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針穴写真26/ステレオ写真42

大人の科学 ファントグラム編

ピンホールカメラでファントグラム

カメラの改造改造カメラで撮影


1.ファントグラムを撮る

 前報で紹介したステレオピンホールカメラをファントグラムの撮影に使ってみた。ピンホールカメラの写真には歪み無いため、作成ソフトPhantomPhotosJAJBで精度良くファントグラムが作れるはずである。

 ファントグラムで説明した通り、視差とパースペクティブは出来るだけ観察条件に合わせたいが、大人の科学のふろくのステレオピンホールカメラは広角(28mm相当)でパースペクティブを合わせるのは難しい。一方ステレオベースは38mmだから撮影距離を30cmとすれば、比例計算から観察距離50cmでだいたい人の目(間隔約6.5cm)の視差に一致する。この条件に合わせるには高さ20cmほどの位置にカメラを固定すれば良く、ちょうど小型の三脚(SLIK MINI CAMERA STAND)を使うと都合がよい。


写真26−1 小型の三脚(SLIK MINI CAMERA STAND)にステレオピンホールカメラを付ける

 カメラは目見当で45度下向きになるように固定する。撮影は室内で行ったが、照明は蛍光灯と電気スタンドなので野外に比べるとだいぶ暗く、露出は30〜60秒と長くなった。撮影例を以下に掲げる。

撮影例1 (露出60秒)
撮影例2 (露出30秒)
写真26−2 ファントグラム用ステレオ写真の撮影 (ISO100)

 撮影したネガはフィルムスキャナ Nikon LS-1000 で読みとった。この画像を元にPhantomPhotosJAを使って作成したファントグラムを下に掲げる。

撮影例1 撮影例2
写真26−3 作成したファントグラム

 ピンホールカメラなので全体的にぼやけた感じにはなるが、ちゃんとしたファントグラムになっている。縦に細長い画像なので、印刷の際は上部をカットして縦横比を整えると良い。実際に2Lサイズの紙に印刷してアナグリフメガネで見ると、視差が合っているので立体感はきちんと出ている。

 一方、パースペクティブが合わないせいで頭でっかちになるが、漫画的にデフォルメした立体写真と考えれば一つの効果として見ることもできるだろう。このようなパースペクティブの不一致による変形は背の高い被写体ほど顕著になるので、よりリアルなファントグラムに近づけたいなら背の低い被写体を選べば良い。

 参考のために撮影例の画面フォーマットを以下に掲げておくが、トリミングした形からも元画像のパースペクティブが強いことがわかる。

撮影例1 撮影例2
写真26−4 画面フォーマット




2.カメラの改造

 パースペクティブを合わせるためには投影距離を伸ばして画角を狭めればよい。前報と同様にパネル部を自作してよりリアルなファントグラムを撮ることを試みた。

 ピンホールを取り付ける板Aと本体にネジ止めする板B,Cの図面を下図に示す。いずれも厚さ2.5mmと4mmのMDFをカットして作成した。



図26−1 パネルのパーツ1 (厚さ2.5mmと4mmのMDFで作成)

 さらに側板Dと上下Eの図面を示すが、これらは厚さ2.5mmと4mmのMDFを張り合わせて二枚ずつ作る。



図26−2 パネルのパーツ2 (厚さ2.5mmと4mmのMDFを貼り合わせて作成)

 以上のパーツに1mm厚のミューズボードで作った仕切り板を加えて図26−3のように組み立てる。仕切り板はボール紙などでも良い。内部は墨を塗って黒くするが、全て組み立てた後では難しいので、まずA,D,EとB,Cをそれぞれ接着した時点で墨を塗り、乾いてからしきり板を加えて組み立てた。



図26−3 パーツを組み立ててパネルを作る

 出来上がったらAの二つの穴に内側からピンホールを貼り付ける。ピンホールには例によってアルミの空き缶を使い、0.3mmのピンホールを開けて16mm角にカットしたもの二枚を用意した。上記B,Cに大きめの穴を開けたのはピンホールを貼り付けやすくするためである。

 シャッターは1mm厚のミューズボードで制作した。主要なパーツの図面を下図に示す。



図26−4 シャッターのパーツ (ミューズボード 1mm)

 これに矩形の小片4枚を加えて図26−5の通りパネルに取り付ける。



図26−5 シャッターの組み立て

 出来上がったパネルを写真26−5に示す。取り付け側の穴を大きくしたためタップネジの位置がぎりぎりになってしまった。特に問題はなく固定できたが、もう少し小さい穴にした方が確実だろう。


写真26−5 完成したパネル 前面(左)と取り付け面(右)

 カメラ本体内の仕切り板はそのまま使うことも出来そうだが、ここでは取り外して代わりにボール紙で作った仕切り枠をはめ込んだ。仕切り枠の図面を下図に示す。



図26−6 仕切り枠をボール紙で作る

 制作した仕切り枠とカメラ本体にはめ込んだ様子を下に掲げる。仕切り枠は墨を塗って全体を黒くしておく。


写真26−6 仕切り枠(左)とカメラ本体にはめ込んだ様子(右)

 さらに制作したパネルを取り付け、完成した改造カメラを写真26−7に示す。

 

写真26−7 制作したパネルを取り付けた改造ピンホールカメラ

 これで投影距離は50mm前後になり、標準レンズの画角になる。





3.改造カメラで撮影

 改造したカメラを先程と同様に小型三脚に取り付け、撮影してみた。


写真26−8 小型三脚に取り付けた改造カメラ

 画角が小さくなった分、写す範囲は狭まる。このことに注意して撮影してみた。

 撮影したネガのイメージを以下に示す。ボール紙で作った仕切り枠の厚みが十分でないため、真ん中に左右像の重なった部分が出来ているがこの程度なら問題ない。なおイメージの読みとりには GT-9700F を使い、読みとり解像度は 800dpi とした。



撮影例1



撮影例2

写真26−9 改造カメラによるファントグラム用ステレオ写真の撮影 (露出30秒 , ISO100)

 これから左右像を切り取ったものを写真26−10に示す。写真26−9とは左右が逆転している点に注意されたい。フィルムには倒立像が形成されるが、これを回転して正立像にすると左右も逆転し、右視点の像が左、左視点の像が右に並ぶことになる。

撮影例1
撮影例2
写真26−10 切り離したファントグラム用元画像

 この画像を元にPhantomPhotosJAを使って作成したファントグラムを下に掲げる。

撮影例1 撮影例2
写真26−11 作成したファントグラム

 これを2Lサイズの紙に印刷してアナグリフメガネで見てみると、写真26−3のファントグラムのように頭でっかちになる感じはほとんどなく、かなりリアルな立体像に近づいたように思う。

 こちらの撮影例も先程と同じく画像フォーマットを示しておく。写真26−4と比較するとパースペクティブが減少しているのが良くわかる。

撮影例1 撮影例2
写真26−12 画面フォーマット

 以上のように、ファントグラムでは視差とパースペクティブを合わせるのが肝心であることが再確認された。大人の科学のステレオピンホールカメラはファントグラムの撮影にも十分使えるが、そのまま使うとパースペクティブが合いにくく、被写体の形状がデフォルメされたようなファントグラムになってしまう。リアルなファントグラムにこだわるなら背の低い被写体で立体感を抑えるか、投影距離を伸ばすような改造を施すと効果がある。





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