エーミールと探偵たち

エーリヒ・ケストナー作「エーミールと探偵たち」の感想・考察のページです。

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「エーミールと探偵たち」の本・DVD

「エーミールと探偵たち」の感想・考察のテキストとして、ケストナー少年文学全集1、高橋健二訳を用いました。以下の文中のページ数は、同書のものです。


キャラクターについて


キャラクターについて

エーミール・ティッシュバイン

エーミールは、ケストナーの少年時代そのままのようなキャラクターです。母親が美容師をしていたこと、父のかげがうすかったこと、貧しかったこと等、エーミールの家庭環境はケストナー自身のものです。ちがう点は、ケストナーの父は生きていましたが、エーミールの父は亡くなったという設定になっていることです。そのわけは、わかるような気がします。ケストナーの少年時代、父の存在はあまり重くなかったのでしょう。ケストナーは、母との結びつきが強く、父には、成人するまで冷たい態度をとっていたそうです。しかしながら、ケストナーは、最初に書いた子どもの本の主人公に、父と同じエーミールという名をつけたのです。(注1)

かれの姓(せい)「ティッシュバイン」は「テーブルの足」という意味です。ケストナーは、前書きで、ゆかにねころがってテーブルの足のふくらはぎを見ていた時、エーミールのことを思いついたと書いています。エーミールは、おとなたちから「シュツールバインくん(いすの足)」「フィッシュバイン(魚の足)」「ユーバーバインくん」とよばれ、そのたびに「ティッシュバインです」とてい正しています。

エーミールは、母親思いで、よく母の手伝いをしています。母が「9時まで遊んでいい」と言っても、7時には家に帰り、母といっしょに夕ごはんを食べます。母が望んでいることをさっし、母を喜ばす行動をしたいと願っています。けれども、彼は、無理をしているわけではないようです。教授(きょうじゅ)くんが「じゃ、きみたちはとても仲よしなんだね?」ときくと、「とっても。」と答えています。(p137)

また、エーミールは、模範生(もはんせい)で、学校で1番の成績です。しかし、けっこうわくぱくな子です。よそいきの服を着ればよごします。カール大公のどうぞうに落書きをしたので、警察をおそれています。なぐりあいのけんかだってします。グスタフに、「ぼくは学校でほとんど全部の重量級の選手権を持っているんだ。」ときっぱりいいます。(p132)

プライドが高い子でもあります。おとなからおごってもらうことをきらいます。新聞記者のケストナーが「どこかで、あわたてクリームつきのお菓子を食べよう」とさそうと、「ぼくが、それにあなたを招待(しょうたい)してもいいですか」と返します。それを聞いていたおとなたちは、「気ぐらいの高い子だなあ!」と感心しています。(p176)また、「かりたお金はきちんと返す」は、エーミールのモットーのようです。

エーミールは、慎重(しんちょう)です。大金を持って、列車に乗るとき、「お金を持っていることを他の人に言ってはならない」ことはわきまえています。さらに、お金を落とさないように、何度もポケットをさわって確かめたり、お金をピンで洋服にとめたりします。何度も上着をさわるから、グルントアイスに感づかれるんだよ!というつっこみは置いといて…05.5.4

(注1)「ケストナー/ナチスに抵抗し続けた作家」/クラウス・コードン著/那須田淳、木本栄訳/偕成社

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グスタフ

グスタフは、ウィルマースドルフの有名人です。グスタフが警笛を持ち歩いていることは、町内では、怪物のように有名です。(p100)かれは、警笛を鳴らして、友達をよび集めます。10分間で2ダースの少年を集めることができます。(p104)子どもたちの間で、グスタフの人望があついことがわかります。実際、かれは、みんなのリーダーなのです。

グスタフは、めんどうみのいい少年なのでしょう。見ず知らずの子だったエーミールが困っているとき、手助けをかって出ました。しかも、グルントアイスの尾行が、よく日にまで持ちこす長丁場(ながちょうば)になっても、最後までとことんつきあっています。また、人なつこい性格をしています。初めて会うエーミールとすぐにうちとけたり、ホテルのボーイとの交渉(こうしょう)に成功し、服までかりたりと、人と関わることが好きな子のようです。だから、リーダーになったのかもしれません。

体育は得意で(p34)、腕っぷしに自信を持っています。エーミールと言い合ったとき、決闘をしてもいい、というような発言をします。「だが、ボクシングはやっぱりやってもいい。念のためにいっとくが、ぼくはラントハウス団のチャンピオンだぞ!気をつけろよ!」と。(p132)

一方、グスタフは、頭をつかって作戦を考えることは苦手のようです。だから、なかまうちでは、教授君が参謀(さんぼう)の役をはたしています。  05.5.4

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教授くん

本名は、テーオドル・ハーバーラントです。(「エーミールと三人のふたご」)

教授くんは、ロイドめがねをかけています。そして、なかまに向かって、いつも点数表をくばるよう「優だ!」とか「良だ!」と言います。だから「教授くん」とよばれています。しかし、教授というより、軍師か参謀といった方がぴったりです。グルントアイスを追跡(ついせき)するための細かい作戦は、彼がほとんど立てています。必要な場合は、友達に命令をくだします。ちびの火曜日くんには、家に帰って電話番をするように、と言いつけました。火曜日くんは、みんなといっしょに探偵をしたがっていたのに、です。もっとも、教授くんの命令をいやがる子もいましたが。

教授くんの家は、ゆうふくなのでしょう。お金のことが家庭の話題にのぼったことはないそうです。エーミールに言わせると、「うちでお金の話なんかあまりしないのは、お金なんかがたくさんあるからだ、と思うな。」ということらしいです。(p135)教授くんの両親は、夜、しばいを観に行ったり、招待されたりしているそうです。

教授くんの父は、ものわかりがよく、教授くんが自由に行動することをゆるしています。しかし、「おとうさんがそばにいるばあいも、そのとおり行動するかどうかを、いつも頭にうかべてみろ」と言うそうです。教授くんの父は、教授くんに、判断力と決断力を身につけさせ、ものごとの善悪をきっちり教えている人のようです。それは、教授くんの言動からうかがうことができます。 05.5.4

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ポニー・ヒュートヘン

ポニー・ヒュートヘンは、エーミールのいとこの女の子です。ポニー・ヒュートヘンいう名前は、本当の名前ではないらしいです。(p30)姓はハイムボルトのはずです。(「エーミールと三人のふたご」では、ポニー・ハイムボルトとなっていました。)

ポニーは、ほとんど自転車に乗って登場します。自転車を愛する女です。自転車競争の女流選手をまねて、サドルを低くして乗っています。(p205)

おちゃめでおてんばな女の子です。エーミールたちの追跡を知り、自分も力になりたいと思っています。けれども、その場のなりゆきにまかせて、夜おそくまで出歩いたり、外泊したりすることはないです。夜、ホテルの中庭でグルントアイスを見張っているエーミールたちと合流しても、「あしたの朝、またくるわ」と言って、いったんうちへ帰ります。(p129)

見張りをしているエーミールたちにコーヒーとバタパンを持ってきたり、パーティではみんなにチョコレートをついでまわったりと、女の子らしい気づかいも見せます。コーヒーとバタパンを配るとき、「家の中に女がいると、やっぱりちがうわ」と言います。――ゲロルトが「中庭に、だろう」とてい正しています(^^) 

彼女がいなかったら、「エーミールと探偵たち」も男ばかりの物語になっていたことでしょう。(エーミール母、おばさん、おばあさん、何人かのわき役のおばさんは登場します。それにしても、男の方が多いです。)「飛ぶ教室」は男ばかりです;; 05.5.4

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おばあさん

エーミールとポニー・ヒュートヘンのおばあさんです。一生のあいだ苦労のし続けでしたが、陽気なおばあさんです。(p38)どうやら、リューマチの持病があるらしいです。(p185)こうふんすると、なんでも二度言うくせがあります。(p95)「エーミールと探偵たち」のキャラクターの中で、管理人MORIが最も好きな人です。

おばあさんとポニーが、フリードリヒ駅で、エーミールを待つ場面があります。エーミールは、約束の時間になっても現れません。(グルントアイス追跡のまっさいちゅうでしたから)ポニーはいらいらして、駅員に「まあ、あんたはおかしな男の子ね」(p94)と言ったり、「それでも、エーミールが来なかったら、犬ネコなみの手紙を書いてやるわ」(p95)と悪態をついたりします。おばあさんは、そのたびにたしなめています。

エーミールは、約束の日より一日おくれで、おばあさんの家に到着しました。おばあさんは、エーミールのえりがみをつかみ、左のほほにキスし、右のほほをたたきました。エーミールの髪の毛をつかんで部屋の中にひっぱりこみ、「あきれたならずもの」と言いました。(p183)さすがは、エーミールとポニーの祖母です。ふたりのやんちゃなところと人情味(にんじょうみ)のあついところは、きっとおばあさんから受けついだのでしょう。

このおばあさんには名せりふが二つあります。一つ目は、ちびの火曜日くんをたたえるせりふです。火曜日くんは、エーミールとグスタフたちがグルントアイスを追跡し、つかまえている間、電話番をしていました。

おばあさんは、少年たちのパーティで、こう言いました。「火曜日くんは二日間、電話にしがみついていました。じぶんの義務をはたしました。それはたいしたことです。わかりますか。たいしたことです!このかたを手本になさい!そこで、みんな立ちあがって、ちびの火曜日くん、ばんざい!とさけびましょう。」(p201)

はなばなしい活やくをした子のかげで、自分のすべきことをなしとげた火曜日くんを、おばあさんは、きちんとみとめています。火曜日くんは、探偵をしたかったのにがまんしました。うらかたでじみだけど、みんなの活やくをささえる大事な仕事をしました。その火曜日くんに光を当てているのです。子どもたちのことを、よくわかってくれるおばあさんです。

二つ目は、物語ラストの場面でのせりふです。この事件を通して得た教訓は何か、エーミールとハイムボルト家の人たちで話し合っています。エーミールは、「人間を信用しちゃいけない」と言います。おいおいおい、グスタフや教授くんたちと信頼し合えたから、グルントアイスをつかまえることができたんだろっ!とつっこみたくなります。エーミール母は、「子どもはけっしてひとりで旅に出してはいけない」と言いました。ちがうだろっ!と、またまたつっこんでしまいます。おばあさんは、「お金はいつもかならず郵便かわせで送るように!」と言いました。ナイスです!おばあさん! 05.5.7

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グルントアイス

グルントアイスは、山高帽子をかぶり、一見すると紳士のようです。善人のようだけど、実はとんでもない大悪党でした。

グルントアイスは、ベルリン行きの列車で、エーミールのむかい側にすわっていました。エーミールにチョコレートをすすめ、「ベルリンでは、人間が箱づめされて発射されたり、脳みそを質に入れたりする」というたわけた話をしました。(p61)この話あたりから、グルントアイスのうさんくささが感じられます。紳士のかっこうをしてとりつくろっても、どこか違和感がありました。

「うそつきはどろぼうの始まり」といいますが、ほとんどの悪人は、大うそつきです。グルントアイスもうそつきでした。かれは、いくつかの偽名(ぎめい)を使っていました。エーミールにはグルントアイスと名乗り、銀行ではミュラーといい、交番ではヘルバート・キースリングといいました。エーミールが、自分の姓をまちがえられるたびに、正しく言い直していたことと対照的です。

グルントアイスが、エーミールからお金をぬすんだことを考えると、弱い立場の者をも、食い物にする人物なのかもしれません。一か月前には、銀行破り(p188)もしていました。余罪も多そうです。 05.5.15

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つづきは、また後日…