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針穴写真13/ステレオ写真20

モノ−ステレオピンホールカメラ(印画紙)

ピンホールで作るモノ−ステレオカメラ

大カビネ印画紙を使うカメラ六切印画紙を使うカメラ


1.モノ−ステレオカメラ

 Loreo 321というユニークなカメラがある。モノ−ステレオカメラ(Mono-Stereo Camera)と名付けられるように、通常の単一写真とステレオ写真を切り替えて撮ることが出来る。実物を手にとって見たことはないが、撮影できるステレオ写真が交差法のフォーマットになることや、撮影例の中央に左右像が重なるラインがあることなどから構造を推測すると、その手法がピンホールカメラに容易に応用できることがわかる。早速ピンホールでモノ−ステレオカメラを作ってみた。
 モノ−ステレオピンホールカメラでは、図20−1のように単一写真用のピンホール一つとステレオ写真用のピンホール二つ、計三つのピンホールを並べて設置する。図には示していないが、ピンホールのそれぞれにシャッターを設け、ピンホールを使い分けることでモノ−ステレオを撮り分ける。すなわち単一の写真を撮影する時にはpinhole monoのみを使用し、ステレオ写真を撮るときにはpinhole Lとpinhole Rのみを使用するのである。



図20−1 三つのピンホールを使って単一写真とステレオを撮り分ける

 単一写真の撮影時(モノ)には問題はないが、ステレオ写真を撮影するときには左右像が重ならない工夫をしなければならない。図20−1ではステレオピンホールカメラと同様に、ピンホールの後にマスクを置くことでこれを実現している。マスクにはR、Lのアパチャー(窓)に加えてmono用のアパチャーが必要であり、点線のようにR及びLのピンホールからmono用のアパチャーを通る光がフィルムに当たらないようにするためには、マスクはピンホールから投影距離Mの5分の1以内の距離に置かなければならない。
 ただピンホールとマスクの間に左右方向に交差する光を防ぐ遮光手段を加えれば、マスクの位置は投影距離Mの3分の1まで遠ざけることが出来る。レンズカメラではフィルム面でマスクのエッジが大きくぼけるため、マスクとピンホールは出来るだけ離して置きたいが、ピンホールカメラではエッジのぼけ方が十分小さいのでM/5以内でも十分である。



2.大カビネ印画紙を使うカメラ

 製作したモノ−ステレオピンホールカメラを写真20−1に示した。フィルムには大カビネ(13cm×18cm)の印画紙を使用する。三つのピンホールは4.5cm間隔で並び、それぞれに独立したシャッターを設けてある。



写真20−1 制作したモノ−ステレオピンホールカメラ 大カビネ(13cm×18cm)の印画紙を使用

 カメラ内部の構造は図20−1に示した通りで、遮光用のマスクを写真20−2左に、マスクをセットする様子を同右に表した。投影距離Mは110mmであるのに対し、ピンホール−マスク間は20mmとして前記した条件(<M/5)を満たしている。


写真20−2 マスク(左)とマスクを取り付ける様子(右)

 単一写真を撮影する時には写真20−3左のように中央のピンホールのみ開き、ステレオ写真撮影時には同右のように左右のピンホールを開いて撮影する。ステレオベースは9cmと大きめなので、撮影距離は長目(3〜5m)にとることが出来る。なお各シャッターは独立しているので、ハーフサイズの単一写真を二枚撮ることも可能である。


写真20−3 単一写真を撮る時(左)とステレオ写真を撮る時(右)

 印画紙のサイズは13cm×18cmであるが、端約5mmはフィルムをホールドするために使えず、有効な画像サイズは12cm×17cm程になる。これとM=110mmから、単一写真の画角は135フルサイズに換算して23mm相当となり、ステレオ写真では33mm相当となる。

 このカメラによる単一写真の撮影例を写真20−4に、同じ被写体を撮影したステレオ写真を写真20−5に掲げる。ピンホール径は0.38mmでF値は290ほどになり、かなり暗くなるため露出時間も長くなる。



写真20−4 単一写真の撮影例1 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト




写真20−5 ステレオ写真の撮影例1 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト

 単一写真、ステレオ写真ともに問題なく撮り分けられていることが確認できる。写真20−5をトリミングして平行法の配置に並べ替えたものを写真20−6に表した。


写真20−6 撮影例1をトリミングして平行法の配置に並べた

 ステレオベースが大きいので、特に接近しなくても十分な奥行き感のあるステレオ写真を撮ることが出来る。さらに他の撮影例を写真20−7〜写真20−9に示した。



写真20−7 単一写真の撮影例2 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト




写真20−8 ステレオ写真の撮影例2 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト



写真20−9 撮影例2をトリミングして平行法の配置に並べた



3.六切印画紙を使うカメラ

 多眼ピンホールカメラで使った汎用カメラに、モノ−ステレオカメラ用のピンホールを取り付け、六切(8×10)印画紙用のモノ−ステレオピンホールカメラとした。フィルムサイズが20.3cm×25.4cmと大きいので、画質の面ではかなり有利になる。モノ−ステレオカメラ用ピンホールを取り付けたカメラを写真20−10に示す。



写真20−10 六切印画紙を使うモノ−ステレオピンホールカメラ

 左右像の重なりを防ぐマスクの取り付け方を図20−2に示した。マスクは15mmの角材二つを介してパネルに取り付けたが、この場合には角材が横切る光線を遮るため、図20−1で説明した距離の制約(<M/5)が無く、ピンホールからM/3以内の距離であればよい。


図20−2 ピンホールのあるパネルにマスクを取り付ける

 実際に取り付けられたマスクを写真20−11に示した。



写真20−11 パネルに取り付けたマスクを裏から見る

 三つのピンホールには各々シャッターが取り付けられ、単一写真を撮影する時には写真20−12左のように中央のピンホールのみ開き、ステレオ写真撮影時には同右のように左右のピンホールを開いて撮影する。ステレオベースは12cmとさらに大きく、適正な撮影距離は4〜6m程になる。各シャッターは独立しているので、もちろんハーフサイズの単一写真を二枚撮ることも可能である。


写真20−12 単一写真を撮る時(左)とステレオ写真を撮る時(右)

 投影距離Mは150mmで、単一写真の画角は135フルサイズに換算して23mm相当となり、ステレオ写真では28mm相当となる。またピンホール径は0.45mmでF値は330ほどになる。
 このカメラによる単一写真の撮影例を写真20−13に、同じ被写体を撮影したステレオ写真を写真20−14に掲げる。



写真20−13 単一写真の撮影例1 露出20分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト




写真20−14 ステレオ写真の撮影例1 露出20分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト

 写真20−14をトリミングして平行法の配置に並べ替えたものを図20−15に表す。


写真20−15 撮影例1をトリミングして平行法の配置に並べた

 大きな被写体ほど引いて撮らないと全体が入らないが、ステレオベースが大きいと距離をとっても奥行き感がさほど希薄にならない。このことは大きなサイズのフィルム(印画紙)を使うことの、画質以上に大きいメリットであると感じる。
 さらに他の撮影例を写真20−16〜写真20−18に掲げた。



写真20−16 単一写真の撮影例2 露出20分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト




写真20−17 ステレオ写真の撮影例2 露出20分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト



写真20−18 撮影例2をトリミングして平行法の配置に並べた

 以上のようにピンホールカメラならモノ−ステレオカメラが簡単に実現できる。同じ構成でピンホールをレンズに置き変えれば、レンズを使ったモノ−ステレオカメラとなるが、これがLoreo 321の構造であるか否かは定かでない。外観の写真を見る限りでは、さらにミラーを加えてステレオベースを拡大しているかのようにも見える。機会があれば是非実物を手に取って調べてみてみたいものである。




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