Scott Ross 礼賛

Johann Sebastian BachIMSLP
6 Partitas BWV825-830
(2CD)
ERATO, 3984-28167-2
Recording on Apr.1988 at Temple de Sommieres, Gard (Age: 37)
Release in Japan Apr 21, 1989 レコード芸術・推薦
これはもうこの世のものとは思えない程の生命力に溢れた演奏。すべての音楽を愛する人へお薦めしたいディスクです。

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Partita No.2 in C mionr, BWV826, Sinfonia

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パルティータの輝き

さて、そもそもの問題は、
音楽を語るのに、音楽そのものに頼る以外、我々が無力だということだ。
百の言葉を並べ、千の写真を並べてみたところで、演奏そのものに触れることの代用にはならない。

今では録音技術の普及のために忘れがちになってしまっているかもしれないが、
音は、出すのをやめれば消えてしまって、
二度と戻らない。

Scott Ross が弾くバッハのパルティータの演奏を聴いて
私は死のことを考えた。

いや、こういうことは音楽を聴くのに自然な態度とは言えないかもしれないが、
これほどの生命力に溢れた演奏を為し得るひと
不治の病に冒されており、
それからたった1年後に亡くなってしまうとは信じ難いほどであり、
そのギャップについて考えてしまうのである。

歴史に目を向ければ、モーツァルト、シューベルトがいる。
私の大好きなレゲエの巨人ボブ・マーリーもいる。
いずれも30代でこの世を去った「天才」たち。

あるいは、こういう表現は大袈裟で、感傷的に過ぎるのかもしれないが、
パルティータの輝きはちょっとこの世のものではないような気がする。
既にあの境地は生身の人間が行ってはいけない世界なのかもしれない。
自らのいのちを削ってしまうような天才
というものがあるのかもしれない、と思った。

残念なことにこれほどの才能に恵まれた演奏家であるのに、
その実力の割には日本ではあまり知られていないように思う。
ひとつにはそもそもチェンバロ自体が、クラシック音楽を聴く人にとっても
あまり一般的でないということがあるだろう。

しかし、没後に次々と音源が発掘されては発売されていることでも明らかだが、
この人は決して簡単に風化させてしまってよいような存在ではない。

そして本人とは何の関わりもないアジアの一国の市民が
何やら勝手に義務感を感じてこんなホームページを作っているわけである。

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