県夢前町 簡易水道 塩素処理のみ 膜ろ過施設設置 原水からクリプト検出
感染症患者なし
H11年度 山形県朝日村 上水道 塩素処理のみ 広域用水供給事業から受水 浄水からクリプト・ジアルジア検出
感染症患者なし
H12年度 青森県三戸町 簡易水道 塩素処理のみ 膜ろ過施設設置 浄水からジアルジア検出
感染症患者なし
H12年度 沖縄県名護市 小規模水道 簡易ろ過+塩素処理 上水道事業に統合 浄水からクリプト検出
感染症患者なし
H12年度 岩手県平泉町 簡易水道 塩素処理のみ 水源変更、急速ろ過施設設置 浄水からジアルジア検出
感染症患者なし
H13年度 愛媛県今治市 上水道 塩素処理のみ 水源の使用中止 浄水からクリプト検出
感染症患者なし
H13年度 岩手県釜石市 簡易水道 急速ろ過処理 浄水処理管理強化 原水・浄水からジアルジア検出
感染症患者なし
H13年度 兵庫県山崎町 簡易水道 塩素処理のみ 膜ろ過施設設置 原水からクリプト検出
感染症患者なし
H13年度 鹿児島県財部町 上水道 塩素処理のみ 膜ろ過施設設置予定 原水からクリプト検出
感染症患者なし
H13年度 愛媛県北条市 上水道 急速ろ過、活性炭処理 ろ材入れ替え、浄水処理管理強化を予定 浄水からクリプト検出
感染症患者なし
H14年度 山形県新庄市 簡易水道 塩素処理のみ 応急対策として膜処理装置設置、長期的には上水道と統合予定 原水からジアルジア検出
感染症患者なし
H15年度 大分県別府市 上水道 塩素処理のみ 水源の使用中止 原水からジアルジア検出
感染症患者なし
H15年度 山形県米沢市 小規模水道 塩素処理のみ 応急対策として膜処理装置設置、長期的には水源変更 浄水からジアルジア検出
感染症患者なし
H16年度 兵庫県宝塚市 上水道 急速ろ過処理 安全確認迄の間飲用制限、浄水処理管理強化 原水・浄水からジアルジア検出
感染症患者なし
H18年度 大阪府能勢町 簡易水道 急速ろ過処理 濁度計による常時濁度監視を徹底 原水・浄水からクリプト検出
感染症患者なし

<参考>下水道におけるクリプトスポリジウム対策

 (社)日本下水道協会の「下水道におけるクリプトスポリジウム検討委員会」最終報告(H12.3)を参考にしています。

1.下水および下水処理水中のクリプトスポリジウム濃度の実態

 全国67ヵ所の下水処理場(下水処理水を再利用している処理場)について、平成8年9月より10月にかけて、流入下水および処理水中のクリプトスポリジウムの濃度測定を行った結果、クリプトスポリジウムが検出された箇所は全体の1割程度であり、 その濃度範囲は流入下水で8〜50個/L、処理水で0.05〜1.6個/Lでありました。この検出率および濃度は、米国等で報告されている数値よりもかなり低い値です。

2.下水・汚泥処理プロセスのクリプトスポリジウム除去効果の評価

2.1 下水処理プロセス

1)標準活性汚泥法

@ 活性汚泥処理
 最初沈殿池流出水を、曝気槽と最終沈殿池からなる標準活性汚泥処理法で処理する。
 MLSS濃度2,000mg/L程度、HRT8h、汚泥返送率50%で連続処理を行った場合、 流入クリプトスポリジウム濃度約40,000個/Lに対して、添加開始後2日後に約99%(2Log)の除去率で安定した。

A 曝気槽への凝集剤添加
 標準活性汚泥法の曝気槽末端に凝集剤(PAC)を添加し、最終沈殿池で沈殿除去する。
 活性汚泥法の処理条件を@と同じくし、凝集剤添加濃度を10mgAl/Lとすると、全体での除去率は、 2日後で99.99%(4Log)、5日後以降で99.999%(5Log)となった。

B 流入下水の凝集沈殿処理
 流入下水に凝集剤(PAC)を添加し、沈砂池での撹拌の後に最初沈殿池で沈殿除去する。
 クリプトスポリジウム濃度を約104〜106個/L、凝集剤添加濃度を5、12.5〜l5、20mgAl/Lとすると、 除去率はそれぞれ、90%(1Log)以上、99.9%(3Log)以上、99.99%(4Log)程度が得られた。

2)オキシデーションディッチ法

@ 活性汚泥処理
 流入下水を、オキシデーションディッチと最終沈殿池からなるオキシデーションディッチ法で処理する。
 オキシデーションディッチ活性汚泥にクリプトスポリジウムを添加し、 回分で24h曝気と沈殿処理を行ったところ、標準活性汚泥法の汚泥とほぼ同じ除去率が得られた。汚泥転換率を流入下水SS濃度に対して75%とすると、連続処理における除去率は、流入クリプトスポリジウム濃度が10,000個/Lの場合に98.6%(1.85Log)となることが計算される。

A オキシデーションディッチヘの凝集剤添加
 オキシデーションディッチに凝集剤(PAC)を添加し、最終沈殿池で沈殿除去する。
 標準活性汚泥法の実験結果( 1),A)によると、 10mgAl/Lの凝集剤添加により除去率が99.9%(3Log)上積みされることから、オキシデーションディッチに凝集剤を10mgAl/L添加することにより、 除去率は99.998%(4.7Log)となることが期待される。

3)砂ろ過

@ 活性汚泥処理水を直接砂ろ過
 標準活性汚泥法の活性汚泥処理水を直接砂ろ過する。
 ろ過速度l00m/日および200m/日でろ過を行ったところ、流入クリプトスポリジウム濃度124個/Lに対して、それぞれ73%(0.57Log)、71%(0.54Log)の除去率が得られた。

A 活性汚泥処理水に凝集剤を添加して砂ろ過
 標準活性汚泥法の活性汚泥処理水に凝集剤(PAC)を添加、スタティックミキサーで混合後、砂ろ過を行う。
 凝集剤添加濃度3mgAl/L、ろ過速度100m/日および200m/日でろ過を行ったところ、流入クリプトスポリジウム濃度199個/Lに対して、99.7%(2.5Log)の除去率が得られた。

4)消毒方法

@ 塩素消毒
 CT値(消毒剤濃度×接触時間)3,600と7,200 mg・min/Lの塩素消毒実験では、クリプトスポリジウムの不活化率はそれぞれ47%(0.28Log)と99%(2Log)以上であった。また、別の研究では、塩素濃度を1、3、20、100mg/Lとした場合、90%の不活化に必要なCT値は、それぞれ800、920、1,250、2,900mg・min/Lであり、消毒効果は塩素濃度に依存し、塩素濃度が低いほど不活化CTは小さくなる傾向が得られている。
 なお、実際の下水処理場で適用されている塩素消毒のCT値は、高くても50mg・min/L程度であることから、塩素によって下水処理水中のクリプトスポリジウムを不活化することは実際上困難である。

A モノクロラミン消毒
 CT値7,200 mg・min/Lの条件でモノクロラミンを接触させた実験では、 クリプトスポリジウムの不活化率は90%(1Log)であった。
 なお、本消毒法によるクリプトスポリジウムの不活化は、塩素消毒と同じ理由により、実際上困難である。

B オゾン消毒
 水温約20℃、CT値3.5〜10mg・min/Lの接触条件では、90〜99%(1〜2Log)以上の不活化率が得られる。しかし、水温が低下するとオゾン消毒の効果が低下する。

C 紫外線消毒
 20mWs/cm2の照射で99.99%の不活化率が得られている。

D オゾンと紫外線の併用
 CT値1.5mg・min/Lのオゾン処理後、5mW/cm2で15sec紫外線を照射すると、 不活化率はオゾン単独処理の場合の10倍(1Log)になった。

2.2 汚泥処理プロセス

1)焼却

 焼却によりクリプトスポリジウムは死滅する。

2)コンポスト

 実験において60℃15分の条件で95%の不活化率が得られたことから、 設計指針で規定されているコンポスト化施設の発酵条件65℃48時間以上を確保できれば、クリプトスポリジウムの大半は死滅すると考えられる。

3)嫌気性消化

 35℃の中温嫌気性消化では、20日の滞留時間で、80%以上の不活化率が得られるものと考えられる。

4)生石灰の添加

 生石灰と汚泥中水分とを反応させて発熱させ、汚泥の温度上昇によりクリプトスポリジウムを不活化する。

3.下水道におけるクリプトスポリジウムヘの対応に関する検討事項

 下水道におけるクリプトスポリジウムヘの対応方法は、 下水処理水放流先の安全性に関するものと下水道従業者に対する安全性に関するものとに大別される。

3.1 下水処理水放流先の安全性確保

 流入下水および下水処理水中のクリプトスポリジウム濃度は、現時点においては低いが、集団感染発生時には、高い濃度のクリプトスポリジウムが下水処理場に流入すると考えられる。このため、対応方法については、平常時と感染症発生時を区別して、考え方を整理することが適当である。
 なお、下水処理水放流先には、公共用水域と下水処理水再利用施設がある。下水処理水を再利用する場合、下水道部局が事業実施主体であるため、主体的に対応策を講じる必要がある。

(1)平常時

1)処理目標水質

 平常時における下水処理水中のクリプトスポリジウムは、存在するとしてもその濃度は低レベルであり、これをすべてゼロにして放流することは、実際上かなり難しいと言わざるを得ない。また一方で、人が摂取する水のうち下水処理水の占める量は、 放流先での処理水の希釈状況および水利用状況によって異なる。
 このため、合理的な処理目標水質の設定が求められるが、現時点においては、クリプトスポリジウムに関する環境基準は定められておらず、排水に関する基準も設定されていない。また、感染リスクから処理目標水質を設定する方法についても、目標リスクや暴露量の考え方がまだ確立していない。

2)連絡体制

 集団感染に素早く対応するには、感染者に関する情報が下水道管理者に伝達される必要がある。このため、平常時から関係機関が密接な連携のもと、 患者数など必要な情報を授受できるような連絡体制について検討を行っておく。
 処理水再利用の場合には、連絡体制を下水道部局と利用者の間で整備する。また、送水を停止する状況を想定して、代替水源の確保、利用者との契約内容の確認等を行っておく。

3)測定機関の確認

 クリプトスポリジウムの測定が可能な機関について、予め調査しておくことが必要である。

4)日常的な監視

 再利用に関して下水道部局は事業実施主体であるので、 適宜クリプトスポリジウムの濃度を測定し、実態を把握しておくことが望ましい。

(2)異常時

 集団感染発生時や長期間継続的にクリプトスポリジウムの流入が見られる場合などの異常時には、平常時と異なった対応が必要である。 特に集団感染発生時には、極めて高い濃度のクリプトスポリジウムが下水処理場に流入することにより、下水処理水中の濃度も高まることが予想されるため、処理水放流先の安全性確保のため、緊急的な追加処理を行うとともに、 感染リスクを低下させるために総合的対策を実施する必要がある。また、流入水中のクリプトスポリジウムのかなりの部分が汚泥中に移行することから、汚泥処理についても注意する必要がある。

1)総合的対策

 集団感染等の異常時に的確に対応するには、行政長が設置する対策本部のもとに下水道、河川、水道、衛生、畜産等の関係行政部局が参画し、情報の密接な交換、および、さらなる感染防止のために発生源対策も含めた総合的対策を実施する必要がある。
 処理水再利用の場合には、クリプトスポリジウム濃度によっては、 再利用水の供給の停止、利用の制限等の措置を取る。

2)下水処理場における対応

 最大の除去効果を得るための組み合わせは、消毒プロセスを除外すると、図−1のようになる。なお、塩素消毒を強化しても、クリプトスポリジウムは不活化されないことに留意すること。

水処理プロセスにおいて除去されたクリプトスポリジウムは汚泥に含まれるため、汚泥処理には十分な注意が必要である。焼却や十分に発酵を進行させたコンポスト、生石灰添加などの熱処理を基本とする。

3.2 下水道従業者に対する安全性確保

 クリプトスポリジウムは経口で感染する。 このため、従業者の口に入る経路を断ち切ることが基本であり、下水および汚泥の飛沫を吸い込まないためのマスクの着用、下水および汚泥を取り扱う場合の手袋の着装作業後の手洗い等が対応策となる。

2006.05.25 初版
2006.07.22 「下水道におけるクリプトスポリジウム対策」を追加
2006.10.10 「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」の策定により、「2.クリプトスポリジウムによる汚染の恐れの判断、3.予防対策」を変更
2007.04.17 07.4.1付「水道施設の技術的基準を定める省令」の一部改正・施工規則の一部改正を記載
2007.09.29 「クリプトの検出状況と対応の事例」の表を追加
2007.10.17 3)-(2)紫外線処理に、<参考> 紫外線による消毒作用とは?を追加
2011.02.22 4-2)原水等の検査に、<クリプトスポリジウムの検査方法に関する最近の話題>を追加。その他、若干の情報補足