「剣道日本2005年7月号」

■剣日調査局リポートその99

<国際化への第一歩は早くも足踏み!?>

国際剣道連盟(IKF)は、GAISFに加盟申請をした。しかし、4月 20日、ベルリン(ドイツ)において開催されたGAISF年次総会で加 盟に必要な賛成票を得ることはできなかった。この会議に出席して いたIKFの竹内淳事務総長と過去12年間毎年加盟団体として出席し ている世界フライングディスク連盟理事・師岡文男上智大学教授に 話を聞いた。


<それに加盟する意義とは>

なぜIKFが加盟を申請することになったのかを説明する前に、 そもそもこの組織は(中略)・・・ IOC(国際オリンピック委員会)と 密接な関係にある国際スポーツ機構のひとつで、3大陸30カ国以上 に普及している国際スポーツの団体(IF)で、総会で承認された団 体が加盟を許可される。

(中略)

オリンピック競技はもちろん、オリンピック競技でないラグビー やボウリング、合気道、空手、柔術といった競技も加盟している。 また、「マインド(知力)スポーツオリンピック」開催を目指して いるチェス、ブリッジ、チェッカーズや囲碁も「スポーツ」の定義 に適合しているため会員となっている。

(中略)

世界最大のスポーツ組織であることから総会は、格好のロビー活動 の場となっている。GAISFはIOCとは別組織だから、加盟したことで その競技がオリンピック種目に入れる、というわけではない。

ではなぜIKFはGAISFに加盟する必要があったのか。ひとつには、 ヨーロッパからの強い要請があった。IKFには44の国と地域が加盟 しており、そのうち欧州からの加盟は24にのぼる。 「欧州では国際組織がGA−SFに入っていないと正規のスポーツ団体 として政府から認められない傾向があります。政府の補助を受ける にしてもそうで、たとえば体育館を借りるとき複数で競合した際に はGAISFに入っているほうが優先的に借りられるそうです」 と、国際剣道連盟の竹内淳事務総長は語る。

もうひとつには「国際的な統括団体」として認められる必要性が あるからである。もっと言えば、その必要性に迫られているからと もいえる。これについては後述する。 剣道だから否決されたわけではないが来年以降、 新たな障壁がある可能性も!?

GAISF加盟申請の話は突然降って湧いたことではない。ヨーロッ パではたびたび遡上に上がっていた話題で、2000年の世界選手権大 会前のIKF理事会でも議題にあがっていた。そして、2003年の理事 会で申請を行なうことが概ね了承され、昨年の理事会で正式に決定 したのである。

今年のGAISF総会において、加盟申請をしたのは6つの団体。クロ スボウ、ドラゴンボート、キックボクシング、ムエタイ、プラクティ カルシューティング(射撃)、そして剣道であった。加盟に必要な 条件は各団体いずれもクリアしていた。

投票の前には各団体のプレゼンテーションが行なわれ、その後 質疑応答が行なわれる。剣道の加盟に対しては賛成意見も反対 意見もまったくなかった。総会に出席していた師岡文男氏の目から 見ても、その一連の流れから、否決されようとは思ってもみなかっ たのだそうだ。そして、剣道のみならず6つの団体はすべて加盟を 否決されたのである。 「そんな事態は過去経験がありません。結果は、剣道は賛成35反対 24、棄権7、まさか剣道が落ちるとは思わなかったので驚きました。 棄権に回ることはあり得るのですがこれだけの反対票は決して少ない 数字ではありません」(師岡氏)

IKFも近日中に質問状をGAISF総会に提出する予定だというが、な ぜこれだけの反対票が出たのか、理由がはっきりしない。考えられ る要因として、ひとつにはシステムの問題がある。今回、賛否に際 して初めて電子投票が採用された。前年までのように札を上げての 賛否よりは、電子投票のほうが「NO」を言いやすい面があったので はないかと師岡氏は推測する。また、これまで承認には出席者の3分 の2以上の賛成があればよかったが、今年は4分の3に上がったことも 影響している(3分の2以上の賛成を獲得した団体はあった)。

いずれの団体も理事会の承認は得ているのに、すべての団体が申 請を否決されたということは、理事会のメンツが丸つぶれというこ とも言える。投票方法や認可のハードルは来年また変わる可能性は あるかもしれない。

もうひとつ考えられる可能性は、剣道の加盟に反対する団体が影 で反対運動をしたかもしれないということだ。申請団体にあったド ラゴンボート連盟の加盟には、国際カヌー連盟が猛烈に反対をして いた。そして、会議が始まる前、カヌー連盟の関係者が師岡氏のと ころにやってきて賛成票を投じないように声をかけてきたという。 あくまで推測の域を出ないが、剣道に対してもそういった『力』が 働いたと、と勘ぐることもできよう。

関連するかは定かではないが、先に上げた団体の他にWOMAF(世界 武術連盟・World Organization Martial Arts Foundation)という 団体も申請したが、今回の総会では審議が見送られている。この連盟 は合気道、柔道、柔術、空手、サンボ(ロシアの格闘技)、相撲、 テコンドーなど9競技を統轄する団体だそうである。しかし実際は、 「いろんな団体を傘下にして連盟をつくろうとしているらしく、 『IKFとはいま交渉中』と語っているらしいのですが、まったくコン タクトはありません」(国際剣道連盟・竹内事務総長)

会長選任の決まりすらないようないい加減な団体で、実際に加盟 が認可される見通しはかなり難しいようだが、仮に認められた場合、 国際剣道連盟はその傘下の団体ということになって独自の加盟の道 が閉ざされる可能性が出てくるわけだ。

加盟の道が閉ざされることは、決して日本にとって『対岸の火事』 ではない。世界の剣道関係者が一気に類似団体のほうへ流出する可 能性も出てくる。もし類似団体が『主流』になれば、国内の剣道愛 好者もどちらに加盟するか選択するような状況になる。だから 「国際的な統括団体」として認められる必要があるのだ。

さらに、類似団体という意味で見逃せないこともある。韓国で 「世界剣道連盟」が設立されたことは以前小誌でも紹介したが、こ れがもし来年以降GAISF加盟をすれば、類似団体が競合して申請と いう事態になる。今回申請したキックボクシングとムエタイは、 あまりにも似ているということで両団体とも加盟申請は否決。互い につぶし合いの形になった。

来年のGAISF総会の開催地は韓国ソウルで、4月8日開催の予定で ある。採決の票を持っているのは「国」ではなく「加盟団体」であ ることも見逃せない。 「会長、事務局長が基本的に出席する会議ですが、そういうポジ ションに日本人がほとんどいません。来年は韓国ですから、各連盟 のトップの方が韓国あるいは中国系の理事を会長代理として派遣す ることは充分考えられます。この影響は無視できません」(師岡氏)

こうなるともはや政治もからまざるを得ない。「日本剣道がいか に韓国剣道と明らかに違うスポーツで、国際的に普及しているもの であるかを各団体に理解してもらうことが重要だ」と師岡氏はいう。 国際化の是非をうんぬんする段階ではもはやない。もう「賽は投げられた」状態なのである。

<終わり>

注:2006年5月現在、IKFはGAISFに加盟しています。

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