とある夢の中、一匹の猫が現われた。
その猫は猿の着ぐるみを着て、自慢の髭をさすりながら僕にこういった。

「て〜っても濃い人生はいらんかね?」

どうやらその猫は「と」という言葉がいえない様だった。




夢の物語〜猫と少年と物語〜





その日は空が青く綺麗だった。
何気なく見上げていると雲の流れが速くて、おおっと驚いてみたりする。
水色の画板に白いもやを滑らせている感じだった。
僕はその時テストの真っ最中のはずだった。でも僕は事故にあっていた。

『運良く頭部の打撲と体数ヵ所の骨折で済んだようです。打ち所が悪かったのか.....。』

詳しい事は知らないけど、大体は医者の話しを聞いているとこんな感じらしくて。
あれ、はてな?なんで僕は意識があるんだろう?ん、あ、急に眩しく.....。

周りに何もない。白い世界に猫がいた。ぽつんと一匹そこにいた。

「やぁ。」
「やぁ?.....あ、じゃなくてこんにちは。」

猿の着ぐるみを着た、太っちょの猫だ。

「律儀な子だね。」
「あんた誰?」

しかも二本足で立っている。

「前言撤回、きついコテを言う子だね。」
「なんで猿なの。」

しかも「と」と発音できないらしい。言葉使いが変だった。

何故猿なのかと聞いた僕に、

「個人の自由じゃないかい?」

と答え、

「なんで猫なの?」

という質問に、

「猫の僕に言われても困るなぁ。」

と同じように答えられた。

体を揺らして、横につらっと長い髭を指でつまんでその猫は笑った。

「て〜っても濃い人生はいらんかね?」
「何そのて〜っても濃い人生って。」
「て〜っても濃い人生は、て〜っても濃い人生さ。」
「だ〜か〜ら〜、どう言う意味なのって。」
「なんだい、分からないのかい。そうだねぇ、てりあえず今君は死んでいるね?」
「はい?」
「いや、だから今君は死んでいるね、って。」
「死んでる?」

そう思うと頭の上に光る輪っかがぼんやりと出てきた。手で触ろうと手を伸ばすと、すかっと
宙を切って触れない。よく分からないけど、ぼんやり見えるだけで存在はしていないみたいだった。

「なんだ、君は死んでいないのかい.....。はっはっは、これはまいったね。」
「え、僕、死んだの......。」

死んだ。そう実感すると頭の上がさらに光り輝いてきた。輪っかが今にもそこに出てきそうな。

「ちょっ、ちょっと待つんだね。まだ君は死んだて認識するのは早いようだね。」
「え?」
「だから君は死んではいないのだよ。」
「死んでない?」
「ああ、まだそういう状態ではないようなんだね。」

死んでいない。そう思うとまた頭の上の輪っかは薄くなってくる。おぼろげで、今にも消え
そうな程淡い。

「天使様の輪っか?」
「キリステ教なんだな。」

自分の頭の上に浮かんでいる物体が天使の輪っかに似ているから、つぶやいてみたら思わぬ
答えが聞けた。キリスト教、確かこの前歴史の授業で言っていた沢山信者がいる宗教だ。

「これって夢なのかなぁ?」
「人の現実の続きが夢だてするてそうなるね。」
「何いってんの?」
「てあるアニメの受けうりさ。って、それは止めた方がいいて思うよ......」

あまりの馬鹿馬鹿しさに、ほっぺたをつねって確かめようとしたら止められた。それでも構わず
つねってみる。......痛くない。

「無意味だから。」
「......いい性格してるね。」
「よく仲間内からそう言われるよ。」


馬鹿馬鹿しい。本心からそう思った。


「てころで本題に入ろう。」

猫はまた唐突に言った。

「て〜っても濃い人生、欲しくないかい?」
「でも、結局僕はそれが何だか分かっていないんだけど?」
「つまり、君は今死ぬかもしれないだろう?だからある代償と引き替えに、て〜っても濃い人生
をプレゼントしてあげようって言うのさ。」
「つまりは生き返れるの?」
「ふ〜む、生き返る事は生き返るよ。ただし条件つきだけでもね。」

ふと、思い出した。つまらない毎日を送っている自分の姿。だらだらしてて、することもなく。
僕は別に死んでもよかったのじゃないだろうか。繰り替えされる日常に、ゲームセンターで
たむろして、何よりも自分は満足していなかったんじゃないのだろうか。にこやかに笑いあう、
友だちとの間にもどこか嘘があって。僕は......。

「ふ〜む。そこまで深く悩まないで欲しいんだな。別に強制している訳ではないんだよ。」
「..........。」
「ふむ、そう、一つ僕がちょってした昔話しをしてあげるんだな。」
「別にいいよ。」
「昔、てある所に一人の.....」

唐突な性格は多分一生なおらないんだろう。構わず話し続ける猫を見てそうおもう。

「別にいい.....っていうか、暇人?」

いや、暇猫か。と、そんな浮かび上がってきた疑問に、多分当たりだなと確信して、
どうやらこっちの話を聞きそうにもないからそのまま猫の話に耳を傾けることにした。


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昔、とある欧州地方の小さな国に一人の芸術家がいました。
その男の人が作る作品はまるで本物のようで、誰もが褒めずにはいられませんでした。
男の人は、名前をサレムといって、とても奇麗な顔だちをしていましたので、女の人からも
とても人気があって、生活は何不自由なく平和に、でも変化には富んで暮らしていました。

そんなサレムの話しはやがて国の王様の耳にも届き、お城に呼ばれたサレムは
一つ奇麗な壷を作ってくれないかと尋ねられました。
もちろん、サレムは首を縦に大きく振ってこれを受け入れました。
その顔は自信に満ち溢れていて、周りの女の人はみんな目をハート型にして、その情熱に
身を焦がしたそうです。

「きっと、王様のお気に召す壷を作ってごらんにいれます。」

そう胸を張って、自慢のお手製マントを翻して城を後にしたサレムは、まず女神様が住むと
言われている湖のほとりにいって、土を取りました。その後、ユニコーンが月夜に遊びに来ると
いわれている、小高い丘の上に咲く花を何本か持つとそのまま家に閉じ篭ったそうです。

「ぼくは最高の壷を作る上で、最高の品が何かをしっている。神様がそっとぼくだけにささやいて
くれるからね。」

サレムは後でこういったそうです。

三か月の間、ほとんどの人がサレムの姿を見ることはありませんでした。大勢の女の人が心配して、
窓から、ドアの鍵穴から、その中を覗こうと毎日やってきましたが、窓もドアもしっかりと
塞がれていて中が見えることはありませんでした。そうしてある日のこと、サレムが何の前触れも
なく、家から出てきたのです。その頬はこけていて、以前の姿よりも細く、ふらふらとした足取りで
倒れてしまったのです。これを最初に見つけたのは一人の農夫でした。倒れているサレムを見ると、
大声で人を呼んだそうです。

「サレムが倒れたぞ〜!」

この声が何処まで聞こえたのかは確かではありませんが、それから間もなくしてサレムの家の前には
女の人で人垣ができてしまいました。みんなサレムの事が心配だったのです。

「ありがとう、ぼくはもう大丈夫だよ。こんなにも沢山の人が心配してくれているんだ、ぼくは
こんな所で死んだりはしない。さ、みんな家に帰らないと、家の人が心配してしまう。」

なんて素晴しいお方なのでしょう。この言葉を近くで聞いた女の人は卒倒し、人伝えに聞いた女の人も
また涙を流さずにはいられませんでした。何人かの人はどうしても側に残るといいましたが、
サレムはやんわりとその人達にも帰るようにいいました。

次の日の事です。サレムの家の前に一つの長い行列ができました。みんな女の人で、手には思い思いの
料理を持っています。百人にも及ぶ大行列です。そんなにあっても食べれないのに、みんなどうにか
して自分の手料理で元気になってもらいたい、そんな一心でただじっと自分の順番を待っていたのです。
驚く事にサレムはそうして持ってこられた料理の全てを食べてしまったのです。もぐもぐ、もぐもぐと
順番に、待ち切れない顔をして差し出してくる女の人にありがとう、おいしいよと声をかけて食べて
いくサレムは、いっそう女の人の心を掴むのでした。

前の様に元気になったサレムは、完成した壷を持って王様に会いにいきました。
王様は待ち切れなかったとばかりに、両手を差し出してその壷を受け取りました。作るのに3か月も
かかった素晴しい作品です。白に塗られた滑らかな手触り、光に輝けば虹を描きだして、見る
人の心を掴んで離しません。壷に描かれた二輪の花はこの世の華の全てを映しだしたように奇麗で、
それが交差した上に国の名前が繊細な字で書かれているのです。王様はおお喜びしました。
金を与えただけでは足りなくて、自分の次女をやろうとまで言いました。サレムはそれを丁重に
断わりましたが、お姫様はサレムをとても気に入って、お国公認で逢瀬を重ねました。
サレムは何時の時も優しく、そして奇麗でした。






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