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笹下研究所・研究報告8

クローズアップレンズを使った立体写真の撮影

像の前後位置を動かす

原理実験考察


1.はじめに

 ピッチの細かい蝿の目レンズやレンチキュラーレンズを使ったレンズ板式立体写真では、表示面の前後からやや奥にある被写体の像が綺麗に表示できる。第一報第二報の撮影装置では前面のレンズ板が表示面の位置に対応するため、レンズ板を出来るだけ被写体に近づけて撮影したいが、これはなかなか容易なことではない。実用性を考えればある程度作動距離をおいて撮影できるようにしたい。
 ここでは被写体とレンズ板の間に対物レンズを置き、対物レンズによって被写体の像をレンズ板付近に投影して撮影することで、作動距離を確保しつつ、像が表示面に近い位置にある写真を撮影することを試みた。


2.原理

 対物レンズを使って被写体の像位置をカメラに近づける様子を図8−1に示した。作動距離は対物レンズによって決まり、カメラでは被写体の像を撮すため、作動距離とは関係なく無制限に接近することが出来る。



図8−1 対物レンズによって被写体の像をカメラに近い位置に投影する

 撮影像の視域は対物レンズの口径による制限を受けるため、視域角を確保するため大口径のレンズを使う必要がある。
 これを第二報の撮影装置に適用したものを図8−2に示すが、被写体からの光を効率よくカメラに導くためにリレーレンズを加えている。ここではレンズシートにシリンドリカル凹レンズを並べたレンチキュラーレンズを使用し、レンチキュラー立体写真を撮影する例を示しているが、凹レンズを並べた凹レンズシートを使えばインテグラルフォトグラフィと同様な立体写真を撮影することが出来る。



図8−2 対物レンズとリレーレンズを加えた立体像撮影装置

 この装置で対物レンズによる被写体の像がレンチキュラーレンズの位置に結ぶようにすれば、表示面に像が位置する立体写真が撮影できる。またレンチキュラーレンズよりさらにカメラに近い位置に像が結ぶようにして、表示面から飛び出す立体写真を撮ることも出来る。



3.実験

 PENTAX645を使った第二報のレンチキュラー立体写真を撮影する装置と、大口径の対物レンズを使ったクローズアップレンズを組み立て、実際にその効果を確かめた。

3−1.クローズアップレンズ無しの撮影

 制作した撮影装置を写真8−1に示す。撮影に使うレンチキュラーレンズは、有限会社アートナウより購入した60lpiのレンチキュラーレンズレンズを60mm角に切って型に使い、透明シリコン樹脂GM-7000で制作した。また撮影レンズにはf=90mmの引伸レンズを使い、レンチキュラーレンズとフィルムの中間に置いて等倍に近い撮影になるようにした。


写真8−1 PENTAX645を使ったレンチキュラー立体写真の撮影装置 外観(左)と内部(右)

 この装置を使った撮影例を写真8−2に示した。カメラは手持ちで、被写体の花に数cmまで寄って撮影したが、これ以上近づけると被写体がカメラの陰に入ってしまう。

 

写真8−2 写真8−1の装置を使った撮影例(Tmax100)

 撮影したネガをフィルムスキャン(EPSON GT-9700F解像度1600dpi)してデジタルデータとし、3Dフォトフレーム(60lpi)に合うように印刷倍率を調整すると、1336dpiで印刷したとき良好な結果が得られた(プリンターはEPSON PM-860PT)。これから撮影倍率は1336/1600=0.835ということになる。

 撮影例を3Dフォトフレームに入れ、視点を変えて二枚の写真を撮影したものを写真8−3に掲げた。ちょうど裸眼立体視の平行法の配置になっている。


写真8−3 3Dフォトフレームに入れた撮影例 二視点から撮影

 花の像は表示面より数cm奥に存在するが、横に流れるようなぼけが奥に行くほど大きいことがわかる。多重像の様にも見えるが、これは画像をデジタル化したために起こる弊害で、引伸機で焼き付けたプリントにはこのような現象は見られない。



3−2.クローズアップレンズを使った撮影

 制作したクローズアップレンズとこれを取り付けた撮影装置を写真8−4に示す。対物レンズには焦点距離100mmで直径200mmのフレネルレンズ(日本特殊光学製)をカットして使用し、リレーレンズには焦点距離が約100mmのカードレンズ(フレネルレンズ)を使った。また対物レンズとリレーレンズの距離は200mmとし、対物レンズから200mm離れた被写体を等倍でリレーレンズ上に投影する。


写真8−4 対物レンズとリレーレンズからなるクローズアップレンズ(左上)と取り付ける様子(左下)
さらにクローズアップレンズを取り付けた撮影装置(右)


 写真8−4(左下)のようにリレーレンズとレンチキュラーレンズは接近して配置されるので、実質的に被写体の等倍像を撮すことになる。撮影例を写真8−5に掲げた。

 

写真8−5 クローズアップレンズを使った撮影例1(Tmax100)

 先程と同様にプリントを作って3Dフォトフレームに入れ、視点を変えて撮影した二枚の写真を写真8−6に掲げた。これも裸眼立体視の平行法の配置になっている。


写真8−6 3Dフォトフレームに入れた撮影例1 二視点から撮影

 中央に見える花の像は表示面付近に位置するが、写真8−3と比べるとずっとシャープに写っている。

 さらに像位置を前に出し、飛び出す像とした撮影例を写真8−7に、これを3Dフォトフレームに入れたものを写真8−8に掲げた。

 

写真8−7 クローズアップレンズを使った撮影例2(Tmax100)



写真8−8 3Dフォトフレームに入れた撮影例2 二視点から撮影

 表示面より前に位置する像になると再びぼけ方が大きくなるため、僅かに飛び出す程度に抑えておいたほうが良いようである。




4.考察

 被写体から所定の距離をおいて画質の高い像や飛び出す像を撮すために、対物レンズとリレーレンズを備えたクローズアップレンズの導入が有効であることがわかった。

 ある程度大きな視域を確保するためには、対物レンズにはf値(焦点距離/口径)の小さいものを使いたいが、通常のレンズでは肉厚で大口径になるためコスト高になって容易でない。対物レンズの口径は被写体のサイズに比例して大きくしなければならないため、特に大きな被写体ではフレネルレンズを使用するのが現実的と思われる。

 ここで撮影した立体像の画像データをyahoo!フォトに公開した。ダウンロードして1336dpi(プリンターによっては若干調整が必要)で印刷すれば3Dフォトフレーム用の立体写真になるので、一度試して見ていただければ幸いである。



[特許出願済み]

はじめに原理実験

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