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ステレオ写真2

デジカメ二台でステレオ写真(後編)

トリミングカメラを横位置で並べるステレオカメラトーインした写真作成した治具の詳細

1.ステレオベースの拡大

 ステレオベースすなわち左右のカメラレンズの距離は、ステレオ写真の奥行き感を決定する重要な要素である。左右の写真における視差は遠くにある被写体ほど少なくなるため、ステレオベースを大きくして十分な視差を確保しなければはっきりとした奥行き感を持ったステレオ写真にならない。
 STEREOeYeさんによれば、ステレオベースは被写体までの距離の1/30程度が好ましいとのことである。前編のカメラはステレオベースが72mmであるので、2m程離れた被写体を撮影するのに適していることになる。ここではそこまで近寄れない被写体の撮影のために、ステレオベースを少し拡大した治具を作り、実際に撮影してみた。
 製作した治具の外形図と写真、および実際にカメラを取り付けた様子を以下に示す。カメラ間の距離が50mmであるのでステレオベース(レンズ間距離)は118mm程になる。なお治具に開けた窓は、ファインダーとして使えるようにと考えたものである。

図2−1 カメラを取り付ける治具の外形

(上)写真2−1 作成した治具

(右)写真2−2
 治具にカメラを固定した様子


 実際に撮影している様子を写真2−3に示す。またこれを使って撮影した写真(写真2−4)とさらに上下をトリミングして合わせたステレオ写真(写真2−5)も合わせて示した。



写真2−3 治具を使って撮影している様子


384 x 512 384 x 512

写真2−4 撮影した二枚の写真(平行法の配置)。


384 x 488 384 x 488

写真2−5 トリミングで上下を合わせた写真(平行法の配置)。

 前編ではここまでであったが、今回はステレオベースが大きいためさらに左右のトリミングを行って見やすいステレオ写真を完成させる。このトリミングが後編のテーマである。


2.トリミング


2−1.トリミングの必要性

 二台のカメラによって撮られた写真には、下図のように両方の写真に共通に写る部分(青)と一方にしか写らない部分(赤)が存在する。後者の赤い部分(ここでは以下非共通域と呼ぶことにする)がステレオ写真を見づらくする原因になる。

図2−2 それぞれのカメラの撮す範囲の重なり

 この非共通域の割合はステレオベースが大きいほど大きく(図2−3)。

図2−3 ステレオベースと非共通域

 また個々のカメラの撮す画角が小さいほど大きくなる(図2−4)。

図2−4 カメラの画角と非共通域

 さらに被写体の距離によっても異なり、被写体が近いほど非共通域の割合は大きくなる(図2−5)。

図2−5 被写体の距離と非共通域

 前編ではステレオベースが72mmと短くやや広角のレンズであったために、非共通域が小さく特に見づらくは感じなかったが、ステレオベースを広げた今回はそうもいかない。
 トリミングで非共通域を無くせるわけではないが、見た目の不自然さを軽減することならできる。


2−2.トリミングの仕方

 トリミングの仕方はSTEREOeYeさんのサイトに説明されているが、ここではそれを実践してゆく。
 まず考え方を簡単に説明する。下図のように被写体の前に写真枠を導入し、この写真枠を窓として窓越しに見る景色をステレオ写真で表現することを考える。こうすれば被写体に非共通域があっても、それは窓枠に遮られることで生じるものであるから自然に受け入れられる。ここで重要なのは写真枠の前の写真枠をまたぐ位置に被写体があってはならないことで、もしあれば窓の前にある被写体が窓枠で遮られることになり不自然である。もちろん写真枠の前であっても枠をまたぐ位置でなければ被写体があっても問題はない。

図2−6 写真枠を導入するトリミング

 具体的には左目の写真の左側と右目の写真の右側を同じ幅だけカットするのであるが、元の写真を出来るだけ生かすためにカット幅は最小にしたい。このためには写真に写る被写体の内、左右の端にあってかつ最も手前の被写体に写真枠を合わせればよい(図2−7)。

図2−7 効率的なトリミング



2−3.実際のトリミング

 写真2−5を使って実際にトリミングをしてみる。

384 x 488 384 x 488

写真2−5 (再掲載)左右をトリミングする前の写真(平行法の配置)。

 この写真で最も近くにあるのは画面下の草花である。そこで両写真の左右下隅を比較してみると、図2−8のようにそれぞれ青のラインで切れば両写真の画が一致することがわかる。この例では必要なカット幅が左右で等しいのでその幅だけ(青のラインで)カットすればよいが、異なる場合にはどちらかカット幅の大きな方に合わせてカットする。

100 x 250 100 x 250 100 x 250 100 x 250

図2−8 左右のカット幅を決める様子。

 このようにトリミングして完成したステレオ写真を写真2−6に示した。写真2−5では左右の枠のあたりがちらついてはっきりしないのに対し、トリミングした写真2−6では枠まできれいに見えている。

726 x 976 726 x 976

写真2−6 左右のトリミングをして完成した写真(平行法の配置)。



2−4.被写体とトリミング

 同じカメラで撮った別の写真を以下に示す。写真2−7はすでに上下のトリミングをして高さを揃えてあるが、これに同じ左右のトリミングを施すものとする。

384 x 494 384 x 494

写真2−7 撮影後上下をトリミングで揃えた写真(平行法の配置)。

 先ほどと同様に画面下の左右を比較することでカット幅を決める。図2−9に示すように、この例では両写真の画を一致させる青ラインの位置が左右でかなり異なり、右側のラインがかなり内側に入っている。これは右前がこの写真で最も近い位置にあることを意味する。この場合右側のラインにカット幅を合わせて左右の写真をカットする。

100 x 250 100 x 250 100 x 250 100 x 250

図2−9 左右のカット幅を決める様子。

 トリミング後の写真を写真2−8に示した。ここでは左右のカット幅が先ほどの倍以上になったため細長い写真になってしまった。

678 x 988 678 x 988

写真2−8 左右のトリミングをして完成した写真(平行法の配置)。

 このように近距離の被写体を枠内に含む写真を撮影する際は、前編で使ったようなステレオベースの短いカメラで撮影するべきであり、無理してステレオベースの長いカメラを使うと大幅なトリミングをしなければならなくなって好ましくないと言うことである。

3.カメラを横位置で並べるステレオカメラ

 これまでのカメラでは縦長の写真しか撮ることが出来なかったが、ここでは図2−10のように横位置にカメラを並べ、横長のステレオ写真を撮る検討を行った。このためには図2−11のような治具を作り(写真2−9)、写真2−10のようにカメラ二台を固定する。

図2−10 横位置でのカメラの並べ方 図2−11 カメラ取り付け治具


写真2−9 作成したカメラ取り付け治具 写真2−10 治具にカメラを固定した様子


 このカメラを使って撮影する様子を写真2−11に示す。右のシャッターを右手人差し指、左のシャッターを左手親指で押すことになるが、縦位置で固定するこれまでのものよりは安定して保持でき、シャッターも押しやすい。治具の中央に作られた窓はファインダーとして使うことができる。ステレオベース(レンズ間距離)は実測で140mm弱といったところである。



写真2−11 治具を使った撮影の様子

 撮影された写真は常に右目用が正立、左目用が倒立しているので間違えることはない。
 実際に撮影した写真を下に示した。このカメラでも若干の上下のずれを生じたが、写真2−12では上下のトリミングによる調整は済ませてある。
 次はこの写真の左右のトリミングについて考えてみる。

1024 x 740 1024 x 740

写真2−12 上下をトリミングをして合わせた写真(平行法の配置)。



4.トーインした写真

 先ほどと同様に両写真の左右下部を比較してみる。

100 x 250 100 x 250 100 x 250 100 x 250

図2−12 左右の端の部分を比較する。

 二枚の左端下部の最も手前に写っている草をみると、確かに左(目)の写真の方が余計に写っているようであるが、視差のせいか同じ部分を特定することが難しくトリミングの線引きが難しい。もう一方の右端下部を比較すると写っている最も手前の草の位置はほとんど変わらない。これは二台のカメラがトーインしていた事を示している。
 これまでのトリミングは二台のカメラが平行に並んでいることを前提としていたが、図2−13のように両カメラが内側に向いている場合、すなわちトーインした撮影ではトリミングをしなくても所定の距離に写真枠ができる。

図2−13 二台のカメラがトーインした撮影

 撮影にあたってカメラのリアパネルが平行になるように二台のカメラを固定したのであるが、どうもこのカメラC-820L(D-320L)はレンズの光軸がリアパネルに垂直になっておらず、若干左に傾いているようで、そのため内向きになってトーインしてしまったようである。気が付いてみるとこれまでの縦位置での撮影において、左右の写真が上下にずれた原因もここにあるようである。
 トーインの撮影においても、図2−13の写真枠が好ましくなければトリミングして写真枠を変えればよい。ただ写真2−12の場合には図2−12でわかるように右端では問題が無く、実際に立体視してみても僅かに左前の草むらがもやもやするだけで、全体的には大変きれいに見えることから特にトリミングの必要はないと思われる。トーインの場合には実際に立体視をしてみてトリミングの必要性を判断すればよいだろう。
 写真2−12では左右の写真の相違がかなり大きく、一方にしか写っていない被写体が少なくないにもかかわらず立体視は安定している。写真枠がうまく決まったステレオ写真は見やすく、写真枠に配慮していない写真とは明らかな違いがある。枠も写真の一部であり、枠まで含んで写真の良否が決まるのである。


5.作成した治具の詳細

 最後にここで紹介した治具を作成するのに必要な寸法を記載した図面を掲げておく。寸法の単位はすべてmmである。材料は厚さ4mmのMDF(木のチップを固めたもの)で東急ハンズ(横浜駅前店)で購入できる。MDFは同じ厚さのベニヤ板に比べて厚さ精度が高く反りも少ない。また安価でもあり、105円で300×450の板を一枚買えば、治具を二つ作るには十分である。


図2−14 図2−1及び写真2−1の治具の図面



図2−15 図2−11及び写真2−9の治具の図面

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ステレオベースの拡大トリミングカメラを横位置で並べるステレオカメラトーインした写真

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