
|
それは僕の夢、昼下がりの、不思議な、少女の夢....... いつもの、何のへんてつもない昼下がりのことだった。 弟は、いつものように問題集を解いている。 僕も、いつものように、庭先を掃除していた。 いつものように庭先は静かで、鳥の声しか聞こえない。 外を見ても、人っ子一人見あたらない、いつもの風景。 ふと、いつもの母親の怒鳴り声がきこえてきた。 大方、弟が何かミスをしでかしたのだろう。 いい気味だと僕は思う。僕は、弟がきらいだ。 子供のくせして、生意気で、何でもまねしてくる。 自分の過ちを認めないし、謝りもしない。 僕は弟がきらいだ。だからいい気味だと思う。 僕は笑った。いい気味だと庭先を掃きながら、僕は笑った。 と、女の子の笑い声聞こえてくる。 僕は振り向いた。その先には、いつもと変わらない外の風景が広がっている。 空耳か.....こんなところに子供が来るわけないからな。 この近くには子供は住んでいない。 公園も、あるにはあるが.....ここからはかなり遠い。 空耳だな、僕はそう決めて庭先を掃き始め..... また聞こえた、女の子の声、しかも今度はさっきより多い、しかも近い。 僕は振り向いた。でも、そこにあったものはさっきと同じ、いつもの風景。 おかしい、隠れる場所なんて何処にもないはずなのに。 この暑さにでもやられたかな、これだから夏ってやつは.....。 僕は、いまいましい太陽を睨みつけようと上を仰ぎ見た。 と、刹那、だれかの影が横切った。 悠々とそびえ立つ一本の桜の樹、うちの庭に昔からある、一本の古い樹。 その無数に伸びた枝の一本、そこに彼女たちはいた。 びっくりして目を見開いている、僕の顔を覗き込むように..... 彼女たちはそこに座っている。 緑の木の葉と木洩れ日、まるで教会のステンドグラスのような美しさ..... その輝ける天井を背に、彼女たちは無邪気に笑っていた.....。いつまでも、 いつもでも、可笑しそうに僕の目を覗き込みながら、彼女たちは笑っている。 不意に、目の前が青一色になった。透き通るような青、 まるで僕の心を見透かしているような.....そんな、そんな透き通るような、青.....。 そして僕は、灰色の、硬いコンクリートの上に.....横たわった。 気が付いたのは、もう夕暮れ時だった.....軽い貧血らしい。 はっとして、外を見る。 だけど、もうそこには.....彼女たちの姿は見えなかった.....。 そして続く、僕の日常.....いつもと変わらない、僕の日常.....。 何のへんてつもない、いつもの昼下がり.....。 彼女たちは、太陽が作り出した幻だったのだろうか。それとも、あれは夢なのだろうか。 『白昼夢』.....学校で習った言葉をつぶやきながら、僕はいつもの日常へと戻った。 それは僕の夢、昼下がりの、不思議な、少女の夢....... |