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ステレオ写真16

アナグリフカメラ1(基本編)

単一レンズによるアナグリフの撮影

RGBフィルターを使ったアナグリフカメラ眼鏡用フィルターを使用したアナグリフカメラ撮影例いろいろ


1.撮影原理

 アナグリフに関する基本的な事項は「摩訶不思議な世界・3Dアート」「日本各地のステレオ写真(3D写真立体写真)」に説明されているのでそちらを参考にしていただきたい。ここではその原理はすでに理解されているものとして、アナグリフ自体の説明は省くことにする。
 現在でこそPCを使って簡単にアナグリフを作ることが出来るが、PCや写真画質プリンターが普及する以前のアナログ時代にはどのようにして作っていたのだろうか。ここではPCが無くても、完全にアナログな手段のみでできるアナグリフ作成法を紹介する。
 図16−1に示すように口径の大きなレンズを使って被写体の像を写す光学系に置いて、レンズの前(あるいは後)に二つの離れた開口部を持つマスクを置き、両開口部に異なる色のフィルターをかぶせる。フィルム上には二つの開口部を通った光線によって二色の像が投影されるが、これらの像は開口部の間隔をステレオベースとした視差を持っている。ここで二色のフィルターが赤とシアンや赤と青、あるいは赤と緑のようにフィルターによって分離できる組み合わせであれば、撮影される像はすでにアナグリフになっている。



図16−1 単一のレンズでアナグリフを撮影する原理図

 このように単一のレンズで立体写真を撮る手法は、レンチキュラー写真などでも使われているから決して新しいものではないと思うが、他ではあまり紹介されることがないようなのでここで取り上げることとする。



2.RGBフィルターを使ったアナグリフカメラ

 ここでは一眼レフのボディとクローズアップレンズを使った接写カメラを作り、これにアナグリフ用のフィルター(以下アナグリフフィルターと記す)を取り付けてアナグリフカメラを作ることにする。アナグリフフィルターはワンタッチ式のレンズキャップを利用して作るが、その図面を図16−2に示した。


図16−2 レンズキャップを利用したアナグリフフィルター

 レンズキャップの口径は使用するクローズアップレンズに合わせるが、たまたま手持ちのNo.10のクローズアップレンズがフィルター径49mmのものであったため、ここでは49mmのレンズキャップを使用した。レンズキャップには図16−2のように30mmの間隔をおいて直径10mmの穴を二つ開ける。これによりステレオベースは30mmになるので適正撮影距離は1m前後となり、接写に用途が限定される。

 色フィルターには東急ハンズで購入した塩ビの透明板を使用した。写真16−1左に緑と赤の透明板を示し、これをカットしてレンズキャップの穴に付けたアナグリフフィルターを同図右に示した。


写真16−1 緑と赤の塩ビ製色付き透明板(左)と作成したR-Gアナグリフフィルター(右)

 これ以外にも同様に青い透明板と赤い透明板を組み合わせたアナグリフフィルターも作った。

 使用した三色の透明板の色純度を調べてみると、赤の色純度は比較的良好で、青と緑の光を(完全ではないが)良くカットするのに対し、緑と青の色純度はいまいちで、両方とも赤い光はそこそこカットするのに対し、青は緑、緑は青をカットできない。つまり緑色の板は緑がかったシアン、青い板は青っぽいシアンであることがわかった。ただいずれの色も赤はカットできるので、赤と組み合わせたアナグリフフィルターとして使うことは可能なはずである。

 ここで使用したボディはRICOH XR500である。カメラを構成するパーツ一式を写真16−2に示した。



写真16−2 アナグリフカメラを構成するパーツ一式 1.アナグリフフィルター 2.クローズアップレンズNo.10(49mm径) 3.ステップダウンリング52→49mm 4.メス−メスOMリング 5.Kマウントリバースアダプター 6.オート接写リング(1, 2, 3)

 カメラボディ(XR500)に接写リング(1+2+3で約57mm)を付け、さらにKマウントリバースアダプター − OMリング(メス−メス) − ステップダウンリング(52→49mm) − クローズアップレンズ(No.10) − アナグリフフィルターの順で組み立ててゆく。組上がったカメラを写真16−3に示す。



写真16−3 組み立てたアナグリフカメラ

 アナグリフフィルターは赤を左(向かって右)にして水平に並ぶようにする。No.10のクローズアップレンズは焦点距離が10cmで、この状態で1m前後の距離に焦点が合う。撮影の際はカメラを前後させて距離を変えピントを合わせるが、焦点が合った部分では二色の像のずれが無く完全に重なるので、この性質を利用してピント合わせをすると良いだろう。

 赤と緑のアナグリフフィルター(以下R-Gアナグリフフィルターと記す)を使った撮影例を写真16−4に、赤と青のアナグリフフィルター(以下R-Bアナグリフフィルターと記す)を使った撮影例を写真16−5に掲げた。

 

写真16−4 R-Gアナグリフフィルターを使った撮影例(ISO400)


 

写真16−5 R-Bアナグリフフィルターを使った撮影例(ISO400)

 実際にアナグリフ用の眼鏡をかけてこれらを見ると、確かにカラーアナグリフになっていることが確認できる。ただ色合いについて言えば写真16−4は全体的に緑がかっているし、写真16−5は青みがかっていていずれもいまいちという感じである。
 そこでアナグリフフィルターの一方の穴に、緑と青の透明板を半々覆うように貼り付けたもの(写真16−6)を作り色合いの改善を試みた。なお明るさのバランスをとるため、緑+青の穴径が10mmであるのに対し赤の穴径は8mmにして、赤の明るさを若干減じるようにした。


写真16−6 緑と青の塩ビ透明板を組み合わせて作ったR-GBアナグリフフィルターの内側(左)と外側(右)

 このアナグリフフィルター(以下R-GBアナグリフフィルターと称す)を使った撮影例を写真16−7に示す。

 

写真16−7 R-GBアナグリフフィルターを使った撮影例(ISO400)

 これを見れば確かに色合いは改善されており、また緑と青の透明板を重ねることなく並べたことが画質に悪影響を与えていないことも確認できる。

 さらに三種類のアナグリフフィルターの他の撮影例を、比較しやすいよう写真16−8に掲げておく。

R-G R-B


R-GB

写真16−8 三種類のアナグリフフィルターの比較(ISO400)




3.眼鏡用フィルターを使用したアナグリフカメラ

 「STEREOeYe」から入手できるアナグリフ観察用の紙製眼鏡(写真16−9左)には赤とシアンのフィルムがフィルターとして使われている。これをアナグリフフィルターに使えば色合いの良いカラーアナグリフが撮れるかもしれない。これからフィルムを取って図16−2のレンズキャップに取り付けたものを写真16−9右に示す。


写真16−9 赤とシアンのアナグリフ眼鏡(左)と眼鏡から取ったフィルターを使ったR-Cアナグリフフィルター(右)

 このアナグリフフィルター(以下R-Cアナグリフフィルターと称す)を使った撮影例を写真16−10に掲げる。さらに比較のため、先ほどのR-GBアナグリフフィルターによって同じ被写体を撮影したものを写真16−11に掲げた。



写真16−10 R-Cアナグリフフィルターを使った撮影例(ISO400)




写真16−11 R-GBアナグリフフィルターを使った撮影例(ISO400)

 いずれもカラーアナグリフとして問題なく使える。色合いの比較は微妙であるが、写真16−10の方が若干明るい感じがする。紙製のアナグリフ眼鏡は安価であるし、こちらを購入すればそれぞれの色のフィルターを別個にそろえる必要がなく便利である。ただフィルムは薄くて剛性が無いので、扱い安さを考えれば塩ビ板の方が使いやすいかもしれない。



4.撮影例いろいろ

 ここで組み立てたアナグリフカメラを使った撮影のバリエーションを幾つか紹介しておく。

 撮影倍率を下げるためには接写リングを減らし、全体の長さを減らせばよい。写真16−12は接写リングを一つ減らし(2+3)長さを45mmとして撮影したものである。撮影距離は2m前後になり、これまでの撮影例より広い範囲を写している。



写真16−12 接写リングを45mm(2+3)にして撮影(R-Cアナグリフフィルター使用)

 ワンタッチ式のレンズキャップを使ったアナグリフフィルターは自由な向きに取り付けることが出来る。これを利用して二つの穴が縦に並ぶ向きで取り付け、カメラを90度傾けて縦長の写真を撮ったものが写真16−13である。



写真16−13 カメラを縦位置にして撮影(接写リングは1+2+3で約57mm R-Cアナグリフフィルター使用)

 さらに同じく縦位置で、接写リングを写真16−12と同じ長さにして撮影したものを写真16−14に示す。



写真16−14 カメラを縦位置にして撮影(接写リングは2+3で45mm R-Cアナグリフフィルター使用)

 フィルターの回転が自由なことを利用すれば、写真16−15のようにカメラを斜めに傾けて撮影することもできる。とにかくアナグリフフィルターの二つの穴が水平に並ぶようにして撮影すればよいのである。



写真16−15 カメラを斜めにして撮影(接写リングは1+2+3で約57mm R-Cアナグリフフィルター使用)

 ここで使用した接写リングは長さが固定であるため、撮影距離を調整してピント合わせをするしかないが、ヘリコイドで長さが変えられる接写リングやリバースアダプター、あるいはベローズなどを使えばその長さを変えてピント合わせをすることも可能になる。

 二台のカメラを並べて撮影し、PC上で画像を加工合成して作る方法に比べ、一台のカメラで撮影し、普通にプリントしただけでアナグリフができあがる本手法はいかにも簡単で手間いらずである。手軽にアナグリフを楽しみたい人にはもってこいではなかろうか。


撮影原理RGBフィルターを使ったアナグリフカメラ眼鏡用フィルターを使用したアナグリフカメラ撮影例いろいろ

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