授業 風景(幼児・低学年)

マザーグース大好き
bゲームで楽しく
c story time
dこの時期は音を丸ごと
e身体に刻む記憶の すばらしさ
f 焦点 狙いをはずさない   
g想像 と 創 造


a マザーグース大好き
 土曜日、午前中の授業、あまり身体が温まっていない。ちょっと       
眠そうな子も1名。今日は、Pat-a-cake, Pat-a-cake, Baker's man
で始める。これは、「せっせっせ」のような手遊びをしながら、リズム
とライム(韻)を楽しむもので、夢中になってやっているうちに、自然
に身体がほぐれ、リラックスして集中できるようになってくる。
Put it in the oven の下線部などのリズムは日本人の大人にはつか
まえにくいところだが、子供たちは、苦もなく身につけてしまう。そして、
後に、Ben runs over to the swings. のような音に出会うと、何の抵
抗もなくそのリズムをつかむようになる。
 講談社文庫に谷川俊太郎訳のものが出ており、末尾に平野敬一の
解説と英語の原詩がついている。授業で使ってみようと思う指導者や、
親子で楽しんでみようという方には、これがお勧め。「おもしろくって
くそまじめ、.......あらゆるおかしさがひしめきあうへんてこりんな世界」
(講談社文庫裏表紙の解説〜)を楽しい記憶として細胞に刻むこ とは
後々の、強固な英語筋の基礎となると信じている。
 では、あなたもご一緒に遊んでみましょうか。

Pat-a-cake, pat-a-cake, baker's man,
Bake me a cake as fast as you can:
Pat it and prick it, and mark it with B,
Put it in the oven for baby and me.


b ゲームで楽しく

 子供はゲームや競争が大好きだ。だから、単語カードを使ったカルタ
取りのようなゲームでも喜ぶだろう。しかし、もちろん、それだけでは、
外国語に対する知的な好奇心や、学習センスは育まれない。
 単語カード(あるいは、教室に運べる小物)を使う場合にも、
"Toutch the cat."などから始めて、
"Give me the apple."  "Here you are."  "Thank you."  "You're welcome."
のような表現を覚えながら進めている。
 ときには、"Hit the ball."  "Now kick it."など身体を動かすのも(特に
男子の場合は)効果的だ。
 場所や移動を表す前置詞(on, in, under,toなど)の使い方に慣れるた
めの練習には、"Put it on the chair?" 
"Where is the key_"  "It's in the bag."
"What is in the box?"  " There's a pencil."のようにカードを使うと特に
効果的だ。 
 他にも、トランプを使った数遊びや、簡単な計算など、ゲーム化できる
ものは多い。集中力や好奇心を高め、元気よく学習するために、ま た、
指導がマンネリ化しないよう、指導者はゲームをうまく使う工夫をし、情報
交換していきたいものだ。

c   story time

Sally and Sam are shopping with their Mum. や Christine was a very
greedy hippo. のような書き出しで始まる短いお話を2〜3回ずつ聞かせ、
繰り返させる。また、漫画でかかれた、長めの本も少しずつ読んで、暗
誦する。小さいうちは、どの子も耳から入る音での記憶力が すばらしい。
このころに暗誦の楽しさを身体で覚えてほしいもの だと思う。
 
  私は、6年ほど、近くの小学校で、日本語のお話の読み聞かせを続け
させてもらっているが、日本語でも力強い韻律を含んだものには子供は
敏感に身体で反応する。平家物語等の語り物の伝統と、能、狂言、歌舞
伎、浄瑠璃等の舞台芸術で磨かれた声の文化は、昭和40年ごろまでの
講談、落語、浪曲等の話芸となって、日本の言語文化を全体として、高い
水準に保っていたと思う。現在の話芸の衰退は、日本の文化全体の衰退
を象徴しているのではないだろうか。
 
 日本語でも、英語でも、(また他の言語でも)声の文化財を再発見でき
るよう、幼児から、様々なよい「作品」を身体で味わわせたいものだ。



d この時期は音を丸ごと

 最近はさすがに数が少なくなったが、親御さんの中には、早く文字を覚
えさせて「勉強」させてほしいと考える方も少しいらっしゃる。ノートに書か
れたものだけが勉強で、形の残らない音だけの学習はただの遊びと見
えてしまうのか?
  しかし、人間の能力は年齢によって、その伸びる領域がかなり違うも
のだと思う。個人差はもちろんあるが、10歳頃までの子供は分 析的な
わかり方よりは、直感的、総合的捕らえ方をする。またその力がはるか
に優れている。そして、この力は、言語学習ではどのような表れ方をす
るかというと、子供は聞いた声を丸ごとひとかたまりの全体ととして捕ら
えるのだ。
 つまり、何と言う単語を言ったかより、全体のイントネーションはどうか、
音の塊としてはおおよそどのように聞こえるかをうまくつかむ。母親が、
「マーちゃんはミルクが好きなんだよね。」と言ったとすると、「マーたんミク
きなよね。」のような音を繰り返す。この、超アバウトな「全体丸ごと把握
力」は、実は総合力や、直観力の初期的顕現なのではないかと思うのだ。
 いや、これは大人から見た見方で、人間は、本来、身体全体を使って
丸ごとあるがまま、すべてをつかまえる力を誰もが備えているのだろう。
 だから、この時期に、あまりにも分析的な文字に頼った学習を強いるの
は、将来、実務的能力は高くなっても、直感の必要な創造的仕事能力は
発揮できなくなるような気もする。
 この時期には、外国語学習でも、丸ごと把握力を助長し、その表出を楽
しませるような形で、音を重視した方が後の楽しみが大きいように思う。


e 身体に刻む記憶のすばらしさ

 先日、低学年のあるクラスに見学者が来た時のことだ。
しばらく、やっていなかったマザーグースから、次のものをやってみた。
Is John Smith within?
Yes, that he is!
Can he set a shoe?
Ay, marry, two!
Here a nail, there a nail,
Tick, tack, too.
子供たちには、「小さい子の足の裏をトントンたたきながらやるんだよ。」
と教えてあり、お互いの足の裏をたたきながらリズムと音を楽しんでいた。
 ところが私が、Yes, that hei is!のところを Ay,marry,two!と間違えてしまった。
「あれ、先生間違えてるよね。」と言ったら、元からいる二人の子がすかさず、
"Yes, that hei is!" としっかりした息遣いととリズムで言った。
 かれこれ半年ほどのブランクがあっても、しっかりと身体が覚えているんだなあ
と、改めて、子供の可能性や、身体で掴んだ「音」の力、身体に刻んだ記憶の
すばらしさを再認識させられた。

f  焦点 狙いをはずさない

 新しく入ったT君(3歳)。マザーグースの To Market to market...の
手遊びのパターンがすかっり気に入ったようだ。1 両手をたたく  2 両膝
を打つ  3 向かい合った相手の両手をたたく(3人以上なら横に手を伸ばし
両隣の子の手をたたく。輪になれば何人いても楽しくできる。私は、読み聞か
せをしている小学校で、30人でも5分でマスターしてもらったことがある。)
1 To         2market  1 to        2 market   1 to buy  1 a fat     3 pig 
1 Hom      2again     1 home   2  again      1 jigge     1 ty        3  jig
のように 韻を踏んでいいるpig とjig が 3で強調され焦点があたるわけだ。
 最初はちょっとむずかしそうだったので、1 One  2 two  1 one  2 two
1 one   1one   3  Three! といいながらやった。 T君は3のところに焦点が
合ったっているのを身体で感じて、"Three!"と全身をぶつけるように私の両手を
たたいてくる。もちろん本人は無意識に、無邪気にやっているが、本人の直感は
「ここが狙い目のところだ。」としっかりつかんでいる。 "Three!" と力いっぱい
発声するときの表情と身体は喜びに満ちている。
 次には単語の正しい発音を記憶するたためにこのパターンを使う。たとえば
Fの音をしっかり発音させたいときに、3にFishを持ってくる。何度も喜んで繰り返
すのでよく身に付く。今日は、3に動作のわかりやすい動詞を持ってきてみた。
push, pull ,stand up, sit down などと進んだところで、彼は今度は自分が選んだ
ものでやるといって、少し考えて、"Kick!"と言ったのだ。

 私と彼との間にはお互いの意識を一点に集める暗黙の、しかし強固な約束が
生まれつつあるのである。
 

g 想像 と 創 造

 Each  Peach  Pair  Plum ( Janet and Allan Ahlberg  )という絵本がある。
 これは Cinderella on the stairs  I spy the Three Bears や
      Jack and Jill in the ditch  I spy the Wicked Witch  のように
英詩の命とも言われるリズムとライム(下線部同士が韻を踏んでいる(同じ音))
を楽しみながらマザーグースや童話の登場人物を絵の中から見つけ(spy)ていく本だ。
 いつもちょっとだけ自分の考えた冗談を披露しないと気のすまないR君、「自分の
世界に入りだす」とこちらの言っていることが耳に入っていかないこともあるので、手綱
加減が難しいのだが、この本も3回目になる。そこで、日本語バージョンで「おわんの陰
に一寸法師」のような例を与えてやると案の定、なかなか上手に5,7、の日本語韻律
を使ってかえしてくる。「ほらほらももが、流れてきたよ。」といった具合だ。
 マザーグースなどを使って遊んでいるうちに英語と日本語の韻律の本質を、無意識に
ではあるが直感的につかんでいるのだ。
 日英両方の韻律の面白さを味わい色々な言葉遊びをすることは、子供の想像力を
創造力へ高め、後の思考にも豊かさを与えてくれると思う。



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