我国初の女学生用教科書『女学唱歌』

山田源一郎編 編集(共益商社)
第一集(1900年8月19日)・ 第二集(1901年5月15日)





『女学唱歌』第一集表紙


山田源一郎(1869-1927. 5)


山田源一郎が女学生用に作った初めての唱歌教科書.彼自身の作曲のものと外国からの合唱曲,輪唱曲を集めたもの. ちょっと以前の『小学唱歌集』のアメリカ偏重から,この時代になるとドイツを中心とするヨーロッパ音楽の影響が強くなった.

ベルリーニの歌劇『ノルマ』からとった「紅葉狩」「祝歌」や「琴の音」(メンデルスゾーン作曲「おお雲雀」)や「四季のあはれ」(現今の「うるわし春よ」)などを含む.ベートヴェンやウェーバーなど有名作曲家の曲が収録されている.


東京女高師附属高女の制服.右から, 1) 1885−98年式服,
2)1892年通学服,3) 1897年,4) 1902年.
坂内青嵐 画 (作楽会百年史編集委員会『作楽会百年のあゆみ』
(作楽会,1992年2月)より)


編者の山田は最初期の東京音楽学校卒で,1906年2月に日本最初の私立音楽学校「女子音楽学校」(1927年「日本音楽学校」と改称)を設立した.


    序

音楽を普通教育の一要素と認め唱歌を学校の課程に加
へられしはつひ近き頃の事と思ひしに はや二十余りの
星霜を経ぬ その間幾多の変遷なきにあらざりしが特に当
時女学生の唱歌には古調の律旋もてものせる歌曲多か
りけるを いつしか新調の歌風に移れるはいといちじる
き現象にあらずとやいはん こはもと時勢の然らしむる
所とはいへ斯道の為に尽されたる人々の力によれるこ
と多きは云ふまでもなかるべし 此度山田君のものせら
れたる唱歌集はことさらに西洋諸名家の作曲のみを集
め まゝ君が作曲っをも交へられたりと聞く 斯くてこそ教
育の理法を唱歌に応用し易より難に入り簡より繁に進
むの順序を誤らず 将来一般女学生の音楽の趣味をも一
変して優秀の気品を養成するを得ん 山田君は最も早く
新音楽の門に入りたる人にして久しく東京音楽学校に
また女子高等師範学校に楽鞭を執れる人なれば 其選曲
の能く当を得て音楽教育に裨益を与へんこと余の信じ
て疑はざる所なり
 明治三十三年七月二十八日洒勾邨弦海書屋にて
            伊沢修二 しるす


    緒 言

一 本書ハ専ラ女子師範学校高等女学校其他之
  ト同一程度ノ女学校教科用トシテ適当ナル
  材料ヲ供給スル目的ヲ以テ編纂シタルモノ
  ナリ
一 本書中ノ歌詞ハ総テ本邦名家ノ手ニ成リ其
  楽譜ハ編者ノ作ヲ除クノ外悉ク泰西名家ノ
  作ニ係ルモノ若クハ国風曲(フォルクスリート)等ニシテ歌想楽
  想共ニ主トシテ本邦女子ノ性情ニ恰好ナル
  モノヲ選択セリ
一 本書中ノ歌曲ハ之ヲ単音複音及三重音ノ三
  種ニ類別シ各種ニ就キ略ボ難易ノ順序ニ依
  リテ配当セリ 但シ実際教育上ノ便宜ニ依リ
  多少ノ異動ヲ行フハ教授者ノ任意ナリトス

    明治三十三年八月     編 者 誌


    目次

第一集

第一   忍ぶのころも
第二   鴬告春
第三   歡迎の歌
第四   雪
第五   つみくさ
第六   愛國
第七   園生の春
第八   四季の詠
第九   小鳥
第十   卒業式の歌
第十一  落花
第十二  川のながれ
第十三  つれづれ
第十四  富貴の花
第十五  女のかゞみ
第十六  たのし我屋
第十七  夏の曙
第十八  潮干狩
第十九  隅田川
第二十  紅葉狩
第二十一  新年
第二十二  祝歌
第二十三  櫻狩
第二十四  たそがれ
第二十五  懐友
第二十六  集会
第二十七  旅の暮
第二十八  秋漁
第二十九  琴の音
第三十   秋の夜

附録(輪唱)

第三十一  寫眞
第三十二  花紅葉
第三十三  兄弟
第三十四  夜學
第三十五  四季のあはれ

第二集

第一   愛らしき花
第二   夜の歌
第三   閉校
第四   日出の富士
第五   夕の鐘
第六   春のゆふべ
第七   星の光
第八   おもだか
第九   やさしの山吹
第十   漁父
第十一  夏の野景
第十二  ふるさと

第十三   門邊の小川
第十四   早秋夕
第十五   成業別友
第十六   秋のあはれ
第十七   なき父母
第十八   秋の夕暮
第十九   庭の菊
第二十   感懐
第二十一  琴弾く媼
第二十二  なき友

附録(略)


参考


第一集

(1900年8月19日)


@ 第一 忍ぶのころも (三輪義方 作詞 山田源一郎作曲)

一 しのぶのころもを、
    その身にまとへ。
   錦にまさるは、
     しのぶのこころ。
二 忍ぶのをぐさを、
    こころにうゑよ。
   花にもまさるは、
     忍ぶの小艸(をぐさ)。

音源は
101ShinobunoKoromo.mid



@ 第二 鴬告春 (Lowell Mason 作曲)

一 野澤の氷、とけそめて。
    うら若草や、もえぬらん。
   春来(く)と告(つぐ)る、うぐひすの。
     こゑの末こそ、かすむなれ。
二 いつしか雪も、消えはてゝて。
    軒端の梅ぞ、かをるなる。
   なくうぐひすの、聲よりや。
     野山も春や、知りぬらん。

[注] 原曲は Sarah F. Adams 作詞 (1841), Lowell Mason 作曲(1856)
'Nearer, My God, to Thee' (tune name 'BETHANY').[桜井]

音源は
Nearer my god to thee (HQ) choir and strings by Daniel Westphal
http://www.youtube.com/watch?v=iPzcBAJd9NY



@ 第三 歡迎の歌 (山田源一郎 作曲)

  聞けよ森の、をちこちに。
    さへづる、小鳥の、なくこゑを。
  嬉しきしらべ、楽しき音(ね)。
    友をむかへて、よろこびの。
  心や外に、あふるらむ。
    來たれや來たれ、いざ友よ。
     われもうたはむ、もろともに。

音源は
103KangeinoUta.mid



@ 第四 雪 (大和田建樹 作詞 西洋曲)

一 板屋の軒に、降りくる音は。
    時雨か雪か、木の葉か雨か。
  消えずにとまれ、垣根の松に。
    わが待つ梅の、つぼみの如く。
二 小笹(をざさ)のうへに、くだくる玉は。
    霰か雪か、春さく花か。
  解けずに残れ、枯生(かれふ)の芝に。
    鵝鳥(がてふ)の羽ねの、散りくる如く。

[注] 原曲はアメリカの唱歌 "Little Brother" .[桜井]
『明治唱歌』第二集七番 「命の雨」と同曲.

音源は
104Yuki-LittleBrother.mid



@ 第五 つみくさ (大和田建樹 作詞 西洋曲)

一 野山をおほふ 櫻の雲。
    みそらにひゞく、雲雀のうた。
  つみくさいそげ、少女(をとめ)の友。
    たんぽぽ嫁菜、よもぎに芹。
二 うちつれかへる、春野の原。
    唱歌はたしか妹(いもと)の聲。
  籠なる花の、其(その)名はなに。
    すみれになづな、菜たねねれんげ。

[注] 『新選譜付クリスマス讃美歌』(1890)『このつきこのひ』.[長谷川
由美子: 私信 2011. 05. 15]

音源は
105Tsumikusa.mid



@ 第六 愛國 (西洋曲)

一 大和心を、いやふりおこし。
    男をみなも、みなもろともに。
      皇國(みくに)を守れ、命にかけて。
二 神代(かみよ)ながらの、我(わが)日の本は。
    外國人(とつくにびと)も、かしこみあふぐ。
      守れよまもれ、命にかけて。

[注] Anonym. "Graded Exercises and Songs for School and Home",
part III (New York: C.H. Browne, 1885), p. 130 の L. Erk 作曲 "May
Song" ('When sweet Spring with magic finger').[桜井: 私信 211. 04. 14]

音源は
106Aikoku.mid



@ 第七 園生の春 (武島又次郎 作詞 Thomas Arne 作曲)

  春かぜ吹き來て、みそらも霞み。
    うぐひす來鳴きて、さくらも咲きぬ。
  いざともきたれや、園生をめぐらむ。
    鳥さへ花さへ、うきたつものを。

[注] J.P. McCaskey, "Franklin Square Song Collection" vol. 7, p. 38:
Thomas Arne 作曲 "Fresh and strong, the breeze is blowing".[長谷川
由美子: 私信 2011. 05. 15]
原曲はThomas Augustine Arne (1710-1778) 作曲,George Colman the
Younger (1733-1794) 脚本のコミック・オペラ "Inkle and Yarico" (1787)
第2幕第1曲 "Freshly now the breeze is blowing". 賛美歌曲にもなって
'MIDDLETON', 'SHIELDS', 'GLORIOUS THINGS' などの旋律名で採用さ
れた.[桜井雅人:私信 2011. 06. 26]

音源は
107SonounoHaru.mid



@ 第八 四季の詠 (山田源一郎 作曲)

一 霞にとぢし、柴の戸に。 人來(く)と告(つぐ)る、うぐひすは。
  はかるとしれど、はかられて。 嬉しき春とぞ、うたひける。
二 さみだれ晴し、夕間(ゆふま)ぐれ。 月やいかにと、ながむれば。
  軒のあやめに、玉なせる。 なごりの露も、かをるなり。
三 菊の盛(さかり)に、なりぬれば。 我袖さへも、匂ふなり。
  おほしたてゝし、朝宵の。 つゆのめぐみぞ、知られける。
四 雪よりしらむ、朝ぼらけ。 外山(とやま)のいほに、たつけぶり。
  衣手(ころもで)うすき、しづの男(を)が。 世わたる業こそ、あはれなれ。

音源は
108ShikinoEi.mid



@ 第九 小鳥 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 園生の芝生に、あされる小鳥。
   のどけき日影に、うかれやすらん。
     あれあれたがひに、友呼びかはす。
二 あれあれ柳に、また松が枝(え)に。
   おはれつおひつゝ、いとむつましく。
     鳥すら友とは、親しむものを。

音源は
109Kotori.mid



@ 第十 卒業式の歌 (山田源一郎 作曲)

一 朝(あした)にわくる、みちしばも。
    夕(ゆうべ)にはらふ、言の葉も。
  雪と螢の、光にて。
    かゞやく今日の、むしろかな。
二 花の盛(さかり)も、よそにきゝ。
    月のまとゐに、そむきつゝ。
  つとめいそしむ、春秋(あるあき)の。
    月日はふみの、光かな。
三 教(おしえ)の園に、生ひ立ちし。
    わかきの梅の、今日よりは。
  清きみさをの、幾春も。
    四方(よも)にかをらん、花の香は。

音源は
110SotsugyoshikinoUta.mid



@ 第十一 落花 (大和田建樹 作詞 J.W. Elliott 作曲)

一 ひらひらちりくる、花のさまは。
    ゆふべの霰か、朝(あさ)の雪か。
二 みるみる芝生に、雪はみちぬ。
    きのふの盛(さかり)も、今日の夢よ。
三 いざいざひろひて、籠に入れて。
    友にもおくらん、春のかたみ。

[注] 『マザー・グース』の"Jack and Jill".[桜井]
J.P. McCaskey, "Franklin Square Song Collection" vol. 3 (New York:
Harper & Brothers, 1885) p. 19: J.W. Elliott 作曲 "Jack and Jill".
[長谷川由美子: 私信 2011. 05. 15]
原本は J.W. Elliott, "Mother Goose; Or, National Nursery Rhymes and
Nursery Songs" (New York: J.L. Peters, 1873), pp. 2-3. [桜井雅人:
私信 2011. 05. 31]

音源は
Merry Maladies: Jack and Jill
http://www.youtube.com/watch?v=1XSuwN01Tnk



@ 第十二 川のながれ (大和田建樹 作詞 西洋曲)

一 足ぶみとゞろに、躍(をど)りゆくは。
    心もたのしき、水の旅路。
  木の葉に咽(むせ)びし、聲は昨日。
    今日こそゆたけき、河に海に。
二 わがゆく學の、道もこれぞ。
    きのふの麓は、今日の高嶺。
  かづらにすがりつ、石によぢつ。
    つひには八重だつ、雲の上に。

[注]  "The Obstinate Chicken".[長谷川由美子: 私信 2011. 05. 15]

音源は
112KawanoNagare.mid



@ 第十三 つれづれ (旗野十一郎 作詞 ボーマン 作曲)

一 思はぬかたにも、懐(ゆか)しきもの。
    はるのつれづれ。
  みゝにふといる、他家(よそ)の琴の音(ね)。
二 意(こころ)になくとも、わびしきもの。
    あきの徒然(つれづれ)。
  こずゑゆふづく、寺の鐘の音(ね)。

音源は
113Tsurezure.mid



@ 第十四 富貴の花 (三輪義方 作詞 J. Blumenthal 作曲)

一 あてなるさまや、園生のぼたん。
    ふうきの花と、うべこそいへれ。
  匂へるいろは、錦をよそひ。
    かゝれる露は、玉をぞかざる。
二 すゞしきいろや、みぎはのはちす。
    かをりもきよし、露さへきよし。
  夏なほふれる、雪かとまがひ。
    ひるさへ月の、おもかげうかぶ。
三 かくれがふかく、千年(ちとせ)の秋を。
    しづかにおくる、白菊あはれ。
  ゆふべの霧に、光をつゝみ。
    あしたの風に、かをりをもらす。

[注] J.P. McCaskey, "Franklin Square Song Collection" vol. 5 (New York:
Harper & Brothers, 1888) p. 97: Charles Wesley 作詞 J. Blumenthal 作曲
"Depth of Mercy!".[長谷川由美子: 私信 2011. 05. 15]
作曲者は Jacob Blumenthal (1829-1909),1847 年作曲, 旋律名 BLUMENTHAL.
『讃美歌』255番「灰と塵との 中にひれふし」. [桜井雅人: 私信 2011. 05. 31/
2013. 02. 07]

音源は
hr255.mid



@ 第十五 女のかゞみ(紫式部) (三輪義方 作詞 西洋曲)

  おもへばゆかしき、をしへのたね。
    たゞしきをみなの、かゞみとみん。
  千年(ちとせ)の後(のち)まで、むらさき匂へる、言葉のいろ。
  おとなふ くひなに、閨の戸ゆるさぬ、こゝろのふし。

音源は
115OnnanoKagami.mid



@ 第十六 たのし我屋 (大和田建樹 作詞 西洋曲)

一 薪(たきぎ)せおひくる、谷の細道。
    嵐身にしみて、夕日かくれぬ。
  たのし我屋(わがや)は、木の間に見えたり。
    軒の糸柳、かぜになびきて。
二 道の早蕨(さわらび)は、あすに残して。
    なれし谷川の、橋をわたれば。
  うれし我屋は近くに來れり。
    庭の花いばら、風にかをりて。

[注] Thomas Moore (1779-1852) が曲 "(The) Moreen" に作詞 (1813)
"The minstrel boy".[桜井]
『明治唱歌』第五集第二十五 「山を裂く響」と同じ曲.

歌唱は
Utah State Men's Honor Choir - The Minstrel Boy - arr. Ron Jeffers
http://www.youtube.com/watch?v=X3R3fG6XjL4



@ 第十七 夏の曙 (大和田建樹 作詞 Silcher 作曲)

一 月は空にのこりて、
    しらみわたる山のは。
  雲のいろもすゞしく、
    松のかずも見えたり。
  みよや野邊のなでしこ、
    露にぬるゝ笑顔を。
二 夜半のほたる三つ四つ、
    ともしのこるすゞしさ。
  高き森のうへには、
    蝉の聲もきこえぬ。
  おきてふめや朝露、
    こゝちよきは此時。

[注」 原曲は "Ännchen von Tharau".[桜井]
原詩は Simon Dach (1637), 高地ドイツ民謡では J.G. Herder (1778),
Silcher の作曲は 1825 年.

合唱は
Annchen von Tharau
http://www.youtube.com/watch?v=bxE071-V_JI


Friedrich Silcher (1789-1860)


@ 第十八 潮干狩 (旗野十一郎 作詞 エンゲル 作曲)

一 吹きくる風には、  潮氣かをり。
  遥けき海には、   緑しきて。
  干潟も人の、    花さへ咲く。
  籠(かたま)小桶よと、手々に提(さ)げつゝ。
  しらぬも知るも、  よばれよびつ、
  笑聲(えみごゑ)高く、うちむれ行く。
二 放下(はなり)の髪には、日影にほひ。
  緋染(こぞめ)のたすきに、しろきかひな。
  慎秘(つゝみ)し唱歌(うた)も、けふには公然(はれ)。
  君よわらはよと、  ともに喧騒(さゞめ)き。
  蛤(はまぐり)文貝(あさり)、とりどりあそび。
  來(こ)しかひありと、みなよろこぶ。

音源は
118Shiohigari.mid



@ 第十九 隅田川 (西洋曲)

一 堤の柳に、     夜(よ)の色残して。
  花より明けゆく、  あけぼのゝけしき。
  汀(みぎは)のあしまに、船のりはなちて。
  雪ふみ分けゆく、  ゆふぐれのながめ。
二 また夕すゞみに、  月見にむしきゝ。
  いづれの時にか、  おむかしからざる。
  いざこのあたりに、 庵(いほり)を結びて。
  わが世の限りを、  すみだの川岸。

音源は
119Sumidagawa.mid



@ 第二十 紅葉狩 (旗野十一郎 作詞 Bellini 作曲)

一 おく山はやま、   杖ひくところ。
  いづこも秋の、   いろどる最中(もなか)。
  さくらならねど、  見てのみ人に。
  語らましやは、   枝の紅葉。
  をらばちるべし、  をらぬもくやし。
  今日は手巾(てぎぬ)に、染めて歸らむ。
二 巌間(いはま)の清水、いざわれ酌まむ。
  木陰にむしろ、   いざわれ敷かむ。
  それよこれよと、  互(かため)にさわぐ。
  所爲(わざ)ぞたのしき、秋の遊(あそび)。
  落葉(おちば)かきよせ、吹きたく野火に。
  顔ももみぢの、   色ぞ匂へる。

[注] Vincenzo Bellini作曲(1831)『ノルマ』("Norma")第一幕第一場
族長オロヴェーソとドルイドの民の合唱「行け丘の上へ」('Ite sui colle').

合唱は
Riccardo Zanellato - Norma
http://www.youtube.com/watch?v=QfDA3UJ9JkY


Vincenzo Bellini (1801. 11-1835. 09)


@ 第二十一 新年 (西洋曲)

一 年立つ朝(あした)の、吹く風きよみ。
  はれにはれたりや、  八重のさぎり。
  見渡すかぎりは、   空すみわたり。
  四方にかゞやくや、  朝日の御旗(みはた)。
  みかげをしたひて、  よりくる國々。
  あはれあなめでた、  あはれたのし。
  御代も榮ゆるや、   國もさかゆるや。
二 我が大御國(おおみくに)の、かしこきみいつ。
  かゞやき渡れる、   朝日の御旗。
  年立(たつ)あしたの、のどけきかぜに。
  内外(うちと)の民草(たみくさ)、なびきやすらむ。
  空にはよびかふ、   あしたづのこゑ。
  野邊にはたなびく、  かすみの袖。
  あはれめでたしや、  あはれ面白や。

[注] William B. Bradbury, "Musical gems for school and home" (New
York: Newman & Ivison, [1849], 1852)に二重唱 "Patience" (Popular
German Student's Song) として収録されている.[桜井: 私信 2010. 08. 12]
元歌はドイツ民謡 (1801) で,"Auswahl Deutscher Lieder, mit ein- und
mehrstimmigen Weisen" (Leipzig: Serig'sche Buchhandlung, 1844)
pp. 253-255: Friedrich von Schiller (1759-1805) 作詞 (1785) "An die Freude"
('Schöner Götterfunken').[桜井雅人: 私信 2011. 06. 02]

元歌の歌詞と音源は
Freude schöner Götterfunken
http://ingeb.org/Lieder/freudesc.html
桜井氏作成のmidi音源は
121Shinnen.mid



@ 第二十二 祝歌 (三輪義方 作詞 Bellini 作曲)

  萬歳、々々、々々。
   山邊も野邊も、 かすみわたり。
   花わらひ、   鳥うたふ。
   君が代の、   春の日に。
   桂を折りえし、 我友の其(その)光榮。
   おもへばその身の、光榮のみか。
   御代の光、   御國の榮。
   花も鳥も、   祝へやいはへ。
    あゝゝゝゝゝ、萬々歳。

[注] Vincenzo Bellini 作曲(1831)『ノルマ』("Norma")第一幕第一場
のドルイド族の合唱「ノルマが来る」('Norma viene').

合唱は
Bellini.Norma.Norma viene...Sediziosi voci.
http://www.youtube.com/watch?v=ugEmQ1of7RI




@ 第二十三 櫻狩 (鳥居 忱 作詞 西洋曲)

一 春の日影、長閑(のどか)なり、 春の日和、融々(うらら)なり。
  春の山邊、交(まじ)りなむ、  山の櫻、咲きぬらむ。
  いでや駒に、鞍(くら)置けよ、 率(いざ)や行かむ、櫻狩。
    我が心、勇むなり、   長閑なりや、春日(はるび)。
    乗駒(のりこま)も、勇むなり、融々なりや、春日。
二 峯の櫻、咲きにけり、      谷の櫻、咲きにけり。
  駒は繋ぐ、麓路(ふもとぢ)に、 山のいくへ、岩根ふみ。
  雲の幾重、分け捨てゝ、     花に迷う、春の日や。
    我が心、勇むなり、 長閑なりや、春日。
    乗駒も勇むなり、  融々なりや、春日。

[注] 原曲は "Wohlauf, noch getrunken den funkelnden Wein". チロル
民謡 "Hoch droben auf'm Berge" (1826) による.
Wm. B. Bradbury, "Musical Gems For School and Home" (New York:
Newman & Ivison, [1849], 1852), pp. 128-29 ; J.P. McCaskey, "Franklin
Square Song Collection" vol. 3 (New York: Harper & Brothers, 1885)
p. 121 などに "Wanderer's Farewell" として掲載されている.[桜井: 私信
2011. 03. 20/ 03. 06]

歌唱は
Wohlauf noch getrunken den funkelnden Wein 男声合唱
http://www.youtube.com/watch?v=nT5CaiMH3uU
Midi 音源は
123Sakuragari.mid



@ 第二十四 たそがれ (中村秋香 作詞 Weber 作曲)

一 黄金の波かと、ながめしくもは。
  見る見るはかなく、色あせゆきて。
二 はるかに聞こゆる、野寺の鐘に。
  たぐひてよせ來ぬ、ゆうべのいろは。
三 なにすとしもなく、むなしく暮れぬ。
  わがよもつひには、かゝりやすらん。

音源は
124Tasogare.mid


Carl Maria von Weber (1786. 11-1826. 06)


@ 第二十五 懐友 (旗野十一郎 作詞 Silcher 作曲)

一 この芽もはるの、花さくには。
    眺(ながめ)にうかぶ、おもひはなに。
  むつびし友と、歌よみかはし。
    あひ見し色、あゝこのいろ。
二 もみぢもあきの、月照る庭。
    ながめに浮かぶ、おもひはなに。
  愛(めで)し人と、語合(かたら)ひながら。
    あひみし影、あゝこのかげ。

[注] 原曲はSilcher作曲"Mein guter Kamerad" ('Ich hatt einen
Kameraden').[桜井]

録音は例えば,
Heino-Ich Hatt Einen Kameraden
http://www.youtube.com/watch?v=BKOPlKwaJH0



@ 第二十六 集会 (中村秋香 作詞 Ferd. Gumbert 作曲)

一 あなおもしろの、今日のむしろ。
    あなこゝろゆく、このひのまとゐ。
      おもふ友どち、袖かいつれて。
二 昔をしのび、いまをかたり。
    たがひにつゆも、心をおかず。
      思ふことゞも、言ひかわしつゝ。

[注] John Hullah, "The Grammar School Chorus" (Boston: Oliver Ditson
& Co., 1866) p. 111: Ferdinand Gumbert (1818-1896) 作曲 "Spring-Song"
('Music borne on zephyr's wing'). [長谷川由美子: 私信 2011. 05. 15]
原曲は, op. 48 "Zweistimmige Lieder", no. 2: 'Leise zieht durch mein
Gemüth'. 歌詞は Heinrich Heine 作詞. [桜井雅人: 私信 2011. 06. 01]

音源は
126Tsudoi.mid



@ 第二十七 旅の暮 (三輪義方 作詞 Silcher 作曲)

  ゆふべの空 きりたちこめ。
    とわたるかり、聲もさびし。
  戀しやとし月、なれにしふるさと。
    ものうきは、ひなのながぢ。-->

[注] 原曲は Friedrich Silcher 作詞・作曲 (1827/1830) のドイツ・シュ
ワーベン地方の民謡「愛の喜び」"Das Lieben bringt groß Freund'" また
は "Mein eigen soll sie sein".[桜井: 私信 2010. 04. 20]
『中学唱歌』第十八 「告別」と同曲.

歌唱は
Das Leben bringt gros' Freud
http://www.youtube.com/watch?v=qiVxGarnVZI



@ 第二十八 秋漁 (旗野十一郎 作詞 Brahms 作曲)

一 いり日はなみに、黄金のこし。
  黯然(くろみし)そらへ、かへる鶻(みさご)。
    みぎはの芦に、のぼる蟹の。
    いま泡ふく、滿潮時(しほどき)。
二 磯囘(いそわ)のを船、おきにすゝみ。
  すなどる海人(あま)の、状(さま)ぞ騒忙(さわぐ)。
    片割月の、ひがし山に。
    まだ昇らぬ間(うち)とや。

[注] 原曲は Johann Brahms 編曲 "14 Volks-Kinderlieder", WoO 31:
No. 4. 「眠りの精」('Sandmännchen').[桜井]

歌唱は
Brahms--Sandmaennchen (Elisabeth Schwarzkopf)
http://www.youtube.com/watch?v=UdGva8h0tBI
日本語版は
眠りの精 (子守歌) - 小鳩くるみ
http://www.youtube.com/watch?v=vX7thua6mUY


Johannes Brahms (1833.5-1897.4)


@ 第二十九 琴の音 (大和田建樹 作詞 Mendelssohn 作曲)

一 松風か、夜あらしか。あはれあの聲は。
    月しろし、風きよし。
  たかき琴のしらべ。
      いづくよりかひゞく。
二 鈴蟲か、松むしか。とほきあのこゑは。
    露さむく、夜もふけぬ。
  あやし笛のしらべ。
      門(かど)のかたにひゞく。

[注] 原曲Felix Mendelssohn作曲『6つの混声合唱』Op 48 (1839) No 4
「ひばりの歌」('Lerchgesang') (おお雲雀).

古い歌唱は
木下保 指揮 「おう雲雀」 高野辰之 作詞 Lerchengesang
http://www.youtube.com/watch?v=oCkUEZ4vES0


Felix Mendelssohn (1809.2 -1847.11)


@ 第三十 秋の夜 (中村秋香 作詞 Abt 作曲)

一 秋風さむく、なりゆくまゝに。
    よるこそことに、いとをかしけれ。
  まがきのもとに、なくむしのこゑ。
    千草の露に、やどれる月かげ。
      あなあはれ、あはれ。
二 燈火かゝげ、机によれば。
    月こそ照らせ、よむ書(ふみ)の上(へ)を。
  琴引きよせて、手にまさぐれば。
    こほろぎなけり、琴柱(ことじ)のほとりに。
      あなあはれ、あはれ。

[注] 作曲は Franz Wilhelm Abt (1819-1885), "Agathe", Op. 39 No. 1.
『明治唱歌』第二集第二十四 「暗夜の光」と同じ曲.

音源は
224WennDieSchwalben.mid


Franz Abt (1819-1885)


附録(輪唱)

@ 第三十一 寫眞 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 ゆかしきおもわ、さやけきこわね。
    たゞみるごとく、聞くこゝちせり。
二 わがふるさとは、ちさとのかなた。
    五百重(いほへ)の雲は、たちへだつれど。
三 今このかたに、向へばやがて。
    手をとりかはし、あふこゝちしぬ。
四 うれしのかたや、このかたこそは。
    あけくれさらぬ、わが窓のとも。

音源は
131Shashin.mid



@ 第三十二 花紅葉 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 ゆきて見ばや、さける、山の、櫻の花。
    サもろともに、袖つれて、いざや。
二 いざや、おもふどちよ、時は、たがひやすし。
    サあめ風に、うつろはぬ、ひまに。
三 ゆきてめでん、にほふ、のべの、もみぢの色。
    サこれかれを、いざなひて、いざや。
四 いざや、おぼしたてよ、時は、人をまたず。
    サつゆしもに、ちりそめぬ、ほどに。

音源は
132HanaMomiji.mid



@ 第三十三 兄弟 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 わが父母(ちゝはゝ)が、身軆(むくろ)を分(わか)ちし。
    わが身はやがても、わがはらからの身。
二 わがはらからも、又ちゝはゝより。
    身軆を分ちて、生まれし身なれば。
三 さてこそわれは、やがてもはらから。
    はらからやがても、ちゝはゝなりけれ。
四 たふときものは、はらからなるかな。
    したしきものこそ、はらからなりけれ。

音源は
133Harakara.mid



@ 第三十四 夜學 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 軒ばの柳に、月かたぶきて。
    書(ふみ)よむともしび、影またたけり。
二 しづまりはてにし、ちまたのかなた。
    はるかにきこゆる、遠吠(とほぼえ)のこゑ。
三 今宵もいつしか、一時をすぎぬ。
    この一まきだに、まだよみはてゞ。

音源は
134Yagaku.mid



@ 第三十五 四季のあはれ (中村秋香 作詞

一 花さく、春のやま。
    梢より、ほのぼの、しらめる、あけぼの。
  鴫(しぎ)たつ、秋の澤。
    芦間より、やうやう、くれゆく夕ぐれ。
  ああ、なにとか、ああ、うたはん。
  ああ、なにとか、うたはん。
二 ふみよむ、なつのつき。
    をすの外(と)に、そよそよ、吹きくる朝風。
  筆とる、冬のまど。
    笹の葉に、さらさら、ふりくるはつゆき。
  ああ、いかにか、ああ、いふべき。
  ああ、いかにか、いふべき。

[注] 原曲は Wilhelm Jenny, "Buch der Reigen, Eine Sammlung von
Tanzreigen" (Verlag von G.A. Grau & Co., 1880) p. 264: Johann Gaudenz
Freiherr von Salis-Seewis (1762-1834) 作詞,Schulze 作曲,"Wie schön
ist es im Freien".[桜井:私信 2012. 03. 09]

日本では丹治 汪作詞「うるわし春よ」として知られる.
音源は
タッキーNのDTM考坊制作・音楽演奏のページ
http://dtakkynm.web.fc2.com/PF-17.htm




第二集

(1901年5月15日)


A 第一 愛らしき花 (坂 正臣 作詞 Schäublin 作曲)

一 友よぶ雲雀の、 あがる野べに。
  にほへるすみれの、 あかぬ色よ。
二 ふく風涼しき、 やまの陰に。
  さきたる瞿麥(なでしこ)、 よそに見めや。
三 春にも秋にも、 花はあれど。
  あいらしなつかし、 これぞ我は。

音源は
201AirashikiHana.mid



A 第二 夜の歌 (坂 正臣 作詞 Hauptmann 作曲)

一 暮行くまどに、 書(ふみ)讀む人の。
  耳にぞ澄める、 みづのながれ。
二 更けたる檐(のき)の、 小竹(をざさ)の葉末(はずゑ)。
  さらさら渡る、 風のひゞき。
三 物(もの)皆眠る、 夜中の空に。
  さえこそまされ、 星のひかり。

音源は
202YorunoUta.mid



A 第三 閉校 (坂 正臣 作詞 Weber 作曲)

一 送りつ迎へつ、 時を惜み。
  張りて弛(ゆる)べて、 業(わざ)を研(と)ぎし。
  學(まなび)の門(かど)の戸、 今日は閉ぢぬ。
  集ひて遊びし、 園(その)の芝生。
  人影かき絶え、 さびしからむ。
二 門の戸鎖(とざ)して、 そでを分(わか)ち。
  わが屋に歸りて、 ちゝにはゝに。
  伴(ともな)ひをらんは、 楽しけれど。
  對(むか)ひてまなびし、 室(むろ)のつくゑ。
  ふみ讀む聲なく、 静かならむ。

音源は
203Heiko.mid



A 第四 日出の富士 (旗野十一郎 作詞 Lvov 作曲)

一 狭霧ふかく、たちこめて。 世はいまだ、暗きに。
  ほがらほがら、天(あま)の戸の。 あけかゝる、富士の峰(ね)。
二 雲の衣、雪のかほ。 ほのぼのと、紅さし。
  天然(なれる)姿、そのままに。 つくろはぬ、気高さ。
三 朝日ににほふ、大空に。 ほゝゑみて、立てるを。
  櫻ひめと、上古(むかし)より。 たゝへしは、うべなり。

[注] Vasily Zhukovsky作詞,Prince Alexei Lvov作曲(1833)ロシア
帝国国歌.[桜井]

音源は
Anthem of the Russian empire
http://www.youtube.com/watch?v=WxxGJ-Y2530



A 第五夕の鐘 (坂 正臣 作詞 西洋曲)

  鳥の翔(かけ)るかた、 目もて送れば。
  けぶり薄く立つ、 をちの山もと。
  ものすごの夕景色、 我ならぬ人もみむ。
  月はいまだでぬ、 峯の寺より。
  あはれ傳へ來る、 鐘のとゞろき。

[注] 原曲は ドイツ・テューリンゲン地方の民謡 "Seht, wie die Sonne
dort sinket".
このメロディーに Friedrich Wilhelm Kritzinger (1816-1890) はクリスマス・
キャロル "Süßer die Glocken nie klingen" を作詩している.[桜井:私信
2011. 03. 21]
アメリカでは H. Kingsbury and A.A. Graley, "Happy Hours: A collection
of songs for schools, academies, and the home circle" (New York:
Taintor Brothers, 1870) p. 82: E.R. Sills 作詞,編曲者不明の "Evening
Twilight" に近い.
W.O. Perkins, "The Mocking Bird, for schools and juvenile classes",
(New York: Wm.A. Pond & Co., 1871) p. 64: 'Little Brown Hands' もある.
[桜井雅人: 私信 2011. 01. 16/ 02. 18]

原曲の歌唱は
Volkslied Schlesien-Seht wie die Sonne dort sinket 合唱版
http://www.youtube.com/watch?v=xtySONPceR4
音源は
205YubenoKane.mid



A 第六 春のゆふべ (大和田建樹 作詞 Hetsch 作曲)

一 色もふかき、春野のすみれ。
    つみてかへる、夕まぐれ。
  わが子をおもふ、 雲雀のこゑは。
    なおも空に聞ゆなり。
      かすむ空に、のこるなり。
二 かすみ深く、ゆくてをこめて、
    道もみえず、山もなし。
  なれたる母の、家路はいづこ。
    水の聲も、かすかにて。
      花のいろも、おぼろにて。
三 夕日入(い)りて、みそらをつゝむ。
    雲のいろも、なごりをし。
  わかれし友の、ゆくへはいづこ。
    かへる雁の、三つ五つ。
      とほくちかく、聲はして。

音源は
206HarunoYube.mid



A 第七 星の光 (旗野十一郎 作詞 Fischer 作曲)

一 ゆふ風に、ひき裂かれ。
  ちぎれちぎれ、ゆく雲に。 星の光、きらめくは。
二 袖かへす、舞姫の。
  妙(たへ)にかざる、腕の環(わ)に。 ダイヤモンドぞ、かゞやける。
三  暗色(くれ)すゝむ、空はなほ。
  暎気(にほひ)まして、影うつす。 庭の草の、露にまで。

[注] Frederic H. Ripley and Thomas Tapper, eds., "Harmonic Third
Reader" (New York, Cincinnati [etc.] : American Book Company, 1903)
p. 70 に所収の C.H. Fischer 作曲 'O Light-Bearing Star'. ただしこの譜は
3/4 拍子.[桜井: 私信 2011. 04. 19]

音源は
207HoshinoHikari.mid



A 第八 おもだか (三輪義方 作詞 Silcher 作曲)

一 澤潟(おもだか)の花は、 をかしきものよ。
    すずしきその香(か)は、 清き心の。
   人にかよひて。
二 おもだかの花は、 をかしきものよ。
    ゆかしきその名に、 たかき心の。
   人ぞおぼゆる。

[注] Friedrich Silcher and Friedrich Erk, "Schauenburgs Allgemeines
Deutsches Kommersbuch" (Lahr: Moritz Schauenburg, 1888) 31st ed.,
pp. 380-81: Hoffmann von Fallesleben 作詞,F. Silcher 作曲 (1826)
"Abschied" ('Morgen müssen wir verreisen').[桜井雅人: 私信
2011. 04. 28]

音源は
208Omodaka.mid




A 第九 やさしの山吹 (三輪義方 作詞 Silcher 作曲)

  きよき水に、枝ひぢて。 花咲く、やまぶき、あれ。
  色香ふかく、八重匂ふ。 やさしの、すがたや、あれ。
  ふく風に、ゆられて、露はみだれ。
  よする浪に、影さわぐ。
  すめるは、かはづの聲。

[注] Friedrich Silcher 作曲 (1827) 'Muß i' denn zum Städtele hinaus'.

歌唱は
Wiener Sangerknaben - Muss i denn zum Stadtele hinaus
http://www.youtube.com/watch?v=WzQ2uOknF64
アメリカでは
Elvis Presley - Wooden Heart (from "G.I. Blues" 1960)
http://www.youtube.com/watch?v=05ZgyoZvhgI



A 第十 漁父 (武島又次郎 作詞 ノルウェー曲)

  ふりしきる、 おほ風。
  くだけくる、 あら浪。
  すさぶとも、 荒(あ)るとも。
  この眞楫(まかぢ)、 たにぎらば。
  海とても、  青畳。

音源は
210Gyohu.mid



A 第十一 夏の野景 (旗野十一郎 作詞 Greef 作曲)

一 みわたし遥けき、    岡のみなみ。
  日かげにいろます、   夏のをぐさ。
  わけゆく小羊、     五つ七つ。
  あさげのなごりの、   露やあさる。
二 ひとむら繁れる、    合歓(ねむ)のもとに。
  芝生をむしろと、    つどふ 少女(をとめ)。
  涼しの伴歌(つれうた)、三人(みたり)四人(よたり)。
  緑をそよ吹く、     風にもらす。

音源は
211NatsunoYakei.mid



A 第十二 ふるさと (大和田建樹 作詞 Mozart 作曲)

一 草葉にまじれる、  撫子ひめゆり。
  うゑたる昔の、   あるじはかへらず。
  友なきふるさと、  さびしき夏の野。
二 くるればきらめく、 ほたるび白露。
  月なきこよひも、  光はかくれず。
  いづこぞ昔の、   垣根の呉竹。

[注] 原曲は Mozart作曲 (1791), 作詞者不明 '固く手を握りしめて'
('Laßt uns umschlungnen Händen') (KV 623a). 作曲者を Mozart と
することについては疑問を持つ人もいる.1946年10月より Haydn 作
曲のものに換えてオーストリア国歌(オーストリアの作家 Paula von
Preradovic 作詞)'Land der Berge, Land am Strome' となった.
以上は筆者の友人でモーツァルト協会会員の三浦登氏の情報による.
三浦氏に謝意を表する.

歌唱は
Wolfgang Amadeus Mozart - Hymne - Lasst uns mit geschlungen
Handen, K 623a
http://www.youtube.com/watch?v=ALXmCwePO9Y


Wolfgang Amadeus Mozart (1756. 01-1791. 12)


A 第十三 門邊の小川 (武島又次郎 作詞 西洋曲)

  門(かど)のべ流れゆく、  小川よ、  小川よ。
  思へば、汝(な)がすがた、 いさまし、 いさまし。
  たゆまず止(とどま)らず、 年と、   ともに。
  進める汝が心、       たふとし、 たふとし。

[注] Carl Groos and Bernhard Klein, "Deutsche Lieder für Jung und
Alt" (Realschulbuchhandlung, 1818), p. 18: Carl Friedrich Zelter (1758-
1832) 作曲(1810) 'Da droben auf jenem Berge, da steht ein kleines Haus'.
[桜井雅人: 私信 2011. 04. 29-30]

midi音源は
213DaDrobenAufJenemBerge2.mid


Carl Friedrich Zelter (1758-1832)


A 第十四 早秋夕 (中村秋香 作詞 西洋曲)

一 軒にかゝぐる、 ともしびの。
  影もいつしか、 秋めきて。
  ゆふべ涼しく、 吹く風に。
  草の葉がくれ、 こゝかしこ。
          蟲の聲。
二 月のひかりに、 うかれつゝ。
  ひとり園生(そのふ)に、 さまよへば。
  結びそめつる、 ゆふつゆに。
  かつひもとけり、 をみなえし。
          はぎのはな。

音源は
214SoshuYu.mid



A 第十五 成業別友 (旗野十一郎 作詞 Silcher 作曲)

一 いく春こゝの庭に摘みし。
  小草(をぐさ)の花は、いまやにほふ。
    アゝこのにほひ、別れて後に。
  君も吾も、眞實(まこと)著(しる)し。
二 いく秋こゝの、園に折りし。
  桂の枝は、いまやかをる。
    アゝこのかをり、別れて後に。
  きみもわれも、まことしるし。

原曲は,1690年には知られていた民謡をもとに,F. Silcherが作曲
(1827) した 'Morgen muß Ich fort von hier'.
英語版はたとえば, William O. Perkins, "The Golden Robin" (Boston:
Oliver Ditson & Co., 1868) p. 46: C. Hohmann 作詞 "Fairwell to the
Wood"; Luther W. Mason, "Second Music Reader" (1870) p. 82:
"Farewell to the Woods"; Commitee of Graduates and Under-
graduates of the University of Toronto ed., "The University of Toronto
Song Book" (Toronto: The Canadian-American Music Co., 1887), p. 163:
'Farewell' として収録されている.[桜井私信:2011. 01. 22/ 02. 20]

歌唱は
Frommermann @ Kunststof TV 220209
http://www.youtube.com/watch?v=FeDwbBktElY
2009年2月22日 Kunststof TV で放映.

midi音源は
215SeigyoBetsuyu.mid



A 第十六 秋のあはれ (鳥居 忱 作詞 Malan 作曲)

一 更け渡る秋の夜。庭に鳴く、蟲の音(ね)。
  萩原(はぎはら)の、伏庵(ふせいほ)。さらぬだに、此の身は。
  舊(ふり)にし世、忍ぶに。淋しさは、身に染(し)む。
  淋しさよ、伏庵(ふせいほ)。淋しやな、秋の夜。
二 更け渡る、秋の夜。峰に鳴く、鹿の音。
  山陰(やまかげ))の、伏庵。さらぬだに、此の身は。
  過ぎにし世、忍ぶに。悲しさは、身に染(し)む。
  悲しさよ、伏庵。悲しやな、秋の夜。

[注]  Henri César Malan 作曲 (1827) 'Mon Dieu, mon Père, ecoute-moi'.
ドイツではJohann Friedrich Räder (1815-1872) が作詞(1845) 'Harre
Meine Seele, harre des Herrn'.
『讃美歌』291番「主にまかせよ,汝が身を」,同じ歌詞で『新聖歌』第
298番.

音源は
216AkinoAware.mid


Henri César Malan (1787-1864)


A 第十七 なき父母 (大和田建樹 作詞 Beethoven 作曲)

一 なきわが父上、御影はいづくぞ。
    なきわが母上、御聲(みこゑ)はいづくぞ。
  花さき鳥なき、春また來たりぬ。
    こひしや、昔の、かへらぬ其の夢。
二 父とわがめでし、垣根の糸萩。
    母とわがきゝし、夕べの蟲の音(ね)。
  たのしと思ひし、夢路の昔を。
    今なほこふるか、草葉の白露。

[注] 原曲は交響曲第2番ニ長調 Op. 36 第2楽章を編曲したもの.
A. Barner, "Liedersammlung für Töchterschulen" (Verlag von I. Lang.
Tauberbischofsheim, 1879) Heft II, p. 120 に "Frage" として収録され
ている. [長谷川由美子: 私信 2011.02.10]
原譜の誤植: (1) 第1段第2小節の第2音,(2) 第2段第2小節第3音,
(3) 第3段第4小節の最高音の3ケ所の四分音符を八分音符に訂正した.

音源は
217NakiChichiHaha.mid


Ludwig van Beethoven (1770. 12-1827. 03)


A 第十八 秋の夕暮 (武島又次郎 作詞 J.E. Gaillard 作曲)

  夕風かなしく、   蟲もなきて。
  こゝろぞしほるゝ、 秋のゆふべ。
  わが身のうへのみ、 かくやと思ふに。
  尾花が袖にも、   露はおきぬ。

[注] 元メロディーは
Robert M. Keller ed., "The Dancing Master, 1651-1728: An Illustrated
Compendium" (2000)
http://www.izaak.unh.edu/nhltmd/indexes/dancingmaster/
に掲載の,John Playford, "The Dancing Master" Vol. 3 (London:
Edward Midwinter and John Young, ca.1726), p. 90: John Ernest
Gaillard 作曲 のダンス曲 "The Bashful Swain".
作曲者の Gaillard (1687-1749) はドイツ Zell 生まれで,デンマーク王
家に仕えた後イングランドに移り,ヘンデルらが活躍していたロンドン
で活動した.
この曲には "The Musical Miscellany", Vol. 1 (1729), pp. 30-32: "The
Bashful Lover"; "Calliope; or, The musical miscellany" (1788), p. 254:
"On a Bank of Flow'rs" などの歌詞がつけられたが,中でも,James
Johnson, ed., "The Scots Musical Museum", Vol. 3 (Edinburgh: Johnson
& Co., 1790), p. 232: no. 223 の Robert Burns 作詞 "On a Bank of
Flowers" が良く知られている.[桜井雅人: 私信 2011.06. 26]

音源は
218AkinoYugure.mid



A 第十九 庭の菊 (大和田建樹 作詞 Cherubini 作曲)

一 きのふけふ、さきそめし、庭の菊。
   露もにほへり、月もにほへり。
    來て見よ、まなびの友人。
二 あすも猶(なほ)、さきそはん、園の花。
   あかもうつくし、白もなつかし。
    たをりて、ともにやおくらん。

[注] William B. Bradbury, "Musical gems for school and home" (New
York: Newman & Ivison, [1849], 1852)に "Morning Song" (Cherubini) と
して収録されている[桜井:私信 2010. 08. 12]
A. Barner, "Liedersammlung für Töchterschulen" (Verlag von I. Lang.
Tauberbischofsheim, 1879) Heft II: Cherubini 作曲 "Herbstlied".[長谷川
由美子:私信 2011. 05. 15]

音源は
219NiwanoKiku.mid



A 第二十 感懐 (中村秋香 作詞 Mendelssohn 作曲)

一 紫の色、    千歳を経て、
  ますます深き、 匂ひをそへ、
  清原の水、   月日にそひ。
  いよいよ清く、 澄みこそませ。
          あないみじや。
二 此世はわづか、 五十歳(いそじ)のほど。
  いでわがともゝ、 身のほどほど。
  つとめ勵(はげ)みて、 いさをゝ立て。
  なからん後に、 忍ばるべき。
          名を残さん。

[注] Menderssohn 作曲 Op. 38-4『無言歌 第3巻』「望み」.[長谷川
由美子:私信 2011. 05. 15]

音源は
220Kankai.mid



A 第二十一 琴弾く媼 (中村秋香 作詞 Fröhlich 作曲)

一 琴ひくおうな、  あはすおうな。
  かしこにこゝの、 軒にたちて。
  松吹く風か、   よする波か。
  弾く手もすまに、 ふしをかしく。
  かきこそならせ、 琴のしらべ。
二 軒端に立ちて、  もの乞はんと。
  習いやしつる、  ながその業(わざ)。
  柳にむつれ、   花になれし。
  昔の春や、    いかなりけん。
  かたれや媼、   あはれおうな。

音源は
221KotoHikuOuna.mid



A 第二十二 なき友 (中村秋香 作詞 Spohr 作曲)

一 ともに見つる、春の花は。
  去年(こぞ)のいろに、咲き匂へり。
  ともに見し月も、去年のまゝに、
  霞むものを。あはれその、よの友の。
  影ぞ見へぬ、かげぞ見えぬ。
  あはれその、世の友の。アゝ。
二 月をめでゝ、ともにうたひ。
  花を折りて、ともにかざし。
  千代もかくしつゝ、経(へ)ばやとこそ、
  契りにしか。あはれその友垣よ。
  月はかすみ、花は咲けど。
  あはれその、ともがきよ。アゝ。

[注] 原曲は F.F. Schäublin, "Chorgesänge" (Basel: Bahnmaier's
Verlag (C. Detloff), 1880) pp. 58-59: Louis Spohr (1784-1859) 作曲
"Selig sind die Todten".[桜井雅人: 私信 2011. 05. 04]
A. Barner, "Liedersammlung für Töchterschulen" (Verlag von I. Lang.
Tauberbischofsheim, 1879) Heft III, p.129: "Selig sind die Todten" (3部
合唱).[長谷川由美子: 私信 2011. 05. 15]

音源は
222NakiTomoWithPf.mid


Louis Spohr (1784-1859)


以上


(2010年4月)


参考

[桜井] 桜井雅人私信,2010年4月-6月.

貴重な情報と多数のmidi音源を提供いただいた櫻井雅人氏に感謝する.


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