ウルフ・スタルク1:低学年から

ウルフ・スタルクさんは、スウェーデンの児童文学作家です。ユーモアたっぷりで、あたたかな物語を書かれています。ウルフ・スタルクさんの小学校高学年〜中学生向きの本については、別ページ「ウルフ・スタルク2:高学年から」に書いています。

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ぼくたちロンリーハート・クラブ

2001年 小峰書店 中学年から

世の中には、話す相手もいない、手紙もこない孤独(こどく)な人がいる。トールは、孤独な人たちを救うため、なかまといっしょにロンリーハート・クラブで活動をはじめる。

この本には、孤独な人たちが登場するし、トールは孤独について考えている。

孤独だからといって、必ずしも不幸というわけではない。ひとりで考えたりゆめをえがいたりすることは意味がある。だけど、トールのおばあちゃんの歌の「いっしょにいればふたりは幸せ」ということばのように、好きな人といっしょにいると、幸せなものだ。

この物語は、明るくて楽しい。孤独な老人スベンソンさんはひょうきんだし、ビューストリュームさんはへびをさわるのも平気な女の人だ。トールたちロンリーハート・クラブのメンバーには、実行力がある。スベンソンさん、ビューストリュームさんを動物園にさそうためのお金も、自分たちで集めている。私はアーネが好きだ。クラブの会議の部屋をかしたり、毎回おやつを出したりする、世話好きな男の子だ。アーネは、動物園のランチを、参加者全員分作ってきた。

物語のラストには、スベンソンさんとビューストリュームさんが孤独でなくなり、クラブも、ひとまず目ひょうをたっせいする。  04.11.3

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おにいちゃんは世界一

2002年 徳間書店 低学年から

ちいさな男の子と、12さいのおにいちゃんの 絵本です。

「ぼく」は、おにいちゃんが大すきで、おにいちゃんに あこがれています。おにいちゃんと いっしょに あそびたいのに、おにいちゃんは、なかなか かまってくれません。

でも、おにいちゃは、やさしいのです。ゴミすてばから、トースターをひろってきて 「ぼく」にくれます。おにいちゃんの友だちといっしょに インディアンごっこも してくれます。そして、「ぼく」は、おにいちゃんからつかまり、木にしばられます。けれども、おにいちゃんは、バイクよりはやく たすけにきてくれます。

「ぼく」が おにいちゃんをしたう気もち、おにいちゃんが 「ぼく」のことを かわいがってはいるけれど、ときどき 足手まといに思う気もちが書かれています。  04.12.26

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パーシーの魔法の運動ぐつ

1997年 小峰書店 中学年から

私は、ウルフ・スタルクさんの本は好きですが、この「パーシーの魔法の運動ぐつ」はとくに好きです。ウルフ・スタルクさんの子どものころの話をもとに、楽しいことも、悲しいことも、ユーモアたっぷりに書かれています。

ウルフは、近所でもひょうばんのいい子です。すなおすぎて、とぼけたところがあります。ぽっちゃりめで、運動が苦手です。平きん台ができないことを、友だちから、からかわれています。両親からは愛され、とくに、ママはウルフのことをしんらいしきっています。にいちゃんは、時どき、ウルフにいじわるをします。

パーシーは、ウルフとは正反対の子です。ウルフのとなりの席の子で、授業中、ウルフからおかしをもらって食べます。けんかが強く、らんぼうなことばをつかい、あぶない遊びをします。平きん台は大とくいです。パーシーは、クラスの子たちから、なんとなくさけられています。パーシーが、とっぴょうしもないことをして、みんなにめいわくをかけるからかもしれません。先生からも、みとめられていないようです。パーシーは、よれよれのきたない運動ぐつをはいています。先生は、その運動ぐつを捨てなさい、と言います。

ウルフは、パーシーにあこがれています。パーシーのように強くなりたいと思っています。

パーシーは、自分のぼろぼろの運動ぐつを「魔法の運動ぐつ」と言って、ウルフにしんじこませています。そして、「魔法の運動ぐつ」とこうかんに、ウルフの高価なおもちゃをもらおうとします。パーシーは、ウルフのことをだましているとしか思えません。しかし、ウルフは、パーシーのことばを信じています。「パーシーのように、平きん台がうまくて、けんかが強くて、しあわせになれる魔法の運動ぐつ」がほしいと思っています。

ウルフとパーシーがなかよくなるにつれて、パーシーのことがわかってきます。ししゅうが上手で、ししゅうのついたまくらを、とうさんにプレゼントしようと思っていること。パーシーの両親は、パーシーをあまりかまっていないらしいこと。古い運動ぐつをはいているのも、新しいくつを買ってもらえないからかもしれません。

ウルフは、たくさんのおもちゃとこうかんに、魔法の運動ぐつを手に入れました。それから、人がかわったように、自信にみちて、せっきょくてきになりました。平きん台からも落ちません。友だちから、からかわれることもありません。

けれども、ママじまんのいい子だったのが、とんでもないいたずらっ子になります。人の家のゆうびん受けをばくはつさせたり、車にりんごを投げつけたりします。「魔法の運動ぐつ」の話は、ウルフにとってはほんとうのことだったのでしょう。

ウルフの新しいくつをもらったパーシーは、元気がありません。ウルフのいたずらやあぶない遊びを止めるようとします。今までとはぎゃくです。

パーシーは、とうさんが大好きです。とうさんから愛されたいと思っていますが、とうさんはパーシーの気持ちをわかってくれないようです。一生けんめいに作った、たんじょうプレゼントでさえ、よろこんでくれません。パーシーの悲しさが伝わってきます。

さいごに、ウルフは、パーシーを元気づけるために、たいへんないたずらをします。そのいたずらが終わった時、パーシーは、ウルフの友じょうに気づきます。ウルフは、もう「魔法の運動ぐつ」がいらなくなります。「魔法の運動ぐつ」を捨てたウルフは、パーシーにあこがれていたころのウルフとはちがいます。いい子でもない、いたずらをして人の気をひく必要もない、自分をみつけたのかもしれません。 05.1.10

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パーシーとアラビアの王子さま

1997年 小峰書店 中学年から

「パーシーと魔法の運動ぐつ」の続へんです。ウルフが、魔法の運動ぐつを捨ててから一年がたっています。

パーシーは、すっかりクラスになじみました。パーシーは、みんなに受け入れられています。ウルフにとって、だいじな友だちです。「パーシーと魔法の運動ぐつ」のころは、パーシーと遊びたがらなかったウッフェやヨーランも、遊び友だちになっています。先生はパーシーにやさしいです。

パーシー自身もちょっぴり変わりました。あばれんぼうだったのが、落ち着いています。

ウルフやパーシーたちに、大きな問題がふたつ起こります。ひとつは、体が大きくて二つ年上のラッセからいじめられる、ということです。おかしをおごらされたり、なぐられたりして、ウルフたちは困っていました。しかし、ウルフは、さいみんじゅつでラッセをやっつける、というすてきな方法で、一度はピンチをきりぬけます。

二つ目の問題は、もっとむずかしいものでした。パーシーのとうさんの仕事のつごうで、パーシーは、遠い町へひっこさなければならなくなったのです。

何度もひっこしてきたパーシーです。今までの学校では、先生からはおこられてばかり、友だちをつくろうとはしなかったから、別れも平気だったのです。

パーシーとウルフは兄弟のようになかがよくなっていました。先生も、パーシーの気持ちをよくわかってくれています。パーシーは、みんなと別れることがつらくてたまりません。学校のいごこちが悪くなるように、わざときらわれるようないたずらをしたり、きらいな給食をたくさん食べたりします。二週間も前から、別れのあいさつを言います。別れのつらさにそなえて、はやくから心のじゅんびをしているのでしょう。パーシーのしていることがおかしくもあり、悲しくもあります。

わかれがつらいのは、ウルフにとっても同じでした。もう、さいみんじゅつの力もなくしています。パーシーと別れずにすむ方法がみつかりません。パーシーのとうさんと話し合いにも行きますが、どうにもできませんでした。

ウルフが、さいみんじゅつがつかえなくなったことは、いじわるなラッセも知ります。

ラッセからまたいじめられること、パーシーがひっこすこと、ウルフは二つのピンチにおちいります。

それが、二つともすっきりかいけつするのは、アラビアの王子さまが登場してからでした。アラビアの王子さまとの出会いが、ウルフとパーシーをすくったのです。けれども、それまでに、ウルフがいっしょうけんめい「なんとかしよう」と行動したから、じたいは、よい方向に変わっていったのでしょう。 05.1.11

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キング最高の日 

遠藤美紀訳 偕成社 2000年 中学年から

HUNDEN SOM LOG 1995

「キング最高の日」は、あたたかな物語ですが、死について、しんみりと考えさせられます。

キングはヨッヨの犬です。アイルランドの狼犬とシェパードのざっ種で、強くて大きい犬です。ヨッヨとなかまたちの5人は、キングをつれて、森の中の小屋に行きます。ごみ捨て場から拾った、すわりごこちのいいソファをかついで。

小屋は、子どもたちのかくれがのようです。自分たちでペンキぬりをしたり、部屋の中をかざったりしたのです。

ヨッヨ以外の4人は、かくれがに来て、うきうきしています。しかし、ヨッヨはしずみこんでいます。キングの命はあさってまでだからです。

キングは、なおらない病気にかかっていました。ヨッヨのオヤジは、キングを苦しませないために、安楽死(あんらくし)させることを決めたのです。それがあさってでした。

ヨッヨたちは、キングが死ぬ前に、キングが一番よろこぶことをしてあげようと考えました。

その夜、ヨッヨは、家に帰らず、キングといっしょに小屋にとまります。キングを死なせることを決めたオヤジがいる家に、帰りたくなかったのかもしれません。

次の日、ヨッヨとなかまたちは、たくさんの「キングがのぞむこと」をします。いっしょに遊園地で遊び、キングのガールフレンドの家に行きます。キングといっしょに子どもたちも楽しんでいます。

その日の夜も、ヨッヨはキングと小屋にとまります。キングは強い狼犬だと信じていたヨッヨでした。しかし、キングは今や、年をとって、苦しそうにうなっているのです。ヨッヨは、キングを見ること、キングの声をきくことがつらくてたまりません。

しかし、ヨッヨたちがキングのためにしたことは、キングの心にも通じていたのでしょう。だから……(以下、ふせています。反転してください。)キングはみちたりた顔で死んでいたのでしょう。ここまで。  05.1.23

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おにいちゃんといっしょ

訳:菱木晃子 絵:はたこうしろう 小峰書店 2003年 中学年から

Ensam med min bror 2000

多くの子どもにとって、大きくなることはうれしいいことなのでしょう。早く大きくなりたいと思うものかも。この本「おにいちゃんといっしょ」の主人公の男の子「ぼく」もそうです。

パパとママは二週間の外国旅行にでかけました。「ぼく」とおにいちゃんは、アーネおじさんの家にあずけられました。

「ぼく」は7才。火薬ピストル、インディアンの服、カウボーイ・ハットに、二年も前からあこがれていました。るすばんのごほうびに買ってもらおうと思います。

さいしょのうち、「ぼく」はパパとママをこいしがり、さびしがっていました。おにいちゃんをたよりにし、おにいちゃんについてまわりました。

おにいちゃんは、小さい弟より、なかまとのつき合いをだいじにしています。「ぼく」のことをちょっぴりじゃまに思っています。

「ぼく」は、アーネおじさんから「はらのきたえ方」を教わったり、いとこの女の子と遊んだりしているうちに、たくましくなっていきます。おにいちゃんとはなれても平気になります。「さびしくないように」と、おにいちゃんがつかまえてくれたホタルもにがします。

弟がはなれていくことを、おにいちゃんはさびしく思ったのかもしれません。なにかと「ぼく」のせわをやこうとします。「ぼく」のさんぱつまでしてあげました。これは大しっぱいで、「ぼく」は、へんなかみかたにされてしまいました。

そうして、二週間がたち、パパとママが帰ってきました。「ぼく」は火薬ピストル、インディアンの服、カウボーイ・ハットを手に入れました。ほしくてたまらなかった物でした。

しかし、「ぼく」はインディアンの服が小さいことに気づきます。服にあこがれていた二年の間に、「ぼく」は大きくなっていたのでした。

でも、「ぼく」は、そのことをなげきはしませんでした。火薬ピストルも、インディアンの服、カウボーイ・ハットもいらなくなったのかもしれません。大きくなっていくことの方がうれしかったのです。 05.12.25

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聖ヨーランの伝説

訳:菱木晃子 絵:アンナ・ヘグルンド あすなろ書房 2005年

Göran Och Draken 2002

本書は、三世紀末の聖ヨーランの竜退治伝説を題材にして書かれています。

竜退治のモチーフは、児童文学のみならず、ゲームやアニメ、マンガにも取り入れられています。竜退治のヒーローは、竜が出現する地までの旅の途中、貴重な助言や仲間、不思議な力を秘めたアイテムを得て、竜と戦い、勝利をおさめます。竜を倒したごほうび(?)として、王座についたり、お姫様と結婚したり、宝物を手に入れたりします。

ところが、「聖ヨーランの伝説」では、このような「ありがち竜退治物語」がくつがえされています。

主人公ヨーランは、「竜退治をしよう」という強い意志を持って旅に出たわけではありませんでした。また、旅の途中で、竜退治アイテムを手に入れることもありませんでした。ぎゃくに、竜退治の役に立ちそうな物を次々に失っていきます。ヨーランが失った、足が速い馬、剣、よろい、お金などは「力」を象徴しています。一方、ヨーランが得たものからは、ヨーランの優しさ、温かさが感じられます。ヨーランは、力で竜を退治したのではなく、人びとを思う気持ちから竜を倒したのでした。 06.10.16

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