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笹下研究所・研究報告6

立体イメージスキャナ2

ロッドレンズアレイとCISを使う

原理実験考察


1.はじめに

 前報の方式では縮小投影光学系のCCD方式イメージスキャナを使用しなければならず、CIS方式のイメージスキャナは使用することができなかった。

 CIS方式はコンパクトかつ低消費電力という点で優れている。そこでCISの光学系を生かして立体像を取り込む方法を検討した。



2.原理

 図6−1が今回検討した立体イメージスキャナの原理図である。本装置は屈折率分布型ロッドレンズを並べたロッドレンズアレイとラインイメージセンサからなる線画像読み取りユニットを、矢印方向に走査して平面的な画像データを取得するものである。



図6−1 ロッドレンズアレイを使った立体イメージスキャナ

 図6−2に線画像読み取りユニットの平面図を示す。



図6−2 線画像読み取りユニットの平面図

 屈折率が中心から周辺に向かって2次曲線的に低くなる屈折率分布型ロッドレンズ中を進む光線の軌道は、周期的な曲線を描くことが知られている。さらにその周期をPとすると、P/2<L<Pである長さLに切断したロッドレンズは、一方の断面側にある被写体の正立像をもう一方の断面側に投影する性質を持つ。この性質を利用してラインイメージセンサの光センサアレイ上に被写体の正立像を縮小投影し、これをアレイ状に並べることによって線画像を得れば、これはレンチキュラー立体写真のシリンドリカルレンズに垂直な1ラインの像に等しい。従ってこれを読み取りラインに垂直な方向に走査して平面像を完成させれば、これはレンチキュラー立体写真と同等なものになる。

 このようにして読み取られた画像は、ロッドレンズによる細画像のピッチとレンチキュラーレンズのピッチが一致するように倍率を決めて印刷し、同レンチキュラーレンズを重ねれば立体像として表示することができる。

 線画像読み取りユニットでは隣り合うロッドレンズの像が混じることなく並ばなければならない。このためロッドレンズの断面と光センサアレイの距離Aを短くして、一本のロッドレンズによる像の明るさ分布がピッチwの内に収まるようにする(図中のintensityのグラフを参照)。さらに立体像はある程度の深度を必要とすることから、被写体側のピント面までの距離Bは長めにとる必要がある。このような条件を満たすロッドレンズの長さは3P/4に近い値になる。



3.実験

 市販されているCIS方式イメージスキャナに使われている密着型イメージセンサは、幸いにも上記線画像読み取りユニットと良く似た構成を採っている。
 これらの密着型イメージセンサでは、ロッドレンズアレイによって原稿の等倍像をラインイメージセンサ上に投影するが、ロッドレンズ断面と光センサアレイの距離が上記Aより大きく、隣り合うロッドレンズの像がオーバーラップすることで明るさ斑のない等倍像を形成している。
 使われているロッドレンズの長さは3P/4に近い値であるので、密着型イメージセンサのロッドレンズアレイの位置を光センサアレイに近づけるだけで、上記の線画像読み取りユニットの機能を持たせることができる。
 もちろんイメージスキャナのメカニズムはそのまま使用することができるから、市販のCIS方式のイメージスキャナを改造することで、とりあえずは立体イメージスキャナを作ることができると思われる。

 改造したイメージスキャナはシャープ製のJX-230(読み取り解像度600dpi,写真6−1)である。



写真6−1 改造したイメージスキャナ シャープJX-230


 同スキャナに使用される密着型イメージセンサは図6−3左の構造をしており、ロッドレンズアレイは比較的容易に取り外すことができる。ロッドレンズアレイを外した後、位置決めの段差部分を削り落とし、元の位置から約2mm下がった位置に再びロッドレンズアレイを固定した(図6−3右)。



図6−3 密着型イメージセンサを改造する

 ロッドレンズアレイについてのデータが無いため、ロッドレンズアレイの移動量はおおざっぱではあるが適当に決定した。もちろん最適値ではないが、立体像が得られることを実証することぐらいはできるはずである。

 改造した装置を使って取り込んだ立体像を写真6−2に、これにレンズシートを重ねたものを写真6−3に示した。その他の使用機器等は表5−1に示す。

表5−1 使用機器と諸条件

プリンタ HPdeskjet5551 4色印刷
被写体 熊のアクセサリー
表示用レンチキュラーレンズ 40lpiレンチキュラーレンズ


 

写真6−2 取り込んだ立体像




写真6−3 レンチキュラーレンズを重ねて表示した立体像



4.考察

 読み取り解像度600dpiで取り込んだ像を、575dpiとして印刷(1.043倍)して40lpiレンチキュラーレンズにピッチが合うことから、ロッドレンズアレイのピッチはおよそ0.6mmであることがわかる。

 得られた立体写真の画質は前報の立体イメージスキャナのものとさほど違わないが、きれいに見える視域が狭く2重像になりやすい。これは隣り合うロッドレンズの像の分離が不十分であるためと思われ、ロッドレンズアレイをさらに光センサアレイに近づければ改善される可能性があるが、この時ピント面も移動するため、結果的に画質が低下する恐れもある。結論を言えば屈折率分布からロッドレンズの長さと位置の最適値を計算して求める必要があると言うことである。

 CIS型の光学系ではロッドレンズのピッチが細画像のピッチを、開口角が視域角を決めることから、前報のCCD型に比べて設計の自由度が制限される。他方で読み取り倍率が不正確なCCD型では印刷倍率を微調整する必要があったが、CIS型は読み取り倍率が正確であるためこの必要がない。

 実際に立体像を確かめてみたいと思われる方のために、写真6−2のイメージデータをYahoo!フォトに公開した。そちらからデータをダウンロードし、840dpi(使用するプリンターによって若干の調整が必要)の画像としてプリントアウトすれば、キャノンの3Dフォトフレームなど60lpiのレンチキュラーレンズ用の立体写真になる。3Dフォトフレームなどをお持ちであれば是非試していただきたい。



[特許出願済み]

はじめに原理実験

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