後藤竜二

後藤竜二さんの「12歳たちの伝説」シリーズは、6年生の少年少女の思いが、子どもの話しことばで書かれています。

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12歳たちの伝説シリーズ

「12歳たちの伝説」シリーズは、子ども達の話しことばで書かれた読みやすい本だ。学園ドラマのようなテンポの良さ、新鮮さがある。

5年のころからパニック学級と呼ばれていた6年1組の物語だ。5年のころの担任は、胃かいようで入院したあと、学校をやめた。その後、何人もの先生が仮の担任になったが、最後までつきあってくれた人はいなかった。6年になって、若い女の先生「ゴリちゃん」が担任になる。はずかしそうに話す、先生らしくない人だ。

このシリーズは、6年1組の数人の子の語りによって、物語が進んでいく。子どもたちが、自分のことばで、6年1組のこと、家族や友だちのこと、自分の思いを語る。自分を見つめ直して、少しずつ変わっていく。6年1組の子たちの間に、パニック学級が生まれ変わるかもしれない、という希望が持てるようになってくる。 04.11.2


12歳たちの伝説

絵:鈴木びんこ 2000年 新日本出版社 高学年から

シリーズ一巻目の主役は、霧島あい、川口美希、益田剛(マッさん)、山崎夕花(ユーカ)、谷本誠(マー君)だ。章ごとに主人公が入れかわって、一人称で、6年1組の春のできごとを語っていく。物語が進むにつれて、五年の時にクラスがあれたわけ、5人の子の家庭環境、また、谷本誠が不登校になったいきさつがわかってくる。

「たんぽぽ」の詩の授業、1年1組の子どもたちの世話をする「おたすけマン係」の活動、河原での石投げなどのできごとがあって、学級が少しまろやかになる。5人の子ども達も少し成長する。親や先生の期待通りのいい子だった霧島あいは、自分で考えて決断するようになる。山崎夕花は、なれ合いの友だち関係を変えようとする。

物語りの始めと終わりで、霧島あいの朝が語られる。始業式の朝、身構えて登校していたあいだが、物語の最後では、6年1組を受け入れている。  04.11.2

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12歳たちの伝説2

絵:鈴木びんこ 2001年 新日本出版社 高学年から

6年1組は、パニック学級とよばれるあれたクラスだ。子どもたちは、日々の学校生活の中、自分なりの方法で生きのびている。衝動につき動かされて行動してしまう、子どもたちの気持ちが、ていねいに描かれている。

本作では、BARA×BARA班(バラバラ班、本当は、BARAの2乗という表記)のカオル(水沢香織)、テラ(寺野透)、パンダ(半田朱美)、カンちゃん(木谷侃)の語りで、物語が進行していく。メインとなる語り手は、カオルだ。

BARA×BARA班は、はずされたやつ、行き場のないやつが集まった班だ。もう一人、保健室登校のマー君(谷本誠)も所属している。

カオルは、もと「追っかけ隊」のメンバーだが、グループからはずされて、なやんでいる。仲良しグループのなかにも、人間関係のごたごたや、メンバーをしばりつけるルールがあった。パンダは、そんなカオルを見て、「ハズされたほうがラクだぜ。友だちなんて、いらない。」(p87から引用)と思う。

カオルは、ユーカにいやがらせメールを送ったことをあやまりたいのだが、なかなか素直になれない。

カンちゃんは、「さすらい族」だ。パニック学級のごたごたをさけて、休み時間ごとにふらっといなくなる。彼は、自分だけの場所を確保することで、生きのびている。絵が得意なカンちゃんだが、図工の先生オーヘボとはそりが合わない。五年のころ、オーヘボから、絵を手直しされ、いやみを言われて以来、にらまれている。

テラは、小さいけど凶暴なティラノサウルスから、あだ名をもらった。衝動的に行動してしまう子だ。

パンダは、「オレ、七班のザンテー班長だからね。メンバーの苦しみは、オレの苦しみなわけ。」(p87から引用)と思っている。カオルが外されていることや、カンちゃんがオーヘボに侮辱されていることを知っている。友だちの力になりたいと思いながらも、そのことが言えなかった。

BARA×BARA班のメンバーは、テラの暴力事件と、それに続く学級会を通して、自分の思いをことばで表現し、相手に伝えることを学んでいく。

あれることでしか自分の気持ちを表現できなかった子どもたちのなかで、マー君の存在が大きい。マー君は、ほんの少しだけ登場するのだが、BARA×BARA班のメンバーの気持ちをふんわりなごませている。  05.3.21

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12歳たちの伝説3

絵:鈴木びんこ 2002年 新日本出版社 高学年から

パニック学級6年1組の5月のできごとが、海口草平のことばで語られる。

草平は、ダジャレコンビのヤマちゃんと大ちゃんから、そうじ当番をおしつけられたり、パシパシたたかれたりしている。けれども、言い返せなくて、「士、別るること三日、まさに刮目して相待つべし」ということばを胸に、おふざけ暴力にたえている。草平とダジャレコンビは、4年のころまで仲が良かったが、5年から、みぞが深まってしまったのだ。

古武術が得意な美少女烏丸凛(からすまりん)は、そんな草平に対して、同情するでもなく、やさしい声をかけるわけでもない。だが、草平にむけるまなざしは温かい。

凛は、草平に、自分の「生い立ちの記」を見せる。「生い立ちの記」は、6年1組の担任ゴリちゃんが出した宿題だ。自分の12年間を振り返ったり、家族から幼いころのことを聞き取ったりして、作文にまとめていくものだ。凛の生い立ちの記の冒頭には、凛が生まれた場所も、誕生日も、本当の名前もわからないことが書かれていた。凛は養護施設愛信園で育ったのだ。凛が初めて立った日のことを知る佐久間先生をたずねて旅をしたことも書かれていた。

凛が草平に「生い立ちの記」を見せたのは、5年のころ、凛が書いた壁新聞を草平が読んでいたからだった。凛は、たった一人で、必死の思いで新聞を書き、教室にはった。だが、新聞はやぶられたり、落書きがされたりして、すぐにぼろぼろになったのだ。凛は、草平だったら、自分をさらけ出した文章も、きちんと読んで受けてとめてくれる、と思ったのだろう。

凛は、数人のクラスメートとともに、6年1組の壁新聞「ジャングル」2号をつくる。2号では、クラスの問題を取り上げ「おふざけ暴力にさよなら」というタイトルで、特集が組まれた。クラスの子に電話でインタビューして作った、力の入った新聞だ。だが、この新聞は、ダジャレコンビにとっては手きびしい内容だった。

新聞の内容は、草平にとっても、受け入れがたいものだった。草平は、ダジャレコンビから暴力を受けながらも、ダジャレコンビのことを友だちだと思っているからだ。

物語の最後に、草平とダジャレコンビの友情が回復する。  04.11.13

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12歳たちの伝説4

絵:鈴木びんこ 2003年 新日本出版社 高学年から

「12歳たちの伝説」3巻に引き続き、主に草平の一人称で物語が進行していく。いくつかの章で、もとサッカー部の七瀬秀人(シュート)や、益田剛(マッさん)、草平の友人で、いじめっ子でもある山田武士(ヤマちゃん)が、語り手、つまり主人公になる。草平が知りえないサッカー部の事情だとか、ヤマちゃんの心情が読者に伝わり、物語の厚みが増している。

本町小学校では、6月14日に校内サッカー大会が行われる。5、6年生4クラスの総当たり戦だ。大会に向けての6年1組の取り組みと、ごたごたが4巻のメイン・エピソードだ。

4巻の冒頭で、草平は自己嫌悪におちいっている。運動会でとんでもない大はじをかいてしまったからだ。草平は重い気分で、「学校ははじをさらすところだ」と思う。

運動オンチで、クラスでも地味な方の草平だが、サッカー大会の実行委員になってしまう。ヤマちゃんが推薦(すいせん)したからだ。

草平は、実行委員をやめたいと思っている。実行委員会の初会議もさぼる。

草平のさぼりは、クラス討議にまで発展してしまう。大会の責任者であるガメラ(亀田先生)が、学級委員のコースケ君(池内耕介)の家に深夜電話をかけ、ねちねちと説教をしたのだ。

討議の中で、草平は、6年1組のみんなから責められる。同時に、みんなは、ガメラへの不満やうらみも口々に言う。

「実行委員をやめたい」と思っていてもはっきり言えない草平。ガメラに対して不満を持っていても、直接言えない6年1組の子どもたち。担任のゴリちゃんは、「勇気を出して、自分の思いをことばにすること。それがとても大切なことだと思っています」(p46より引用)とみんなに話す。

草平は、結局、実行委員を引き受けることになった。ハラが決まると、6年1組の優勝を目標に、活動を開始する。

草平は、まず、大会出場メンバーの募集から始めた。最初、練習に参加したのは、あまりサッカーがうまくないBARA×BARA(バラバラ)班の5人だけだった。BARA×BARA班は、「ドジ歓迎!!ヘボ大歓迎!!楽しく戦って優勝しよう!!!」というキャッチフレーズでポスターを作った。

練習に参加する子は増えた。みんなは、キャッチフレーズ通り、楽しいサッカーをやっているが、下手で、優勝をねらえるチームになりそうもない。草平は、もとサッカー部で天才的にうまいシュート君(七瀬秀人)やマッさん(益田剛)に、試合に出てくれるよう、何度もたのむ。手紙も書く。それでも、ふたりは動かない。

シュート君やマッさんには、試合に出たくない事情があった。それは、ふたりが、ガメラからいびられて、サッカー部をやめたことに関係があった。

草平は、シュート君やマッさんがいなくても、一生懸命なヤマちゃんとみんなの姿を見て、「下手でもいい」「はじをさらしてもいいじゃないか」と思うようになる。

はじをかくこと、自分をさらけ出すことを恐れていた草平、言いたいことも言えなかった草平だが、実行委員の活動を通して、確実に変わっていく。物語のラストには、明るい気持ちで「学校ははじをさらせる場所」だと言う。

一方、シュートは、サッカー大会に出場することを決心する。そして、5年の秋にサッカー部をやめて以来、心にくすぶっていたガメラへのこだわりをふっきる。  04.12.25

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12歳たちの伝説5

絵:鈴木びんこ 2004年 新日本出版社 高学年から

「12歳たちの伝説」5巻の語りを担当するのは、「ぐーたらひま人班」の沢木悠太だ。他に、飼育委員の黒沼あかりの語りが2章、ゴリちゃんこと森みどり先生の語りが1章、会議録が1章ある。ゴリちゃんの語りが入るのは、1巻から5巻を通して初めてのことだ。

3巻が6年1組の5月、4巻が6月、5巻は7月というように、巻が進むごとに、ひと月経過している。

7月、猛暑の教室、暑さにまいっている6年1組のみんな、やる気のない沢木悠太。ここから物語が始まる。

悠太の「ぐーたらひま人班」には、仲良しのマル(丸山義彦)と黒沼さん(黒沼あかり)がいる。班編制は、子どもたちが自由に決めていいことになっている。黒沼さんは、自分から悠太たちの班にやってきた。悠太は、黒沼さんと全く関わりを持っていない。なぜ、黒沼さんが自分たちの班にやってきたのか、わからないでいる。むかし、黒沼さんのことを「ドロヌマキン」と言ってからかったことが、心にひっかかっている。

黒沼さんは、全く目立たない人だ。悠太は、同じ班でいながら「知らない人」だと思っているし、黒沼さんの声すら聞いたことがない。

悠太とマルは、休み時間ごとに教室から姿を消す黒沼さんのことをふしんに思う。黒沼さんを尾行し、どこに行くのか、つきとめようとする。

黒沼さんは、オンドリのベッカムの世話をするために飼育舎に行っていた。そして、ひとりでもくもくと仕事をしていた。悠太は、4年のころ、自分も黒沼さんも、飼育委員だったことを思い出す。そして、ウサギやメンドリもいた飼育舎に、ベッカム1羽しかいないことに驚く。

悠太とマルが飼育舎に行ったことが、思いがけない事件に発展する。

飼育舎の水道水が冷たくて気持ちいいことを、マルがクラスのみんなに宣伝した。みんなは、飼育舎にさっとうした。はしゃいで水をかけあっていたところを、ガメラ(亀田先生)に見つかったのだ。

ガメラは、6年1組の天敵とでもいう存在だ。ガメラとの確執は4巻でも語られている。みんなは、炎天下、飼育舎の前に立たされる。そこには、黒沼さんもいた。彼女は、ベッカムのことが心配で、飼育舎にかけつけたのに。

立たされているうちに、黒沼さんがたおれる。ユーカの命令で、黒沼さんを保健室に連れて行き、かいほうしたのは、ネネ、チコ、カオリ、もと追っかけ隊だった。

黒沼さんの語りの章で、4年のころ、追っかけ隊と黒沼さんが同じ飼育委員だったこと、めんどうな仕事はすべて黒沼さんにおしつけられていたことが明らかになる。そして、黒沼さんがいじめられるようになったわけも。

黒沼さんは、ユーカたち4人からいじめられたことを忘れていない。そのことがしこりとなって、今も、4人とは、まともに話すことができない。

4年のころから、黒沼さんは、たったひとりでニワトリの世話をしてきた。メンドリたちが死ぬと、墓をつくってうめた。1回だけ、悠太が、墓ほりを手伝ったことがあった。悠太は忘れていたことだが、黒沼さんはおぼえていた。黒沼さんにとっては、大事なことだったのだろう。悠太のことを「チョー気まぐれ」だとか「頼りないやつ」と思いながらも、悠太と同じ班になることを選んだのだから。

ユーカ、ネネ、チコ、カオルにも、「黒沼さんをいじめた経験」は、心のしこりとして残っていた。ユーカは、ずっと、黒沼さんにあやまりたかったのかもしれない。黒沼さんとふつうに話をしたかったのかもしれない。ユーカは、何気ない会話のなかで、「あかりも、えらいよなー」「カンベン」「あのころは、うちら、いやなこと、ぜーんぶ、あかりに押しつけてたからね」(p126、127より引用)と言う。

飼育舎の水道事件を通して、6年1組の子どもたちは、自分の思いをことばにして、相手に伝えること、行動にうつすことを学んでいく。クラスのみんなで、また、ゴリちゃんや児童会も巻きこんで、願いを実現させいく。校長先生に、「水筒やペットボトルを学校に持ちこめるようにしてほしい」と要求し、認められる。ガメラからとりはずされた飼育舎の水道のじゃ口をもとにもどす。そして、悠太と黒沼さんは、飼育舎を冷やすアイディアを実行する。  04.12.26

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