呼吸法(マインドフルネス、アクセプタンスを織り込んだ)の特徴
呼吸法は、種々の智慧を織り込んで、適切に指導されると、次の特徴があるので、マインドフルネス心理療法では、呼吸法を多用する。呼吸法の技法をクライアントに習熟してもらうことがこの心理療法の焦点となる。
心理的な特徴
(1)過去・未来の執着から解放
呼吸は現在の活動であるので、呼吸に注意(意識)を集中すると、過去や未来から離れることができる。
(2)感情・衝動から解放
呼吸に注意を向けるときに、感情(嫌悪)や衝動的欲求(執着)から一歩下がるので、感情や衝動に振り回されて、即座に非機能的な行為をとることを猶予する余裕が生まれる。
(3)苦痛をよびこむ論理的思考から解放
注意資源には一定の容量があり、注意を呼吸法にさくと、思考を反すうするための容量が小さくなり、悲観的とか衝動的とかの内容を持った思考が速度を弱めたり、崩壊したり、一次的に、全く離れることがある。
(4)安心、安全、自己信頼、価値実現の連鎖
呼吸法に注意を集中したときに、つらい現在の感情も、つらい過去も、つらい未来もないことを繰り返し観察できた人は、呼吸法と安心、安全、自己信頼、価値実現などとの連鎖、連合を形成するようになる。
(5)危機的な状況の減弱
呼吸は必ずあるので、呼吸に注意を向けた時の安心、安全、自己信頼、価値実現を自覚できた人は、何かが起こるときに、安心の場として、いつでも呼吸に戻ることができる。そこは、安心、安全、自己信頼、価値実現の場である。
そうなれば、様々な場面で活用できる。精神疾患にある人や、問題を持つ人は、つらい思考、つらい感情、無茶な(まぎらし)行動、つらい気分、つらい思考など、連鎖、連合を形成しているものであるが、呼吸法を繰り返し練習した人は、危機的な事象が起きたとき、呼吸法に注意を向ければ、安心、安全、自己信頼、価値実現が想起され(改善効果ある連鎖が起きる)て、危機的事象が弱まり、崩壊し、冷静に観察して、機能的な行為を選択する余裕が生まれる。
セラピストとしては、このような効果が発現するようにくふうして指導することになる。自分自身でも呼吸法、生活の中での実践をたくさん実践して、上記の安心、自己信頼を得ていないと患者に指導できないし、また、自分で満足しても、臨床指導のスキルのないセラピストでは、うまくいかない。セラピストも、自分自身が実践し、これを体得し、他者への指導法を熟練しなければならない。
生理的な効果
ゆっくり呼吸法には、次のような神経生理学的な効果がある。
はく息を長くゆっくりする呼吸を行なうと、副交感神経が優位となるので、感情の興奮を鎮める作用がある。
ゆっくり呼吸すると、頚動脈(けいどうみゃく)にある「化学受容器」が、二酸化炭素の量が血液中に増加したことを検知して、縫線核セロトニン神経を刺激して、脳内のセロトニンの分泌量がふえるといわれている。こうして、意識に関係のないところで、感情などに影響する神経に変化が起きる。
呼吸に意識を向けるので、前頭前野の活性化になる。前頭前野の注意集中力が向上する。
自分の精神作用を抑制するスキルが向上する。前頭前野の抑制機能の向上である。
カウンターつきのゆっくり呼吸は、前頭前野のワーキングメモリ機能を向上させる。