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「はぁはぁはぁ.....。」 吹き付ける乾いた風。足を踏み出す度に容赦なく入り込んでくる砂。 マントに身を隠し。照り返す太陽の光りを睨み付けながら、僕は一心に歩き続けている。 僕の肩から釣り下げられた水筒の口からプミィズが心配そうに顔を覗かせている。 安心させてあげる為の言葉ももはや出てこない。実際に、何で僕は昼間っから歩いているん だろうと思う。そう昼間には穴を掘って休んで、夜になったら移動するのが当たり前じゃ ないんだろうか。心の中で矛盾を抱えながら、僕はひたすら足を前に踏み出していた。 あちこちにちらほらと幻が見えてくる。プミィズが僕の体内の水分を調節してくれなかたら、 今頃僕って砂漠の骨と化してるな、絶対。しかし暑い。太陽を睨もうものならその直射日光で 意識が吹っ飛びそうになる。さっきそれをやってプミィズに助けられたばかりだから、そんな 下らない事は出来ないし。それに何の問題の解決にもならない。僕はひたすら歩き続ける。 そう、それしかないんだ。帰る為には。.....ああ、爺さんと婆さんが砂漠でバーベキューしてるよ。 いや、それよりもなんで僕砂漠でスニーカーはいてるんだろう。.....もう、どうでもいいや。 夜になった。なんとか今日は生き延びたみたいだ。はぁ、もうくたくただよ。 しっかし寒いなぁ。砂漠ってどうしてこうも気温の差が激しいんだ。現に今は砂漠で火をおこし てるし。昼間なら自殺行為だよ、これ。 僕は横になってこうまで急いでいる理由をぼんやりと思い起こしていた。 初日。心の中で叫び終えた僕は、いじけてオアシスに留まる事に決めた。いくらなんでも 乾燥死はさせないだろうと腹をくくってたし、これだけ水があればはっきり言ってそうそう 死ぬ事はないと思っていた。そう、プミィルに水でコーティングしてもらって、適度に 身体を焼く。んでもって泳ぐ。後は適当にオアシスの果物食べて寝る。なんとも幸せな一時 だったなぁ。でも、現実ってそう甘くはなんだよね。 二日目も同様にして過ごして、のほほ〜 んとプミィルと時を過ごす。いやぁ、精霊って可愛いよね。素直だし、言う事をしっかり 聞いて健気だし可愛いし、.....はっ!今一瞬妹の笑い声が聞こえたような。恐るべし砂漠の 幻聴....いや妹の執念か。 じゃなくて、そうそうなんでこんなに急いでいるかって事。あれは三日目の事だった。 そういえばと思い出して、親から投げ渡されたリュックを開けて見る事にしたんだ。 出てきたのは干ししいたけにビーフジャーキー、乾燥した果物と一リットルの水ボトルに 地図とマント、加えて方位磁針に飛行機のチケット五枚。後の方はいいとして、最初の 食べ物。減量中のボクサーだって砂漠でこんなものは食わねぇよって一瞬現実を呪ったね。 ビーフジャーキーはともかく、干ししいたけをどうやって食えっちゅうねん。 あ、そうそうわすれちゃいけないのがお父さんの手紙。これまた内容がとんでもないの。 「拝啓、我が息子よ。 まさかこれを読む前に砂漠で野垂れ死ぬという事はないだろうが、それ以前にオアシスで まさか遊び惚けているという事もないだろう。父さんは信じているぞ。 家に帰る為のチケットは五枚入れておいた。奮発したんだ、全部使え。でなくば、売れ。 売って金にするまで家には帰ってこなくていいぞ。五枚の日付けは、初めから一週間後、 10日後、一年後、三年後、五年後となっている。早く帰ってきたかったら頑張るんだぞ。 一ヶ月のパーティーには必ず出席するようにな。母さんを泣かせるなよ。 ちなみに距離は走って一週間位だ。やれるよな?父さん信じてるぞ。それじゃまた、 家でお前の顔が拝める事を祈ってる。 父さんより 追伸:オアシスは私と母さんが作った物だ。三日で消えるからな。父さん、信じてるぞ。」 直感で僕を本気で殺す気だって思ったね。他に精霊との契約解除の説明書が入ってたしさ。 精霊使いってのは死なない限り、一度契約した精霊とは契約をきれないんだ。で、もし死ぬ前に 解約の儀式をしておかないと、精霊は土縛精霊っていう自縛霊の精霊バージョンになっちゃう。 そういった精霊ってのは誰か他の人が契約してあげないと、前の主人が死んだ場所で未来永劫 ずっと他の精霊使いがくるのを待つ事になるんだ。でも、もしその精霊使いの契約精霊可能数 が低すぎると契約できないし。それに精霊使いって世界の人工の2%くらいしかいないから、 こんな砂漠なんかで死んじゃった場合、もうその精霊は絶望的な状況に置かれる訳で.....。 僕はちらとプミィルを見た。ん?とこちらを見上げてくる。うるうるした目が.....可愛すぎっ。 こんな可愛い精霊を砂漠に放りだせる訳ないじゃないか!ていうか僕まだ死にたくないし。 せめて僕だって彼女の一人や二人は作ってから死にたいよ! という訳でリュックに入ってた水筒に圧縮した水をプミィルに詰めてもらって、 僕はいそいそと砂漠の旅に出かけたんだ。もちろん、走って一週間だから、8日後の 飛行機には乗れるようにする為にね。そういえばせっせと水を圧縮して水筒に詰めるプミィルの 姿も可愛かったなぁ。一心になって水をあやつっている姿なんかもう、.....一瞬妹の姿が見えた からこれ以上この話題に触れるのは止めます。身の危険を感じたよ。 ふぁ〜あ。もう眠いから寝るよ。明日も走らなきゃ。というか、今どの辺りなんだろう。 最短ルートを探そうとして地図見たら御丁寧にコンパスで距離計った後があってさ、 ものの見事に俺がスタートした位置が砂漠のど真ん中なの。もうとびきり赤い涙をながしたね。 そう血の涙ってやつ。プミィルがどうしたらいいなか分からなくて右往左往してたけど。 そんな事に構ってる暇無し。ごめんよプミィル。 はぁ、それにしても寒いなぁ。あはは、干涸びる所か凍死してたりして。 .....洒落になってないよ。もう嫌。家に帰るのもなんか嫌。どうすればいいのさ。 寝ます。もう寝ます。お休みなさい。悪い夢なら覚めて。じゃなければ永遠の眠りに付きたいなぁ って。嘘だよプミィル。心配そうな顔しないでよ。だって、洒落になってないじゃないか.....。 |