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笹下研究所・研究報告15

ロッドレンズアレイを使った立体写真の撮影

角度反転手段のバリエーション

原理実験考察


1.はじめに

 第9報で報告した角度反転プリズムを使った立体像の撮影法では、角度反転を同様の機能を持つ他の手段に置き換えることが可能である。例えば第6報で使ったロッドレンズアレイは、ロッドレンズのカット長をP/2に等しくすることでこの機能を持たせることが出来る。
 ロッドレンズアレイはイメージスキャナに使用されているものを外して加工し、これを角度反転に使ってレンチキュラー写真を撮影する実験を行った。




2.原理

 CISなどに使われるロッドレンズアレイは図15−1(左)に示すように、その屈折率が中心からの距離に対して二次関数的に減少する屈折率分布型ロッドレンズを並べたものである。


図15−1 屈折率分布型ロッドレンズ(左)とカット長による機能の違い(右)

 このようなロッドレンズ中を進む光線は周期的な曲線を描くことが知られているが、その周期をPとすると、同図(右)に示すように長さPにカットしたロッドレンズは、一方の端面に入る光線の入射角を変えずにもう一方の端面から出射するのに対し、P/2にカットしたロッドレンズは入射角を反転して出射する機能を有する。
 このことからカット長がP/2のロッドレンズをアレイ状に並べて図15−2の装置に使用すれば、第9報と同じ原理で立体像が撮影できることになる。



図15−2 立体像撮影装置(斜視図)

 装置の平面図を図15−3に示すが、これを第9報の図9−2と比較すれば、ダブプリズムの列がロッドレンズアレイに置き換わっただけで、他は全く同じであることがわかる。



図15−3 立体像撮影装置(平面図)

 さらに装置の側面図を図15−4に示す。ロッドレンズアレイには光線を上下に絞る機能があるため、第9報の装置で使用したスリットは必要ない。



図15−4 立体像撮影装置(側面図)

 またロッドレンズの角度反転機能は縦方向にも存在するため像の倒立は起こらず、撮影像が鏡像にならないという点も第9報とは異なる。




3.実験

 ロッドレンズアレイは第6報でも使用したシャープ製のイメージスキャナJX-230に使われているものを使用した。イメージスキャナから取り外した密着イメージセンサ(CIS)と、さらにCISから取り出したロッドレンズアレイを写真15−1に示した。

 

写真15−1 メージスキャナ(JX-230)から取り外した密着イメージセンサ(CIS)とロッドレンズアレイ(下)

 CISのロッドレンズアレイに使われるロッドレンズはP/2より長いため、これを削ってP/2に合わせる。幸いこのロッドレンズアレイはプラスチック製なので、切削も研磨も比較的容易である。

 まずロッドレンズアレイの端を斜めに削って研磨し、研磨面にレーザー光を入射して出射光の広がり方を観察した(図15−5)。出射光の広がりが最小になる位置の幅がP/2になるが、これを実測して3.7mmとなった。



図15−5 ロッドレンズアレイの端を斜めに削り、レーザー光を入射してP/2を求める

 あとは全体的に幅が3.7mmになるようにロッドレンズアレイを削り、端面を研磨して角度反転用ロッドレンズアレイとした。寸法精度、研磨精度ともに十分とは言えないが、撮影法の原理確認をするぐらいなら可能だろう。元々の幅が4.2mmであったため、0.5mmほど削ったことになる。さらにロッドレンズアレイは写真15−2(左)のように遮光板に取り付けた。


写真15−2 遮光板に取り付けたロッドレンズアレイ(左)と撮影装置に取り付けた様子(右)

 第1、第2の凸レンズには第9報と同じくフレネルレンズ(焦点距離約27cm)を使用し、写真15−2(右)のようにロッドレンズアレイとともに装置に取り付けた。
 完成した撮影装置の外観を写真15−3に示す。レンチキュラーレンズにはキャノンの3Dフォトフレームに付属のレンズを使い、4×5シートフィルムに撮影する。第2の凸レンズからレンチキュラーレンズまでの距離は約27cmで、撮影距離は30cm前後として等倍像を撮影することとした。


写真15−3 製作した撮影装置の外観 前(左)と後(右)

 フィルムホルダーの蓋をシャッター代わりに使用したが、フィルム感度ISO100で露出時間が1分と長くなったため特に問題はなかった。

 撮影した被写体を写真15−4に、撮影したフィルムをスキャナ(EPSON GT-9700F)で読み取ったものを写真15−5に示す。


写真15−4 撮影した被写体



写真15−5 撮影した立体写真

 これらの撮影フィルムからコンタクトをとり、3Dフォトフレームに入れたものを写真15−6に、さらに立体感を示すために視点を右から左に移動しながら撮った写真をアニメーションにしたものを写真15−7に掲げた。


写真15−6 3Dフォトフレームに入れた撮影例



写真15−7 視点を右から左に移動しながら立体像を見た様子

 シャープな像とは言えないものの、正しい立体像が撮影されていることが確認できた。




4.考察

 本方法で撮影される立体像の画質は、使用するロッドレンズの性能や寸法及び研磨精度に強く依存している。今回の実験ではあまりシャープな像は撮影できなかったが、部品や工作精度を改善すれば実用的な画質が実現できる可能性は十分あると思われる。

 ここではロッドレンズアレイ一本を使用して装置を作成したが、複数本を縦に重ねて(並べて)使用することも可能である。ロッドレンズアレイを増やせば像の明るさが増すため、露出時間を短縮することができる。

 写真15−5の画像データ(読み取り解像度800dpi)をyahoo!フォトに公開した。ダウンロードして810dpi程(プリンターによっては若干調整が必要)で印刷すれば3Dフォトフレーム用の立体写真になる。



[特許出願済み]

はじめに原理実験

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