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笹下研究所・研究報告5

立体イメージスキャナ1

レンズ板式立体写真のイメージを読み込む

原理実験考察


1.はじめに

 レンズ板式立体写真は必要な情報量が大きいため、現在のデジタルカメラでは十分な画質を実現するのは難しい。画像を大容量のデジタルデータとして取り込む手段としては、ラインイメージセンサを使ったイメージスキャナがある。

 ここでは「レンズ板式立体写真の撮影法」の原理をイメージスキャナに応用する検討を行った。



2.原理

 図5−1が今回検討した立体イメージスキャナの原理図である。本装置は「レンズ板式立体写真の撮影法」のカメラ部をラインイメージセンサを使ったラインカメラに置き換え、これを矢印方向に走査して平面的な画像データを取得するものである。



図5−1 ラインイメージスキャナを使った立体イメージスキャナ

 本装置で読み取った画像データを高画質プリンタで印刷すれば、「レンズ板式立体写真の撮影法」で撮影された立体写真と同等な画像が得られる。ここでレンズシートに凹レンズの並んだレンズシートを使えばインテグラルフォトグラフィの手法で表示できる立体像となり、シリンドリカル凹レンズの並んだレンチキュラーレンズを使えばレンチキュラー法で表示できる立体像となる。

 この原理を実現する最も簡単な方法は、図5−2のように市販のフラットベッドイメージスキャナの原稿台にレンズシートをのせ、さらに被写体を置いて画像を読み取るものである。ピッチの細かい(1mm以下)のレンズシートを使う場合、レンズシートに近接した領域が良く写るため、被写体をレンズシートに密着させて置くことできれいな立体像が得られる。この状態ではスキャナの照明光も良くとどき、新たに照明を追加しなくとも(必ずしも十分ではないが)ある程度の明るさが確保できる。


図5−2 フラットベッドイメージスキャナをそのまま使う方法

 図5−2において凹レンズの並んだレンズシートを用いる場合には、反射防止コートなど照明光の映り込みを防ぐ対策を講じる必要があるが、レンチキュラーレンズを使う場合には、シリンドリカルレンズの軸を副走査方向に一致させれば映り込みはほとんど無い。このように図5−2の方法はピッチの細かいレンチキュラーレンズを使うのに適していると言える。

 ピッチの荒い(1mm以上)のレンズシートを使う場合には、被写体をレンズシートから少し離して置く方が画質の点で好ましい。このとき被写体が原稿台から離れることで照明光が減少するため、新たに照明手段を追加する必要を生じる。

 図5−3はこれらを考慮した立体像取込ニットであり、フラットベッドイメージスキャナの原稿台に載せて使うものである。レンズシートから離して被写体を置くために透明な板を備え、さらに白色LEDによる照明を備えている。


図5−3 レンズシートを使った立体像取り込みユニット




3.実験

3−1.凹レンズの並んだレンズシートを使った立体像の取り込み

 図5−3の装置を組み立て、以下の条件で立体像を取り込んだ。実際の装置を写真5−1に、使用した機器と諸条件を表5−1に示した。



写真5−1 スキャナにセットした立体像取り込みユニット


表5−1 使用機器と諸条件

レンズシート 光洋製品No.300六辺形レンズシート(レンズ平均径2.2mm,134/吋2)
を型に使い透明シリコン樹脂で作成
スキャナ エプソンGT-7600U 読み取り解像度600dpi
レンズシートと透明板の距離 30mm
照明 白色LED×20 アルカリ電池で点灯
プリンタ HPdeskjet5551 4色印刷
被写体 熊のキーホルダー
表示用レンズシート 光洋製品No.300六辺形レンズシート

 実際にスキャナで読み取った像を写真5−2に、これにレンズシートを重ねたものを写真5−3に示す。

 

写真5−2 取り込んだ立体像




写真5−3 レンズシートを重ねて表示した立体像


3−2.レンチキュラーレンズを使った立体像の取り込み

 図5−2の方法で立体像を取り込んだ。使用した機器と諸条件を表5−2に示す。

表5−2 使用機器と諸条件

レンチキュラーレンズ 40lpiレンチキュラーレンズを型に使い透明シリコン樹脂で作成
スキャナ エプソンGT-8300UF 読み取り解像度800dpi
プリンタ HPdeskjet5551 4色印刷
被写体 熊のキーホルダー
表示用レンチキュラーレンズ 40lpiレンチキュラーレンズ

 読み取ったイメージを写真5−4に、これにをレンチキュラーレンズ重ねたものを写真5−5に示す。

 

写真5−4 取り込んだ立体像




写真5−5 レンチキュラーレンズを重ねて表示した立体像



4.考察

 写真5−2,3は照明過多から細部がつぶれてしまっており、また写真5−4,5では原稿台から離れた位置での照明光の不足が見られる。立体像を取り込むのに好ましい照明を設計し、実現することが残された課題である。

 特に写真5−5のレンチキュラー写真において、「レンズ板式立体写真の撮影法」のフィルムカメラを使う方法では実現するのが難しいシャープな像が得られている。

 実際に立体像を確かめてみたいと思われる方のために、写真5−4のイメージデータをYahoo!フォトに公開した。そちらからデータをダウンロードし、1184dpi(使用するプリンターによって若干の調整が必要)の画像としてプリントアウトすれば、キャノンの3Dフォトフレームなど60lpiのレンチキュラーレンズ用の立体写真になる。多眼カメラを使った簡易的な立体写真とはひと味違うものになっているので、手元に3Dフォトフレームなどをお持ちであれば是非試していただきたい。

 手持ち撮影ができないことや動きのある被写体が撮影できないなど使用条件に制約が多いが、高画質な立体像が簡単に得られ、デジタルデータとして扱えるなどメリットも大きく、有望な手法の一つであると考えられる。



[特許出願済み]

はじめに原理実験

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