私の研究領域

  私の研究目的は,操縦安定性の商品性向上にあります.自動車の操縦安定性の商品性は,自動車いかに気持ちよく曲がるかのステージで各社が競っています.そこで学内では気持ちよく曲がるための基礎理論を研究しています(なお企業様とは,「旋回の気持ちよさの性能の向上」から「市場不具合対策」までの各種開発のお手伝いや依頼による各種研究,社内教育等も担当させて頂いております).いまさら基礎理論?と訝しげに思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,船舶や航空機の操縦安定性の流れを組む自動車の操縦安定性の基礎理論では,重心の運動に注目するのが常道であり,これに比べると気持ちよさに関する基礎理論は手薄です.

  私が必要と思う基礎理論は次の5項目からなります.

a.旋回の気持ちよさに関する基礎理論

1)腰で感じる後輪の横力

 ドライバの感覚では,ハンドルを切ると,まずフロント(またはヨー)が動き,その後遅れてリヤが動く(または後輪が力を出す)ように車が動きます.後者を強く腰で感じられることは,気持ち良さの一つの要素です.そこでこの「2段階の動き」を研究しています(拙著 第7,3章).なおヨーと重心の横滑りは,操舵した後,同時に発生しますので,これらでは2段階の動きを表せません.

2)手で感じるハンドルからの力

 上記の後輪の横力発生は,ハンドルから手に伝わる力(操舵反力)でも感じることができます.そこで後輪の横力と操舵反力との関係を研究しています.操舵反力は前輪の横力に比例し,前輪横力は前輪位置の車体横滑り角に関係します.一方,後輪横力は後輪位置の車体横滑り角にほぼ比例します.そこで,前輪位置の車体横滑り角と後輪位置の車体横滑り角との関係を研究をしています(拙著 第8章).

3)手で感じるハンドルの動き

 リラックスした運転では,力を緩めてハンドルを戻すことがあります.このとき戻りが遅いと,「ハンドルの中立位置が不明確」に感じられます.そこでハンドルに加えた力に対するハンドルの動き方を研究しています(拙著 第9章).なおハンドルを戻すことに限らず,わずかな進路修正は力加減でコントロールするとされていますので,この基礎理論は,このコントロール性のためでもありますし,タイヤからのフィードバックも表すとされますので,路面からドライバーへのインフォメーションのためでもあります.

4)目で感じる車体の傾き

 旋回すると,僅かなピッチが生じます.このピッチによって,(旋回の軌跡が一定でも)曲がり方が違って感じられます(錯覚です).そこでピッチと旋回とのタイミングについて研究しています(拙著 第10章).

b.車両の設計法に関する基礎理論

5)操縦安定性の性能指標の公式

 操安性の性能設計では,応答の速さなどの指標の目標値(目的関数)を満たすように,部品ごとの特性値(設計変数)を決めます.その際に用いるのは,応答の速さなどの指標の公式(文字式)です.ただし,実際の開発の対象となる部品の特性値が公式に含まれていないことがあります.そこで開発の対象となる部品の特性値が含まれた,文字式による公式を導き出します(拙著 第2〜11章).

 

 以上の5つの基礎理論研究によって,操縦安定性の高い商品力を持った車両を開発するためのより良いしくみ拙著 第12章を構築しようと,教育・校務の合間に研究しています.これらの研究によって,操縦安定性の商品力をより向上させたいと考えておりますので,皆様のご指導・ご鞭撻を頂けると幸いです.

2016/11/13

酒井英樹

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