ダイビング豆知識 その9

[毒のある生物  

我々が住む地球にはいろいろな生き物がいる。そのほとんどが野生生物なのだが、何のために生きているのか、考えたことはあるだろうか?こう言うと禅問答のようであるけれども、野生動物は食べることと子孫を残すこと以外にはそのエネルギーを使ってはいないような気がするが、どうだろう。もちろん、仲間同士でじゃれ合ったりすることもあれば、のんびり昼寝することもあるだろうが、やはり生きるために食べること、種の存続のために熾烈な競争を勝ち抜いて子孫を残すことに生きているだけのような気がするし、実際野生生物の生態を見ると、食っているか産卵、子育てをしている場面がほとんどだ。その生活(生存競争)は同種もしくは天敵、もしくは捕食対象との食うか食われるかの過酷な戦いが日々繰り替えされているのである。

そして野生生物はその進化の過程でさまざまな知恵、武器を獲得してきたのであるが、中にはその大きさと武器で圧倒的な強さを誇るものもいれば、賢く立ち回るものもいる。武器にはいろいろあるがその中でもっとも効果的なものが毒だ。

毒を持った生き物は様々な方法で敵に対して相手を攻撃するが、その方法は、噛む、刺す、(毒を)吹きかける。中には食べられることによってその毒の効果を発揮するような生き物もいる。

毒といえば英語ではよくPoisonと表現されるようだが、
毒素=トキシン(TOXIN)と毒物=ポイズン(POISON)に分けられる。
厳密と言うわけではないのだが、主に天然毒がトキシンで合成毒がポイゾンらしい。

天然毒で有名なものには蛇やサソリ、フグなどが知られているが、それら生物の中で最強の毒を持っているのは何かご存知だろうか?
それはスナイソギンチャクの仲間で中でもハワイに生息するイワスナギンチャクが持つパリトキシンという毒である。

毒の強さは半数致死量で表されることが多く、簡単に言うと「マウスやラットなどの実験動物に、少しずつ投与していった時に、その半数が死んでしまう量」で最も少ない量で半数が死んでしまうということはその毒素が強いと考えられるのでその値が小さいほど猛毒であることがわかる。

生物毒最強ランキング

L/D50(24時間の半数致死量)単位は体重1sあたりのミリグラム
L/D50
1 パリトキシン 0.00025 ハワイに生息するイワスナギンチャクの一種、
はっきり言って桁違いの強さで発癌促進作用もある
2 バトラコトキシン 0.002 南米原産のモウドクフキヤガエルはこの毒を皮膚から分泌しており触っただけでもアウト!1匹から人間190人を殺す毒を取り出せる。
神経や筋肉の機能を停止
3 テトロドトキシン 0.01 ご存知フグ毒、青酸カリの200倍にもあたる猛毒、中でもクサフグが最強、ヒョウモンダコの毒もこれ、
クサフグは全身に毒を持っているので食べられない
4 クロロトキシン 0.1−
0.01
サソリ毒、ペプチドという蛋白質に含有、その毒性は種類によって違う。
神経毒で中枢神経・心臓に作用し激しい痛みや局所の壊死など
5 リシン 0.03 トウダイグサ科ヒマの種子(トウゴマ・ヒマシ油の原料)に含まれる。大量投与しても10時間以上経たないと死なない。暗殺用に悪用されたことも。中枢神経の麻痺、筋硬直、痙攣などを起こして窒息する

驚くことに象をも倒すというキングコブラでさえ1.5mg/kg以上だという話だからコブラなんか上記の毒素に比べられば可愛いものということになるかもしれない。ちなみに半数致死量の数値だけなら日本にも生息するマムシはキングコブラとあまり変わらないそうだ。

最強の生物毒であるパリトキシンによる中毒には、クロモンガラやアオブダイを食することによる死亡報告もある。これは、イワスナギンチャクの卵、幼生を捕食する魚類もこの毒を蓄積するのが原因であると考えられている。

その他、細菌レベルでは自然界にはこのような毒素もある。

L/D50
テタヌストキシン 0.00005 破傷風菌が作り出す毒素、ワクチンによる予防効果が大きく、治療方も確立されているのだが、潜伏期間が長いのため手遅れになりやすい
神経毒で」骨折をするほどの激しい痙攣を起こす。
ボツリヌストキシン 0.00005 ボツリヌス菌、欧米では昔からソーセージによる食中毒が知られており、日本でも辛子レンコン中毒の事例が知られている。
吐き気、おう吐、視力・言語障害等の神経症状が現れ死に至る。

植物毒

L/D50
α-アマニチン 0.1 テング茸。体重60キロの人なら6mgが致死量、極めて毒性が強いが発症までに6時間以上,通常10時間かかる。
細胞を破壊し,肝臓,腎臓に障害を与え死をもたらす。
アコニチン 0.3 キンポウゲ科の多年草であるトリカブト。保険金殺人などでよく新聞紙上を賑わす。沖縄以外の山野で美しい紫色の花を咲かせる。
血圧や体温の低下、不整脈、呼吸不全などを起こし死に至る。
ストリキニーネ 0.98 フジウツギ科のマチン(属名ストリクノス)の種子などに含まれるアルカロイド
白色結晶性の苦味のある猛毒物。昔は野犬駆除に使われていた。
中枢神経の麻痺、筋硬直、痙攣を起こし、恐ろしい悲鳴を上げて窒息

昔から毒は薬としても有効に使われて来たという、トリカブトは漢方薬として処方され、ハシリドコロという誤って食べると気が狂ったように走り回るという植物は鎮痛、鎮痙薬を、ストリキニーネは神経刺激剤として利用されてきた。近年でもサソリ毒が脳腫瘍に蛇毒が脳卒中に効果があることが明らかになってきている。またボツリヌス菌は四肢マヒの治療や顔のシワをなくすのに使われているらしい。(そこまでしてきれいになりたいかと思うが)

ただまだ未知である自然界の猛毒は一歩間違えると非常に危険だが、我々人類に役に立つ無限の可能性を秘めている。

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