(一) 夜間中学の課題

  まず、夜間中学に関わる2つの新聞報道を示す。

@ 2009年12月5日 読売新聞
(愛知)夜間中学の現状 外国人生徒が急増  受け入れ体制拡充を
「少女は『母は最初、フィリピン人と結婚していたが、その後、日本人と再婚し、妹と一緒に2年前名古屋に呼び寄せられた。働きながら義務教育を受けられる 施設を探したが、夜間中学しかなかった』と話す。」
「開校当初は、高齢の日本人が生徒のほとんどだった。ところが、5年前から外国人入学者が急増。・・国際結婚に伴い外国から呼び寄せられる子供の急増が大 きく影響している。」
「日本の教育制度では16歳以上の子どもは中学校へ編入できない」
「同校でも、授業についていける生徒を受け入れるため、入学の際に国語や算数の試験を課している」
「2クラスを12人の教師で教えているため、限界がある。」
「名古屋国際センターの相談員は『中部地方の夜間中学は愛知県内しかないうえ、入学者も県内に限定しており、断念している外国人も多い。・・』と話してい る。」
A 2009年12月10日 毎日新聞
「脱北し子供に仕送りしたかった」 中国人 不法入国加担の日本人妻
「『帰還事業で渡った世代は高齢で仕事もないし、北で生まれた子供たちは日本語ができない』。パートは昨年退職させられ、今は生活保護だけが頼り。寮を出 たが、実家には頼れない。次女の子供と四女は日本に来たが、日本語は自分たちで学ぶしかない。民間支援団体から紹介された夜間中学に通ったが、今も家族で 話すときは朝鮮語が多い。」


 全国の公立夜間中学は上記@の愛知夜間中学を含めて9都府県に36校ある。生徒数は2009年9月現在2718人(全国夜間中学校研究会調査)となって いる。1999年(3424人)をピークに、2007年(2441人)まで減少を続けていたがここ2年間は増加傾向に転じている。それは上記@の報道にも 示されているような国際結婚に伴う新渡日者(ニューカマー)、特に10代後半の「連れ子」の急増である。また、報道Aの「脱北者」とその2世、3世や難民 も在籍している。もちろん不登校などによる若年、戦後の混乱による高齢の日本人もいる。旧教育基本法の成立以来60年以上にわたって、義務教育の完全実施 を目指してきた夜間中学も今や転機にさしかかっている。
 このような生徒が在籍する夜間中学の問題は、概略2つある。一つは行政の施策とも関係する制度上の問題である。在日外国人の増加、不登校対策の緊急性に もかかわらず、増設ストップ、入学制限や教育条件不備などの問題がたちはだかっている。二つ目には、教育内容の問題である。上記@・Aに見られるごとく夜 間中学の生徒はそれぞれ極めて複雑、困難な環境の中で、人格の形成に直接影響する事態を抱えている。例えば@のフィリピン人生徒も、親の離婚、再婚、出 国、来日等、思春期において精神的衝撃、文化的喪失感に陥っていると思われる。教科指導とともに、人間形成に直接関わる生活面の指導・援助が必要となって いる。
 以下の章では、夜間中学の入学条件を検討し制度上の問題を浮き彫りにする。そして教科指導では、日本語教育の歴史的課題を考える。さらに、具体的な事例 から生徒の人格の形成と現実のぶつかりがどのように進行するのか、教員はどのように関われるのかを提示する。
 これらは、いずれも生徒の学習権、教員の教授の自由と深く関わる問題であり、近年の新教育基本法の実働化、「日の丸・君が代」強制、教職員の階層化など 教育の統制支配下における問題である。理論的には、新自由主義と国家主義の結合による教育統制とも言われているが、私が提示できるのは、現場からの実態に 基づく報告であり、共に考える一つの材料を示したい。


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