映画 飛ぶ教室

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原作との違い  キャラクター


2003年1月ドイツ公開 原題 DAS FLIEGENDE KLASSENZIMMER

スタッフ
キャスト
  • 監督:トミー・ヴィガント
  • プロジューサー:ウッシー・ライヒ ペーター・ツェンク
  • 音楽:ニキ・ライザー
  • ヨナタン:ハウケ・ディーカンフ
  • マルチン:フィリップ・ペータース=アーノルズ
  • マッツ:フレデリック・ラウ
  • ウリー:ハンス・ブロイヒ・ヴトケ
  • ゼバスチアン:フランソワ・ゴシュケ
  • モナ:テレザ・ウィルマイヤー
  • ベク先生:ウルリヒ・ノエテン
  • 禁煙先生:セバスチャン・コッホ

ケストナーの「飛ぶ教室」が出版されたのは1933年、約70年前の作品です。当時とは、社会情勢や人々のくらし等が大きく変わったからでしょうか、映画は、現代の物語につくりかえてあります。現代版「飛ぶ教室」――舞台の学校は、男女共学だし、クリスマス劇はラップだし、評価が分かれるところかもしれません。

私は、「できたら原作に忠実な映画がみたかった」と思いました。この映画も、きらいではないのですけど。

しかし、ケストナーが「飛ぶ教室」で伝えたメッセージは、そこなわずにえがかれています。  05.1.16


原作との違い

設定上の違いが多いです。 05.1.16

違いの項目
原作
2003年映画
学校 ヨハン・ジギスムント・ギムナジウム(男子校) 聖トーマス学校(男女共学)。聖歌隊があり、公演をしている。
主人公 マルチン・ターラー ヨナタン・トロッツ (転校生として聖トーマス学校にやってくる。)
美少年テオドル 確かに美少年。後半、少しまるくなる。 後半、ヨーニーたちに理解を示し、劇の手助けもする。
拉致の被害者 ルディ・クロイツカム ゼバスチアン・クロイツカム(ルディとゼバスチアンがあわさって新キャラができている!)
先生 男の先生しか登場しない。 女のカトリン先生が登場する。しかも、ベク先生の恋人。
女の子 ウリーのいとこウルゼルと、美少年テオドルにシガレットケースをあげたマルヴィーネ・シュナイディヒが、名前だけ1回出る。 通学生モナ・エーガーラントがヒロイン。
4階の窓渡りをしたやつ ゲーブラー ヴァヴェルカ
実業生 通学生。敵のリーダー、エーガーラントは女の子!
禁煙列車があるのは 学校のすぐ近く。 学校からはなれている。
人質を返すよう、敵と交渉した人物 ゼバスチアン ヨナタン
一対一の決闘を提案した人物 禁煙先生 ヨナタン
焼かれた物 書き取り帳 楽譜
学校の規則 無断外出禁止。 寄宿生は、夜間外出禁止。公演前後と本番中は会場をはなれてはならない。
禁煙先生失踪のわけ おくさんと子どもの死。 壁をこえて西ドイツに渡った。
ベク先生少年時代の規則破りの罰 一ヶ月間の外出禁止、監禁。 ロウソクのかすをけずりとる仕事。
寮の儀式 寝ていると、お化けの格好をした上級生がやってきて、「かゆくなる粉」をベットにまかれる。 頭の上から水をぶっかけられ、紙ふぶきをあびせられる。
クロイツカム先生へのマルチンの説明責任 書き取り帳焼失事件の要点を話し、点数表を渡した。 楽譜弁償のため、少しお金を払った。
ウリー災難時のクロイツカム先生の授業 ドイツ語。ウリーが質問されたのは、グラモフォンのつづり。 地理。ウリーが質問されたのは、アンデス山脈がどの国にまたがっているか。
校長先生 グリューンケルン先生 クロイツカム先生
ウリーの飛びおり 体操ばしごから、かさを持って飛びおりた。 学校の建物の上から、風船2つを持って飛んだ。
劇「飛ぶ教室」の原作者 ヨーニー原作 ベク先生と禁煙先生が少年時代作った台本をマッツが見つけた。
劇「飛ぶ教室」の内容 地理の現地授業。 最終的には、ベク先生のため?のラップ。
マルチンの悲しみ クリスマスに帰省できないので、両親と会えない。 両親の離婚と、転校するかもしれないこと。
貨幣単位 マーク(マルク) ユーロ
星に願いをかける少年 マルチン ヨーニー。彼は、モナと美少年テオドルの幸せも祈っている。

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キャラクター

原作と比較してみました。MORIの感想です; のページにキャラクター絵をのせています。

人物
コメント
 マルティン(マルチン・ターラー)

映画では、ヨナタン・トロッツが主人公だったので、映画のマルチンは、原作ほど目立っていませんでした。しかし、映画でもやっぱりリーダーでした。雪合戦では指揮をとるし、あごでしゃくるし。

原作では、「だれ知らぬもののない、名物のかんしゃくもち」です。映画のマルチンは、わりとおだやかな子でした。

原作のマルチンは、帰省費用がないことをベク先生に言い当てられ、さめざめと泣きます。(私は、このシーンでもらい泣きしてしまうのですけど…)映画でも、さめざめと泣いてほしかったな。。

映画のマルチンが抱えていた悲しみは、「父に好きな人ができて(…って、おい;)、両親が離婚し、自分は学校をやめなければならないかも」というものでした。家庭に関する悲しみであることは、かろうじて原作と同じです。その内容は、全然ちがいますが。

合唱団ではソプラノ担当。

あだ名は「歌うロビンフッド」。原作のあだ名は、「3マーク君」。どちらのあだ名もマチアスがつけたのでしょう、たぶん。(マチアスしか言っていない;) 05.2.14

 ヨナタン・トロッツ

原作のヨーニーは、静かで落ち着いた子のようです。声をあらげたり、激昂したりすることはないです。時々、自分の世界に入りこんでしまいます。

映画のヨナタンは、進んで交渉役を引き受けたり、舞台あいさつをしたり、積極的に行動しています。恋もするし…

彼は、なかなかのフェミニストで、気配り屋です。モナとのふたりきりの誕生パーティでは、モナが一番欲しがっていた、ダンスの衣装をプレゼントしています。(ここ重要。相手が一番よろこぶプレゼントを選ぶことは、けっこう難しい)ピアノも弾いてあげます。それから、帰りは、タクシーをつかまえて、モナを安全にうちまでとどけるよう、運転手に言います。

ベク先生から「飛ぶ教室」の劇練習を禁止された時、かっとなって先生に暴言をはき、物にあたりました。原作では、マルチンがかんしゃく持ちだったのに、映画では、ヨナタンがかんしゃくを起こしています。

6回も転校しています。問題を起こして、転校せざるをえなくなったようです。――しかし、「問題を起こした子」という設定は、必要だったのかな…、と思います。ヨーニー、かわいそうです。季節はずれの転校の理由付けのため、ぼやを起こした後、転校をかくごする伏線、とも考えられるのですけど… 05.2.14

 マッツ(マチアス・ゼルプマン)

原作のマチアスは、おおらかで、情にあつく、わりと涙もろい子です。ウリーが飛びおりた時は、心から心配していました。映画のマチアスも原作に近いです。大食らいで、けんかに強く、勉強が苦手、カンがにぶいところも同じです。

原作のマチアスは、「大きなわんぱく者」と書いてありますし、トリヤーの絵を見ても、大きくてがっちりした子のようです。映画のマチアスは、ヴァヴェルカより小がらで、人なつこい顔をしていました。 05.2.14

 ウリー・フォン・ジンメルン

映画のウリーは、金髪で小さくて、こわがり、貴族のぼっちゃん、という原作のイメージぴったりの子です。

映画では、ウリーの心情もよく描かれているな、と思いました。

クロイツカム救出までの彼は、後ろ向き発言が目立ちます。通学生とのなぐり合いに発展しかねない状況で、「学校にもどらないと大変なことになる」と言います。マチアスとヴァヴェルカとの決闘が決まっても、「彼らが勝ったら?」と、勢いをそぐ発言をします。

くずかこに入れられ、つるされてからは、思いつめています。劇で女の子役になることを断固拒否します。みんなの前で、「金曜日に校庭に来て」と呼びかける時も、ランチがのったトレーをゆかに投げつけます。心配したマチアスたちに、何も言わずに出て行きます。

そんな彼が、「飛びおり」をした後は、自信を取り戻しています。マチアスが、ウリーを気づかっておろおろしているのに対し、ウリーは泰然としています。

夜、マチアスのいびきがうるさくてねむれないウリーが、マチアスの口におかしをつっこむシーンがかわいかったです。 05.2.20

 ゼバスチアン・クロイツカム

原作では、ゼバスチアン・フランクとルディ・クロイツカムという二人の人物だったのが、映画では、一人になっています。

原作のゼバスチアンの、博学、理数系の才能、理屈っぽい話し方を受けついでいます。性格は、原作のルディ・クロイツカムに近いです。原作ゼバスチアンほどいやみで辛辣(しんらつ)な言い方はしません。

学校で、校長である父とは、「一生徒と一教師」であり、なれなれしくしないと決めてあるようです。――が、ふたりは、他人のような話し方をしながら、しっかり親子の会話をしています。。ゼバスチアンは、食事の時、校長から「スプーンをなめるな」と注意されるし、ろうかですれ違った時、おこづかいをねだるし。  05.2.20

 モナ・エーガーラント

原作のエーガーラントは、実業生のリーダーでした。原作では、もちろん男です。マチアスVSヴァヴェルカの対決でヴァヴェルカが負けたあとは、マルチンたちとの約束を守り、捕虜を引き渡そうとします。けれど、仲間に拒まれ、見捨てられてしまいます。ゼバスチアンにさえ、同情されています。

モナは、通学生のリーダー(か、アイドル?)のようです。「エーガーラントは敵のリーダー」という原作の設定は引き継いでいます。原作エーガーラントと同じで、雪合戦の後は、「負けたら、人質を解放する」という約束を守ろうとするけど、仲間から支持してもらえません。

映画のヴァヴェルカは、モナのことが好きみたいです。だから、ますますマルチンやヨーニーたちと対立するのか…

モナは、原作マルチンの「経済的に苦しい家庭」という設定も背負っています。きょうだいが4人いて、彼女は母親にかまってもらっていません。自分が子守をしています。

冒頭で、ダンスのレッスンには、遅刻して現れます。遅刻とダンス衣装忘れを先生からとがめられます。友達には「発表会に出たくない」「女の子っぽい踊り、好きになれない」なんて言っています。けれども、本当は、みんなといっしょに踊りたかったのです。衣装が買えなくて、レッスンにも、ひょっとしたら発表会にも参加できないから、そんなことを言ったのでしょう。ダンス衣装は、万引きして調達しようとし、失敗に終わりました。

のちに、衣装は、フェミニスト・ヨナタンが、誕生日にプレゼントしてくれました。12月12日に12歳になった、12並びの子です。

気は強いけど、顔はかわいいし、乙女心を持った(?)少女です。 05.8.23

 ヨハン・ベク先生

原作のベク先生のイメージに近い人です(MORIにとっては)。原作では、恋人のことは、全く語られていません。しかし、映画では、カトリン先生が恋人です。

ベク先生の少年時代の規則に関するエピソードは、少し変更されてあるものの映画にも取り入れられています。しかし、マルチンが「旅費がない」と言って泣くシーンがなかったので、ベク先生は援助することもなく、マルチンからあつく感謝されることもなかったです。

高校時代、親友のボブと、「禁煙クラブ」というロックバンドを組んでいました。

ボブは西ドイツ行きを決意しました。当時、国境を越えた者は、二度と戻ってくることはなかったといいます。

その後、スパイの教師から、ロック好きであることと、「逃亡の手助けをした」と警察に密告され、学校を去らざるを得なくなりました。その後、整備士を経て、聖トーマス校の教師になりました。  05.8.23

 ローベルト(ボブまたは「禁煙」)

原作の禁煙先生は、世捨て人で、読書と園芸が趣味で、酒場でピアノを弾き、口を糊していました。映画のボブは、世捨て人ではなく、ワイルドな感じです。

ヨナタンが拾った犬をふところに入れているシーンがありますが、とてもラブリーです。

高校時代、親友のヨハン少年らと、ロック・バンドを組んでいました。バンド名は、ボブのニックネームと同じ、「禁煙クラブ」です。原作では、「禁煙先生」というニックネームをつけたのは、マルチンたちです。映画では、むかしから「禁煙」と呼ばれていたことになっています。

ボブの父は、離婚後、壁を越えて西へ逃げました。彼も、クリスマス前に、父の後を追いました。クリスマスには、ヨハン少年らとともに、東西分断ドイツを風刺した「飛ぶ教室」の劇をする予定でした。

西で高校卒業後、ロンドンの大学に行き、医者になりました。それから、国境なき医師団に参加し、世界各地を転々としました。ドイツ統一後も、ベク先生に連絡をとることはありませんでした。

ヨナタンやマルチンらが、ベク先生とボブを引き合わせました。ふたりの再会に、子どもたちが一役かってるところは、原作と同じです。原作では、ふたりを合わせたのはヨナタンとマルチンです。映画では、マチアスとゼバスチアンも加わっています。

物語ラストには、聖トーマス校で校医をすることに決まりました。 05.8.23

クロイツカム先生

ゼバスチアン・クロイツカムの父親で、聖トーマス校の校長。地理とドイツ語を担当しています。「そっか〜、ドイツでは、校長も授業を担当するのか〜」(原作グリューンケルン校長も授業をしていました。)とか、「50代にしか見えないけど、12〜3歳くらいの子どもがいるなんて、40代でできた子?」とか、妙なところに感心してしまいます。

まじめな顔をして冗談を言うところは、原作通りです。映画のクロイツカム先生の方がコミカルな人でした。

ゼバスチアンとの親子の会話で、他の生徒たちを笑わせます。くだけた人のように見えますが、中身は融通がきかない、まじめな人です。ベク先生とは、けっこう対立しているかも;; 

原作のグリューンケルン校長先生の「校長」という肩書きと、クロイツカム先生があわさってできたキャラクターです。親子ともに、「二人分の設定キャラ」です。 05.8.26

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