
女検死官
私の名前は高畠ゆたか。
職業は検死官。
身長168cm、体重44kg。
スリーサイズは上から81、57、84……
…年齢?
フフフ、妙齢の女性の年齢を知りたがるとは…貴方、一度私に解剖されてみませんか?
そう、そして趣味は……
人体の神秘という厳かで尊いテーマの探求です。
「高畠」
一人の男性の声がする。
とてもとても若くて艶があり、低く張りがあって、その声を耳にするだけで私の躰の芯を熱くしてくれる、あの男性の声……。
「あぁ、愛しの法条」
振り返りざま、その人に抱きつこうとするが……
「えぇいっ、やめぃっ!!」
いつも通りに軽く突き飛ばされて終わってしまう。
「ふぅ、つれないなぁ、法条ったら」
「相手が年中発情している女だからだよ」
「そんな事は決してない。私の躰を疼かせてくれるのは、貴方だけよ」
「そんな背筋の凍り付くようなことを言うな! 何度も言っているが、俺は熟女趣味なんだよ」
「そんな事言って、本当は毎晩私のことを想って胸を痛めているのね? あぁんもう、何てイジらしい」
「コラコラいい加減にしろ! いいから話を進めさせてくれ」
「ふぅ、しょうがないわね……、何?」
私は近くにあるキャスターつきの椅子に座る。
言い損ねていたけれど、ここは私や法条の勤めている警察署の検死室。
私は特別ここに机を置かせておいて貰っているから、普段はここで雑務をこなす。
それと、この目の前にいる濃桃色の髪をした素敵な男性は、法条まり男。
私の数年来の恋慕相手なのだけれど、これがまたつれなくてつれなくて……
「XTORTっていう単語、知っている?」
「えくす……とーと?」
聞いたことの無い語句を言われて、少し戸惑い、そのせいか拙い発音をしてしまう。
言った後になってから、少し恥ずかしさがこみ上げてきた。
「E、X、T、O、R、T……、イクストートいう英単語なら知っているけど?」
「そうじゃなくて、X、T、O、R、T……、エクストート」
「……知らないわね」
二三秒の間を置いてから、改めて、渋々そう答える。
法条が私に訊きに来るということは、私なら明るい方面の単語なのだと判断してのことだと思う。
然しそこで私が答えられないとなると、好感度ダウン……
「そうか……」
現にこうして、彼は俯いてしまった。
……どうするべきか?
1、優しく抱き締める
2、きつく抱き締める
3、抱き締めて頭を撫で撫でしてあげる
…女なら、3を選ばずして何としよう。
「…法条っ!!」
私は隙を見計らい、法条に抱きつこうとした……
「……」
…が、行動が読まれているのか、あっさりとかわされてしまった。
「……」
法条は何事もなかったかのように下を俯いて思案を重ねている。
一方私はというと、抱きつこうとしたままの格好で固まっている。
何だか、女としての威厳が少しだけ傷付けられたような気がした。
「…コホンッ。それで? それは……、私の専門に関する用語?」
態とらしく咳をしてから、そう問うみてる。
もしかしたら違うのかもしれない。
せめて、検死官としての自尊心だけは取り戻しておきたい。
「ん、俺もどんなモンかよく解らなくてな……、お前なら知っているかと思って訊いてみたんだが……」
「私の門外の可能性も高いわけね?」
「理系関係の用語だという事くらいしか」
「そう……」
良かった。
どうやら、私の専門外においての用語らしい。
心持ち表情を明るくして、
「なら、色々知り合いに当たってみるわ。何か分かったら連絡するよ」
「ああ、頼むな」
「だから、法条、貴方の電話番号を……」
「あ、んじゃもう行く! じゃぁよろしく!」
「あっ、法じょっ……」
呼び止める間もなく、彼は走り去って行ってしまった。
「……ふぅ、将に嵐のような男性」
そんな彼の後ろ姿を眼に焼き付けたまま、ゆっくりと瞼を閉じて、その映像を再現する。
…矢っ張り躰が熱くなる。
「困ったことに、そんな彼が、好きなのよねぇ……」
瞼を開け、視線を机の上にある頭蓋骨に向ける。
「ねぇ、貴方はどう思う……?」
私の昔愛した、貴方は……
後書き:
偉大なる計画を思いついたtalkさんに捧ぐ。
2002/12/13 ひろえ
ひろえ様から頂きました、高畠ゆたかちゃん(笑)の小説で御座います。
女検死官っていうのはいいですねえ。なんか響きだけで憧れますわ・・・
薄暗い部屋に常駐する、眼鏡と白衣の女性検死官なのであります。
ラストがちょいとホラーっぽく(?)締められているのがまた彼女らしくていいですね。
この二人を男女逆にするのもなかなか面白い試みでしょう。
基本的に高畠(♀)の方はまり男が好きなんですけど、
まり男の方は気の許せる同僚+αくらいの接し方なんですよね。
ZEROだとその関係・・・というほどの関係でもありませんが、それが違和感なく受け入れられましたが、
男女が逆になると少し受ける印象が違ってきませんか?私だけかしら?
まさかにフェミニスト(笑)のまり男が幾ら同僚とは言え女性をバシバシしばいたりはしそうにないですからねえ。
そのあたりのスキンシップ表現の違いと、そこに見る男女の描かれ方というのもポイントだと思ってます。
ま、そういうのは置いておいて・・・
女性になったことで今少しミステリアス感だとかが強くなるようなイメージはあります。
後アルカ(♂)を見抜くシーンとかも良さそうですね。年上のおねーさんに正体を見抜かれてドキっとするアルカもよろしいかと。
最後になりましたが、ひろえ様、素晴らしい小説をどうも有り難う御座いました。
そして読んでくださった皆様の中の高畠ゆたかちゃんは如何でしょうか?