イヌビワ その1 (雌株の花嚢)
      ※ このページで使用した写真は、いちばん下の写真を除き、2005年の8月中旬に撮影したものです。


 「イヌビワ」は「イヌの(=小さい、つまらない)ビワ」といった意味なのでしょうが、じつはビワのなかまではなく、イチジクのなかま( Ficus属 )です。 傷をつけると、白い液が出てくるのも同じです。
 8月になると、イヌビワの木では、緑から、赤く美しい状態(上の写真右)を経て、黒く熟した実のようなもの(下の写真)を見ることができます。 大きさはいろいろあるのですが、日当たりなど条件のいいところでは2cmを越えます。 この黒い“実”を食べると、イチジクと違ってイヌビワは野生、ちゃんとした細かい種子があるのでジャリジャリしますが、とても甘く、美味しいものです。

 上の写真では、鳥などに食べられるのを催促するかのように、甘い液が中からあふれ出しています。 液があふれだしていない黒い“実”でも、断面を作って中を見ると、とってもジューシイです(右上の写真)。 いちばん上、右側の写真の左奥には、鳥に半分食べられ、水分が蒸発し、種子(じつはこれが果実)が目立った状態の“実”の断面が写っています。

 ところで、イチジクは漢字で「無花果」と書きます。確かにイチジクもイヌビワも、種子植物で実ができているのですから、花が咲いていないわけは無いのですが、表面的には花は観察できません。
 じつは実のように見えているものは「花嚢(かのう)」といいます。 「花をつける袋状のもの」といった意味ですが、、この内側でたくさんの花が咲き(「イチジク状花序」とよばれる)、右のようにたくさんの果実(黄色の球状のもの)ができます。
 しかし、花嚢という閉鎖された空間に咲く花で、花粉はどこからどのように運ばれ、どのように受粉するのでしょうか?
 そこには非常に複雑な、しかしおもしろいイヌビワの生活の姿があります。 次のページで紹介しましょう。
      
【付録】
 イヌビワの黄葉もなかなか美しいものです。 右下は平成17年12月10日に高倉寺の境内で撮ったものです。