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針穴写真22

トイカメラ

トイカメラをピンホールカメラに改造

改造の手順試写画角の比較フィルム面と歪み


1.スケルトンボディのトイカメラ

 既に触れたとおり一眼レフを使ったピンホールカメラではミラーが邪魔になって投影距離を短くとることが難しく、40mm程が限界となる。更に広角の写真を撮るためにはミラーのない二眼カメラにするしかないが、レンズ交換の出来る二眼カメラは数が少なく、またあっても高価で簡単に使う訳にもいかない。そこで次に考えられる方法は市販の安価なカメラを改造してピンホールカメラを作ることである。
 ベースとなるカメラはトイカメラで十分で、ここでは2個百円で購入したスケルトンタイプのカメラを使うことにした。



写真22−1 ピンホールカメラに改造するトイカメラ

 このカメラは少し前、秋葉原で多く出回っていたもので、前面のカバーが透明で中の構造が見えるので分解が容易であるし、レンズカバーがシャッターとして使えるのも都合がよい。少しデザイン(ロゴ)が違うだけの同等品もあるようなので、そちらを使っても同様の改造ができると思われる。





2.改造の手順

 まず前面の透明カバーを外すまでの分解手順を図22−1に示す。ネジ四本を外し(1,3)フィルムの巻き戻しノブを引き抜いて(2)透明カバーを外すが、巻き戻しボタンが引っかかる(4)ので、ストラップが出る隙間から先の細いマイナスドライバーなどを差し込み、カバーを持ち上げボタンをくぐらせる(5)と良い。

1.側面のネジ二本を外す 2.裏蓋を開いて巻き戻しノブを引き抜く

3.さらにネジ二本を外す 4.まだ巻き戻しボタンが引っかかる

5.巻き戻しボタンを押し込み、先の細いもの
を差し込みカバーを持ち上げて外す
6.透明カバーが外れた状態

図22−1 カメラの分解1 前面の透明カバーを外すまで

 透明カバーが無くなるとレンズカバーは簡単に外すことが出来(7)、更にネジ二本を外してレンズユニットを外す(8)。
 
7.レンズカバーを外す 8.ネジ二本を外してレンズユニットを外す

図22−2 カメラの分解2 レンズユニットを外す

 ここから改造に入るが、例によってピンホールはアルミ缶から切り出した板で作り、直径8mmほどに円く切っておく。ピンホール径は0.20mmを目安とするが、多少の誤差は気にしなくてもよいだろう。

 以下図22−3を使って手順を説明する。まず取り外したレンズユニットからレンズ枠を外して(9)レンズを取り出し(10)、さらにシャッターレバーをずらしてバネとともに外す(11)。次にレンズのあった場所にピンホールを接着し(12)、レンズ枠を元に戻す(13)。もちろん外したレンズは使用しない。
 このカメラはレンズカバーを開いた状態でないとシャッターを切れない構造になっており、シャッターを切らないと次のフィルム送りが出来ない。改造後にレンズカバーをシャッターとして使うためには、レンズカバーを閉めた状態でフィルム送りをしなければならないのでこれでは困る。そこでシャッターレバーの先を削り(14)、レンズカバーを閉めた状態でもシャッターを切る動作が出来るようにする。

9.レンズ枠を右に回して外す 10.シャッターレバーをずらして外す

11.シャッターレバーを外した状態 12.レンズの位置にピンホールを貼り付ける

13.レンズ枠を元に戻した状態 14.シャッターレバーの下をヤスリで削る

15.各パーツを元のように取り付ける 16.ボディからシャッターを外す

17.シャッターを外した状態 18.シャッターに大きめの穴を開ける

19.シャッターを元の位置に戻す 20.レンズユニットを取り付ける

図22−3 ピンホールカメラへの改造手順

 レンズユニットを外したボディにはシャッターが露出する(16)。このシャッターは使用しないので取り除いてしまっても良いのだが、遮光性を良くするために一旦外し(17)、直径7mm程の穴を開けた後(18)再び戻して使うことにした(19)。これにピンホールを付けたレンズユニットを取り付ければ(20)改造完了となる。
 透明カバーを戻す際には、図22−4に示すようにシャッターボタンを粘着テープで仮止めしておく(21)とやりやすい。最後に巻き戻しノブを差し込んで、外したネジ四本を締めれば完成する(22)。

21.シャッターボタンを粘着テープで
カバーに仮止めしておく
22.カバーをはめ、残りのパーツを取り付け
て出来上がり

図22−4 最後に透明カバーを付けてピンホールカメラが完成する

 撮影にはまず手すりなどの平らな面を探してカメラを置き、一方の手で動かないように押さえながらシャッター(レンズカバー)を開閉する。一枚撮影したらシャッターボタンを押して動かなくなるまでフィルムを巻き、次のコマを撮影する。これをフィルムが終わるまで繰り返せばよい。





3.試写

 製作したピンホールカメラと未改造のトイカメラ、更に高級カメラとしてペンタックスの一眼レフSFXにズームレンズ28-80mmを取り付けたもので同じ被写体を撮影し、それぞれの写真の画質を比較した。なおSFXのズーム位置は28mmに合わせている。

 撮影例の一つを写真22−2に示す。

ピンホールカメラ

露出約1秒
トイカメラ
PENTAX SFX

MC COSMICAR
ZOOM 28-80mm


28mm, F22で撮影

写真22−2 ピンホールカメラと改造前のトイカメラ、一眼レフの画質を比較1 (NEOPAN 400)

 まず画角を比較するとピンホールカメラが最も大きく、次いで一眼レフ、トイカメラの順であることがわかる。トイカメラには「28mm LENS」と表示されているが、一眼レフのズーム位置28mmが正しいとすれば実際にはこれより長く、約32mmに相当する画角になっている。同様にピンホールカメラの画角から投影距離を求めると24mm程になるが、この程度なら周辺光量の低下も少なくちょうど良い画角であると思う。投影距離が24mmなら理想的なピンホール径は0.18mmとなるが、まあ0.20mmでも大差ないだろう。

 露出条件が違うので正確なことは言えないが、コントラストについては一眼レフの写真が非常に高く、次いでトイカメラ、ピンホールカメラの順となる。一眼レフでは周辺までコントラストが低下しないのに対し、トイカメラでは周辺部で明らかに低下する。一方ピンホールカメラでは回折光が多いせいか全体的にコントラストが低い。

 解像度にもコントラストと同じ傾向が見られる。掲載した写真はフィルムスキャナを使い1,350dpiで読み取ったものだが、この読み取り解像度では画面中央の解像度はトイカメラでも一眼レフと大差ないように見える。一方周辺部では一眼レフが相変わらず高解像度なのに対し、トイカメラでは画質低下が著しい。
 当然ながらピンホールカメラの解像度はこれらに較べて明らかに低いが、それなりに周辺部まで比較的均一な画質になっている。ピンホールカメラでも原理的には画質の不均一が存在し、実際に超広角の写真では周辺部で放射状に流れるようなぼけ方をするが、このカメラの画角ではほとんど気にならないようである。

 さらに他の撮影例を写真22−3に示す。

ピンホールカメラ

露出約1秒
トイカメラ
PENTAX SFX

MC COSMICAR
ZOOM 28-80mm


28mmで撮影

写真22−3 ピンホールカメラと改造前のトイカメラ、一眼レフの画質を比較2 (NEOPAN 400)

 この撮影例ではトイカメラの写真に大きなディストーション(歪曲収差)が見られる。とりわけ船後方のビルが曲がって写っているのは不自然で、レンズ一枚のトイカメラではこういった歪曲収差が大きくなることが欠点のようである。一方一眼レフには一目でわかるような歪曲収差は見られず、さすがに高級カメラと言われるだけのことはある。

 レンズを使わないピンホールカメラでは原理的に歪曲収差は少なく、かなりの広角でありながら一眼レフと変わらない正確な像を写している。なおこの写真の右下に写っているのはシャッターを動かしている指である。このカメラではレンズ下のレバーをスライドさせてシャッターを開閉するため、十分気を付けないとこのように指が写真に写ってしまう。これは構造上の欠点といえるが、気の利いた解決法を思い付かないのでとりあえずは注意して撮影する(技術でカバーする)しかない。

 もう一つ撮影例を写真22−4に示す。

ピンホールカメラ

露出約1秒
トイカメラ
PENTAX SFX

MC COSMICAR
ZOOM 28-80mm


28mmで撮影

写真22−4 ピンホールカメラと改造前のトイカメラ、一眼レフの画質を比較3 (NEOPAN 400)

 ここでもトイカメラの写真右奥に写っているビルに明らかなディストーションが見られるのに対し、ピンホールカメラと一眼レフの写真にはほとんど見られない。

 ピンホールカメラの写真には均質で正確(歪まない)という長所があり、ぼけや低いコントラストはソフトフォーカスとポジティブに解釈すれば、これも一つの表現法と言えるだろう。

 試作ピンホールカメラの写真を何枚か見ると画質(解像度)にかなりのばらつきがあり、どうやら撮影時のブレが少なからず影響しているようである。このカメラではシャッターの開閉に伴い横向きの力がかかるが、うまくボディを保持しないとこのとき若干動く(ブレる)ようで、やってみるとこれが結構難しい。恐らく市販のピンホールカメラにも同様の問題があると思われるが、対策としてはフィルム感度を下げたり暗い被写体を選ぶなどして露出時間を延ばし、シャッター開閉時のブレの影響を相対的に減少させることなどが考えられる。





4.画角の比較

 今回のピンホールカメラの画角を<一眼レフあれこれの一>で製作した投影距離約40mmのピンホールカメラと比較した(写真22−5)。

今回のピンホールカメラ(推定24mm) 一眼レフ(SFX)+ピンホール(推定40mm)
写真22−5 今回のピンホールカメラと<一眼レフあれこれの一>で紹介したカメラの画角の違い(ISO400 , 露出1秒)

 トイカメラを改造した今回のピンホールカメラでは、一眼レフでは真似の出来ない広角写真が撮れていることが良くわかる。うまくブレを抑えて撮れば画質は変わらないし、軽くてコンパクトだから携帯性は一眼レフより優れている。なにしろ元は50円/個で購入したトイカメラであるからコストパーフォーマンスはかなり高いと言える。





5.フィルム面と歪み

 先にピンホールカメラでは原理的にディストーションが少ないと書いたが、このカメラの場合には図22−5のようにフィルム面がカーブしているので、これによって若干のディストーションを生じている。ちなみにこのようなフィルム面のカーブは、トイカメラでは良く見られるようである。



図22−5 トイカメラのフィルム面は円筒形にカーブしている

 撮影像のディストーションを見るには縦横の直線が多い被写体を撮れば良い。未改造のトイカメラで撮影した写真22−6を見ると、図22−6のような糸巻き型のディストーションがあることがわかる。これは凸レンズ一枚で像を投影し、撮影するトイカメラの宿命なのかもしれないが、多くのトイカメラでは図22−5のようにフィルム面をカーブさせることで画面中央の倍率を相対的に大きくし、縦方向のディストーションを若干なりとも減少させているようである。



写真22−6 トイカメラの写真には糸巻き型の歪みがある (ISO400)




図22−6 フィルム面を円筒形にカーブさせて糸巻き型の歪みを減少させる

 一方、改造したピンホールカメラで撮った写真22−7を見ると、建物の屋根や手前にある地面の横線には逆に中央が膨らむ樽型のディストーションが見られる。



写真22−7 改造ピンホールカメラの写真には中央が膨らむ歪みができる (ISO400)

 ピンホールカメラの場合、フィルム面が平面であれば原理的にディストーションはなく、直線が曲線に写ることはない(図22−7左)。ところがトイカメラをベースにしたピンホールカメラでは、フィルム面が図22−5のようにカーブしているため図22−7右のように樽型のディストーションを生ずるわけである。



図22−7 改造ピンホールカメラではフィルムのカーブが歪みを生じさせる

 このディストーションは画面の上下で顕著になるため、ここに水平な直線が入るような構図は出来るだけ避けた方がよい。一方、図22−7を見れば明らかな様に中央を横切る水平な線は曲がることがないので、ディストーションの目立たない写真にするには水平線や地平線などはなるべく真ん中辺りを横切るように写すようにすれば良いだろう。

 参考のためにコンパクトカメラ(OLYMPUS IZM220 28-56mm)で同じ被写体を撮影したものを写真22−8に掲げた。



写真22−8 コンパクトカメラの写真で歪曲収差を見る (OLYMPUS IZM220 , ISO400 , 28mm)

 一般的なカメラでは複数枚のレンズを組み合わせてディストーションを減じており、トイカメラに見られるような大きな歪みは見られない。この写真は最も広角(28mm)で撮影しているが、よく見ると上下の直線は微妙に波打っており、完全にはディストーションを除去できていないことがわかる。

 レンズカメラで歪みのない像を撮影することは以外に難しいようであるが、ピンホールカメラならフィルム面をフラットにするだけなので簡単である。残念ながら今回の改造カメラでは出来なかったが、フィルム面のフラットなトイカメラを手に入れる機会があればまた挑戦してみたい。




スケルトンボディのトイカメラ改造の手順試写画角の比較フィルム面と歪み

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