新美南吉

新美南吉さんは、1913年に生まれ、1943年に、29歳7か月で亡くなりました。幼少のころは、家庭環境にめぐまれませんでしたが、中学校に進学し、小学校や高等女学校の教員となりました。

中学生時代から創作をはじめ、「ごんぎつね」「てぶくろを買いに」「赤いろうそく」等、短・中編の児童文学を数多く書いています。

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おじいさんのランプ

1965年 岩波書店 絵:赤羽末吉 鈴木義治 高学年から

本書「おじいさんのランプ」には、12編がおさめられています。新見南吉さんの作品のなかでも名作ぞろいです。小学校中・高学年以上の子どもを対象に編まれています。

収録作品名は以下の通りです。

「花のき村と盗人たち」「おじいさんのランプ」「牛をつないだつばきの木」「百姓の足、坊さんの足」「和太郎さんと牛」「ごんぎつね」「てぶくろを買いに」「きつね」「うた時計」「いぼ」「屁」「鳥山鳥右エ門」

「ごんぎつね」「てぶくろを買いに」は、小学校国語の教科書に載っていましたから、多くの人が知っていることでしょう。「おじいさんのランプ」も国語の教材でした。

てぶくろを買いに

幼い子ぎつねが、たったひとりで、人間の町に手ぶくろを買いに行く物語です。

母ぎつねは、子ぎつねがしもやけにならないようにと、手ぶくろを買ってやることにしました。母としての愛情は深いのですが、人間に対する恐怖心も強いのです。母ぎつねは、子ぎつねとともに町に行くことができませんでした。

母ぎつねは、子ぎつねの片手だけ人間の手に変え、「人間に、きつねだと知られないように」と、言い聞かせて、送り出したのです。

人間を知らない子ぎつねは、恐怖心も、先入観も持たずに、無垢(むく)な気持ちで、人間を見、人間と会いました。人間のなかには、母ぎつねと同じように子どもを愛する母親もいましたし、たとえ相手がきつねであっても、ちゃんと手袋を売ってくれる店の主人もいました。

子ぎつねの体験は、「人間はこわいもの」と思いこんでいた母ぎつねの心をゆさぶります。

ごんぎつね

いたずらもののごんは、兵十がしかけたわなにかかったうなぎを持ち去りました。あとで、兵十の母に食べさせるうなぎだったこと、母はうなぎを食べずに亡くなったことを知りました。

ごんは、兵十に、つぐないがしたいと考えました。ごんは、くりやまつたけなどを兵十のうちに置くようになりました。兵十は、ごんが持ってきているとは知らず、神様に感謝します。そのことを「ひきあわない」と思うごんは、兵十に認めてもらいたかったのでしょう。

ごんのいたずらにも、「自分を見てほしい」「かまってほしい」という、ごんのさびしさが隠されているようです。

ごんは、兵十に親しみも感じています。母を亡くした兵十だから、ごんと同じ孤独を知る者だと思えたのでしょう。

ごんと兵十は、わかり合えたかもしれないのです。しかし、兵十が、くりやまつたけを持ってきたのはごんだったことに気づいたのは、ごんを撃ったあとでした。

和太郎さんと牛

酒好きな和太郎さんと、老いた牛の話です。和太郎さんは、いつも茶店で酒を飲みすぎて、牛に家まで連れて帰ってもらいます。おうようで、気のいい和太郎さんと牛は、のんびりした、ユーモラスな味わいがあります。のどかで平和ないなかの物語です。

しかし、和太郎さんが若いころのエピソードは、強い現実感をともなって、人の心のかたくなさと悲しさを感じさせます。和太郎さんのよめは、和太郎さんの母から、目をそむけて食事をしました。和太郎さんの母は、目がつぶれていたからです。よめ自身も、自分の嫌悪感にとらわれて、どうすることもできなかったのです。和太郎さんは、よめと離縁しました。

だんだん年老いていく母と牛、よめも子もない和太郎さん。いつかは家族を失うかもしれない和太郎さんのさびしさ、孤独が伝わってきます。

酒だるを運んでいた和太郎さんと牛は、両方ともよっはらい、ゆくえ不明となってしまいました。母や村の人たちは、心配してさんざんさがしました。村にもどった和太郎さんは、自分がどこに行っていたのかもわかりませんでした。牛車には、赤んぼうが乗っていました。和太郎さんは、子どもを得たのでした。 

おじいさんのランプ

あんどんしかなかった村に、ランプをもたらした己之助の物語です。

貧しかった己之助は、ランプ売りとして身を立てました。苦労してきた人でしたが、まじめな努力家でもありました。暗い村にランプの明かりがともり、文明の利器のよさを村人たちに伝えたことをほこりに思っていました。

しかし、ランプは電燈にとってかわられようとしていました。文明開化を口にしてきた己之助でしたが、電燈と、電気をひくことを決めた村長をうらみました。村長の家に火をつけようとすらしました。火打ち石が役に立たなかったことから、己之助は、自分のあやまちに気づきました。古いものや自分の利益にしがみつくのではなく、世の中は進んでいくのだから、それに合わせていかなければならないと思ったのです。

己之助は、きっぱりとランプを捨てました。 06.4.2

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新美南吉リンク

新美南吉記念館/施設案内、「ごんぎつね」全文、童話賞募集要項などがある。

新美南吉童話集・ごんぎつねの会/新美南吉の作品紹介などがある。

新美南吉作品データ/新美南吉の作品が読める。


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