医者にはない特権





私は東京のある一画に部屋をかり医者をしている。しかもただの医者ではない。

悩みを聞いてはなんの病気にかかっているかをあて、その手の専門の先生を紹介するものだ。

私は心理学や精神の勉強をしたとあってかなり信頼されている。

毎日いろいろな患者が舞い込んで来るわけだ。

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン........

私のいえにはベルがない。そのほうが患者の心理状況をよりよく知る事ができるからである。

ドンドンドンドンドンドン.....

今日最初の患者だ。私はドアを開けた。

するとそこには典型的なおばさんがいた。体は丸く、顔は濃い化粧でおおい隠されている。

もう年はすぎ、例えるならかびの生えた梅干しといったところだ。

まず診察室に通し、いすにかけさせ、私は事情を聞くことにした。

「せんせぇ聞いて下さいよ。うちの主人ったらいつも夜遅く帰ってきますの。
いやね、仕事ならいいんですよ。それが他の女と遊んでるような気がしましてね。」

「なるほど。あなたは旦那浮気かな癇癪病にかかってますね。この近くの
石毛先生が専門ですのでそこを紹介しましょう。」

「ありがとうございます。それではまた。」



もうすでに待ち合い室には人がぎっしりつまっている。

最初の患者が出ていくとすぐに一人の若い学生が入ってきた。

彼はまったく特徴をもっていなかった。

髪型も普通、顔も普通、背も、身長も、服装も普通なのである。

私はとりあえず、話をきくことにした。

「実は僕、化学部に入っているのですが..........その........なんというか.......
いじめられてるような......というか....その.....昨日....朝、教室にはいると
僕の机の上に..........その「死ね」と.....。」

私はいらいらしながらもしっかりとこの学生の心理を読んだ。

彼の頭の中はきっといろいろな知識がつまりすぎていて、妙な表現しかできないので、
それを直しながら説明しているのだ。

まあ彼は例えればカレーのルーといったところだろう。

私は答えた。

「君は被害者妄想精神中毒群症状がでてますね。
元木先生の住所をかくから、そこをたずねなさい。きっと治りますよ。」



次の患者が入ってきた。彼はスーツを身にまとい、いかにもエリートといった感じである。

彼は例えるとロックフェラーの飾りずけされたクリスマスツリーだろう。

それほどこの男は神聖なのである。私はこの若男がどんな悩みをもっているのかを興味をもって聞いた。

「私はある会社につとめています。ポストもよく、仕事も順調なのですが.....」

「そこに何の悩みが?」

「実は私の上司が不潔なんです。いつも私の周りにきて頭垢(フケ)を落としては、
下品な笑いを飛ばしていて.......。」

「なるほど。あなたは精神的頭垢懸念完璧人類群症状がでてますね。朝倉先生という.......。」

ガチャ。

私は手錠をかけられた。彼をみると、彼はうっすら微笑を浮かべている。

「この頃、長言語表現被害続発治療妄想病にかかる人が多くて困っているんです。
医者が病名を勝手に作り、患者をだます。そこからどれだけの被害がでたことか。
大丈夫。あなたはまだかかり始めですから二、三ヶ月もすれば刑務所から出られるでしょう。
もちろんそこで精神科の先生に見てもらうわけですが。」

「し、しかし.....。」

「あなたが医者と名乗ったのがいけなかった。
私のように警察であればその病気もばれずに一生人をだまして楽しめただろうに。」





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